医療ニュースはこちらです     

 首の痛み
    首(頸部)の痛みの大きな原因には、筋肉痛、寝違えなど首の骨(頚椎・けいつい)の後ろの小さな頚間関節からの痛み、そして骨と骨の間にあるクッションの役目をする椎間板からくるものとがあります。 頚椎は椎骨(ついこつ)という小さな骨が7つ重なってできています。また重さが6~8キロもある頭を支え、上下左右に動かしたり回転させたりと、複雑な動きをコントロールしています。そのため首には大きな負担がかかります。加齢により首の筋肉が弱ったり、運動不足で首をあまり動かさないでいると、首の筋を違えたりこりなどから筋肉痛を起こします。
 加齢により頚椎が老化したり、頚椎がすり減ったり、クッションとなっている椎間板の変性が起きると、慢性的な痛みやしびれを起こすようになります。頚椎の中央には、神経幹である脊髄が通り、脊髄から枝分かれした神経が肩や腕へとつながっています。そのため頚椎が変形すると、首の痛みだけではなく、肩の痛みや手のしびれ、脚のしびれによる歩行障害、さらには排尿障害まで起こすことがあります。このような障害が起きる前の初期段階である首のこりや筋肉痛の段階で、早めに対処することが大切です。
 パソコンなどでよくない姿勢を長時間続けることにより、首の痛みを訴える人が増えています。パソコンの作業のように背中を丸め、顔を少し前に突き出すような姿勢では、頚椎に不自然な状態になっています。特にアゴを突き出すと首が後ろに反り、頚椎や首の筋肉を緊張させてしまいます。長時間になると首や肩の血液の流れが悪くなり、疲労物質の乳酸などが蓄積し、こりや痛みを起こすことになります。パソコンに限らず、デスクワークやテレビをみている時なども同じです。
 首の痛みの予防と改善の第一歩として、背筋を伸ばし(背中を椅子の背につける)、アゴを少し引く姿勢を心がけましょう。長時間同じ姿勢をしていると首の筋肉や頚椎に大きな負担に
なるので、30分に一度は次のような運動をしましょう。
①首を左右にゆっくり倒す(5秒くらいを交互に5回)
②顔を左右にゆっくり向ける。首の筋が少し張る位置まで向ける(5秒を交互に5回)
③肩を大きくゆっくり回す(前回しと後ろ回しを5回)
④腕を上げてブルブルと震わす(腕を下げてブルブルと震わす)
 このように身体を少し動かすだけで血行が良くなり、疲労物質がたまりにくくなります。これらは首、肩、腕をリラックスさせるためなので、力を入れずにゆっくりやりましょう。ただし首の痛みが強い時は、いきなり運動をしないで医療機関の受診が前提です。
 首の痛みの他に手足にしびれがある場合は「頚椎症(けいついしょう)」が考えられます。加齢などによって椎間板の柔軟性が低下すると、骨と骨の間のクッションが弱くなり、頚椎そのものに強い力がかかって変形を起こしやすくなります。そのため頚椎から腕に伸びる神経が圧迫され、手や指のしびれ、感覚異常(感覚がない)、手が動きにくいという症状がみられます。 また脊髄が圧迫されると、脊髄は全身につながる神経の中心なので、さまざまな症状が起こります。また頚椎症には「頚椎椎間板ヘルニア」があります。ゼリー状の物質がつまり、クッションの役目をしている椎間板が加齢などで変形した場合も同じ症状を起こします。 また「脊柱靭帯骨化症(せきちゅうじんたいこっかしょう)」は、脊柱(背骨)の骨どうしをつなぐ靭帯が厚くなり、骨化していく病気です。また肺炎などを起こしたあと、細菌が頚椎に感染すると、首の痛みや発熱などの症状を起こすことがあります。この場合は抗菌薬などで治療する必要があります。頚椎にできた腫瘍などによって、神経や脊髄が圧迫された場合も、首の痛みなどの症状が起こります。首を動かさなくても痛みが続く時は、早めに検査を受け適切な治療を受けることが大切です。
 頚椎症の治療法には次のものがあります。
◇生活指導(初期段階)・医師の指導によって日常の姿勢や運動などの生活習慣を改善し予防する
◇保存療法(症状が少し進んだ段階)・鎮痛薬などで首の痛みを軽減しながら悪化しないようにする治療法です 首を引っ張る牽引、首周辺を温める温熱などの療法もあります
◇手術療法(かなり進んだ状態)・生活指導、保存療法では改善されず強い脊髄症状がある場合などには手術を選択する方法があります


 
   爪にできる水虫  
    だんだんと暖かい日が増えてきました。気温が上がると足の蒸れが気になる、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな足の蒸れは水虫の原因となることがあります。
 水虫は足の皮膚の病気ですが、実は爪にできる「爪水虫」という病気があります。あまり知られていない病気ですが、日本人には意外と多いのです。
 水虫は、白癬菌(はくせんきん)と呼ばれるカビの仲間に感染することで罹患します。この白癬菌は面白いことに、感染した部位によって呼び名が変わります。足であれば水虫(足白癬)、体に感染すればタムシやゼニタムシ、頭に感染するとシラクモ、股間に感染するとインキンタムシと呼ばれます。そして、白癬菌が爪に感染した病気を爪水虫(爪白癬)といいます。
 爪の表面は硬いため直接白癬菌が入り込むことは少ないのですが、長時間ブーツを履いていたり、雨で足が濡れてもそのままにしておいたりすると、白癬菌が好むケラチンを含む垢や汗などの汚れがたまり、菌が増殖することで爪の周りや爪と皮膚の間から菌が入り込んで感染してしまいます。また時には、水虫が放置されることで皮膚から爪へと白癬菌が侵入してしまうこともあります。本人が感染していなくても、水虫になっている家族からバスマットなどを介して感染することが多いので、家族揃って治療していくことが重要です。
 水虫はよく聞きますが、爪水虫はあまり耳にする機会がなく、自分には関係ないと思われがちです。しかしある調査では、日本人の5人に1人が足水虫、10人に1人が爪の水虫にかかっている可能性があるという結果が出ています。この結果から計算すると、日本には1000万人以上と、意外に多くの爪水虫患者さんがいると考えられます。
 爪水虫にかかった爪は、白色や黄色に濁ったり、厚くなってぼろぼろと欠けたりします。水虫というとかゆくなるイメージが強いのですが、爪には神経がありませんので爪水虫になっても痛みやかゆみは感じません。そのため、多くの場合爪水虫は見過ごされてしまいます。
 症状がないからといって治療せずに放置すると、だんだん爪が変形して厚くなり、痛くなったり靴下や靴が履きづらくなったりします。重症になってしまうと、痛みが強くなることにより歩きづらくなることもあります。
 爪水虫の特徴は爪が白くなったり変形したりすることですが、他にも似たような症状がみられる病気があります。例えば、「爪異栄養症」という爪の発育不全による病気や、「カンジダ性爪真菌症」という、別の種類のカビの感染症でも爪の変形がみられます。ですから、見た目だけでは爪水虫と診断することはできず、医療機関で爪に白癬菌がいるかどうかを検査することが必要です。
 爪水虫の治療薬には、飲み薬と塗り薬があります。飲み薬は一度体の中に吸収されて、体の内側から爪にいる白癬菌にまで到達します。飲み薬で症状が改善されることが多いのですが、肝機能が悪い方には使えない場合があったり、注意する薬の飲み合わせが多かったりするため、患者さんによっては使いづらいことがあります。 そこで最近になって、新しい塗り薬が開発されました。塗り薬の場合は、飲み合わせや肝機能・腎機能を気にしなくてもいいというメリットがあります。ただし、爪が生え変わるには約1年かかるため、1年間は毎日きちんと使い続ける必要があります。また現在新しい飲み薬も開発中で、いままでの飲み薬と違って注意する飲み合わせが少なく、肝機能・腎機能の影響が少ないという特徴があります。爪水虫の治療で注意したいことは、ドラッグストアなどで販売されている水虫の薬では爪の中を浸透しないため、有効成分が白癬菌まで届かず効果がないということです。
 爪水虫はあまり知られていない病気ですが、家族から感染することもあり日本人には意外と多い病気です。爪の見た目が気になる方は、一度受診し検査されることをお勧めします。

 
   貧血について  
    貧血には、「鉄欠乏性貧血」「再生不良性貧血」「悪性貧血」「溶血性貧血」などがあり、血液の赤血球の中にあるヘモグロビンが減少して起こります。ヘモグロビンは酸素を身体のすみずみまで運搬するという重要な役目を担っているので、ヘモグロビンが少なくなると全身が酸欠状態になってしまいます。
 身体は酸素不足を解消するため、肺は酸素を取り入れようとし、心臓は多くの血液を送ろうとして普段以上に働き息切れや動悸が起きます。貧血が進むと顔色が悪くなる、疲れやすくなる、めまい、脚がむくむなどの症状が現れます。
 貧血のほとんどは、ヘモグロビンの重要な材料である鉄が不足して起きる鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血はゆっくり進行する場合もあるので、最初のうちは自覚症状がみられないこともありますが、貧血の度合いが進むと皮膚の色が青白くなったり、口の中や下まぶたの裏側の粘膜が白っぽくなります。また、身体がいつもだるかったり、ちょっと歩いただけでも疲れたり、寒さを感じやすくなったり、根気がなくなったりします。さらに、頭痛、めまい、耳鳴り、食欲低下が現れ、もっとひどくなると爪が平らになり、スプーンのように反り返ったりします。しかしこれらの症状は貧血だけで起こるとは限りません。その裏に別の病気がひそんでいることがあります。病気による出血が原因になっている場合は、もととなっている病気の治療を行わなければなりません。貧血を軽くみないで、きちんと受診して確かめることが大切です。
 「立ちくらみ」は、貧血と混同されがちです。急に立ち上がった時に目の前が真っ暗になって立っていられなくなりますが、これは「脳貧血」です。脳の血流量を保つための調整機能が間に合わず血圧が低下し、脳が瞬間的に酸欠状態になり起こります。一時的な症状ですので、その場に静かにしゃがみ、安静にして治まるのを待ちます。脳貧血を予防するためには、普段からウォーキングなどで下半身を鍛えておくと、脳への血液循環がよくなります。貧血の場合はヘモグロビンの量が少ないために酸素量が慢性的に不足するものなので、脳への血液循環は正常なのです。
 若い女性に起こると思われやすい貧血ですが、高齢者も注意が必要です。貧血の症状以外に、忘れっぽいという症状も見られ、認知症やうつ病と思われて見落とされることがあります。また、野菜中心の食事が健康的だと思い込んで、肉を食事に取り入れないことがあります。肉や魚類と野菜をバランスよく摂取する食事をしましょう。
 鉄欠乏性貧血と診断された場合、基本は食事によって鉄を摂取することです。鉄には、主に肉、魚などの動物性食品(牛、鶏、豚のレバー・しじみ・はまぐりなど)に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品や卵、乳製品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄は体内への吸収率が高く、非ヘム鉄は吸収率が低いという違いがあります。非ヘム鉄は良質なたんぱく質やビタミンCを多く含む食品(ブロッコリー・レモン・ピーマン・柿・苺など)と一緒に摂取することで、体内への吸収率が上がります。
 どうしても食事で充分に摂取できない時や、貧血の症状が重い場合には鉄剤を服用します。鉄は食べ物の中の色々な物質によって吸収が阻害されるので、食間に服用するとよいでしょう。
 鉄剤を服用すると、2~3カ月程度で貧血の症状は治まります。しかしすぐに服用を止めると、再発の可能性が高くなります。定期的に血液検査を受け、医師の指示のもとに治療を続けましょう。
 
   自律神経について  
    自律神経とは、人間が生きていくために無意識のうちに心身の調整をしてくれている大切な神経です。我々の身体には自分の意志で動かせるところと、コントロールすることが不能なところがあります。手や足は意識して動かせるのですが、心臓は動かそうと意識しなくても動き、胃腸も食べた物を自動的に消化吸収してくれています。自律神経は我々の意識や状態とは無関係に、24時間休みなく働いています。
 外気の変化に合わせた体温調節や、体内温度調節を行うのも自律神経の働きです。発汗、血管の収縮、血液量の変化なども、自律神経が各組織に作用してその働きを調整しています。
 自律神経には、交感神経と副交感神経があります。交感神経は、緊急時やストレスに働き、心身を活発にする神経で、主に外での活動を中心に担います。激しい運動時、興奮や緊張時、恐怖や危険を感じている時などに働きます。ストレスに反応して働くため、ストレスの多い現代社会では、必要以上に交感神経が高ぶり、それがさまざまな症状の原因となります。
 一方副交感神経は、心身を休め回復させる、身体のメンテナンスを担う神経です。副交感神経は睡眠時、休息時などリラックスしている時に働き、内部の生体活動を中心に担う神経といえます。副交感神経が活発に働くと、消化・排泄・睡眠・細胞の修復など、生体を健全に維持するための内部活動に適した身体状態がつくられます。この生きるための土台がしっかりしていることで、外での活発な社会活動も可能となり、そこで蓄積された疲労もリフレッシュすることができるのです。
 交感神経と副交感神経は、シーソーのような関係にあります。24時間を通して状況に応じて強弱が入れ替わり、常に両方が支え合って働いていることが大切で、どちらかが強くなりすぎても問題がおきてしまいます。このバランスが慢性的に崩れてしまった状態が「自律神経失調症」と呼ばれ、交感神経の活動が強くなりすぎて過緊張状態になっていることが多いのです。
 自律神経失調症の状態では次のような症状があります。
①本来なら熟睡して身体を回復させるべき時に、副交感神経の働きが悪くて眠れない
②運動していないのに交感神経が働き、心拍数が上がって動悸が起きる また呼吸が早くなる
③暑くもなく身体を動かしてもいないのに、交感神経が働き汗が大量に出る
④立ち上がる時に血圧がコントロールできなくなり、ほてりや冷えを感じやすくなる
 自律神経失調症の治療としては次のようなものがあります。
◇つらい症状を緩和する薬物療法…ストレスを和らげることで自律神経症状を改善する 身体症状が改善することで悪循環をなくす 二次的なうつ状態や不安障害を改善する
◇生活リズムや環境を整える生活療法…生活習慣を変えることにはエネルギーも必要になりますが、整えていくことで症状が落ち着いていき、再発を防ぐことにもつながります 具体的には、生活リズムを整える(できるだけ同じ時間に起床、就寝する) 三食バランスのよい食事をする 運動習慣をつける カフェインを避ける 習慣的な飲酒を控える 煙草を控える、などに気を付けていきます
◇ストレスとの付き合い方や自己理解を深めるための精神療法…薬を使わずにリラックスする方法はいくつかありますが、呼吸は共通して重要です 呼吸は我々が意識してコントロールできる唯一の自律神経です 普段は意識することなく自律神経にまかせていますが、意識して調整することもできます リラックスする呼吸法というと深呼吸と思われがちですが、胸いっぱい大きく息を吸い込むことよりも、吐く時間を意識した腹式呼吸法がリラックスにつながります お腹を膨らませるように息を吸い、口をすぼめながら時間をかけて息を吐き出します お腹がへこむくらいまで時間をかけて息を吐き切るとよいでしょう
 自律神経失調症かもしれないと自覚してもストレスが原因と軽く思われがちですが、身体状態が悪い場合はまず身体に病気がないか調べる必要があります。各症状によって次のような受診科があります。
○頭痛・脳神経外科や神経内科
○めまい・耳鼻咽喉科や神経内科
○動悸、胸痛・循環器内科
○吐き気、下痢・消化器内科
○喉の違和感・耳鼻咽喉科
○しびれ・神経内科
○肩こり、腰痛・整形外科
○生理不順・産婦人科
○倦怠感、疲労感、微熱・総合内科

 
   外反母趾について  
    「外反母趾(がいはんぼし)」は、靴の歴史の長い欧米人に多い病気でしたが、日本でも急速に増加しています。外反母趾は幅の狭いつま先が細くなった靴を履くことなどで起こり、親指の付け根から先が圧迫されて変形してしまいます。ヒールの高い靴は付け根にかかる力が増えて、さらに変形を強くします。
 健常な足には縦のアーチだけではなく、横のアーチがあります。外反母趾ではこれらのアーチが崩れて扁平足になり、中ほどにある親指の中足骨が扇状に内側に開き、それから先の指は逆に靴で外側に圧迫されて変形が起きます。
 外反母趾は、親指が小指側に15度以上曲がった状態をいいます。痛みの状態では、①親指の飛び出しを指で押すと痛む ②靴を履いた時痛む ③靴を履いていなくても痛む、に分けられます。靴を脱いでも常時痛むという状態になると、手術の必要性が考えられます。また靴だけが原因ではなく、生活習慣のなかでいくつかの注意点があります。
 外反母趾の方は身体の重心が後にかたよっていて、踵に体重をかけすぎている傾向があります。このため足指が体重を支えなくなり、屈筋(指を握る筋肉)が退化して浮き指になります。
 足の指は手の指と比べて日常生活で握る動作を行なわないので、握る筋肉の必要性が感じられません。しかし足指の筋肉は、体重を支えるために大切なものなのです。この筋肉の低下で、自分でも気付かないうちに身体の他の部分にも負担をかけてしまいます。人間は、重力との調和を効率的に保つことを最優先しています。その重力との調和を最も多くコントロールしているのが足裏なのです。外反母趾などの異常は単に足の悩みだけではなく、そこから膝、股関節、腰、首などへの二次的障害を起こすことにあります。特に首に変形が起った場合は、自律神経失調症やうつ、パニック障害、成人病などを引き起こすことがあります。
 また足指の筋力が退化すると、外反母趾だけではなく足の横幅が広がる開張足、指が浮き上がっている浮き指、親指が反り返っている反り拇指、指が細くなる、などの症状が起こります。開張足などの変形は、指ではなく指の付け根で体重を支えて歩くため、指の付け根のストレスが集積されて、痛みが出たりタコや魚の目が出来たりします。
 ※外反母趾セルフチェックとして、次のうちどれか一つでも当てはまると外反母趾になっていると考えられます。
①合わない靴を無理に履いていると足が痛い
②親指が「く」の字に曲がってきた
③指と指の間に皮膚のトラブルがある
④親指の出っ張ったところが痛くなったり腫れる
⑤足裏にタコができやすい
⑥巻き爪になっている
 ※外反母趾の予防には次のようなものがあります。  
①親指の付け根はフィットして、先はゆったりとした靴を選ぶ
②足の指を使ってできるだけ大きな歩幅で歩く
③つま先をまっすぐ前に向けて歩く
④足に適合しアーチをサポートする中敷きを使用する
⑤足の指のすべてを開く(グー・チョキ・パー)外反母趾体操を行う 
⑥両足の親指に輪ゴムをかけて足先を開く体操をする
⑦親指と人差指の間に装具をはめる
⑧タオルギャザー運動をする 床にバスタオルやスポーツタオルを敷き、足の指の付け根から引き寄せる 指の付け根を深く曲げてしっかりつかむ
⑨親指エクササイズ 足の親指だけを他の指とは逆の動きをさせる
 いつまでも元気で外出し楽しい時間を持てるように、足に合った靴を選び歩き方にも注意して生活しましょう。 
 
   肺炎について  
   平成27年の厚生労働省の統計によると、肺炎は、癌、心臓病に続いて日本人の死亡原因の第3位になっています。小児と同じく高齢者の肺炎は症状が重くなりやすく、回復や完治が困難で死亡率も上がりますので注意が必要です。
 人間が呼吸をするときは、鼻から空気が入り、喉、気管、気管支を通り肺に入ります。空気と一緒に細菌やウイルスなどの病原体が入ると、鼻毛、鼻と喉の粘膜が大きな粒子をとらえます。ここを通り抜けた小さな粒子が気管に入ると、咳をすることで外へ出そうとします。それでも残ったものは、気管支に生えている線毛がとらえ外へ出そうとします。このように、身体の仕組みにより病原体が身体に入るのを防ぐ力を免疫といいます。
 肺炎には肺炎球菌、インフルエンザ菌などの細菌による細菌性肺炎、マイコプラズマなどの非定型肺炎、インフルエンザウイルスなどのウイルス性肺炎があります。
 誰もがかかる可能性のある肺炎は、主にウイルスや細菌が肺に感染して炎症を起こす病気です。ストレスや疲労で抵抗力が落ちたときに感染したり、喘息や糖尿病などの慢性疾患があると発症しやすいといわれています。 
 高齢者の場合感染以外にも、間違って気管に入った食べ物や唾液を咳き込んで気管から出そうとしても、咳が弱くて外に出すことが出来ません。それにより、異物や唾液に含まれる細菌によって誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こしやすくなるのです。
 誤嚥性肺炎を予防するためには、口内の原因菌を少なくし唾液の分泌を良くするために、口内をいつも清潔にするように心がけることが大事です。食事の後は、ひと休みしてから横になる習慣をつけましょう。食べた直後に横になると、胃の内容物が逆流し、誤嚥を起こしやすくなります。
 肺炎は、風邪の症状に加えて次のような症状がみられます。
①38度以上の発熱が3日以上続く…ただし高齢者は発熱しない場合もある
②咳・痰が続く…高齢者の場合、黄色や緑色の痰を伴った激しい咳が出ることがある
③咳をすると胸が痛い
④倦怠感と悪寒がする…咳が出ずに食欲不振や倦怠感・悪寒だけのこともある
⑤息切れ・息苦しさがある
⑥頭痛・筋肉痛・関節痛がある
 肺炎の診断をするために医療機関では、問診の他に聴診器で胸の音を聞きます。肺炎の場合は炎症や分泌物のために気道が狭くなり、独特の雑音が聞こえます。また胸部レントゲン撮影で肺に炎症が認められると、肺炎の診断がされます。その後、抗菌薬を決定するために血液と痰の検査が行われます。
 肺炎の治療には抗菌薬の他、発熱や咳に対処する薬が処方されます。抗菌薬は医師や薬剤師の指示に従って飲み切りましょう。自己判断で薬を中止すると、再び原因菌が活動を始め、症状がぶり返すうえに、いままで効いていた抗菌薬が効かなくなる原因になりますので注意が必要です。ただしマイコプラズマ肺炎は、ペニシリンなど通常の肺炎で処方される抗菌薬が効きにくいことがあります。抗菌薬を服用し数日たっても症状が治まらないときは、主治医に相談しましょう。療養中は、暖かくして安静にすることが大事です。発熱や食欲不振による脱水症状を防ぐために、水分補給を心がけましょう。
 肺炎の予防はインフルエンザと同じく、ワクチン、マスク、手洗い、うがいです。現在日本では生後2ヵ月から9歳までの「小児用肺炎球菌ワクチン」と、成人用の「肺炎球菌ワクチン」があります。乳幼児や65歳以上の方はワクチンの接種をおすすめします。 
 
   危険な外来生物にご注意ください  
   
 8月23日に広島港国際コンテナターミナルで見つかったアリが、強い毒性を持つヒアリであるという新聞発表が25日にありました。すでに尼崎市内、神戸、大阪、名古屋、東京港などでの発見が報道されています。
 ヒアリの原産国は中南米で、そこを起点に米国、カリブ海諸国、中国、台湾、オーストラリアなどへ生息域を広めています。日本への流入は、ヒアリ定着国からの船荷の多さもあり、港湾などの水際作戦に失敗し今後日本国内に定着してしまうのかと懸念されています。 
そこでヒアリを港で阻止できず、内陸部で確認されるという事態を「想定内」として考え、早期発見、早期駆除をめざすことが大事です。ただしヒアリ関連報道は、そのグロテスクな姿と人が亡くなるかもしれないという要素のため、人々に過剰な不安をもたらしかねません。正しい知識を持ったうえでの注意が必要です。
 ヒアリは赤茶色の小型のアリで、スズメバチと同じくらい強力な毒を持ちます。体長は2・5~6㍉で、腹部にある針で刺されると火傷のような激しい痛みが生じ、アレルギー反応によって死に至ることもあります。ハチのように刺した後に針がとれることはないので、続けて7~8回相手を刺すことができます。
 ヒアリの毒にはハチの毒との共通成分があるため、ハチに刺されてアレルギー反応をおこした経験があるなど、ハチ毒アレルギーを持つ人は特に注意が必要です。
 ヒアリに刺されたときの症状は、軽度では、まるで線香の火を押しつけられたと感じるような激しい痛みとかゆみ、腫れがあり、24時間以内に紅斑や膿がでます。中度では、部分的または全身にかゆみをともなう蕁麻疹が現われます。重度になると、声が枯れ、激しい動悸・めまい、呼吸困難や血圧低下・昏睡状態になり、アナフィラキシーショックで死亡することもあります。
 ヒアリに刺されてしまったときの合言葉に、次のことを覚えておきましょう。
 「ひ・あ・り・お・く・や・み」
◇ひ…ひやす 局所を冷やす
◇あ…あらう 毒成分を洗い流す 吸い出すことができればなお良い
◇り…リスクと認識する
◇おく…おくすり 抗ヒスタミン薬、場合によってはステロイドや抗生剤
◇や…やすむ 20~30分間の安静
◇み…みまもる 周囲の人間が刺された人を観察し、アナフィラキシーショック症状が現れたらただちに救急搬送する
 広島県では、ヒアリの他にアルゼンチンアリ(毒はないものの繁殖力が強い)、セアカゴケグモ(攻撃性はなく、素手でさわらない限り噛まれることはないものの、子供や高齢者では発汗や吐き気など症状が重くなることがある)、などの外来生物が見つかり、全国的には、他にハイイロゴケグモ、カミツキガメ、アカカミアリなどが見つかっています。
 現在環境省は、ヒアリを疑うアリを見つけたら、自分で駆除せずに保健所などに通報するように呼びかけています。意外なことにヒアリの天敵は日本のアリで、むやみにヒアリと疑いアリの駆除をしすぎてしまうと、かえってヒアリが日本に繁殖する恐れも考えられます。
 
   漢方薬で夏バテ防止  
  ここ数年、熱中症の患者さんは増加傾向にあります。気象庁発表によると、気温が上昇する5月末頃から発生し8月がピークになります。
 真夏に向けて、人の体は徐々に暑さに慣れていくといいますが、暑さに慣れていない梅雨の合間や梅雨明けは特に体調の管理が重要です。

 熱中症に注意
熱中症は、近年ことさら騒がしくなった病気です。地球温暖化、ヒートアイランド現象、ラニーニャ現象など、その原因も色々議論されています。気象庁の統計によると、日本の平均気温はここ100年あたり1.07℃の割合で上昇し、1990年代以降、高温となる年が多くなっており、環境省が2013年から、7月を「熱中症予防強化月間」と定めたほどです。
熱中症による死亡数はその年の気象条件によって大きな変動が見られますが、1994年を境に大幅な増加傾向にあるといわれています。熱中症の死亡例はかならずしも高齢者ばかりではなく、男性では若年者、青年層からすでにみられ、労働現場での発症が考えられています。一方、女性では70代から急激な増加がみられ、消防庁の調査では毎年7~9月の期間に、全国で5万人以上が熱中症で救急搬送されているので特に注意が必要です。

 熱中症の原因
 気温の上昇が熱中症の主因となっていますが、現代社会の人間は、冬の暖房、夏の冷房と外界環境への対応に不慣れな身体状態になっており、自律性対応調節機能が劣化しています。暑い日は1日中冷房の部屋にいて、外出を余儀なくされると熱風を浴びて自律神経系が混乱し、対応不能に陥ってしまい熱中症を発症することになります。さらに、日常生活の中での熱中症の発症も深刻であり、体感温度感覚の低下から高齢者の室内での熱中症の発症は特に注意を喚起されています。
 熱中症にかかりやすい人は、急激な温度変化への対応が慣れていない人達です。ストールなどを常に持ち歩き、空調に合わせて温度調節することが大事です。また、夕方や早朝などの時間を利用して、徐々に外気温に慣らしていくことも必要です。最近の異常な暑さと過剰な冷房は、特に温度調節がしにくい女性や高齢者に大きな負担となっています。

 熱中症の養生法
 まず水分の摂り方ですが、水分は一度に大量の冷水を摂るのは好ましくありません。高温環境下や運動時、熱中症症状(火照り感や熱失神等)がある場合は、消化器の表面から冷やすことが有効で冷水が必要になりますが、それ以外は、常温以上の水分をこまめにとることが重要です。また冷水で身体を冷やしすぎないように心がけましょう。身体の冷やしすぎは下痢症状をきたすばかりか、熱中症になりやすい体質に変えてしまいます。
 食事でも冷たい冷奴や素麺などが続くと、身体を過剰に冷やすことに繋がります。温かいお茶やスープなどを飲むことを生活に組み込んでみましょう。また夏野菜を摂ることで、身体の熱を適度に冷ますことも重要です。トマトやキュウリ、ナス、レタス、西瓜などを積極的に摂取しましょう。

 身体の冷やしすぎに注意
 この季節は暑さのためにエアコン等で「冷え」を起こしやすくなる季節でもあります。また、冷たい飲み物や食べ物を摂りすぎてしまう傾向があるので注意が必要です。また、甘い飲み物を飲みすぎると、糖分を分解するために身体の電解質バランスが崩れます。なるべく糖分の少ないものを摂るように心がけましょう。いわゆるクーラー病と言われる症状には漢方薬が有効なことが多く、「五積散(ごしゃくさん)」という漢方薬が役立ちます。

 バテに注意
 人間は高温多湿の環境下では体力が消耗します。食欲が落ちて体重が減ったり、体温調節がうまくいかず、身体に熱がこもって微熱が出たり、なんとなく倦怠感があったりと、体調の悪化が心配されます。熱中症のような急激なダメージはないのですが、生活の質が著しく落ちてしまいます。対策としては、「睡眠をしっかり取る」「身体を冷やしすぎない」「こまめに水分と塩分を取る」ことが挙げられますが、このような症状にも漢方薬が非常に有効になります。

 夏バテに有効な漢方薬
 主な症状である「倦怠感」「食欲低下」「気力の低下」には、「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」という漢方薬が有効な場合があります。少し苦味はありますが、子供からご高齢の方まで幅広く使われています。清暑益気湯の構成されている生薬には人参が入っていますが、これは高麗人参のことです。人参には滋養強壮の効果があり、英気を養うとともに消化機能を整えます。「麦門冬(ばくもんどう)」と「五味子(ごみし)」という生薬も、身体を潤し体温の過剰な上昇を抑える効果があります。服用後30分に平均0.6℃体温が低下したというデータもあるそうです。厳しい夏を元気に乗り越えるためにも、一度医師にご相談ください。
 
   ロコモティブシンドロームとは  
    テレビなどでロコモという言葉を聞かれたことはありませんか? ロコモとはロコモティブシンドローム(運動器症候群)の略で、平成19年、日本整形外科学会が、超高齢化社会、日本の未来を見据えて提唱したものです。ロコモの提唱には、「人間は運動器に支えられて生きている。運動器の健康には、医学的評価と対策が重要であるということを日々意識してほしい」というメッセージが込められています。
 ロコモティブとは「運動の」という意味で、「機関車」という意味もあります。能動的な意味合いをもつ言葉で、運動器は広く人間の健康の根幹であるという考えを背景とし、年齢に否定的なイメージを持ち込まないことが必要だとされています。
 ロコモは筋肉、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数支障が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下し、転びやすくなるなどして介護が必要になることへの警告を含んでいます。自覚症状もないのに骨量が減っていたり、左右の足のバランスが悪くなっているということに覚えのある方も多いのではないでしょうか。運動器は連動して動いています。一カ所が悪くなると、全体に影響を及ぼしてしまいます。
 ロコモの原因には「運動器自体の疾患」と「加齢による運動機能不全」があります。運動機能自体の疾患としては、変形性関節症、変形性脊椎症、関節リウマチなどで、痛みや筋力低下、麻痺により運動能力、バランス能力、移動能力の低下をきたします。加齢による運動機能不全では、身体機能の衰え、筋力低下、持久力低下、バランス能力低下などにより「閉じこもり」が起こり、ますます運動不足を招きます。高齢の方は、加齢や運動不足に伴う身体能力の低下、運動器疾患による痛みなどの多様な要因が負の連鎖を呼び、バランス能力、体力の低下をきたし、立って歩く、衣服の着脱、トイレなどの最低限の日常生活さえも自立して行えなくなり、「健康寿命の短縮」「寝たきり」などの要介護状態になってしまいます。
 ロコモは静かに進んでいきます。年齢が若くても「ロコモチェック」をしてみましょう。
①片足立ちで靴下がはけない
②家の中でつまずいたりすべっ たりする
③階段を上がるのに手すりが 必要である
④横断歩道を青信号のうちに渡りきれない
⑤15分くらい続けて歩けない
⑥2㎏程度の買い物(1リット ルの牛乳パック2個程度)を 持ち帰るのが困難である
⑦家でのやや重い仕事が困難で ある(掃除機をかける 布団の上げ下ろしを するなど)
 このうち一つでも当てはまればロコモが疑われますので、専門医によるメディカルチェックを受けてみましょう。それでロコモと診断されたら、医療施設でのリハビリが必要な場合があります。それ以外でも、定期的に医療機関でチェックを受け、ロコモトレーニングの指導を受けましょう。ロコモと診断されない場合でも、予防のために自宅で行える次のような軽いトレーニングを続けましょう。
〇素足になり足の指でタオルを引き寄せる
〇ゆっくりスクワットをする 両手で机につかまり行って もよい
〇片足又は両足をわずかに上 げて立つ
〇安定した椅子に腰かけ、足を浮かせて膝を伸 ばして前に出す そのまま4~8秒間数えゆっ くり下ろす 2~4セット行う
 これらのロコモトレーニングは、効果を出そうとして無理に行うことは禁物です。痛みや腫れが出たらすぐに中止しましょう。
 いつまでも自分の足で歩き続けていくために、運動器を長持ちさせ、ロコモを予防し健康寿命を延ばしていきましょう。
 
 
   知られざる亜鉛の効果  
    亜鉛、と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。鉛に近そうだから金属? 合金や電池に使われることもあるのを知っている方もいらっしゃるかと思います。
 実は、亜鉛は身体の様々な機能を維持していくために必要なミネラルでもあります。人の身体の中の亜鉛は、体重70㎏の人でわずか2g程度と非常に微量にしか存在しません。しかしながら亜鉛は身体の様々な臓器に存在し、生命活動に不可欠な成分であることが知られています。
 そのため亜鉛が不足してしまうと、場合によっては様々な症状が現われます。鉄が不足したら貧血になるように、亜鉛が不足してしまうと身体にとって都合が悪くなる、というわけです。
 亜鉛の不足による具体的な症状としては、「味覚障害」「傷が治りにくい」「皮膚炎」「脱毛」「口内炎」「食欲低下」「発育障害(身長の伸びが悪い)などなど多岐にわたります。
 「味がわからない」「味がおかしい」など味覚の異常に悩む味覚障害ですが、その症状は大きく2つに分けることができます。1つは何を食べても「味が薄く感じる」、もう1つは「味が全くわからなくなる」ことです。そのほかにも、「いつもと味が違う」「本来の味とは違う味に感じる」「口の中に何もないのに味がする」「食べ物や飲み物が嫌な味に感じられる」などの異常を感じる人もいます。
 そういった味覚の異常によって食事の楽しみや満足感が得られなくなり、生活の質が低下してしまいます。また、食欲がなくなり体力や抵抗力が落ちたり、塩分や糖分の摂り過ぎにつながり、生活習慣病を悪化させるおそれもあります。
 味覚障害は、多くは味を感じる舌に問題があります。舌の表面にある乳頭という無数の突起の中には、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味のすべてを感知する味蕾(みらい)という小さな器官がたくさん存在しています。その味蕾の新陳代謝に必要なのが亜鉛です。食生活の乱れなどで亜鉛が不足すると、味蕾が再生しにくくなることで味覚に異常が現われてきます。
 また、亜鉛は皮膚の新陳代謝や組織を修復する場合にも必要になります。そのため傷が治る過程においても亜鉛が重要であるといわれています。また、亜鉛は人の身体において、皮膚の蛋白質をつくるのに関わっています。そのため
亜鉛が不足することで皮膚炎になったり、毛包周辺の皮膚障害により脱毛を引き起こす可能性があります。
 亜鉛が不足する要因としてはいつくか考えられます。そのうちの1つは加齢です。亜鉛は主に小腸や十二指腸から吸収され、汗や尿、便から身体の外へ排泄されていきます。亜鉛が排泄される量は年齢による違いは見られませんが、吸収される量は、高齢になると低下することが知られています。また、食事の量が減ることによる亜鉛の摂取量の減少も理由の1つとして考えられます。
 また、その他の疾患により亜鉛が不足することもあります。糖尿病や肝疾患、腎不全といった疾患を抱えた方では、血液中の亜鉛の量が低下しやすいことが指摘されています。また、もちろん食生活の偏りによっても、亜鉛は不足してしまう可能性があります。
 厚生労働省による国民健康・栄養調査において、男性・女性ともに20歳以降での平均亜鉛摂取量は、推奨量と比べてやや少なく、摂取不足気味であることが明らかになっています。
 不足してしまった亜鉛を補うには、食事や薬から亜鉛を補充する必要があります。食品では牡蠣・豚レバー・牛肉・ウナギ・チーズ・ナッツ類・大豆・納豆などに亜鉛が多く含まれていますので、こういった食品を積極的に摂ることが大切です。薬の服用では、事前に亜鉛が不足しているかどうかを検査する必要があります。
 
    不整脈について  
    「不整脈」とは、心臓の拍動のリズムが不規則になった状態のことです。心臓は筋肉でできていて、1分間に50~100回くらい収縮し体内に血液を送っています。心臓は頭で考えて動かしているわけではなく、心臓の右上にある弱い電気を出す洞結節(どうけつせつ)というところから出る電気が心臓の中を流れ、その電気に反応して心臓が収縮しているのです。
 不整脈は、脈が異常に速くなる「頻脈(ひんみゃく)」と、遅くなる「徐脈(じょみゃく)」、電気の生じる場所以外から早めに刺激が出てくるために起こる「期外収縮」に分けられます。また運動や体温の上昇でも脈は速くなりますが、これらの脈の変化は病的なものではなく生理的な反応といえます。
 特に危険な不整脈は頻脈性の「心室細動」で、心室が細かく震えて心臓の機能が失われ、放置すると死に至ります。また「心室頻脈」では脈が1分間に120回以上になり、心室細動に移行して突然死することがあります。
 また心房で起きる「心房細動」は脈がばらばらになる不整脈で、自分で脈に触れてみると脈が乱れている、もしくはうまく脈がはかれない場合が多く、加齢にともない増加します。それ自体は命に関わることはないのですが、心臓の中に血のかたまりができて脳梗塞の原因となります。
 期外収縮は脈の飛ぶ感じや胸部の不快感、胸の痛みとして感じます。ただしこの痛みは胸の狭い範囲で起こり、一瞬または数秒以内でおさまるのが特徴です。胸痛があると狭心症や心筋梗塞ではないかと心配になりますが、それらの痛みはもっと長く続きます。期外収縮による胸痛は脈が飛んでいることで判断できます。脈が飛んでいると、心臓が止まっているのではないかと誤解しやすいのですが、平常より脈が弱く打つので飛んだように感じるのです。
 不整脈の症状として、「何もしていないのにふうっとする」「急に意識がなくなり失神する」という場合は危険です。一時的に心臓が止まっているか、極端な頻脈が起きている可能性があります。この場合はできるだけ早く受診して、その原因を調べ治療をする必要があります。
 また「脈拍数が1分間に40以下で、身体を動かす時に強い息切れを感じる」場合は、脈が遅くなりすぎて心不全を起こしている可能性があり、ペースメーカー治療が必要になることがあります。
 次に注意すべきは突然始まる動悸です。「脈拍数が1分間に120以上で、突然始まり突然止まる」、または「まったく不規則に打つ」ものは病的な頻脈と考えられます。多くは脈拍数が150から200前後になり、血圧が下がり脈が触れにくく、息苦しくなって冷や汗が出ます。この頻脈が心室から出ている場合は、血液は心室から直接全身に送り出されているので、ここで不整脈が続くと全身に血液が回らないことになります。1分間に150以上の頻脈が続く場合は緊急の治療が必要です。
 一方たまに脈が飛ぶ程度の人や症状のない徐脈は、心配のないことがほとんどです。安静にしている時に起こる頻脈のうち、数十秒から数分のうちに脈が速くなるが、脈拍数は120までで、その後徐々に遅くなる場合も、たいていは病的ではありません。自分は心臓が悪いのではないかという不安感から、精神的な興奮で脈が速くなったり、息をし過ぎる過呼吸から起こることがあります。
 日常生活では、アルコールや煙草、コーヒーなどに含まれるカフェインの他、ストレスや過労、睡眠不足などの不規則な生活習慣は不整脈の原因となりますので注意しましょう。
 不整脈は治療の必要のないものもありますが、症状が生活に支障をきたしたり、突然死の引き金になるもの、心不全や脳梗塞の原因になるものなど、症状も生命予後に与える影響もさまざまです。不整脈を感じた場合は、何が原因なのか、心臓病がないかを心電図検査などで確認することが大切です。
                    
 
    湿疹とじん麻疹  
    湿疹とじん麻疹は同じように皮膚の病気で、かゆみなどの症状が似ています。しかし原因や治療は異なります。
 湿疹はかゆみを伴う紅いブツブツが身体の一部に現れることが多く、数日から1週間以上症状が続きます。原因は金属などの刺激物の接触による場合、皮膚表面がこすれた場合、内服薬などにより身体の内側から起こる場合があります。
 刺激物となる金属には、指輪、ネックレス、イヤリング、ピアス、腕時計などに含まれるニッケルやコバルトなどがあります。またウルシや銀杏などの植物、手袋や下着に使われているゴム類、洗剤に含まれる界面活性剤、化粧品に含まれる化学物質なども原因となります。
 一方じん麻疹の原因には、食べ物、食品添加物、抗生物質などの薬剤、植物、虫、感染症、物理的刺激、運動、発汗などさまざまです。
 じん麻疹という病名は、人がイラクサ(蕁麻)の葉に触れると現れる皮膚症状に似ていることからつけられました。
 人間の皮膚の表面には角層(表皮の最外層)があり、外部の刺激物などの侵入から身体を守る役目をしています。角層の下に表皮と真皮がありますが、真皮にはじん麻疹の原因となるヒスタミンなどを蓄えている肥満細胞(マスト細胞とも呼ばれます)があります。
 肥満細胞から何らかの刺激を受けると、ヒスタミンなどが放出されます。このヒスタミンが皮膚の毛細血管に作用すると、血液成分が血管外にもれ、皮膚にミミズ腫れ、 ブツブツ(膨疹)、紅斑(赤み)が生じ、皮膚に存在する神経に作用してかゆみを生じます。
 じん麻疹は皮膚の一部に紅い膨らみができてかゆくなりますが、数十分から数時間で消えるのが普通です。(短時間のうちにたくさんの膨疹が全身に出るじん麻疹もあります)。膨疹は2~3㎜の円形、楕円形のものから、直径10㎝以上の地図状のものまでさまざまです。1カ所にできたかと思うと消え、またべつの場所に出てくるというようなこともあります。症状が重い場合は次々と新しい膨疹ができ、広い範囲に広がることもあります。かゆみと共に、チクチクとした痛みや焼けるような痛みを感じることもあります。また、まれにまぶたや唇などが腫れたり、気道や粘膜が腫れ、息苦しさや下痢などの消化器症状を起こすことがありますがそのような場合は危険ですので必ず受診しましょう。
 湿疹の場合は、症状が持続しながら悪化します。最初に現れるかゆみを伴った紅いブツブツは、症状が進むと大きな水泡になります。水泡はやがて破れ、皮膚の表面がジュクジュクしてきます。この症状を繰り返すうちに皮膚は厚く、かゆみは強くなります。かゆみに我慢できなくてかいてしまうと、さらに悪化するのです。
 じん麻疹には、食品や寒冷刺激など原因がわかっているものもありますが、思い当たる原因もなく、症状を繰り返す場合もよくあります。
最初の症状が現れてから1ヵ月以内のものを急性じん麻疹、1ヵ月以上続くものを慢性じん麻疹といいます。慢性じん麻疹はほとんどの場合、原因がわからないまま経過します。慢性じん麻疹の多くは、夕方から夜にかけて現れ、翌朝から翌日の午前中には消え、また夕方から現れるということを繰り返します。自覚症状が皮膚に限られている場合は、何カ月から何年か続いた後、おさまることが多いと考えられています。
 接触性皮膚炎の湿疹の場合の検査法は、「パッチテスト」を行います。パッチテストは背中や腕に検査する物質を貼り付け、2日後にはがして1時間後と翌日に判定します。陽性であれば皮膚が紅くなります。原因は複数あることがあります。湿疹は皮膚科を受診して原因物質まで調べることが大切です。じん麻疹では診察のときに症状が現れていなくても、問診で診断ができます。
 湿疹の治療として重症の場合は、ステロイドの外用薬(塗り薬)を使います。ステロイド薬は効果の強さによって5段階に分けられています。湿疹の症状に応じて、効果の違うステロイド薬を使い分ける必要があるので、必ず医師の指導にしたがうようにします。症状が重い場合はステロイド薬と保湿剤を併用することもあります。抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を内服することもあります。軽症の場合は保湿剤だけで治療します。
 じん麻疹の治療には肥満細胞から放出されるヒスタミンの働きを防ぐ、抗ヒスタミン薬の内服、または注射が行われます。また抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬を使うこともあります。
 日常生活の注意点としては、湿疹もじん麻疹も発症するきっかけをできるだけ避けることです。じん麻疹で食べ物が疑われる場合は、食物日記をつけてじん麻疹が出たときに摂取したものを記録しておきます。蕎麦やナッツ類のアレルギーなど少量でも重症になるものは、摂取しないように注意します。湿疹の場合の入浴はかゆみを刺激しないようにぬるいお湯で短めにします。直接肌に触れる下着類は肌に優しく刺激の少ない木綿製がよいでしょう。
 じん麻疹は防腐剤や色素などの食品添加物をできるだけ避け、魚介や肉類は新鮮なものを摂取するようにし、疲労やストレスなどをためないようにすることが大切です。   
 
    乾燥肌について  
    気温が下がり空気が乾燥するこれからの季節、乾燥肌の悩みを持つ方は多いでしょう。
 乾燥肌は気温や湿度の低下が主な原因です。暑い夏の季節、人の身体は全身に血液を巡らせて汗をかき体温を下げようとします。一方冬は気温とともに体温が下がり始めると、血管を収縮させ体温が奪われるのを防ごうとします。その結果肌表面や手足などの末端に血液が行き渡らなくなります。寒くなると手足がかじかむのはそのためです。血流が悪くなると身体のすみずみまで栄養が行き渡らなくなり、健康な肌を作る機能が低下し、肌のうるおいの元となる皮脂の分泌が減少して乾燥肌の原因となります。
 季節的な変化に加え、加齢も原因のひとつとなります。肌のうるおいの元となる皮脂が年齢とともに減少し、特に高齢者は肌が乾燥しやすくなります。また、①顔や身体を洗い過ぎる、水を使うことが多い ②煙草を吸っている ③食事をファーストフードなどで簡単にすませ栄養素が偏っている ④生活が不規則で充分な睡眠を確保できていない、といった生活習慣も乾燥肌を悪化させてしまいます。
 乾燥してカサついた肌には、まず保湿剤を使ってうるおいを与えることです。毎日こまめに塗る習慣をつけましょう。近日、やわらかい泡状でよく伸びしっとりした使用感の、ノンガススプレー・皮膚保湿剤が発売されます。詳しくは当院医師にご相談ください。
 しかし保湿剤は肌の乾燥が初期の場合は適していますが、かゆみが強いとつい掻きすぎてしまい、掻くことが刺激になり炎症を起こし、またさらにかゆくなるという悪循環に陥ります。赤み、ひび割れなどの急性湿疹を生じると、皮脂欠乏症湿疹と呼ばれ医師の治療が必要になります。放置すると、夜中に目が覚めるほどのかゆみから、かきむしるようになり、皮膚がごつごつした慢性湿疹に変化してしまうことがあります。また乾燥すると通常弱酸性に保たれている皮膚がアルカリ性に傾き、細菌が繁殖しやすくなります。髪や衣服が触れる程度の軽い刺激でかゆみを感じる、使い慣れた化粧品で赤くなるなど刺激に対して敏感になります。
 乾燥している皮膚には、乾燥を悪化させないような生活習慣をする必要があります。いくら保湿剤で皮膚にうるおいを補っても、原因となる生活習慣を見直さなければ乾燥肌の改善は困難になります。
 まず冬は特に肌の洗いすぎに注意しましょう。肌を清潔に保つことは大切ですが、洗いすぎは皮脂を洗い流し、洗浄剤が刺激となってトラブルを起こすこともあります。顔や胸、上背部などは比較的皮脂が多く分泌されていますが、すねや背中などは乾燥しやすい部位です。洗浄剤を使いすぎたり強くこすったりしないように注意しましょう。エアコンを使用するときには、適切な温度設定にし、身体に直接温風が当たらないようにしましょう。加湿器などを使うこともよいでしょう。冬場には暖かで便利な炬燵や電気毛布、ホットカーペットですが、それらは使用中は常に熱源が身体に触れている状態です。熱源が身体に触れている間は身体が汗をかくため、長く使用すると、その間にどんどん体内から水分が奪われ乾燥を引き起こします。電気毛布は事前にスイッチを入れて温めておき、就寝時はオフにし、炬燵やホットカーペットは長時間の使用を避け寝ないように注意しましょう。
 皮膚には身体の内側から材料となる栄養素をバランスよく補給し続けることが大切です。健康な皮膚を作るため、コラーゲンの材料となる蛋白質やビタミン類が役にたちます。さらに汗をかく機会が少ない冬は水分の摂取が少なくなりますが、暖かい飲み物などで水分を充分摂るように心がけましょう。運動不足により新陳代謝が落ちると、体内の老廃物がたまり肌にうるおいが行き渡らなくなり、肌のバリア機能も失われます。老廃物を流してくれるようなじんわりとした汗をかくことがポイントです。軽いウォーキングやストレッチがよいでしょう。運動の後は、水分補給を忘れないようにしましょう。 
 
    大動脈弁狭窄症とは  
   心臓は血液を全身に送るポンプの働きをしています。内部は4つの部屋に分かれていて各部屋を逆流しないよう、部屋と部屋の間には弁と呼ばれる扉がついています。このうち、全身に血液を送り出す左心室の出口にある半月形をした膜が3枚合わさってできた弁を大動脈弁といいます。この大動脈弁の性質が硬化し血液の通過できる面積が狭くなるのが「大動脈弁狭窄症」で心臓弁膜症の一つです。
 原因としては先天性やリウマチ性がありますが、最近では高齢者の弁の変性や石灰化によるものが増えています。あまり運動をしない高齢者は、特に症状に気づきにくいので注意を要します。
 大動脈弁狭窄症があっても無症状のことが多く、狭窄の程度が進み、心臓の余力がなくなってはじめて様々な症状が出てきます。大動脈弁狭窄症は自然に治ることのない病気です。自覚症状が出たときにはすでに重症化していることが多いので、進行する前に治療を受けることが大切です。
 代表的な症状は、運動時や階段を昇ったときに現れる狭心痛(胸の痛み)、身体を動かすときに心拍出量が低下し脳血流が減ってしまうために起きる失神、体動時の息切れ、息苦しさや夜間発作性呼吸困難、めまい、両足のむくみなどの心不全症状があります。
 このような症状が出現した場合は、その後の経過は急速で、数年以内に命を落とすことも多いとされており、早急な対応が必要です。また突然死を起こすこともあり、慎重な経過観察と適切なタイミングでの治療介入が重要になります。無症状の場合であっても、弁の状態が重症で今後の進行が予想される場合には治療が必要と診断されることもあります。
 検査法には聴診(心音)、心電図、胸部X線撮影、心エコー(超音波)がありますが、診断は主に心エコー検査によって行います。心エコー検査は身体の表面から行う検査で、患者さんの負担が少なく、繰り返して行うことができるため、大動脈弁狭窄症の経時的な進行を知ることも可能です。
 治療は中等症以下の場合は、定期的な心エコー検査と感染性心内膜症の予防で十分ですが、狭窄は徐々に進行するので注意が必要です。重症の弁狭窄であっても、無症状で心機能が正常な場合は、半年から1年ごとの定期的な心エコー検査で経過観察をします。ただし激しい運動や労働は避けます。
 重症の弁狭窄症で大動脈弁狭窄症による症状があったり、心機能が低下してきている場合は、薬物治療ではなく外科手術が勧められます。従来の外科手術は心臓と肺の機能を代行する人工心肺を使い、胸部を開いて心臓を切開し、悪くなった弁を人工弁に取り換える置換術ですが、
高齢者には負担が大きく、持病がある場合など手術が困難な人も少なくありませんでした。
 そこで最近注目されているのが、経カテーテル大動脈弁治療です。脚の付け根や肋骨の間からカテーテルを入れ、折りたたまれた状態の人工弁付きの編み目の筒(ステント)を心臓に運び、人工弁を留め置く治療法です。身体への負担が少ないため回復も早く、入院期間も1週間程度と比較的短くてすみます。
 動悸、息切れ、疲れやすさ、めまい、胸痛などの症状に気づいたら、早めに受診されることをお勧めします。
 
    腎臓病について  
    腎臓は、そら豆のような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、おへその少し上あたりの背中側に左右対称に2個あります。そら豆のくぼんだところは空洞になっていて、血管(腎動脈・腎静脈)や尿管がつながっています。心臓から出た血液の一部は腎動脈を通って腎臓の中に運ばれ、ろ過されたあと、腎静脈を経て心臓に戻ります。ろ過された老廃物や余分な成分は尿になり、腎盂というじょうごのような器官で受け止められて尿管に入り膀胱へ運ばれます。
 腎臓の主な働きは、①老廃物を身体から追い出す ②血圧を調節する ③赤血球を作る ④体液量・イオンバランスを調節する ⑤活性型ビタミンDを作るなどがあります。
 腎臓病の種類には原発性と続発性があります。原発性の腎臓病とは、腎臓それ自体に何らかの問題がおきて病気になるもので腎臓の部位に炎症がおこる腎炎が代表的です。続発性の腎臓病とは、腎臓以外の病気が原因となって腎臓の機能に障害が出るものです。糖尿病が原因の糖尿病性腎症、高血圧が原因でおこる腎硬化症、痛風が原因でおこる痛風腎があります。
 また腎臓病には急性と慢性があり、急性の腎臓病とは、症状が急激に出て、時間や日にちの単位で悪化します。急性糸球体腎炎が代表的です。あっという間に腎機能が悪化し尿がまったく出なくなることもありますが、多くは治療で改善し回復することが可能です。
 一方慢性の腎臓病はゆっくり静かに進行し、初期には自覚症状がほとんどありません。それが慢性腎臓病の恐いところです。そして腎臓は、一度あるレベルまで悪くなると自然に治ることはありません。放置しておくと進行して取返しのつかないことになる場合もあります。現在日本では慢性腎臓病の患者さんは、20歳以上の成人の8人に1人はいるとされ、新たな国民病ともいわれています。
 腎臓病の症状は、①尿の異常…尿が濁る・くすんだ赤色になる・泡が立つ、薄い尿が頻繁に出る多尿・尿が少ししか出ない欠尿・ほとんど出ない無尿など ②むくみ(浮腫)…腎臓病でむくみが出やすいのは足と顔です。すねの骨の部分を指で押してみて、くぼんだ部分がなかなか元に戻らなければむくみと考えられます ③高血圧 ④貧血 ⑤痛み…まれに背中・腰・腹部・わき腹などの痛み ⑥発熱があります。
 日常生活の中で、腎臓に負担をかける主なものはたんぱく質と塩分です。栄養素のうち炭水化物と脂肪は、体内で燃えると二酸化炭素と水に変化し、息や汗や尿として外に出るので老廃物はほとんど出ません。一方たんぱく質は、燃えると尿素窒素や尿酸などの身体に有害な物質になります。腎臓はその有害物質の処理を一手に引き受けます。また血液中に塩分(塩化ナトリウム)が増えると、腎臓は余分な塩分を尿として排出しようと働きます。そのため、たんぱく質や塩分を摂りすぎると腎臓の負担が増えるのです。
 腎臓病は生活習慣病と大きく関わっていますので、予防には規則正しい食事と適切なエネルギーコントロールが重要です。まず暴飲暴食をしないことが一番です。減塩を意識して料理の味付けは薄味にし、出汁や薬味を活用しましょう。また野菜はたっぷり摂りましょう。毎食100g以上の野菜を食べる工夫をします。100gの野菜とは、一食分の見た目の目安は、生野菜では両手に乗る量、茹で野菜なら片手に乗る量と覚えましょう。ただし腎障害が進行した状態では、高カリウム血症になる危険があり野菜は制限します。
 腎臓病の治療は弱っている腎臓を保護することです。安静・保温・食事療法・薬物療法が主体となります。腎臓病を早期に発見するために必要なことは、定期的に健康診断を受け、尿や血圧の検査を受けることです。

 
    熱中症にご注意ください  
   人間の細胞は、ある一定範囲内の温度でなければ活動できません。そのため気温が高いときは汗をかき、体温が一定の範囲より上昇しないように調節します。
 汗には塩分(ナトリウム)やカリウムなども含まれ、大量に汗をかくと、水分だけではなく、これらも身体の外に出てしまいます。体内のナトリウムやカリウムは電解質(イオン)となり、筋肉の収縮や神経の伝達など、身体のさまざまな機能の維持にかかわります。そのため汗をたくさんかくと、それ以上電解質を失わないように汗が止まり、体温調節ができなくなって熱中症がおきます。
 熱中症がおきやすいのは、太陽が照り付ける暑い日だけとは限りません。8月の日中、最高気温が高くなった日に患者数は増加しますが、6月後半から7月の梅雨の晴れ間や、梅雨明けの蒸し暑くなる時期にも注意が必要です。この時期は身体がまだ暑さに慣れていないため上手に汗をかけず、体温をうまく調節できないからです。
 熱中症にはさまざまな症状があります。めまいやふらつきなど熱中症の初期症状に気付いたらすぐ休まなければなりませんが、もともと体調が悪いために頭痛や倦怠感を感じている方は、熱中症になっても気付かないことがあります。また熱で意識がもうろうとしてきて、自分の状態を判断できないまま急に意識を失う場合もあります。
 次のような症状は熱中症にかかっている危険性があります。
①めまいや顔のほてり…めまいや立ちくらみ、顔がほてるなどの症状がでたら熱中症のサインです。
②筋肉痛や筋肉のけいれん…「こむら返り」と呼ばれる、手足の筋肉がつるなどの症状がでることがあります。筋肉がピクピクとけいれんしたり硬くなることもあります。
③身体のだるさや吐き気…身体がぐったりとし力が入らない。吐き気や嘔吐、頭痛を伴う場合もあります。
④汗のかき方がおかしい…ふいてもふいても汗が出る。もしくはまったく汗をかいていないなど、汗のかき方に異常がある。
⑤体温が高い・皮膚の異常…体温が高くて皮膚を触るととても熱い。皮膚が赤く乾いているなど。
⑥呼びかけに反応せず、まっすぐ歩けない…声をかけても反応しなかったり、おかしな返答をする。または身体がガクガクとひきつけをおこしたり、まっすぐに歩けない場合。
⑦水分補給ができない…呼びかけに反応しないなど自分で水分補給ができない場合は危険な状態です。むりやり水分を口から飲ませることは止めすぐ医療機関を受診しましょう。
 同じ環境にいても、高齢者や乳幼児の方が熱中症にかかりやすくなります。高齢になると脂肪がつきやすくなる分、身体の中の水分の割合が少なくなります。また高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくく、水分をうまく摂ることが難しいのです。
 高齢者の熱中症の特徴として、室内で多く発生していることがあります。部屋の温度が上がらないように工夫したり、室温をチェックしましょう。暑い日にはこまめに水分補給をし、シャワーやタオルで身体を冷やしたり、涼しい場所や施設を利用しましょう。乳幼児は大人より新陳代謝が活発で体温が高いのが特徴です。しかし大人と比べて汗腺の発達が未熟なため、うまく体温調節をすることが出来ません。炎天下の車中など体温よりも周囲の温度が高くなる場所では短時間で体温が上がり生命に危険が及びます。
 水分補給は夏冬関係なく1年を通して、常温あるいはぬるま湯に近い状態の摂取が望まれます。また市販のスポーツ飲料を飲むときは糖分濃度を確認し、高い場合は水で薄めて飲むと身体への吸収が早くなります。熱中症予防の飲み物を自分で調整するには、1リットルの水に砂糖大さじ4杯、塩小さじ半分、レモン汁大さじ2杯で作ることができます。
 
    過敏性腸症候群とは  
   過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)とは、腸の検査や血液検査で明らかな異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感をともなう下痢や便秘が続く病気です。命にかかわる病気ではないのですが、日常生活の質を著しく低下させます。消化器科を受診する人の3割がこの病気という報告もあり、日本を含む先進国に多く、日本人では10~15%がかかっているといわれています。便通の状態により「下痢型」「便秘型」「交代型」に分類されます。
 下痢や便秘というお腹の不調は日常生活でしばしば経験することで、あえて病院に行くほどでもないと軽く考えてしまいがちですが、「1日に何度もトイレにかけ込む」「トイレが心配で外出するのが不安」「会社や学校に行きたくない」というほど悩んでしまう状態は、早めの適切な治療が必要です。下痢や便秘の症状があっても、過敏性腸症候群だと思わずに市販薬を服用する人が多いのですが、市販薬は症状を緩和してくれる半面、常用していると身体が薬に慣れてしまい効きにくくなります。
 過敏性腸症候群の主な症状は、腹痛、もしくは腹部不快感と便通異常です。腹痛は左下腹部に多くみられますが、部位が一定しないものも少なくありません。腹痛の性状は発作的に起こる疝痛(さし込むような痛み)、または持続性の鈍痛のいずれかで、便意をともなっていることが多く、排便後に一時的に軽快する傾向があります。一般的に食事によって誘発され、睡眠中は症状がないという特徴があります。その他、腹部膨満感、腹鳴(おなかがゴロゴロ鳴る)、放屁などのガス症状も多くみられます。また、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如などの消化器以外の症状もみられることがあります。
 診断の第一段階は特徴的な自覚症状のパターンから、まずこの病気を疑うことです。次に似たような症状を示す他の病気(腸のポリープ、がん、憩室、潰瘍性大腸炎、クローン病などの器質的疾患)がないことを検査で確認します。
 自覚的症状からの診断方法として、ローマ基準という世界的に標準化された診断基準があります。
①排便によって軽快する腹痛や腹部不快感、または排便回数もしくは便の硬さの変化をともなう腹痛。または腹部不快感
②次の症状の2つ以上をともなう排便障害…排便回数の異常、便性状の異常、便排出異常、粘液の排出、鼓脹(こちょう)または膨満感
①および②の症状が3カ月以上存在する場合に基準を満たすと判定します。
 腹部の診察ではとくに左下腹部に圧痛を認めることが多く、特に圧痛のあるS状結腸を触知することがあります。検査としては、血液生化学検査、尿一般検査、便潜血検査が一般的です。50歳以上ではじめて発症した場合や、発熱、3キロ以上の体重減少、直腸出血がある場合は、大腸内視鏡検査もしくは大腸バリウムによって器質的疾患を除外する必要があります。
 過敏性腸症候群は腸に異常がないのに、何故痛みや不快感、便通異常が起こるのでしょうか。その原因は複数あるといわれますが、最近の研究から腸内細菌が誘因であることがわかってきました。過敏性腸症候群の人は、そうでない人と比べて腸を拡張する刺激に対して敏感に反応します。その原因のひとつとして、腸内細菌のバランスが崩れることにより悪玉菌が増え、腹痛や不快感という知覚過敏が起きやすいということがあります。悪玉菌を減らし善玉菌を増やすには、乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルトの摂取、肉食に偏らず野菜、キノコ、海藻類などの摂取、睡眠不足、運動不足を改善することです。
 腸と脳は密接な関連があり、お互いに情報を伝え合って機能しています。腸は第2の脳ともいわれます。脳の中枢神経は、腸の運動や分泌、免疫機能、血液の流れなどを調節し、腸からも脳に情報が伝達されています。ストレスを感じると脳から腸へとその情報が伝えられます。すると腸の運動を亢進させるだけではなく、腸内細菌のバランスにも影響を及ぼすのです。
 過敏性腸症候群の治療の第一ステップは、食事と生活習慣の改善です。昼夜逆転や夜型の生活スタイル、不規則な食生活、睡眠不足などは脳の働きに影響し症状を増悪させます。
 食事療法として、下痢型の場合は、香辛料や冷たい食べ物、脂っこいもの、アルコールを控えることです。繊維質の少ない野菜で、できるだけ胃腸に負担をかけない食品をよく噛んで食べるようにしましょう。便秘型の場合は、腸の働きが鈍くなって起こる一般的な便秘と違い、ストレスなどの原因による痙攣性の便秘になるので、腸のぜん動運動をうながすような食事は避けなければなりません。いんげん豆、小豆、おから、エリンギ、えのき茸、切り干し大根などの不溶性食物繊維はぜん動運動をうながすために避け、アボカド、オクラ、山芋、納豆、林檎、海藻類など水溶性の食物繊維を摂るようにしましょう。冷たい飲み物は避け、カフェインを含むコーヒーや紅茶の飲み過ぎに注意しましょう。
 過敏性腸症候群の原因となるストレスをため込まないように、趣味に没頭する時間や休息を意識してとったり、家族や友人とのコミュニケーションの時間をとるなど、自分がリラックスする方法をみつけましょう。過度に身体に負担をかけないストレッチやウォーキングなど、軽い運動を生活に取り入れることも大切です。
 薬物治療が必要な場合は、高分子重合体(コロネル、ポリフル)、消化器運動調節薬(セレキノン)、漢方薬などが投与されます。下痢に対しては整腸薬(ビオフェルミン)、セロトニン受容体拮抗薬(イリボー)、止痢薬(ロペミン)、便秘に対しては緩下薬(アローゼン、プルゼニド)、腹痛には抗コリン剤(ブスコパン)が処方されます。
 
    C型肝炎は進歩しています  
    テレビのCMで、女優の高畑淳子さんが「C型肝炎は進歩しています」と言っているのを耳にされた方もおられると思います。これまで主流だった薬の問題点をすべて克服した新しい飲み薬が登場したことによって、C型肝炎の治療は大きく変わり始めています。
 C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の病気です。肝臓は体に必要なたんぱく質や栄養分の生成や貯蔵、不要となった老廃物や薬物の解毒など、生きていく上で必要不可欠な機能をもっています。現在日本では約110万~125万人のHCV感染者がいると考えられています。しかし、感染がわかっていない人や、わかっていても通院しない人も多いのが現状です。慢性肝炎、肝硬変、肝がんの患者さんの75%がHCV感染者であり、年間3万人が肝がんで亡くなっています。
 C型肝炎ウイルスに感染すると、約3割は自然にウイルスが排除されて治りますが、約7割は排除されずに慢性的に炎症が続いていきます。いわゆる慢性肝炎です。
 肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、肝炎になっても自覚症状はほとんどありません。そのため気付かないまま、およそ20~30年で肝硬変を経て肝がんへと病気が進行します。進むスピードは個人差がありますが、60歳を超えると肝がんになる確率が高くなり、病気が進むとそれだけ治療も難しくなります。
 C型肝炎ウイルスは、感染者の血液を介して感染します。しかしほぼ半数の人の感染源は不明です。過去の輸血や血液製剤の投与、臓器移植、適切な消毒をしない器具を使っての医療行為、刺青、ピアスの穴あけ、麻薬、覚せい剤の回し打ち、感染者との剃刀や歯ブラシの共用などで感染の可能性があります。しかし、常識的な社会生活の上で、他人の血液に触れることがなければ、家庭や集団生活での感染の恐れはまずありません。握手や抱擁、食器の共用や入浴での感染はありません。
 C型肝炎の治療というと、インターフェロンの注射があります。しかしインターフェロンはつらい副作用が出やすく、治療を諦めざるをえない人も少なくありません。
 2014年から2015年にかけて、新しいタイプのC型肝炎治療薬が登場しました。C型肝炎ウイルスを直接攻撃して、ウイルスの増殖を抑える働きをする薬です。インターフェロン治療を受けられない患者さんはこれまで、「いずれ癌になる」と言われ死を待つような生活を続けていたので、この新規経口薬はまさに福音です。
 2014年に登場したダクラタスビルとアスナプレビルという薬は、1日2回24週服用します。治験でのウイルス排除率は85%でした。治験とは、新しい薬の承認を得るために厚生労働省の指導に従い実施している試験のことです。
 2015年9月に登場したレジパスビルとソホスブビルの配合薬は、1日1回12週服用します。治験でのウイルス排除率は100%に達しました。治験参加者の多くは、インターフェロンを使いにくい65歳以上の高齢者、インターフェロンが効かなかった、副作用で中止したといった治療が難しいとされる患者さんでした。
 2015年12月に登場したオムビタスビル、パリタプレビル、リトナビルの配合薬は、1日1回2錠12週間服用します。治験でのウイルス排除率は95%でした。
 新しい抗ウイルス薬による治療には、C型肝炎ウイルス遺伝子を調べたり、適切な服薬指導を受ける必要があります。そのため、肝臓専門医のもとで、治療と指導を受けることが重要です。全国の肝臓専門医は、日本肝臓学会のホームページで調べることができます。まずは、かかりつけ医にご相談ください。
C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは血液検査でわかります。検査は勤務先の会社での健康診断、三次市総合集団検診、北部保健所または県委託医療機関で受けることができます。お問い合わせは広島県健康福祉局薬務課/℡082 513 3078です。
 
    受動喫煙の害について  
    喫煙者が吸っている煙だけでなく、煙草から立ち昇る煙や喫煙者が吐き出す煙にも、ニコチンやタールはもちろん多くの有害物質が含まれています。本人は喫煙しなくても、身の回りの煙草の煙を吸わされていることを受動喫煙といいます。
 煙草のフィルターなど吸い口から喫煙者が吸い込む煙を主流煙といいます。また火がついた部分から立ち上がる煙を副流煙といい、喫煙者が吸って吐き出した煙を呼出煙といいます。煙草の煙には、煙草そのものから約3000種類、主流煙から約4000種類、煙草と煙に共通するものは約1000種類に及ぶ化学物質が分離されると報告されています。その中には、微小粒子物質PM2・5も含まれています。また主流煙と副流煙に含まれる発がん物質は、副流煙の方に多いとされています。
 受動喫煙によりすぐに現れる症状は、目の痛みや目がしみる状態、喉の痛み、心拍数の増加、冷え性などで、長期的な影響では、肺がん、副鼻腔がん、子宮頸がん、気管支喘息の悪化、呼吸機能の低下、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病があります。妊婦、新生児には、流産、早産、乳幼児突然死症候群、新生児の低体重化、新生児の将来の肥満や糖尿病があります。
 発達の途中にある子供は、煙草によって大人とは異なる深刻な影響を受ける可能性があります。中耳炎、気管支炎、肺の感染症や肺機能の低下が起きることが知られています。また脳の働きにも影響があります。家庭内で受動喫煙している子供は、言語能力が低かったり、注意力が散漫な傾向が報告されています。
 近頃、分煙という言葉を目にする機会が増えたように感じます。分煙というのは、喫煙する場所や時間を区切ることにより、受動喫煙を防ぐことをいいます。コマーシャルなどでも受動喫煙や分煙が取り上げられるなど、昔と比べて喫煙に対して厳しくなっている印象があります。
 しかし、日本における受動喫煙の対策は、海外と比べると遅れているという現状があります。
 厚生労働省が平成25年に行った調査によると、非喫煙者のうち職場や飲食店において、過去1ヶ月間に受動喫煙があったと答えた人の割合は、3割以上という結果が出ています。また、医療機関や学校等の公共施設においても、受動喫煙があった人はゼロではありませんでした。これは、日本では公共施設、公共交通機関、飲食店等において禁煙または分煙をするのは法規制ではなく、「努力義務」であるということが背景にあります。
 世界では、「煙草の規制に関する世界保健機関枠組条約」に示されるように、受動喫煙の健康被害は明白なものとして、分煙ではなく全面禁煙化が進んでいます。先進国で、屋内が全面禁煙でないのは日本ぐらいです。日本は受動喫煙に関しては後進国といえます。
 イギリスでは全土に受動喫煙防止法が適用され、地方官公庁により完全禁煙が実施されています。ロシアでも、2013年にホテルの客室を含め受動喫煙防止法が施行され完全禁煙となっています。お隣韓国でも、官庁、医療施設、教育施設や公共交通機関が完全禁煙です。
 2020年には東京オリンピックが開催され、世界各国から多くの人々が訪日します。喫煙者個人のマナーも大切といえますが、法律による
規制というのも今後期待されるところです。
 当院では、4月より敷地内完全禁煙を実施いたします。敷地内での喫煙はご遠慮くださいますようお願いいたします。
 
    喉の痛みと違和感  
    空気が乾燥するこの季節、喉の痛みや違和感が起こりやすくなります。  
 喉は、単に食べ物や飲み物を飲み込むための通り道というだけではなく、酸素を取り込むこと、声を出すこと、空気中に含まれるウイルスなどの病原体を防ぐことという重要な働きを持っています。喉の粘膜には、線毛という組織があり、口や鼻から侵入したウイルスなどをブロックして体外へと排出します。また口腔の奥にある扁桃は、線毛運動でブロックしきれなかったウイルスを攻撃し、体内への侵入を防ぎ病気から身体を守っています。しかし喉は粘膜でおおわれているため、乾燥に弱く、頻繁に細菌を防ぐ働きをしたり刺激物が入ると、ダメージを受けてしまいます。
 喉の痛みを伴う疾患としては喉頭炎があります。喉頭は鼻腔や口腔の奥にあり、首の真ん中にある器官です。喉頭炎の典型的な症状は、声が枯れたり出なくなることで、喉の違和感や乾燥感などにより、喉がむず痒く、ひりひりして絶えず咳払いをしなければならなくなるようなこともあります。
 ウイルスや細菌などによって喉の粘膜に炎症を起こす急性喉頭炎は、喉の粘膜が赤く腫れ、痛みを起こし、頭痛や発熱を伴うことがあり、ものを飲み込みにくくなる嚥下困難を起こすこともあります。急性喉頭炎がひどくなると、ゼーゼーという喘鳴を伴います。このような場合、3歳以下の子供なら仮性クループ(急性声門下喉頭炎)、大人の場合は急性喉頭蓋炎を合併していることがあります。急性喉頭蓋炎は、強く腫れると気道をふさぎ呼吸困難になることがあるので早めの受診が必要です。
 また急性喉頭炎を繰り返すと、慢性喉頭炎になることがあります。強い痛みや発熱は無くなりますが、喉の不快感、異物感が続き、そのため咳を繰り返すことがあります。
 扁桃炎は細菌感染により引き起こされる炎症で、口腔の奥の扁桃が赤く腫れ上がり、悪化すると表面に膿を持ちます。39~40度の高熱と喉の激しい痛み、全身の倦怠感が現れます。さらに感染が広がると、首のリンパ腺に腫れと痛みが出ることもあります。
 家庭でできる喉の痛みを緩和する方法として、大根、ネギ、はちみつ、生姜に消炎作用や血行を良くする作用がありますので、飲み物などに工夫して摂取しましょう。チョコレート、唐辛子は刺激が強く、牛乳は痰が出やすくなるので避けましょう。また加湿器やマスクで乾燥対策をすることもよいでしょう。ネックウォーマーやマフラーで首元を温めることも効果的です。風邪やインフルエンザが流行っている時期は、外出から帰宅したときには手洗い、うがいは基本ですが、喉の痛みがあるときは、塩水にして行いましょう。喉の炎症を和らげる効果があります。
 食べ物を食べるときや飲み物を飲むときに、なんとなく今までとは違う違和感や、飲み物を飲むときに突っかかるような違和感、また喉が腫れているわけでもなく痛みもないのに喉に何かがあるような違和感がある場合は、次のような病気の可能性があります。
①ヒステリー球…ヒステリー球とは不安や緊張などからくる極度の精神的不安定により引き起こされる喉の狭窄で、喉の通りが狭くなり何かが引っかかる喉の違和感があります。アレルギーが原因で起こることもあります。
②アナフィラキシー症状…アレルギー症状により喉の炎症が悪化し、喉の痒みが起こり、なお悪化すると呼吸できないほどになります。ヒステリー球では炎症はありませんが、アナフィラキシー症状では炎症の悪化なので自力で治すことは困難です。動けないくらいに呼吸が苦しい場合は救急車を呼びましょう。
③食道がんや逆流性食道炎…逆流性食道炎や食道がんになると、喉と胃をつないでいる食道が炎症を起こすので、食道が狭く感じます。そのうえ胃酸が逆流しやすくなるので、食べ物が食道を通りにくくなります。
④パスツレラ症…犬や猫の多くはパスツレラという菌を保有しています。引っかかれたり、口から菌が侵入することで感染します。パスツレラ症に感染すると、最初は喉がイガイガした違和感があり、徐々に風邪に似た症状が現れます。高齢者や子供は抵抗力が弱いために感染が広がりやすく、死に至るケースもあります。
⑤喉頭がん…初期症状として声が出しずらくなり、喉になんとなく何かがあるような、ものが挟まっているような違和感があります。がんが進行すると声はかすれ、痛みで食べ物が喉を通らなくなります。
⑥シェーグレン症候群…膠原病の一つで、リウマチが合併していることの多い病気です。涙腺や唾液、汗が出にくくなり、唾液が少なくなることで口腔内が乾燥して嚥下障害を起こします。乾いたせんべいやお菓子が喉を通りにくくなり、喉に違和感を起こします。また無理に水分のない食べ物を食べると、喉に炎症を起こし違和感だけではなく嚥下障害を起こし、食べ物の誤嚥(ごえん)につながります。
 
    冬季に多発「ノロウイルス」  
    1968年(昭和43年)、米国オハイオ州ノーウォークという町の小学校で集団発生した急性胃腸炎の患者の糞便からウイルスが検出され、発見された土地の名前から、「ノーウォークウイルス」と呼ばれました。その後ウイルスの遺伝子が詳しく調べられ、2002年(平成14年)に国際ウイルス学会で「ノロウイルス(Norovirus)」と命名されました。ノロウイルスは、冬場を中心に秋から春にかけて多く流行する感染性胃腸炎の原因となるウイルスの一種です。保育園、学校、高齢者施設などでは集団感染発生の原因にもなります。今季は、遺伝子が変異した新型の流行が予想されていますので、一層の注意が必要です。
 ノロウイルスは人の口から体内に入り、腸の細胞内で増殖し細胞を破壊して急性胃腸炎を発症させます。ノロウイルス感染の原因は、主にノロウイルスに汚染された食品(牡蠣などの二枚貝で十分に加熱されていないもの)を飲食することによりますが、感染力が強く、感染者の糞便、嘔吐物からの飛沫中のウイルス、感染者の触れた物や衣服などに付着したわずかなウイルスを吸い込むなどしても感染します。
 感染から発症までの時間は、24~48時間で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛で発熱は軽度(37~38℃)です。現在のところノロウイルスに対する直接の治療薬はありませんので、発症して起こる頻回の嘔吐やひどい下痢に対しては、初期の脱水への対応が必要になります。特に小さな子供や高齢者の場合は、脱水に弱いので注意が必要です。高齢者の嘔吐は喉に詰まって窒息したり、嚥下性肺炎を起こす場合もあります。
 下痢がひどい場合はナトリウムなどの電解質も失いますので、大人ならお茶や水に加えてスポーツドリンクも追加しますが、子供の場合は、薬局で「ORS(経口補水液)」を販売しています。しかし、この必要な条件を最低限満たした水は、家庭にある材料を使って作ることができます。水1リットルに対して砂糖ティースプーン6杯、そして塩をティースプーン1杯入れて混ぜたものです。ノロウイルスの症状は突然やってくるので、下痢のひどい子供の場合には、病院に着くまでの緊急対策に使うこともできます。
 また下痢は下痢止めなどで無理に止めないことが基本です。下痢を止めることで、症状が悪化したり長期化する可能性もあります。嘔吐や腹痛は腸管が動くほど強くなりますので、仮に食べるとしても消化のよいものにしましよう。
 家庭内での二次感染を防ぐためには、感染した本人の手洗いと嘔吐物の処理が大切です。下痢になったら、トイレの後の手洗いをしっかりしなくてはなりません。トイレから出て手を洗うまでに触れる「水を流すレバー」「ドアノブ」「水道のハンドル」に触れる手を、お尻を拭くのと反対側にするとよいでしょう。
 床などに飛び散った嘔吐物を処理する場合は、マスクと手袋を使用し、ペーパータオルなどで静かに拭き取りビニール袋に入れ破棄します。拭き取った後は、家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含むキッチン用塩素系漂白剤で拭き取り、その後水拭きをしましょう。ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に舞い、口に入ると感染することがありますので、乾燥する前に処置することが大切です。空気の流れに注意しながら部屋の換気もしましょう。
 ノロウイルスの感染予防としては、ウイルスを口に入れないことが最も重要です。ウイルスを口に入れないための有効な手段は次の3つです。
①帰宅時に正しい手洗い、うがいをし、食事前やトイレの後には正しい手洗いをする。
②十分に加熱した食品を摂取する。一般的には85℃で1分間の加熱する。ただし牡蠣などの二枚貝は、中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱が望まれる。
③調理器具などは洗剤で十分に洗浄した後、キッチン用塩素系漂白剤で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。
 ノロウイルスによる下痢などの症状はだいたい2~3日で軽減しますが、症状が消失した後でも、1週間以上、長い時には1か月間もウイルスを排出していることがありますので、日常生活での正しい手洗いなどを習慣化しましょう。
 
 
    尿酸値について  
   尿酸とはプリン体と呼ばれる物質からできる老廃物で、私達の身体の中に常に存在しており、作られる量と身体の外に出される量のバランスにより一定量に保たれています。そしてこの値を尿酸値といいます。プリン体は細胞の核に含まれるDNAの成分で、新陳代謝により放出されたり、エネルギー物質の燃焼によって作られます。動植物にも含まれるため食品として体内に取り込まれます。
 尿酸値は血液検査でわかります。正常値は男女ともに7・0㎎/dL以下であれば正常で、それ以上ある場合は高尿酸血症と呼ばれます。
 近年食生活の欧米化などのライフスタイルの変化で、血清尿酸値の高い人が増えています。血清尿酸値が高くなると高尿酸血症を発症し、そのまま放置していると、関節などに激痛をともなう痛風に進行します。また糖尿病や高血圧症、高脂血症を合併すると、心筋梗塞や狭心症を招くこともあります。水分をあまり取らないで尿量が減ったり、プリン体を含む食品を多く摂取すると、尿中の尿酸濃度が高くなり尿酸が結晶化して、尿路(尿管・膀胱・尿道)に石を作る尿路結石になりやすくなります。石は酸性液中で固まる性質をもつので、尿が酸性に傾きやすい高尿酸血症の人は注意が必要です。石が尿管に詰まる尿路結石は激しい痛みを起こします。
 高尿酸血症発症の原因は、主に食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足による肥満が原因とされています。肥満になると中性脂肪が尿酸の産生を促すため、血清尿酸値が高くなります。特に内臓脂肪型肥満の方は要注意です。腹囲が、男性85㎝、女性は90㎝以上の場合は注意しましょう。
 高尿酸血症は3つの型に分けられます。型によって治療方針が異なります。
①尿酸排泄低下型
 産生される尿酸量は正常なのに、腎臓の機能障害のために排泄量が減少している状態。高尿酸血症の約60%を占めます。
②尿酸産生過剰型
 排泄される尿酸量が変わらないのに、尿酸が過剰に産生されている状態。高尿酸血症の約10%です。
③混合型
 尿酸が過剰に産生されるとともに、尿酸の排泄が減少している状態。高尿酸血症の約30%を占めます。
 それぞれの型を診断する検査は、1日に排泄した尿を溜め尿酸量を測定する尿中尿酸排泄量検査と、尿酸を排泄する腎臓の機能を調べる尿酸クリアランス検査、血中と尿中のクレアチニン濃度を測定する検査があります。
 高尿酸血症の治療法は、食事療法・運動療法などの生活改善、尿路管理や薬物療法があります。治療の目安として、コントロール目標となる血清尿酸値を6㎎/dL、正常値の上限を7㎎/dL、治療を開始する基準を8㎎/dLと定めています。血清尿酸値の急激な低下は、症状の悪化や薬の副作用の原因となるので徐々に下げることが重要です。
 高尿酸血症治療の基本は、食事療法と運動療法です。尿酸値を下げるためには、まず食べ過ぎを防ぐ必要があります。肥満になると、尿酸を作りやすく排泄しにくい状態になりますので、適正な体重にすることが大切です。またプリン体を多く含む動物の内臓や魚の干物は食べ過ぎないようにしましょう。しかし食べ物から体内に入るプリン体は、全体の20%程度ですので、必要以上に神経質になることはありません。また100㎎あたりのプリン体が多くても、一回に食べる量が少ない食品もあります。プリン体の量をチェックするときは、一食あたりどのくらい含まれるかチェックするとよいでしょう。1日のプリン体摂取量は400㎎までとされています。また尿量が増えれば尿と一緒に多くの尿酸を排泄できますので、水は1日2リットル以上飲むことが推奨されます。尿をアルカリ性に近づける海藻や野菜の摂取も尿路結石の予防に有効です。
 高尿酸血症でも、プリン体の多いビール以外なら大丈夫、と考える人もあるかもしれませんがそれは間違いです。ウイスキーや焼酎などの蒸留酒はプリン体をほとんど含みませんが、アルコール濃度が高いですし、太りやすい飲み物ですので適量にしましょう。お酒を止められない場合は、1日の量を日本酒1合、ビールはロング缶1本、ワインはグラス2杯、焼酎はお湯割り1杯、ウイスキーはダブル1杯を目安にします。ただしこれら全部ではなくいずれか1種類にしましょう。
 運動療法ですが、ベンチプレスなどの激しい無酸素運動は肥満解消法として適しません。新陳代謝が活発になり、尿酸値が急上昇します。ウォーキングなどの軽い有酸素運動を定期的に行いましょう。ストレスは尿酸値を高めますので、その解消にもなります。
 薬物療法は、食事療法や運動療法をしても下がらない場合や、8㎎/dL以上の場合に行われます。治療を開始してから半年間は副作用が起こりやすいため、定期的に検査を受ける必要があります。症状が治まったからといって勝手に服用を止めると、すぐ元にもどります。医師の指示に従い用法用量を守って服用しましょう。
 
    秋からも怖い「紫外線アレルギー」  
   地球上に届く太陽光には「赤外線」「可視光線」「紫外線」があります。このなかの紫外線は波長が短くエネルギーが強い光で、物質に化学変化を起こさせる性質があります。
 紫外線にはUVA、UVB、UVCがあり、この三つのなかで、地球に届くのがUVA、UVBです。
 UVAはUVBほどに害はないのですが、長時間浴びると細胞を傷つけるため、健康被害が出ます。窓ガラスや雲を通過して皮膚の奥深くまで届き、しわやたるみなど肌の老化を起こす原因になります。
UVBは皮膚の表面に届き、皮膚や眼に有害です。日焼けを起こしたり、皮膚がんの原因になります。UVBは午前10時~午後2時が最も多く、この4時間で1日の50%を占めます。ただ眼に入る紫外線は逆に朝、夕方の方が多いといわれています。
UVBは快晴日が最も多いのですが、雨の日でも地上に届いており、雨雲など雲の量が多い場合は快晴日の20~30%、薄曇りでは50~80%は届いているので雨、曇りといっても油断できません。また身体に当たる紫外線には、太陽から直接のものだけではなく、空気中で散乱したものや、地面や建物から反射したものもあります。直接日光の当たらない日陰であっても、紫外線を浴びているのです。
 「紫外線アレルギー」は、日光アレルギー、日光過敏症、日光性皮膚炎とも呼ばれ、紫外線が原因で引き起こすアレルギー反応です。これまで何ともなかったのに、ある日突然アレルギーを発症するケースも少なくありません。普通の人が浴びても問題のないほどの紫外線照射で免疫システムに異常をきたし色々な症状が出ます。
◇皮膚に現れるアレルギー症状
 ①赤くなる(発赤)
 ②発疹(じんましん・水ぶくれ・丘疹)
 ③腫れ
 ④かぶれ
◇眼に現れる症状
 ①目の充血
 ②涙が出る
 ③違和感がある
◇全身に現れる症状
 ①頭痛
 ②発熱
 ③吐き気
 紫外線アレルギーを引き起こす原因には「内因性」のものと「外因性」のものがあります。
◇内因性…普段日光に当たらない人が、対応する準備が出来ていない状態で急に紫外線に肌をさらし、もともと持っている紫外線に対する抗体量を超えてしまうと発症します。特に女性に多く、顔だけに症状が出る場合もあります。
 内因性の症状は、日に当たる部位や手の甲などに複数の発疹が出る「多形日光疹」や、日に当たった部分に激しいかゆみを伴う慢性的な発疹が出来、日に当たらない場所で数時間過ごすと消える「慢性光線性皮膚炎」があります。
◇外因性…他の病気で服用した薬や、日焼け止めの成分が原因で紫外線を吸収し、化学反応を起こす光毒性を持ったことによります。また過度のダイエットでの栄養不良やC型肝炎などの肝臓の病気、セロリ・いちじく・キャベツ・アワビなどの食品が原因になることもあります。柑橘類はビタミンCを多く含みますが、光毒性のあるソラーゲンという成分も含んでいます。
 予防には、まず日光を浴びすぎないようにすることです。夏でも長袖・手袋・帽子・日傘・サングラスを使用しましょう。強い太陽光の下で眼を守るには、顔にフィットしたある程度の大きさを持つサングラスが良いでしょう。またレンズの色の濃いサングラスをかけると、瞳孔が普段より大きく開きます。そのため紫外線カットの不十分なレンズではかえって多く紫外線が眼に入りますので注意しましょう。家の中でもUVカットのカーテンや窓ガラスに紫外線カットのフィルムを貼ると良いでしょう。
 日焼け止めクリームは正しく塗ると紫外線防止に非常に効果的です。日焼け止めには紫外線吸収剤と、紫外線散乱剤があります。紫外線吸収剤は紫外線をいったん吸収し、熱エネルギーに変換して放出する成分のことで、SPF値(UVB紫外線防止の数値)の高い商品です。ただし皮膚への負担は大きく、肌の弱い人や子供は注意が必要です。紫外線散乱剤は紫外線を反射させる成分が入っていますので皮膚への負担は軽くなります。
 また量についても、顔が白くなるからといって少ししか使わないことが多いのですが、正しい量を使わないと効果が不十分になります。一度に使う量は、顔の場合クリームタイプは「真珠2つ分」液状タイプは「1円玉2枚分」を使うようにしましょう。頬骨や鼻の頭は光を浴びやすいところなので念入りに塗るようにしましょう。
 アレルギー症状が出てしまった場合、まずは専門医に受診しましょう。軽い症状なら非ステロイド剤の塗り薬を使います。症状によってはステロイド剤の処方をされますが、長期の使用は副作用が強いので推奨されません。最近では抗アレルギー薬を処方される場合が多いようです。症状が強い場合は「光線過敏テスト」の検査を受けましょう。
 
    尿のトラブルありませんか?  
   くしゃみをしたら尿がもれた、トイレに行ったのに間に合わずに失禁してしまった、こんな経験のある女性は少なくありません。人知れず悩むことなく、積極的に治すことを考えてみましょう。
 女性の尿もれの原因で一番多いのは骨盤底筋のゆるみです。女性の下腹部にある内臓(膀胱、尿道、子宮、膣など)は骨盤の中で保護されていますが、その内臓を支えているのが骨盤底筋という筋肉です。この筋肉が弱ると、内臓が下がり膀胱や尿道が圧迫されて、尿もれが起きやすくなります。そこにくしゃみ、咳、運動などでお腹に強い力が加わると、こらえきれずに尿もれが起きてしまいます。
【腹圧性尿失禁】
 咳をしたり重いものを持ったときなど、お腹に圧力がかかると少量の尿がもれる状態です。40歳以上の女性の8人に1人がこの症状をかかえているといわれています。そのわけは、男性の尿道は25㎝あり尿道を締める役割をはたす前立腺があるのに対し、女性は3~4㎝と非常に短いのです。さらに尿道を締める役割をはたす膀胱や尿道、子宮をハンモックのように支える骨盤底筋という筋肉が、妊娠、出産によってゆるんだり切れたりしてしまうことがあるのです。また更年期、女性ホルモン・エストロゲンの減少により筋肉が弱くなったり、女性に多い便秘や冷え性も原因になることがあります。腹圧性尿失禁の治療の中心は「骨盤底筋体操」です。方法は、あお向けに横になり、両足を肩幅程度に開いて、両ひざを軽く立てます。尿道・肛門・膣をきゅっと締めたりゆるめたりし、2~3回繰り返します。次はゆっくりぎゅっと締め3秒間静止します。その後ゆっくりゆるめます。これを2~3回繰り返します。引き締める時間を徐々にのばしていきます。1回5分程度からはじめ、10~15分まで増やしましょう。
 薬による治療では、尿道を引き締める働きがある薬(β受容体刺激薬)などを使います。手術には尿道を吊り上げる方法(尿道スリング手術)やコラーゲンを注入して尿道の筋肉を強くする方法などがあります。
【切迫性尿失禁】
 ふいに訪れる突然の強い尿意のため、トイレまで我慢できずにもらしてしまう症状です。腹圧性尿失禁よりもれてしまう尿の量は多く、主に高齢の方に多い症状です。脳と膀胱がうまく連携しなかったり、膀胱、子宮、尿道を支える骨盤底筋が弱まることで排尿のコントロールができなくなります。膀胱炎などの感染症でおこすこともあります。
【過活動膀胱】
 過活動膀胱とは自分の意志とは関係なく、膀胱が勝手に収縮し尿もれをおこしたり、頻尿になったりする症状です。切迫性尿失禁もこれにあたり、急に尿意を感じ我慢できなくなる「尿意切迫感」、日中に8回以上トイレに行く「昼間頻尿」、夜中に1回以上トイレに行くために起きてしまう「夜間頻尿」があります。
 肥満、便秘、ストレス、運動不足、多量の水分摂取や少なすぎる水分摂取の人がかかりやすいとされていて、40歳以上の女性の10人に1人が過活動膀胱の症状を経験しているというデータもあります。
 過活動膀胱の治療はまず「薬物療法」を行うのが一般的で、症状を軽減させる対処療法です。薬物療法の他には「膀胱訓練」があります。これは膀胱に尿をためる訓練です。尿もれを気にするあまり、少ししか尿がたまっていないのにトイレに行くくせがついてしまうと、膀胱が小さくなったり過敏になったりして、尿をたくさん蓄えることができなくなることがあります。方法は、尿意を我慢する練習を短い時間から始めて、少しづつ時間を延ばします。最初は尿意があってもトイレに行くのを5分くらい我慢し、1週間続けます。尿意を感じるたびにではなく、1日のうち、時間や回数を決めて少しづつ始めてもいいのです。10分、15分と延ばしていき、最終的に2~3時間我慢できるようになれば目標達成です。ただし感染症や前立腺肥大症などの場合は、症状を悪化させることもあります。きちんと診察を受けて、自分の尿のトラブルの原因と治療法をよく理解し、医師の指導に従って行うことが大切です。
 
    カンピロバクターとは  
   カンピロバクターは鶏や牛、豚肉などの腸管内に生息している細菌です。厚生労働省の調査では、昨年発生した食中毒のうち全体の3割を占めています。なかでも多いのが鶏肉が原因のものです。食鳥処理の過程で感染されやすく、市販の鶏肉の6~8割から菌が検出されたという調査結果もあります。
 その食中毒発生原因と考えられているのは次の3つです。
①鶏肉の加熱不足
②鶏肉に付着していた菌が、調理器具や手指を介して他の食品に付着しそれを摂取した
③生、またはそれに近い状態の鶏肉を食べた
 カンピロバクターがいない料理にするためには、焼き鶏、肉団子、鶏のから揚げなど、焼く、煮る、揚げるなどの調理をする場合、肉の中心部の色が桃色(生の肉の色)から白く変わるまで加熱すれば、カンピロバクターはほぼ死滅します。またバーベキューなどで肉を強い火であぶると、表面は食べごろに見えても、肉の中心はまだ生のことがあります。「湯引き」と呼ばれる、鶏肉を湯にくぐらせる程度の加熱の効果実験では、カンピロバクターは死滅しないという報告もあります。
 カンピロバクターを死滅させるには、60℃で1分以上、65℃で30秒以上の加熱が必要です。肉の中心部が65℃になればほぼ大丈夫ですが、調理時に肉の温度や加熱時間を測ることは難しいことです。肉の中心が白くなっていればよいので肉の色の変化に注意しましよう。 
 調理器具などを介して感染が広がる交差汚染にも気を付けましょう。汚染された鶏肉を扱ったまな板や包丁に付いた菌が、サラダなど生で食べる野菜に付着し、それを食べて食中毒になることがあります。肉はなるべく専用のまな板を使用するようにし、調理前や肉を扱った後の手洗いは、液体せっけんでの2度洗いをおすすめします。少しの菌で食中毒が起きることが、カンピロバクター食中毒の特徴です。食品に菌が付いていた場合、味見程度でも感染するといわれています。
 カンピロバクターによる食中毒は、原因となる食品を食べてから2~7日(平均3~4日)経て発症します。食中毒のなかでは遅いのです。主な症状は、腹痛や下痢、発熱、嘔吐などで、これらはこの食中毒特有のものではありません。食中毒の種類によっては、自己判断で下痢止めの服用などで症状が悪化することがありますので、下痢や腹痛が特に激しい場合は医療機関での診察を受け適切な治療を受ける必要があります。
 カンピロバクター食中毒は腸管出血性大腸菌のように、重篤化で死亡することはほとんどないのですが、症状が治まってから1~2週間後に、ギラン・バレー症候群を発症することがあります。主に筋肉を動かす運動神経が障害され、手や脚に力が入らなくなる難病です。約7割は回復しますが、なかには後遺症で歩行に介助が必要になることがあります。日本では、ギラン・バレー症候群の患者さんの約3割がカンピロバクター感染が原因とみられています。
 一般に食中毒や感染症は、小さな子供や高齢者など身体の抵抗力が比較的弱い年齢層や、病中、病後などで免疫機能が低下している状態の方がかかりやすいものです。カンピロバクター食中毒の場合は、0歳から4歳の子供と、15歳から25歳の青年の患者さんが多く報告されています。青年の感染事例が多いのは、抵抗力の有無よりも海外旅行での食べ物やバーベキューなどの飲食の機会の多さが原因とされています。また入院治療を行った症例は、日本では9歳以下の子供に多いという報告もあります。
 梅雨から夏に向けて発生しやすくなる食中毒、十分な注意が必要です。
 
    虫刺されにご注意ください  
    気温が上がるこれからの時期、虫たちの活動も活発になります。軽く考えがちな虫刺されのなかには注意が必要なものがあります。
 私たちの身の回りの虫刺されは、大きく4つに分けることができます。
①吸血する…蚊、ブヨ、ダニ、アブ、ノミ、シ ラミ
②噛む…クモ、ムカデ
③刺す…蜂
④触れると皮膚が炎症を起こす…ケムシ
 日本には白と黒のシマシマ模様が特徴のヒトスジシマカ、日本脳炎やフィラリアの仲立ちとなるアカイエカなど60種類の蚊が生息しています。刺された患部を清潔にし、炎症に合わせて市販の虫刺され薬、抗菌薬、ステロイドの塗り薬を使い分けます。高熱が出たり潰瘍になった場合は蚊アレルギーの可能性があるので受診しましょう。
 ブヨ、アブはメスだけが人間や家畜などの動物の血を吸います。蜂とは違い、自ら人間に寄ってきます。また蚊とは異なり、皮膚を噛み切るので吸血時に痛みを伴います。注入される唾液で、次第に患部に激しい腫れとかゆみの症状が出ます。症状は1ヵ月もの長期間にわたることもあり、赤いしこりが残ることがあります。かきむしった患部から細菌感染を引き起こすことがあるのでできるだけ受診をおすすめします。
 ダニは地球上のあらゆる場所に生息しており、日本では約600種類が知られています。日常生活で害が多いのはイエダニで、室内に生息し人間の血を吸います。ツメダニやトゲダニは体液を吸います。皮膚が柔らかい太ももや腕の内側、腹部が狙われやすく、かゆみを伴う赤い発疹が出ます。
 野外ではマダニが要注意です。マダニは硬い外皮におおわれた比較的大型のダニで、主に森林や草地などの屋外に生息しており市街地周辺でも見られます。アウトドアなどで森林や草むら、藪などに行く場合は、長袖、長ズボン(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や靴の中に入れる)を着用し、サンダル類は避け足を完全に覆う靴を履きましょう。帽子、手袋を用意し、首にタオルを巻くなど肌の露出を少なくすることも大事です。また長時間地面に直接寝転んだり座ったりするのは止めましょう。ダニを寄せ付けないために、肌の露出部分や服にDEET(ディート)などの有効成分が含まれた虫除け剤の使用も有効です。虫除け剤は皮膚の露出部に使うか衣服の上から使います。ただし目、口、耳、傷がある部位、皮膚が敏感な部位には使用しないようにしましょう。
 マダニ類の多くは人や動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、長時間(数日から長いもので10日間)吸血します。無理に引き抜こうとすると、マダニの一部が皮膚内に残ったり、ダニの体内や傷ついた皮膚から出る液体に病原菌がいる可能性があるので、手でダニを取ったりつぶしたりしないことが重要です。マダニに噛まれ吸血されていても、イボなどができたと勘違いしそのまま放置することがあります。異変に気付いたら早めに皮膚科や外科で受診しましょう。 
 マダニを媒介して感染するウイルスから発症する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が、日本でも深刻化しています。SFTSは、発症後の致死率が10~30%もあり重症化すると大変危険です。2013年に国内で初めて確認された新興ウイルスですが、2014年3月の厚生労働省の調査で、感染の原因となるSFTSウイルスを保有するマダニが全国に広がっていることが判明しました。SFTSは感染から6日~2週間して発熱、嘔吐、下痢、下血などの症状が出ます。ただ、噛まれると必ず感染するわけではありません。ウイルスを保有するマダニに噛まれると感染するのです。
 刺す蜂の代表はアシナガバチ、スズメバチです。スズメバチは黒や黄色い物に寄ってくる習性があり、甘いジュースや香水などの匂いのするものを攻撃します。蜂に刺されて恐いのは、全身にアレルギー反応が起こり、アナフィラキシーショックで命にかかわる場合です。全身の蕁麻疹、呼吸困難、気分不快、冷や汗、めまいなどの症状が起こった場合はショックに準じた治療が必要です。ショック症状は刺傷から数分で始まることもあり、躊躇せずに救急車を呼ぶ必要があります。
 ムカデ毒も蜂毒と同じようにアレルギー反応を起こすことがあり、対処法は蜂と同じです。就眠中に噛まれることが多く、噛まれた直後に激しい痛みに襲われ、局所が腫れます。ホッチキスの針で穴を開けたような傷が残ることが特徴です。
 蝶や蛾の幼虫であるケムシやイモムシの毛に触れると腫れてかゆみを起こすことがあります。これは有毒毛を持つケムシに触れた場合に起こる皮膚炎です。有毒毛には毒針毛と毒棘があります。毒針毛はドクガ、チャドクガなどがあり、毒棘はイラガ類の幼虫にあります。これに触れると、激しい痛みを伴う蕁麻疹のような症状が現れます。
 
    慢性疲労症候群  
   季節の変わり目は、なんとなく疲れやすいと感じることが多くありませんか?疲労回復に必要なのは、良質な睡眠や自律神経のコントロール、栄養バランスのとれた食事です。
 短期間で疲労回復がはかれる場合はよいのですが、身体を動かせないほどの疲労が6カ月以上の長期にわたって続き、日常生活に支障をきたすほどになる状態は「慢性疲労症候群」という病気で治療が必要になります。慢性疲労症候群は1988年に米国の研究機関によって提唱された比較的新しい疾患です。厚生労働省の調査によると、日本で慢性疲労症候群にかかっている人は、1000人に3人程度で、不登校の子供の中に慢性疲労症候群とみられる症状の子供がいることもわかっています。
 慢性疲労症候群は、健康な人が風邪や気管支炎などを患ったことをきっかけに、風邪に似た症状がいつまでも長引くのと同じような状態で発症することが多い病気です。休んでいても改善しなかったり摂食障害や不眠を伴っている場合は要注意です。
 慢性疲労症候群の診断は、通常の診察や検査では明らかな要因が見出せない著しい疲労感が6カ月以上持続し、次のような症状の多くがみられます。
①微熱(37・2~38・3度)ないし悪寒
②咽頭痛
③頸部あるいは腋の下のリンパ節の腫れ
④原因不明の筋力低下
⑤筋肉痛ないし不快感
⑥軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感
⑦頭痛
⑧腫れや発赤を伴わない移動性関節痛
⑨精神神経症状(いずれか1つ以上)光過敏、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、混乱、思考力低下、集中力低下
⑩睡眠障害(過眠、不眠)
⑪発症時、主たる症状が数時間から数日のあいだに出現
 慢性疲労症候群になりやすい性格として、神経質で几帳面なタイプに多い傾向があります。脳内では、血流やセロトニン分泌の低下などがあり、脳機能の低下が身体に異常な疲労感をもたらしている可能性もわかってきています。
 ストレスを感じるような仕事に長時間取り組んでいたり、集中力や必要以上に気を遣うような仕事をしていると脳は疲労します。脳の疲労の多くは、過剰な中枢神経の興奮によってもたらされます。脳は他の臓器と比べて、2~30倍ものエネルギーを消費します。酸素消費量は20%と、多量の酸素を必要とします。そのため、精神作業で脳内の精神活動が盛んになると、より強い酸化ストレスがかかり、活性酸素が増え、活性酸素が神経細胞を障害させることで、情報処理能力や精神活動が悪くなります。 
 慢性疲労症候群の治療法には、抗うつ剤や抗不安剤などを使う薬理療法があります。しかしこれらの薬剤は副作用がありますので注意が必要です。副作用がおこりにくいのは漢方薬による治療です。「補剤」と呼ばれる、体力や気力を補う漢方薬を使って治療します。免疫や内分泌を整える効果があり、適切に使えば高い効果が期待できます。また体内の活性酸素による細胞の障害を防ぐために、抗酸化作用をもつビタミンCを服用します。内科的に治療による効果がみられない場合、ストレスに対処するための方法を医師と患者さんが話し合いながら見出していくためのカウンセリングによる治療もあります。
 通勤や通学など日常生活が可能になる程度までの回復を含めると、多くの人が2~3年でよくなっています。ただ完治していなければ、ストレスや感染症をきっかけにしてしばしば再発を繰り返します。完治したかどうかの判断は、倦怠感とともに微熱や筋肉痛などの症状が消え、たとえ運動や長時間の外出で疲労・倦怠感を感じたときでも、1日寝て回復するようなら完治したと考えてよいでしょう。1度完治すれば再発はほとんどありません。2年で15%、4年で40%が完治しています。
 
    胃痛・胃もたれ・胸焼け   
    胃で分泌される胃液は食べ物を消化したり、食物と一緒に入った細菌を殺菌したりする働きがあります。その胃液が食道に逆流してくる病気を「胃食道逆流症」と呼びます。
 胃の粘膜には胃液に含まれる胃酸から胃を守る働きがそなわっていますが、食道の粘膜にはそのような働きがありません。そのため、胃酸が食道に上がってくると、粘膜にびらん(ただれ)ができたり、何らかの症状が現れたりします。
 胃食道逆流症は、内視鏡で食道の粘膜にびらんが見つかる逆流性食道炎と、症状はあるものの食道の粘膜にびらんが見つからない非びらん性逆流症の2つのタイプに分けられます。
 逆流性食道炎は年齢や性別、体型によらず発症しますが、「中高年の男性」で「太り気味の人」に多い傾向があります。非びらん性逆流症は、「若い人」「女性」「やせている人」に多い傾向があり、几帳面で真面目など、「ストレスをためやすい人」に多いといわれています。
 胃液や胃の内容物が食道に逆流することによって、食道粘膜が胃酸の消化作用で刺激されたり、傷つけられたりして、みぞおちから胸の下あたりに“チリチリと焼けるような”などと表現される胸やけが起こります。「呑酸(どんさん)」といって、酸っぱい液体が食道を通って口まで上がってくる症状もみられます。かがんだ時や食べ過ぎたあと、特定の食物などで症状が強まることもあります。
―咳やのどの痛みなど食道以外の症状も―
 胸やけや呑酸は、胃食道逆流症の典型的な症状ですが、食道以外の症状として、慢性の咳や気管支炎、ぜんそくに似た症状、胸痛、のどの痛みなどの症状が注目されています。また、耳の痛みや酸で歯が溶けてしまう意外な症状もあげられています。
 咳や喉の異常がなかなか良くならない場合は、一度、胃食道逆流症を疑ってみてもよいかもしれません。
―対処法と治療―
 胃食道逆流症では、生活習慣を改善することで、胃酸の逆流を抑えて症状を和らげることが可能です。「ゆっくりと30回以上噛んで食べる」「食後すぐに横にならない」「牛乳を飲んで症状を和らげる」などの食生活の改善のほか、「前かがみの姿勢を避ける」「上半身を少し高くして寝る」など、腹部の圧迫を避けるように心がけると逆流が起こりにくくなります。
 症状を改善し、生活の支障を取り除くことを目的に薬が使われることがあります。胃酸の分泌を抑える薬を中心に使用します。今年2月に胃酸の分泌を抑える新薬が登場しました。今までの薬に比べ、治療早期からの高い治癒率が期待されています。
 不快な症状がある場合には、我慢せずに、早めに医師にご相談下さい。その際、症状はできるだけ具体的に「いつ、どのように、どんな症状が出るか」を伝えていただくことが、適切な診断と治療のために大切です。
 
    膝の痛み  
   膝の痛みはその原因や症状によって大きく2つに分けられます。1つは運動やケガなどで短期間に膝に大きな負担がかかったことによる一時的な痛みです。この場合、関節まわりの筋肉や腱が痛んだことが主な原因なので、炎症が治まるまで安静にしていれば痛みもおさまります。
 2つ目は長年の膝への負担の蓄積や加齢などが原因の慢性的な痛みです。膝関節の骨、軟骨、靭帯、筋肉などの組織が衰えたり変形することで起こり、長期にわたり痛みが続きます。中・高齢者の膝の痛みの多くは関節組織の老化に伴うもので、「変形性膝関節症」とよばれます。
 正常な膝関節は関節の表面が軟骨でおおわれています。弾力性に富んだ組織からなる軟骨は、衝撃を和らげたり関節の動きをなめらかにしたりします。また滑膜から分泌される関節液は、軟骨の成分の1つであるヒアルロン酸を含んだ粘りのある液体で、膝関節がスムーズに動くための潤滑液と軟骨の栄養の働きをしています。
 初期の変形性膝関節症では、軽度の関節軟骨の磨耗が起こります。朝起きて歩き始めた時の膝の違和感が最初に現れる症状です。初期症状が過ぎ軟骨の磨耗がある程度進むと(中期)、膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、歩行時に膝にかかる負担の増加や、軟骨、半月板の変形による刺激により関節炎が生じます。関節炎は膝を曲げ伸ばした時の痛み、曲げ伸ばしの制限を起こし、膝の周辺が腫れたり、膝が張っているような重くだるい感じも起します。関節液が多量に分泌されて関節に水がたまります。それは目にゴミが入ったり、鼻水が出るようなもので、膝も使いすぎると水を出してクッションの役割をはたそうとするのです。そうなると正座やしゃがみ込むなどの動作が苦痛になり、階段の上がり下がりもつらく、特に下りがつらくなります。
 進行期では軟骨の磨耗がさらに進み、関節の土台の骨が露出したり、骨棘といった骨そのものの変形が生じます。この状態になると、膝を動かしたり立って歩いたりするたびに硬い骨同士が直接ぶつかり合うため強い痛みを生じ、曲げ伸ばしの制限も大きくなり、日常生活に支障が起こるほどの痛みになります。そのため仕事をする、買い物に行く、旅行に出かけるなどの社会生活が思うようにできなくなります。活動範囲が狭まり、外界からの刺激が少ない生活になると、ストレスがたまりうつ状態に陥りやすくなります。高齢者のなかにはこうした生活が続くと、認知症の症状が現れることもあります。
一度すり減ってしまった関節軟骨はもとの完全な形に修復されることはありませんので、変形性膝関節症の治療は痛みをとり、膝が完全に曲がりきらない状態や伸び切らない状態を改善して膝の機能を高めることです。治療方法は症状の進行度や痛みの程度によって異なりますが、薬物治療などの保存治療が基本となります。これらの治療でも痛みが緩和されない場合に外科的療法を行います。
【保存療法】
①薬物療法…痛みを緩和するために薬物を使います。安静にしていても痛みがとれない場合や、激しい炎症が起きている場合です。消炎鎮痛剤(痛み止め薬)や膝関節の動きをよくするヒアルロン酸もあり、患部に直接貼り付けたり塗り付ける外用薬、内服薬、坐薬があります。また患部に直接注入する薬物注射もあります。
②温熱療法・運動療法…患部を温めることで血行を促進します。血行がよくなると、炎症や痛みの元となる化学物質、疲労物質が流れ出ていきやすく、関節や筋肉のこわばりをとり、骨や軟骨への負担を減少します。ホットパックや電気・超音波を使った専用機器を使います。家庭では入浴、カイロ、レッグウォーマー、サポーターなどを使用します。また膝を動かす運動やウォーキングなどの全身運動を行い、膝まわりの筋肉、靭帯、骨、軟骨といった組織を強化したり、心肺機能を高めたりする治療法です。激しい痛みのある時は安静が必要ですが、痛みが落ち着いて膝がある程度動かせるようになったら、無理のない範囲で膝まわりの運動をする事が大切です。太ももの筋力アップは膝への負担を減らし、ストレッチによる柔軟性の向上は膝の動きをスムーズにしてしっかり曲げ伸ばしができるようにします。全身運動は膝に負担をかける肥満の解消、各組織の強化、老化防止に役立ちます。
③膝の水を抜く…膝に水がたまると関節が不安定になり、炎症と痛みが悪化する悪循環が起こります。そのため注射器で関節内から水を抜いて痛みを取り除きます。
【外科的療法】
①手術療法…一定期間は保存療法で症状の改善をみますが、痛みが治まらず日常生活に支障が出ている場合は人工関節置換術などの手術を行うことがあります。
 変形性膝関節症は初期であれば進行を抑えることが可能です。膝の違和感や痛みを放置しないで早めに受診し、適切な治療を受けられることをお勧めいたします。いくつになっても元気で歩ける膝を目指しましょう。

 
    肩関節周囲炎について  
    肩関節周囲炎とは四十肩・五十肩と呼ばれているもので、肩関節の痛みと動きの制限をともなう病気の総称です。
 関節を構成する骨、軟骨、靭帯、腱などが老化して肩関節の周囲組織に炎症が起き、肩に痛みが出る病気です。肩関節の動きをつかさどる筋肉のうち、大切な四つの筋肉が骨に付着する部分(腱)を腱板といい、その腱板は上腕骨の上の部分(結節部)についています。
 肩関節周囲炎は年齢とともにこの腱板の炎症や部分的な断裂、また腱板の上にある袋(肩峰下滑液包)の炎症やゆ着が起こりやすくなり、肩の痛みや動きの制限をもたらします。四十歳から五十歳にかけては筋肉の低下が現われ、特に身体を反らす筋肉(背筋群)の筋力低下がみられます。そのために身体を前に倒す筋肉(拮抗筋)が優位に働き、身体全体が丸くなり、猫背のような感じで肩が前に出てきます。これにより、胸の前の筋肉(大胸筋など)の緊張が強くなり肩の動きが制限されるのです。時として打撲などの外傷がきっかけになることもあります。また運動不足などによる筋肉の低下や、柔軟性の欠如なども原因になります。
 症状と時期により疼痛が最も強く現われる急性期、疼痛は軽快しているが運動制限が残る(拘縮)慢性期、拘縮が改善する回復期に分類されます。
 急性期では、肩周辺のかなり広い範囲に疼痛
を感じます。安静にしていても痛みは強く、夜間に激しいのが特徴です。痛みは肩だけではなく、肩から上腕にも放散します。夜間に痛みが強くなるのは、肩が冷えることや、寝ているときに上腕骨の肩峰下滑動機構(けんぽうかかつどうきこう)に長時間圧力がかかることが原因といわれています。この場合、起き上がって座位で腕を下げておくと痛みが軽減することがあります。またバスタオルを2~3回折りたたみ、腕の下に置いて腕の重みで肩が下に引っ張られることを防いだり、抱き枕などを抱えることで腕を身体の方に安定させ就寝時の痛みを軽減することができます。日常生活では衣服の着脱、入浴時に体や髪を洗う動作、トイレや上肢を上にあげようとする動きによって痛みが出たり強くなったりします。急性期では肩周辺に熱感があるときは冷やし、なるべく動かさないようにします。痛みが強いときには、消炎鎮痛剤の内服とステロイド剤の注射をします。
 急性期が過ぎて慢性期になると、安静時痛は消失します。しかし腕(上肢)をあげていく途中で痛みを感じ、肩関節の動きが制限されます。
この時期には肩をなるべく冷やさず、温熱療法(ホットパック、入浴など)が効果的です。自分で少しづつ無理をせず動かす必要があります。痛いからと動かさないでいると、肩周辺の筋力が落ちてしまいます。お風呂の中で肩をゆっくり動かすことが効果的です。また入浴後に前かがみの姿勢をとり、ペットボトルなどを持って腱を前後左右に振るという運動も効果があります。
 日々肩の痛みをかばい、背中を丸めて立ってしまいがちです。そのため身体全体のバランスが悪くなり、首の凝りや痛みなど、他の症状が出てしまうことがあります。筋力の低下によって拮抗筋のバランスが悪くなるのも肩関節周囲炎の原因の一つです。身体全体のバランスを調整すると、より早く肩の痛みを軽減させることができます。
 回復期になると運動制限も徐々に改善して運動時痛も消失します。
 肩関節に起こる痛みには、肩関節周囲炎のほかに肩腱板損傷、肩石灰沈着性腱炎などがあります。肩関節周囲炎ではX線撮影に特異的な異常所見はないので、前記の疾患を除外できます。
 肩の痛みが強く続くときは、単なる五十肩と思い込まないで早めに受診されることをおすすめいたします。
 
    高血圧 147/94ではありません     
   2014年4月、日本人間ドック学会が新たな検診の基準範囲を発表しました。血圧の基準は上限が147/94mmHgという値でした。新聞テレビ等で見られた方は多いと思います。「血圧の基準がゆるくなったのですね」という声を耳にします。
 マスコミはおもしろおかしい記事を書くのが使命なのでしょうから、意外な発表、奇をてらったような発表を積極的に取り上げます。日本人間ドック学会の発表は、「これまで異常とされてきた血圧やコレステロールの数字はデタラメですよ。だからそこのあなたも必要のない薬を飲まされているかもしれませんよ」と素直に読めば感じてしまいます。そういう論調の週刊誌もありました。
 人間ドック学会が発表したのは、自覚症状がなく過去に大きな病気をしたこともなく、高血圧が進行したときに起こる動脈硬化もない人、つまりまったく「健康な人」だけの血圧データを集めたものでした。さらに「健康な人」は喫煙なし、飲酒1日1合未満という条件付き。そして、「健康な人」の血圧の上限は147/94mmHgであった、ということです。これは単年データ解析なので、そのまま意味を持つものではないのは明らかです。
 人間ドックを受ける人というのは、比較的金銭的、時間的余裕があり、勤務する企業が全額(もしくは一部)を負担してくれるような人が多くを占めます。そのような人たちは健康に関心があり、日頃から体重コントロールに努め、定期的な運動を行いバランスのいい食事摂取ができているために、動脈硬化や他の心血管のリスクが帳消しになっている可能性が高いというわけです。
 そして皆様ご存じの通り、実際には147/94mmHgよりも低い血圧で動脈硬化をきたし、心筋梗塞や脳梗塞を起こす人がいるのも事実です。つまり人間ドック学会に所属する医師が診ているのは健康な人、スーパー健康人が大半です。
 つまり、今回の人間ドック学会の基準は、将来の心血管系疾患、腎障害予防のための管理、治療が必要な高血圧の基準とは全く異なるものなのです。
 ではどう考えれば良いのでしょうか。日頃から市民検診や会社の定期検診を受けて「全く問題ない」と言われているような方はあまり気にする必要はありません。しかし、人間ドック学会の発表ではなく、主治医の意見を聞くべきなのです。
 これだけ大きく公表されれば、患者さん、医師ともに混乱します。高血圧学会も早速コメントを出しています。
 高血圧の基準値は以前と同様、診察室で140/90mmHg以上。家庭血圧で135/85mmHg以上です。ただし、血圧は絶えず変動しています。また年齢、既往歴、合併症、臓器障害の程度等により、治療開始時期、目標値も異なります。いままで通り家庭血圧測定を継続して下さい。大切なのは「定期的な健診と生活習慣の改善」です。そして、健康のことならどんなことでも相談出来る主治医を持つことです。最近血圧が上がり気味だという人は、一度主治医にご相談下さい。

 
    めまいについて  
   

めまいは目が回るようなくらくらとした感覚の総称で、身体のバランスを保つ機能に障害が起きると生じます。めまいを訴える人の数は、厚生労働省の生活基礎調査によると、約240万人にのぼっています。症状が軽いとやり過ごしてしまうことも多いのですが、耳鼻科的な病気、内科的な病気、また頻度は少ないのですが脳の病気の重大なサインとなることもあり油断は禁物です。
 一方で、どんなに検査しても異常が見つからず、すっきりとした治療もなく、本人だけは症状の強さに苦しむということも少なくないのが問題です。症状の強さが必ずしも病気の重症度に比例しないのです。
 めまいはグルグル天井が回るような「回転性めまい」と、頭や身体がグラグラと揺れているような感覚やふらつきを感じる「動揺性めまい」、身体が宙に浮いているようなフワフワしたような感覚のある「浮動性めまい」に分けられます。
 回転性のめまいの原因場所は主に三半規管にあります。三半規管は耳の中にあり、中はリンパ液で満たされています。しかし何らかの原因でこのリンパ液が多くなりすぎたりすると、身体は動いていないのにリンパ液の圧力でリンパ液が動き、グルグルと回るようなめまいを感じてしまいます。メニエール病が代表的ですが、前庭神経炎などでも起こります。メニエール病は、めまいの発作のときに耳鳴りや難聴(特に低音の聞こえが悪い)の症状が起きます。ストレスや過労が発作の引き金になるのではないかといわれています。回転性のめまいに耳鳴りや難聴を伴わない場合は、前庭神経炎の可能性があります。風邪ウイルスによる感染や、神経への血行障害などが原因として考えられています。数日間動けないほど症状が強いこともありますが、発作を繰り返すことはありません。良性発作性頭位めまい症は、朝布団の中で目覚めた時に、グルグルと回転しているようなめまいを感じて起き上がれない。また左右の耳のどちらかを下にすると症状がひどくなるという特徴があります。
 動揺性めまいの発生場所は、脳幹や小脳にあります。脳幹は脳の一番下にあり、平衡感覚をコントロールするところです。小脳は大脳の後ろにあり、やはり平衡感覚をコントロールしています。脳幹は平衡感覚以外にも呼吸、心拍、血圧、嘔吐反射などをコントロールするところなので、めまいと同時に吐き気、呼吸が苦しく感じる、動悸、飲み込みずらい、ろれつが回らない、また高血圧や低血圧の症状がでることもあります。
 浮動性めまいは、身体が宙に浮いたようなフワフワした感覚があるめまいです。急激な高血圧で起こることがあります。浮動性のめまいは診断が難しいといわれますが、身体のどこかが麻痺したり、意識障害などを伴うような場合もあるので軽視できません。
 眼前暗黒感という、目の前が真っ暗になり意識を失いそうになるめまいは、脳が虚血状態になることで起こります。一番わかりやすいのは立ちくらみで起立性低血圧ともいいます。座った状態からいきなり立った時に、脳に血液が送られず目の前が真っ暗になりフラフラしてしまいます。疲労によることが多いのですが、お酒を飲みすぎたり、ショッキングな出来事に遭遇したり、お風呂あがりなどでも起きます。
 季節の変わり目などに起こりやすいのは、脳への血液現象にかかわるめまいです。首から脳幹、小脳、耳の奥の内耳へは、血液を送る椎骨脳低動脈が通っていて、何らかの原因で、わずかに血流が滞るだけでクラっとして平衡感覚を失い、めまいを起こします。椎骨脳底動脈の血流が原因の場合は、身体を休めることで治まりますが、週に2~3回も起きるような場合は医療機関で受診しましょう。
 めまいを感じた時は、まず気持ちを落ち着かせることが大事です。楽な姿勢で身体を休め、めまいが落ち着くまで安静にしましょう。
 また次にあげた症状は、特に見逃してはいけないめまいのサインなのでチェックしてみましょう。
○意識がおかしい
○悩みや不安は他人に話さず自分の中にため てしまう
○顔面半分や身体半分側のしびれがある
○ろれつが回らない
○手足に力が入りにくい
○ものが二重に見える
○見える範囲が狭くなったり視野が部分的に 暗い
○発作的で何かいつもと違う
 どれか一つでも当てはまる場合は、すぐに救急外来、神経内科、脳神経外科を受診されることをお勧めいたします。

 
    気胸とは  
   人の胸部は、胸椎(背骨)、肋骨、助間筋(肋骨の間にある筋肉)、胸骨(前胸部にある骨)などでできている筒のような胸壁の中に、肺、心臓などがすっぽりと収まっています。胸膜は肺を含む2枚の薄い膜で、肺そのものの表面を包む臓側胸膜と胸の壁の内側をおおっている壁側胸膜とがあります。2枚の膜の間のスペースを胸腔といいますが、ここにはわずかな胸水があり呼吸にともなって肺と胸の壁がこすれてしまわないよう潤滑剤の役割をはたしています。
 気胸とは肺の一部が破裂して穴が開き、肺内の空気が2枚の膜の間のスペースにもれてしまうことをいいます。
 気胸は自然に起きてしまうもの(自然気胸)と、病気が原因で起きる気胸(肺気腫、肺がんなどが原因で続発性気胸と呼ばれます)、外傷による気胸(交通事故などで肋骨が折れて肺に刺さることが原因で起きたり、病気の検査で針を刺すことなどで起きるもので外傷性気胸と呼ばれる)があります。また女性の場合、生理の前後に発症するという月経随伴気胸という病気もあります。これは子宮内膜症が横隔膜や肺に広がり、生理の際にはがれ落ちて起きます。静脈や動脈の損傷を伴う場合は血気胸といわれます。
 自然気胸は10歳代後半から30歳代に多く、背が高く細長い体型の若い男性に発生しやすい病気です。胸膜近くの肺の「ブラ」と呼ばれる壁が風船様に薄くなったところが破れてしまうことによって起きます。自然気胸は急に肺に穴が開いて空気が胸腔内にもれるため、ひどいときには肺が圧迫されてしまい胸の痛みに襲われることがあります。また呼吸困難、頻脈,動悸、咳が止まらないなどの症状を伴います。発症初期には肩や鎖骨あたりに違和感があることがあります。
 胸腔に漏れ出した空気が対側の肺や心臓を圧迫している状態を緊張性気胸といい、すぐに治療を要します。この場合は血圧が一気に低下してショックをきたすことがあるので、緊急に胸腔穿刺を行わなくては死に至ることがあります。 肺は心臓と同じように血液が体内を流れるときに必ず通過する臓器なので緊急性が高くなります。ただしこの病気で呼吸困難になった場合は、人工呼吸を行うことは厳禁です。人工呼吸は胸腔内圧をさらに高めてしまうため、より危険な状態になります。
 気胸の初期段階では胸部X線検査で様子を見ながら経過観察をします。なるべく普段の生活で無理な姿勢や運動をせず、安静にして自然治癒を待ちます。
 中等以上の気胸の場合は通常胸部の脇の部分を局所麻酔して数ミリ切開し、胸腔ドレナージという処置により吸引を行います。切開したところにチューブを挿入し、機械を使ってたまっている空気を吸引します。胸腔の中を脱気して肺がよく膨らむようにするためです。酸素をよく取り込めるようにして、あとは安静を保ち気胸が自然治癒できるのを待ちます。入院は数日間から1週間くらい必要です。
 気胸を繰り返したり胸腔ドレナージを行っても症状が改善しないという場合は、手術によって嚢胞の切除をする治療が必要になります。現在は胸腔鏡手術が一般的です。胸に1㎝程度の穴を3つ開け、胸腔鏡という細いカメラを胸腔内に入れて、モニターに映し出される画面を見ながら行う手術です。
 治療後もしばらくは安静を要します。気道内の大きな圧力変化をもたらすこと、飛行機への搭乗、管楽器演奏、スキューバダイビングなどは、事前に医師の許可を得ることが望ましいことです。禁煙はもちろん実行し、咳にも注意して早めに咳止めを服用しましょう。1か月程度安定状態が続けば運動も再開できるようになります。
 気胸は再発しやすく、再発率は自然治癒の場合30~50%ですが、胸腔鏡下手術の場合は5~10%と少なくなります。
 どんな病気にもいえることですが、気胸も初期段階での治療が大事です。普段の生活で息苦しさを感じたり咳が続く場合は、早めに受診されることをおすすめいたします。
 
    お風呂での事故にご注意ください  
    日本人にとってお風呂は身体を清潔に保つだけではなく、身体を温め、日々の疲れを癒す大切な時間です。しかし、入浴中の事故(溺死、心疾患、脳疾患などの突然死)で亡くなる人は年間およそ1万7千人という推定値が東京都健康長寿医療センターから発表されました。特に11月から3月の寒い時期の事故が多く注意が必要です。
 欧米では、身体の清潔保持が入浴の主目的でシャワーで済ませる人が多いのに反して、日本では入浴を楽しむ、リラックスするという目的が重視されていることが、入浴中の事故が世界でも最多である原因と思われます。また事故死の多くが、戸建ての自宅で一人で入浴している元気な高齢者で起きています。もし入浴中でなければ死亡せずにすんだのではないかという点で、高齢者の重要な健康問題といえるでしょう。
 入浴の三大効果といわれるのが温熱作用、静水圧作用、浮力作用です。温熱作用は、血管拡張による血行促進によって組織への酸素供給を増加させる効果のことで、心臓への負担軽減、心拍出量の増加をもたらします。
 しかし高齢者や心機能状態によっては逆効果となる可能性があります。またこの効果は湯温や室温の違いによっても異なります。脱衣所が寒いところでは血管が収縮するため血液は心臓、脳、消化管などに偏って分布します。
 高温浴(およそ42度以上)の場合、入浴後温熱作用によって末梢の皮膚(体表面)の血流が著しく増加します。脳や心臓の動脈硬化があると、これらの臓器を流れる血液量が急激に減少し、虚血(局所の貧血)状態になります。また長く高温で入浴すると、発汗による循環血液量減少や血液凝固亢進状態を起し脳梗塞や心筋梗塞の引き金になりやすいのです。
 入浴に伴う血圧の変動もあります。脱衣所の室温が低い場合、入浴前にはすでに血圧上昇が起り、高温浴では入浴直後にさらに上昇します。その後血圧は低下しはじめ、入浴後およそ4、5分すると最高血圧は入浴前より5~30%低下します。入浴時間が長くなったり、お湯の温度が高温であったり、高齢者、高血圧症の人では変化率がさらに著しくなります。
 浴槽から出るときの立位動作に伴い、さらに下降することがあり、これは高齢者に多くみられる「食事後性低血圧」「起立性低血圧」と同じメカニズムで起きると考えられています。溺没、溺水の原因となる「意識障害」「湯のぼせ」「湯あたり」が生じる要因です。
 静止した水中では、大気圧と深さに比例した水圧(静水圧)が働いています。下肢は血液を心臓に戻す重要な役割をになっており、これを下肢ポンプ作用といいます。水中で下肢は深いところに位置するので、加わる静水圧によって、全身浴では胸囲は1~3㎝、腹囲は3~5㎝縮小します。胸郭が圧迫され腹囲が縮小した結果、横隔膜を持ち上げます。そのため心臓から肺への血流も抑えられるので心臓の負担が増加してしまいます。みぞおちくらいまでのお湯の位置でゆったりと入る半身浴ではこのような負担が少ないといわれています。 
 もしもお風呂での事故を発見した場合は、①入浴中の意識障害を認めたら、顎を風呂蓋に乗せて溺没を防ぐ。②湯栓を抜く。③力があれば浴槽から搬出する。その後で救急要請をする。④力がなければ、搬出せずに救急要請をする。⑤浴槽から救出できれば、仰臥位で呼吸確認する。
 またお風呂の事故として、洗い場の床に石けんや洗剤、入浴剤が残っていたために滑って転倒し骨折や打撲をするケースが多く、手すりの設置など転倒を防ぐ工夫が必要です。
 乳幼児のお風呂での事故の年齢は1~3歳が6割を越えます。この年齢層は活発に動くようになる一方、バランスがまだうまくとれないので事故の発生が高いと考えられます。 入浴時以外でも、子供が浴槽のふたに乗って遊んでいて転落するという事故も多く、乳幼児は頭が重いので浴槽を覗いていて転落したり、お風呂の残り湯などの水位が低くても、子供はパニックを起し溺死にいたることがあります。保護者の十分な注意が必要です。
 
    AED(自動体外式除細動器)の使用方法   
   AED(自動体外式除細動器)とは突然心臓が止まって倒れた人の心臓のリズムを、心臓に電気ショックを与えることにより、再び正しいリズムに戻して蘇生するための治療機器です。
 心停止の原因として、心臓の筋肉が痙攣をおこし、心臓から血液が全身に送り出せなくなる危険な不整脈、心室細動、心室頻拍があります。心室細動は急性心筋梗塞や心臓振盪などにみられる危険な不整脈で、唯一AEDによって治療が可能です。
 AEDは空港や駅、ホールなど不特定多数の人が出入りする場所に設置してあります。当院待合室にもありますので場所をご確認ください。 平成16年から一般市民もAEDを使用できるようになりました。医師や救急救命士の到着を待っていては、倒れた人の多くを救命できません。心室細動発生から除細動までの時間が、1分遅れるごとに7~10%ずつ助かる人が減っていきます。現場に居合わせた人が、心肺蘇生法の正しい知識や使用方法を知っていれば、救命できる可能性が高くなります。心肺蘇生法では、胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸、AEDによる電気ショックがあります。AEDを起動すると音声による指示がありますので、一般の人でも操作は簡単です。
①倒れている人がいたら肩をたたいて呼びかけ、反応がなければ119番とAEDの手配をする。
②胸と腹部の動きを見ていつもどおりの呼吸でなければ「呼吸なし」と判断する。(しゃくり上げるような不規則な呼吸が見られる場合も含む)。
③普段どおりの呼吸がない場合はすぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を30回行う。
④胸骨圧迫の後人工呼吸を2回行う。
⑤AEDが到着したら次の動作をする。 

◆AEDの電源を入れる(ふたを開けると電源が入る機種もあります)。
◆傷病者の衣類を開き、電極パッドを電極パッドに描かれている絵のとおりに肌に直接貼り付ける。胸が汗や水でぬれている場合は、タオルなどでふき取ってから電極パッドを貼る。胸に貼り薬が貼られている場合は、それをはがし薬剤をふき取ってから電極パッドを貼りつける。未就学の小児には小児用パッドを使用する。パッドがない場合は成人用のものを使用する。(1歳未満の乳児には使用できません)。
◆電極パッドを貼りつけると、自動的に心電図の解析が始まる。心電図の解析中は除細動を行う必要があるかどうかを調べているので、誰も傷病者に触れていないことを確認する。「ショックは不要です」などの音声メッセージが流れた場合は、ただちに胸骨圧迫を再開する。
◆AEDが除細動を行う必要があると判断すると、「ショックが必要です」などの音声メッセージが流れ、自動的に充電が始まる。充電が完了すると、「ショックボタンを押してください」などの音声メッセージが流れショックボタンが点灯する。「みんな離れてください!」と周囲に注意を促し、誰も傷病者に触れていないことを確認してからショックボタンを押す。
◆心肺蘇生とAEDの手順は、救急隊に引き継ぐか、何らかの応答や嫌がるなどの体動が出現したり普段どおりの呼吸が出現するまで続ける。
 目の前で人が倒れるという緊急事態に遭遇したときは、慌てないで手当ができるように、応急手当を学び身につけておきましょう。大切なことは、「自分ができることを確実に行う」ということです
 
 
    骨粗しょう症の治療について  
    「骨粗しょう症」は、骨のカルシウム量が少なくなり、骨の密度が低下して骨がもろくなり、ちょっとしたことでも骨折しやすくなる病気です。加齢や女性ホルモンが少なくなる閉経、食事でのカルシウム不足や運動不足、長年の生活習慣、さらに薬、関節リウマチや糖尿病などの病気が原因のこともあります。それらにより、骨の新陳代謝(骨吸収と骨形成)のバランスがくずれるために起こるのが骨粗しょう症です。
 高齢者の骨折は治りにくく、それをきっかけに寝たきりになることもありますので、早めの治療が大切です。骨折したことのある人、喫煙や飲酒量の多い人は骨密度が低下しやすく、同じ骨密度でも、より骨折しやすいといわれます。家族に骨粗しょう症の人がいる方も気をつけましょう。
 骨の量が減ってきても、はじめは自覚症状がないことがほとんどです。気づかないうちに骨粗しょう症がすすむこともありますので、注意しましょう。昔は老化現象と思われていた、背中や腰が丸くなる、痛くなる、背が縮むなどの身体の変化は、骨粗しょう症の症状の一つなのです。
 治療で大切なことは、薬や生活習慣の改善で骨量を増やして骨折を防ぐことです。骨粗しょう症のごく初期ですと、カルシウムを含む食品を積極的に摂取する、適度な運動と日光浴を行うなど、骨量を増やす生活習慣を心がけるだけでよい場合もあります。
 症状が進んでいる場合は、生活習慣の改善に加えて薬物治療も行います。若いころのような健康な骨に戻すことは難しいですが、最近では良い薬が開発されています。あきらめずに治療を続けましょう。
 骨粗しょう症の治療薬のなかでも、国内外で高く推奨されているのがビスホスホネート薬です。ただしこの内服薬は食物や他の薬剤と一緒に服用すると吸収が悪くなります。服用時に水をたくさん飲む、服用後は身体を横にして休まないなど、飲み方に細かいルールがあります。
 この欠点を克服した新しいビスホスホネート薬として、すでにアメリカやドイツなどで最も多く使われている、一か月に一回の静脈注射が日本でも発売になりました。
 注射薬は、お薬の成分が確実に血液の中に届き効果を発揮します。飲み薬が飲みづらい、服用を忘れがち、胃腸が弱い、他の飲み薬が多いなどの患者さんも、楽に確実に治療を受けることができます。一回の注射は短時間で終わります。骨粗しょう症は、ご自分にあったお薬や注射で治療を続けることが大切です。
 
    閉塞性動脈硬化症とは  
   「閉塞性動脈硬化症」とは、下肢(股関節から足先まで)の血管の動脈硬化が進み、血管が狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなり、歩行障害が起こる病気です。下肢の動脈に動脈硬化がある場合、心臓や脳の血管にも動脈硬化があることが多いので注意が必要です。閉塞性動脈硬化症にかかると他の血液疾患を合併していることもあり、胸の痛みなどの自覚症状(狭心症)や、身体の片側の運動麻痺(片麻痺、一過性脳虚血発作)が起きなかったかを確かめることも大事です。
 症状として、下肢、特に足先の冷たい感じやしびれが最初に起きます。足先を触れると冷たく、皮膚の色は蒼白または紫色で、足背(足の甲)の脈が弱くなったり、脈が触れないこともあります。左右の足に同時に起こることはないので両足を比べるとよくわかります。症状が進むと間歇性跛行(かんけつせいはこう)、つまり歩くことで起きたり止んだりする歩行障害で、歩行をはじめて下肢の運動を行うことで、ふくらはぎやお尻や太ももに疲れ、だるさ、痛み、こむら返りなどの症状が起こり歩行が困難になります。しかしこの症状は10分ほども休むと軽くなるかなくなります。 
 間歇性跛行をともなう足の病気は他にもあります。背骨や下肢の神経障害(脊柱管狭窄症など)からでも似た状態になりますので、こういう症状があるときは必ず受診して区別してもらう必要があります。閉塞性動脈硬化症の場合は、一定の距離以上歩いたときに歩行障害が起きやすく、症状が毎回同じようにでてきやすいというのが特徴です。脊柱管狭窄症は神経の病気で、閉塞性動脈硬化症は血管の病気という違いがあります。
 血液循環が悪くなり足先の皮膚が傷つくことが多くなると、皮膚が破れ黒くて深い傷になり潰瘍になることがあります。こうなると激しい痛みが起きて治りにくくなります。傷も足の指先から足部、下肢へと拡大し皮膚組織や筋肉まで脱落し骨が露出し下肢壊疽(かしえそ)になってしまいます。壊疽になると強い痛みが続き発熱します。放置しておくと全身が衰弱して死に至ります。
 閉塞性動脈硬化症を予防するには
①禁煙
②足の保温・保護・清潔を守る
③歩行(歩くことで血流を増やし血行を促す)
④水分摂取(水分が不足すると血液が濃くなり流れが悪くなり血管を詰まらせます)
⑤動脈触知(血流を確かめるため脈の触れを確認し足の状態を観察する。皮膚の色、皮膚温、傷の有無などに注意する)
などがあります。
 閉塞性動脈硬化症の治療には次のようなものがあります。
①禁煙…喫煙と動脈硬化症の因果関係がはっきりしているので予防・治療の大原則
②薬物療法…足へ向かう血液を増やして症状を改善する一方、心臓や脳の血流もよくすることを目的として、抗血小板薬や血管拡張薬が使われています
③炭酸泉療法…人工炭酸泉発生装置で炭酸ガスを発生させその中に足をつける
④運動療法…初期治療として行われ、血液不足の足への血流を増やし血液中の酸素の利用効果を高める
⑤血行再建術…カテーテル治療、バイパス手術など。運動療法や薬物療法で十分な効果が得られない場合に行う
 閉塞性動脈硬化症は進行性の病気なので、思い当たる症状があった場合は早期に受診し治療することが重要です。
 
    受動喫煙とPM2・5  
    PM2・5とは、空気に含まれる直径が千分の2・5ミリ未満の微小粒子のことで、車や工場の排ガスに含まれる成分が代表格ですが、タバコの煙もそのひとつでフィルターを介さずに周囲に広がる副流煙に多いとされています。
 1立方メートルの空気に含まれる重さμg/㎥(マイクログラム/立方メートル)であらわされます。
PM2・5の主成分は、元素状炭素(いわゆる黒いスス)、有機炭素(芳香族炭素水素などの発ガン物質等)、硫酸イオン、硝酸イオン、アンモニアなどの化学物質と重金属です。PM2・5は大変小さいのでたやすく肺の一番奥の肺胞まで入り込み、そこで喘息や肺ガンなどの呼吸器系疾患だけでなく、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、ガンなど様々な病気のリスクを高めることが分かっています。
 アメリカなどの調査によると、PM2・5が10μg/㎥増えると、心臓や肺の病気の死亡率が14%、全死亡率が6%増えます。大気汚染はすべての住民に影響するので、PM2・5がわずか10μg/㎥ 増えるだけでその地域の住民の死亡率が6%増えるという深刻な事態になってしまいます。
 世界保健機構は規制目標とすべき大気のPM2・5を24時間値で25μg/㎥未満、年平均で10μg/㎥未満とすることを勧告しています。日本では当面15μg/㎥を目標としています。
 アメリカの環境保護庁が作った空気の質ガイドラインでは、現在問題になっている北京周辺のPM2・5は緊急事態のレベルです。現在日本での大気汚染のレベルは低くても、日本国内の禁煙でない飲食店のPM2・5濃度を「禁煙推進学術ネットワーク」が喫煙可能な喫茶店で測定したところ、平均371μg/㎥と、北京の屋外と同レベルという驚く数値が出ました。分煙してガラス壁で喫煙席が分離されていても、出入り口がエアカーテンの場合、禁煙席にも煙が流れ込み200μg/㎥を超えることが確認されました。また建物内に喫煙室を設けても、喫煙者が出入りする際にタバコの煙が漏れ、非喫煙者の受動喫煙を完全には防げないばかりか、約9平方メートルの喫煙室内で10~15人が喫煙した7分間を測定すると、PM2・5濃度の最高値は北京の大気汚染が最悪だった日の約2倍の汚染レベルになったと報告されています。日本のPM2・5問題の焦点は、毎日の大半を過ごす屋内での受動喫煙をどうなくすかにあるといえます。


 世界32カ国の室内の空気環境を比較した調査では、建物内が全面禁煙となっている国の室内のPM2・5濃度は、8~22μg/㎥だったのに対し、喫煙が容認されている国ではその数倍、最大で22倍高いという報告がされています。
 産業医科大学・健康開発科学研究室の大和浩教授は、「中国からのPM2・5の飛来は冬場の3か月。年間にならせば、いまのところ健康への影響が問題となる量ではない。健康への影響ではむしろ禁煙でない飲食店などの受動喫煙の方が問題だ」と指摘されています。また「受動喫煙による死亡リスクは中国から飛来するPM2・5の値よりはるかに高い。喫煙者が吸い込んだ煙は3~4分間は排出されており、その間喫煙者はPM2・5をまき散らすことになる。建物内では分煙しても受動喫煙は防げず、解決には全面禁煙しかない」と警告されています。
 
    内臓脂肪を落としましょう  
   私たちの身体の脂肪には内臓脂肪、中性脂肪、皮下脂肪があります。これらが蓄積した状態の肥満は、あらゆる生活習慣病の要因となります。
 内臓脂肪とは、腹筋の内側、肝臓や胃腸が納まっている腹腔内の隙間についた脂肪です。血管に入りやすく、糖尿病や高脂血症、高血圧症などの生活習慣病の危険因子に強い関係があるといわれています。ホルモンの関係上、女性より男性に蓄積しやすく、加齢とともにより蓄積しやすくなるという特徴があります。
 多くの人は、体重や体脂肪の測定結果や外見上の変化を目安にして減量に励みますが、これらの目安から減量の必要性がないとされる人でも、体脂肪のつき方によっては注意が必要で、
内臓脂肪の蓄積の度合いによっては、たとえ肥満度が正常範囲内で痩せてみえても、内臓脂肪型肥満として減量治療が必要な場合があります。
 内臓脂肪がどれだけついているかを知るには
CTスキャンで検査しますが、現在保険適応外で一般的ではないので「チェック&チェック」を試してみましょう。
☆体重は変わらないがベルトがきつくなった
☆太ってはいないがお腹だけがぽっこり出てい る
☆お腹が出ているのにたるみをつまんでもあ まり厚みがない
☆下半身より上半身の体型が気になる(太っ ている)
☆ウエスト÷ヒップが0.8以上である(ウエス トはおへその高さでの腹回り、ヒップはお 尻回りで一番大きい部分を測定する)
 
 内蔵脂肪型肥満では、お腹が出ていることが特徴です。太っていなくてもお腹が出ている人、下半身より上半身が太っている人は要注意です。またお腹が出ていて、そのたるみがつまみにくい人は皮下脂肪が薄いと考えることができ、その分内臓に脂肪が多くついている可能性があります。
 内臓脂肪はいわゆる「普通預金」のようなものです。すぐに溜まる一方、少し生活習慣を改善することで簡単に落とせるといわれています。一方皮下脂肪は「定期預金」と表現され、いざというときのためにとってある反面、なかなか使う機会も少なく減らすのに苦労するということもいわれます。いずれにしても日々の生活習慣の改善で脂肪の過剰な蓄積を防ぐことができます。
 内臓脂肪型肥満の食事で気をつけることは次のことです。
①甘いもの、油っこいものの食べ過ぎ、お酒の 飲み過ぎに注意しましょう
②夕食の量は少なめに、朝と昼をしっかり食べ ましょう
③低カロリーで満足感のある食事をしましょう
 また栄養のバランスを考えた食事をすることが大切です。「バランスのよい食事」を具体的にすると、まず1600Kカロリーを基準にします。『80Kカロリー=1単位』とし、糖質源、蛋白質源、ビタミン・ミネラル源、食物繊維、脂質源、調味料で合計20単位になるように摂取します。
 バランスのよい食事がしたくても、外食やコンビニなどのお弁当という場合は、「野菜半分食」を試してみてはいかがでしょうか。それは、「主食・肉や魚」と、「野菜・海藻・きのこ・こんにゃく」を半分ずつ摂るというものです。主食を1、肉や魚を1、野菜・海藻・きのこ・こんにゃくを2の割合です。
例えば市販のお弁当の場合、ご飯2・肉類1.5、野菜0.5というものが多いと思います。お弁当の他にきんぴらごぼうやお浸しなどを別に購入し、お弁当からご飯、から揚げなどを半分残し、その空いた場所にきんぴらごぼうなどを加えます。これでご飯・肉類・野菜=1対1になります。
 もし先ほどのお弁当を一人前食べたいということであれば、そのお弁当と同じ量の野菜も食べましょう。食べきれないのであれば、やはりお弁当も残しましょう。
 食生活だけではなく、日常的に運動を心がけることも大事です。積極的に歩いたり、自転車に乗ったりする有酸素運動で体脂肪を燃やすことができます。また筋肉を鍛えて基礎代謝を上げると体脂肪が蓄積されにくくなります。しかし、おおげさな運動をしなければととらえずに、空いた時間でのストレッチなど、軽い運動を毎日続けることが大切です。見かけだけではなく、内臓回りの脂肪も適度な「内臓スリム」をめざしましょう。
 
    浮腰式腰痛治療器 「プロテック」  
   昨年12月19日に当院に設置しました、浮腰式腰痛治療器「プロテック」についてご説明いたします。腰痛でお悩みの方は是非一度お試しください。
 
   ―減圧治療の原理―
 自分一人では歩くことが出来ないほどの急性腰痛症の方の多くは、プールに入って浮いた状態やベッドで横になると痛みが和らぎます。
 また、両脇を誰かに抱えてもらわないと動けないほどの腰痛も、松葉杖や歩行補助器具で荷重を減らしてあげると自力での活動が可能になります。
 これは、全体重の約60%といわれている上半身の重さが常に腰部(腰椎)に掛かりストレスを与えているためといわれています。
 ―腰痛治療器プロテックとは?―
 腰痛治療器プロテックは、この腰部に掛かっている荷重を安全に、また効果的に減らすことを目的として開発された医療機器です。
 プロテックは、患者さんを座らせた状態からウエストアームベルトで上半身を支え、椅子を降下させる事により椎間板内圧が軽減された状態をつくり出すことができます。
 この際に決して牽引は加えていません。また、腰から下の下半身を宙に浮かすことで自然な状態でストレッチを行う事ができます。
 椎間板内圧が減圧された状態にできることから、強い腰痛は大幅に改善され、各種筋肉・骨盤・腰椎・股関節等の運動療法を痛みが無い状態でストレッチする事ができます。
 ―動いて治す―
痛みのために身体を動かせない事が腰痛を慢性化させてしまいます。
そこで、症状に合わせて患者さん自身で運動療法を行うことが必要になります。腰部周辺の浅層筋(比較的浅い部分の筋肉)から深層筋(比較的深い部分の筋肉)に至るまでの血流循環を促進し、筋力・周辺組織を向上させることで、腰部から臀部・股関節の痛みを軽減させます。
―プロ野球選手の大記録達成を助けた腰痛治 療器―
昨年6月24日、プロ野球ソフトバンクホークスの小久保裕紀選手が、プロ野球史上41人目となる通算2000本安打を達成しました。40歳を過ぎてから2000本安打を達成した選手は、これまで5人しかおらず、40歳8ヶ月での達成は、歴代年長者第3位(歴代年長者第1位は、東京ヤクルトスワローズの宮本慎也選手の41歳5ヶ月)。
 しかし、今回の大記録の快挙で話題になったのは、年齢的なことだけではありません。2000本安打まであと1本に迫りながら持病の腰痛により、選手登録抹消、長期離脱かと予想される中、短期間で奇跡的に回復し、大記録を達成したという点にも注目が集まりました。
大記録達成のちょうど一ヶ月前、2000本安打の大記録達成を目前にした状態で、痛み止めの薬を服用しながら強行出場していた小久保選手の腰痛は、歩く事も困難な状態になりました。
MRI検査の結果、椎間板ヘルニアと診断され、選手登録を抹消となりました。
この時は、「しゃべるだけでも痛いし、日常生活にも支障がある・・・」状態だったそうです。
電気治療や痛み止めの注射を打ち、自宅静養を続けましたが、プロスポーツ選手にとっての静養とは「筋力低下」というリスクを伴うため、静養期間が長引くことになった場合を考えた時、大変な危機感があったそうです。
 手術という選択肢もありましたが、「もし手術に踏み切れば、リハビリ期間も含めると今期中の回復が絶望的」となる可能性があった事から、選手としての年齢的なことも考え手術に踏み切れずにいました。
具体的な復帰の目処が立たない時に、専属トレーナーからある治療器を紹介されました。それが、当院に導入した浮腰式腰痛治療器プロテックです。
小久保選手もはじめは恐る恐るプロテックに乗り、約10分後に発した第一声は「あれっ、おかしい・・・痛みがない・・・」と驚きを隠せなかったそうです。
その後、毎日10分間プロテックを使用し、腰部を浮かした状態での、治療と運動療法により復帰への道が奇跡的に開け、大方の予想を覆す速さで復帰し、大記録を達成しました。
 小久保選手は、「今回の奇跡的な回復は、プロテック抜きでは語れない」と話し、1回10分、毎日治療を続ける現時点でも腰痛の再発はないといいます。
 
    足の痛み  
   歩行を支える人間の足は大変複雑な構造になっています。足は身体全体の重さを「かかと」「第1指のつけ根」「第5指のつけ根」の3点で支え、この3点を結ぶ形でアーチ(土踏まず)を形作ります。アーチは体重がかかると少し平らになり、足が上がるとまた元に戻るというクッションのような衝撃吸収力をもっています。そのおかげで長時間立ったり歩いたりすることが出来るのです。
 現代社会では足の障害を持つ人は多く、過度なスポーツ、合わない靴や間違った歩行、加齢などで足に痛みをひきおこしてしまいます。
 ☆足底筋膜炎
 足底筋膜炎とは、足底筋膜とよばれるかかとの骨の下側と足の指のつけ根(母指球)をつないでいる丈夫なひも状の組織が炎症をおこした状態をいいます。足裏のかかとに近いところが、朝の歩き始めに体重をかけたときや歩いているときにピリッピリッと痛む症状です。ひどくなると第1指を甲側に強くそらしても同じように痛みます。このような症状をおこす人の特徴は「指上げ歩き」をしています。第1指の踏ん張る力が弱く、歩行時に足指全体が上に向いているため、足裏の筋肉が余分にひっぱられることになり、その付着部が炎症をおこしてしまいます。偏平足の人や逆アーチが高すぎる人に多くみられます。足底筋膜への負荷と痛みを軽減するには、テープによる固定、土踏まずのアーチを支持する装具の使用、ステロイド薬の注射などがあります。
 ☆外反母趾と腱膜瘤
 外反母趾は第1指が変形した状態で、第1指のつけ根は外側に向けてふくらみ、指先は第5指側に向いて曲がります。腱膜瘤は、第1指のつけ根にある滑液包(液体を含んだ袋)が靴との摩擦により腫れて痛む状態で、外反母趾によっておこります。痛みはステロイド薬と局所麻酔薬の混合液を注射して治療します。腱膜瘤を保護するパッドをつけたり、患部の圧迫を減らすように調整された靴をはくと軽減します。重度の痛みを伴う腱膜瘤や外反母趾は外科手術で足指の位置を矯正します。
☆ハンマー足指
 ハンマー足指は足の指の第2指、第3指、第4指が縮んだ状態で硬直することです。ハンマー足指の原因は、長年にわたって足に合わない靴を履き続けることです。指の一部が正常より高い位置にあると、過剰な摩擦をおこし、その部分に潰瘍ができることもあります。つま先を刺激しない足にあった靴を使用することが大事です。  
 ☆モートン病
 主に第4指のつけ根におこる痛みをいいます。第4指のつけ根部分に「チクチク」「ピリピリ」とした痛みや、棘か針でもささっているのかというような痛みがしたりします。また灼熱感やほてり感などの違和感があることもあります。外反母趾、指上げ足で足指が地面に接地しない歩き方をして、第4指のつけ根を多く地面に打ちつける歩き方の場合におこります。指のつけ根を歩くたびに打ち続けていると骨頭部分の軟骨が変形して棘のようになり、歩くときに回りの神経を圧迫し刺激することが原因です。
☆中足骨胼胝腫(ちゅうそくこつべんちしゅ)
 足裏の指のつけ根に出来ている分厚いタコで、角質層が厚くなりすぎて、歩くときタコが異物となり痛みを感じます。またタコの一部が角質層より深い皮下に達した場合、皮膚呼吸をするために真ん中に芯が出来るのが魚の目です。外反母趾や指上げ足があると、歩くとき足指が地面に接地しないで足指のつけ根を地面に打ちつけ過ぎてしまい、中の骨を守ろうとする防御反応が起こり、角質層を厚くします。
 ☆踵骨骨底棘(しょうこつこつていきょく)
 朝の歩き始めにかかとの底にチクチクとした痛みやズキーンとするような痛みがあり、慣れてくると少し和らぐ症状です。進行すると歩くたびに激痛があり、かかとをついて歩くことがつらくなります。また患部を押すと激痛とともにかかとの骨の出っ張り(骨棘)とよばれるトゲ状の骨を感じます。偏平足や指上げ足により足指の踏ん張る力が衰えると、重心がかかとに偏るためかかとを多く突き過ぎることが原因です。
 ☆足根管症候群
 足根管症候群はかかとと足の裏に通っている神経の圧迫や損傷によって、足首、足、つま先の痛みが引き起こされた状態で、焼けるようなピリピリする感覚です。合わない靴を履いたときに痛みがおこります。
 以上のような痛みの基本的な予防対策は、足の指や関節に無理な負担をかけない自分の足の形に合った靴を選ぶことです。また足の裏の筋肉を鍛えることも大切です。靴選びのポイントは、①足の指が自由に動くこと ②靴の先端が第1指の方によっていること ③靴が三角形でないこと ④かかとと甲の2か所がフィットしていることです。
 足の指や足裏の筋肉強化には「タオルギャザー」が有効です。用意するものはタオルです。①床にタオルを置き足をのせます。このときかかとの部分はタオルの外に置いておくと動作がしやすくなります。②足の指を曲げてタオルをつかみます。第1指だけを使うのではなく、第5指を意識して全体的につかうように心がけます。③タオルをつかんだまま足先を少し浮かせその後タオルを離します。タオルを離したら、①にもどり繰り返し徐々にタオルを引き寄せていきます。すべてのタオルを引き寄せるまでおこないます。
 また「ホーマン体操」もよいでしょう。用意するものは幅の広いゴムバンドです。床に足を投げ出して座り、両足の内側を合わせ用意したゴムバンドを両方の足の親指にかけます。かかとを合わせたまま支点にして足先を外側に回します。ゴムバンドが伸びて親指を内側に引っ張るので指は内反して矯正位置に近づきます。5~10秒間この位置を保った後に足を戻してゴムバンドをゆるめます。
 
 
    インフルエンザについて  
   
 日本では、毎年数100万人~1000万人がかかるとされるインフルエンザ。高齢者、小さな子供、合併症のある患者さんなどでは命にかかわることもある危険な病気で注意が必要です。
 一般にかぜの症状は、喉の痛み、鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、咳、発熱(38度未満)などの局所的症状であるのに対して、インフルエンザの症状は、高熱(38度以上)、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感、咳、喉の痛み、鼻水など全身的な症状が中心で、かぜと似ているところもありますが、インフルエンザの方が症状が強く、肺炎などの合併症を起こす危険性も高いといわれています。
 インフルエンザや肺炎などの感染症にかからないためにも、日頃からできる予防策として、日常生活では、①栄養と休養を十分とることで体力をつけて抵抗力を高めましょう。②人ごみを避けることで、病原菌である細菌ウイルスを寄せ付けないようにしましょう。③ウイルスは低温、低湿を好み、乾燥しているとウイルスが長時間ただよってしまいます。加湿器などで室内の適度な湿度を保ちましょう。④外出後の手洗いは、接触などによる感染を防ぎ、うがいは喉の乾燥を防いで口の中を清潔にすることで、肺炎やインフルエンザ感染を起こす病原菌を減らすことにつながります。⑤日常で必要に応じてマスクを着用することも効果的です。インフルエンザや肺炎にかかった人は、咳やくしゃみの飛沫から人に感染するのを防ぎましょう。自分がかからないためにも、人にうつさないためにもマスクを活用しましょう。⑥最も確実な予防法は、ワクチンの接種です。
 インフルエンザや肺炎などの感染症は冬に多くなり、インフルエンザの流行期は、日本において例年12月から翌年3月くらいまでです。ワクチンは接種してすぐ効果が期待できるわけではなく、抗体ができるまでにおよそ2週間かかるとされ、流行前に接種を受けることが大切です。遅くても11月下旬から12月上旬までには接種を受けましょう。
 インフルエンザワクチンは、インフルエンザの種類がその年により異なるため、毎年接種する必要がありますが、肺炎予防のワクチンは、約5年間効果が持続します。特に高齢者や、心臓、肺に慢性の病気のある人、気管支ぜんそくを持っているハイリスク群は、重症化を防ぐためにも、両方とも接種するのがのぞましいとされています。
 ワクチンの安全性は高く、副作用が少ないとされていますが、過去のアレルギー歴の有無や、接種当日に発熱や急性疾患にかかっていないかなどを確認して接種します。
 接種を受けた日は激しい運動を避け、入浴もなるべく避けましょう。接種後数日中に注射した部分が赤くなったり、腫れたり硬くなって痛みがでることがあります。発熱や頭痛、下痢、倦怠感などの全身症状がみられることもありますが、通常2~3日でこれらの症状は消えます。ご心配な時には主治医にご相談ください。注意が必要なのは、接種直後からおよそ30分くらいまでの間に、じんま疹、呼吸困難といった急な副作用が現れることです。そのため健康状態に気をつけ、医師と連絡がとれるようにしておきましょう。当院では十月上旬からインフルエンザワクチンの接種を行います。ご不明なことはご遠慮なく窓口、医師におたずねください。

 
    へバーデン結節と爪の病気  
   手の指の関節が赤く腫れあがり痛みが続く場合、まず関節リウマチを疑うことが多いのですが、第一関節だけが腫れて痛むのであれば、「へバーデン結節」の可能性が高くなります。 
へバーデン結節とは、指の第一関節の甲側にできる変形性関節症です。原因は不明で、40代以降の女性に多く発症します。この疾患を最初に報告したへバーデン博士の名前からそうよばれています。
 主な症状は、人差し指から小指にかけて骨の変形による膨らみがあり、第一関節が赤く腫れたり、指が曲がったりして痛みを伴い、強く握ることが難しくなり動きが悪くなります。一般的には数年の経過のうちに変形が止まり痛みもなくなりますが、年数には個人差があります。痛みがあるときは安静にし、指先に過度な負担がかかることを避けましょう。痛くても指を使わなくてはならない場合はテーピングするとよいでしょう。
 治療は、局所の安静、貼り薬、塗り薬、テーピングなどがあり、痛みや炎症が強い場合は消炎鎮痛剤を使用します。テーピングは局所の安静と変形の予防になります。また、手の血行をよくすると、指の第一関節の軟骨が再生されやすくなりますのでグーパー体操がおすすめです。両手を心臓より高く上げ、手を握ったり開いたりします。これをⅠセット10回、一日5セット行います。就寝前に手首から指先まで、指一本ごとによくマッサージをしたり、祈るように両手を組み、肘から手首までをよく回すことも効果的です。
 
 
 当たり前のように指先についている爪。その健康を考えることはあまりないのですが、日常生活で物をつかむ、つまむ、質感を確かめるということができるのは爪があるからです。薄いピンク色で表面がなめらかなら、健康な爪といえます。不健康な爪の色は次にあげるものですのでチェックしてみましょう。
※爪の色
〇白い…貧血・肝疾患の疑い
〇赤い…脳血栓・心筋梗塞・多血症の疑い
〇黒紫…悪性貧血・心臓病・腎臓病・肝臓病・肺疾患の疑い
〇赤黒い…肝硬変・肝臓病の疑い
〇黄色っぽい…爪甲剥離症・黄色爪症候群・爪白癬の疑い
〇緑色っぽい…緑膿菌など雑菌に感染した疑い
〇黒い線…爪のほくろ・線が濃くなると癌の可能性もある
※爪の表面・形
〇横筋…体調不良・栄養不良・ストレス・糖尿病などの慢性疾患・高熱の疑い
〇縦筋…ダイエットによる影響・加齢などが原因
〇二枚爪…乾燥・血行不良・貧血の疑い
〇スプーン爪…鉄欠乏性貧血の疑い
 ※爪の病気
〇爪白癬(つめはくせん)…爪の水虫、白癬菌が爪の中に侵入し繁殖する感染症の一種で、爪が黄色から白っぽくなり、次第に崩れたり薄くはがれていきます。爪は硬くて分厚いので爪の下にひそんでいる白癬菌は塗り薬で根絶することはできません。抗真菌薬の内服薬を飲んで治療します。手の爪では6週間、足の爪では12週間以上かかります。根気よく治療することが必要です。健康な爪が生えてようやく完治ということになります。
〇爪周囲炎…爪の周囲、特に甘皮とよばれる部分に化膿性の炎症がおき、指が腫れて痛みます。
原因は爪の周囲の傷からブドウ球菌が入り、炎症を起こすものです。怪我だけでなく、指の爪を噛む癖があると菌が入り込むことがあります。抗菌薬を内服して治療します。化膿している場合は切開して排膿します。
〇匙型爪甲…爪は指にそってゆるやかに湾曲しているのが普通ですが、それがだんだん扁平になり、ついにはスプーン状に反り返ってしまいます。乳幼児の場合は生理的なものと考えられますが、成人の場合は鉄欠乏性貧血、甲状腺機能亢進症の人に特徴的にみられます。治療は原因疾患を調べその治療を行います。
〇爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)…爪の表面が薄くはがれ落ちてしまいます。鉄欠乏性貧血や血行不良のほか爪の乾燥によっておきることがあります。栄養を充分に摂り爪が乾燥しないように指先の保湿ケアをします。
〇陥入爪…「巻き爪」ともいいます。爪の両側面が皮膚に食い込んでいるものです。炎症を起こし、さらに化膿して強い痛みを感じます。原因は生まれつきの異常である場合と、足に合わない靴を履き続けたこと、長時間の歩行、スポーツによって後天的に生じるものがあります。治療は、ひどい炎症を起こして化膿を繰り返す場合は手術や矯正を行います。予防には足にフィットして適度に余裕のある靴を履き深爪をしないことです。
〇時計ガラス爪…爪の甲が肥大します。指の末端が広がるいわゆる「ばち指」と合併して現れるケースもあります。心臓病や肝硬変、気管支拡張、肺気腫、肺がんなどの一症状として現れます。原因疾患を治療することで治ります。
〇爪下出血…爪と皮膚の間が内出血を起こしている状態です。外的な衝撃を受けたときに爪床が傷つき起こります。爪と皮膚の間に血栓ができます。軽度の血栓なら痛みはあまりないのですが、重度の血栓だと激しい痛みに襲われる可能性があります。爪下出血は、自然に血栓が取れていく場合と、爪の成長とともに取れる場合があります。激しい痛みがある場合は、痛みを軽減させるために血を抜きます。
〇爪メラノーマ…メラノーマとは癌のなかで最も転移しやすく、短期間で全身に広がる皮膚癌の一種です。爪メラノーマは足の親指に一番出来やすく悪性黒色腫ともよばれています。足の爪を切るときは、爪の根元から縦に黒か褐色の細い線がないかをチェックしましょう。線があるからといって必ずしも爪メラノーマとは限りませんが、皮膚科の医師の診断を受けましょう。

 
    低体温を改善しよう!  
   「最近疲れやすくなった」「風邪をひきやすくなった」「代謝が悪くなった」というあなた、それを年齢のせいにしていませんか?年齢のせいではなく、低体温のせいかもしれません。
 体温が低いと免疫力、基礎代謝が低下します。身体の冷えは万病の元ともいわれ、肩こり、頭痛、腰痛、腹痛、生理痛、不眠、更年期障害、新陳代謝の低下による肌のくすみ、自律神経失調症、生理不順などの不快症状が現れたりします。
 その他、花粉症などのアレルギー症状が出やすくなると考えられます。また風邪などのウイルスに感染すると、通常は体温を上げてウイルスを死滅させようとしますが、低体温(36度未満)では内臓の温度が上がりにくく、抵抗力が弱まり、風邪が治りにくくなります。さらに低体温だと免疫力が落ちることに加え、体温が35度になるとガン細胞が活発になるともいわれています。
 
〇低体温の原因
 低体温の原因は生活習慣にあると考えられています。特に食生活の乱れが低体温の主な原因です。
 私たちは、食べ物に含まれる糖質でエネルギーや熱を作り、体温を保っています。体内で糖質をエネルギーに変える時に必要なのが、亜鉛、マグネシウム、鉄、セレン等のミネラルとビタミンです。
 しかしミネラルとビタミンが不足してしまうと、食べ物からのエネルギーや熱を作ることができず、体温が上がらなくなり低体温になってしまうのです。

〇低体温の原因となる生活習慣の例
☆冷たい飲み物や甘い食べ物の食べ過ぎ
☆季節外れの野菜や果物の摂取
 冬に夏の野菜や果物を食べると身体を冷やしてしまいます。夏の野菜は水分が多く、身体を冷やすから です。
☆運動不足
 運動不足になると、血液を送る筋力を刺激しない状態が続き筋力が低下し、低体温の原因となります。  細胞の中にあるミトコンドリアが熱を発生させているのですが、筋肉量が多 ければ、ミトコンドリアの数  も多くなり、それにともなって体温が上昇します。
☆便秘
 便秘になるということは、腸内 で蠕動運動が行われていないということであり、基礎代謝も低くなります。 基礎代謝が低くなることが、冷え症や低体温の原因と考えられます。
☆冷暖房などが整っている環境
 身体の体温を調整する機能が鈍くなることが低体温の原因と考えられます。
☆過度のストレスによる血行不良、自律神経の乱れ
 過度のストレスがかかることで血行不良が起こることがあり、これも低体温の原因としてあげられます。  ホルモンバランスが乱れることで自律神経が乱れてしまい、体温をコントロールすることが出来なくなり低 体温になることがあります。特に女性は妊娠、出産、更年期、過度のストレスによってホルモンバランス  が崩れることがありますので要注意です。

〇低体温の改善方法
☆冷たい飲み物や甘い食べ物を摂り過ぎない☆旬の野菜や果物を摂取する
☆お酒の飲みすぎに気をつける
☆タバコは控える
☆タンパク質を摂取する
☆バランスのとれた食事で亜鉛などのミネラ ルやビタミンを補給する
☆身体を温めるニラ、生姜、唐辛子、かぼちゃ、 ネギ、栗、ニンニク、ラッキョウ、杏、玉ねぎなどを食事に組み込む
☆良質な睡眠をとる
☆身体を締め付けない衣服や下着をつける
☆ストレスをためない生活をする
☆お風呂にゆっくりつかる

〇正しい体温の測り方
☆汗などで脇の下が濡れていないか確認する
☆体温計は脇の下のくぼみの中央に、下から 突きさすように軽くあてはさむ。体温計が 身体に対して直角だと正しく測れないので 注意する
☆脇をしっかり閉じて安静な状態で測る。で きれば10分以上測るとより正確な数字にな る。
 正常な体温の目安は、起床時36度以上で、最も高い夕方4時前後に35度5分を下回った場合は要注意です。出来れば一週間くらい続けて測り、自分の平均体温を確認しましょう。
 
    慢性疼痛とは  
    疼痛は、危害や起こり得る障害に対する身体の自然な反応です。疾患や損傷によって疼痛受容体と呼ばれる特殊な神経終末が作動したり、体内化学変化によって組織損傷になると疼痛がおきます。
 痛みは発現時期などによって、急性疼痛と慢性疼痛に分類されます。通常、急性疼痛は末梢(局所)の組織損傷にともなって発現する痛みです。長期間頑固に繰り返される慢性疼痛は、組織が治癒すると考えられる期間をこえてもなお持続する痛みとされ、身体病変の存在が不明瞭であるという特徴があります。 2009年に、インターネットで20~79歳の約2万人を対象とした大規模疫学調査によると、慢性疼痛に悩む患者さんは意外に多く、日本人の約23%の方が悩んでいるとされています。慢性疼痛の方が最も困っている部位は、腰・肩・膝の順で、筋骨格系(骨格を形成する骨と筋肉、腱、靭帯、軟骨その他の形成組織)が上位をしめています。
 人間の身体は年齢とともに衰えていきます。骨は変形し、筋、腱、血管は柔軟性を失い、それが神経に影響して痛みとして現れるのです。そして痛みの悪循環を繰り返し、生活が変化したり不便な生活を強いられると、精神的ストレスが加わり、身体病変の存在が不明瞭になり、自律神経、内分泌系、免疫系といった身体のリズムを一定にする働きが悪くなり、慢性の疼痛になっていきます。
 ある統計ではこの疼痛で患者さんの55%が日常生活に支障をきたし、14%は休職などをしていました。この結果にもとづいた拡大推計では、2200万人もの方が痛みによる「生活の質(QOL)」の低下に悩まれ、社会生活に支障をきたしていると考えられています。
 慢性疼痛治療の世界的リーダー、英国疼痛学会理事長のリチャード・ラングフォード氏によると、「痛みを我慢しているとQOLが低下し、うつや睡眠障害の可能性が高まり、痛みがいっそう強まる悪循環におちいることがあり、慢性疼痛の治療を受けることは人としての権利である」といわれています。
 慢性疼痛の治療薬としてこれまで日本で使われているのは、ほとんどが非ステロイド抗炎症剤(=NSAIDs《エヌセイド》)という鎮痛剤です。しかしエヌセイドは、長く使用すると胃や心臓に重大な副作用を生じることもあり、使えればQOLが向上するのに、使いたくても使えない、という患者さんもたくさんおられました。医療機関としても、歯がゆい思いをしたことが何度もあります。
 そこで登場したのが、オピオイドという鎮痛剤です。このオピオイドは、これまでのエヌセイドとは違い、脳への痛みの伝達を遮断することで痛みを和らげるという作用を持つ、新しいタイプの鎮痛剤です。
 欧米では10年前から使用されていたオピオイドが、日本でもやっと今年7月から使えるようになり、慢性疼痛の治療の選択肢がずっと広がりました。この薬は、エヌセイドと異なる作用機序により、前述のような副作用も少なく、腰痛症、変形性関節症、肩関節周囲炎、頚腕症候群をはじめ、慢性関節リウマチ、帯状疱疹後神経痛などのあらゆる慢性疼痛に対しての効果とQOLが期待できます。 
慢性疼痛と思われる症状でお困りの方は、どうぞご遠慮なくご相談ください。
 
 
    下肢静脈瘤とは  
   下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とは、下肢の表面の静脈に血がたまって血管が拡張して太くなり、うねうねと蛇行してこぶのようになった状態のことをいいます。静脈瘤のなかで一般的なのは「伏在(ふくざい)静脈瘤」で最も太く、血管の太さが1~2㎜くらいの「網目静脈瘤」、1㎜以下の「クモの巣状静脈瘤」があります。
 静脈は、各細胞で使われた血液が心臓に戻るために通る血管です。動脈は心臓の鼓動で血液が押し流されるのですが、静脈はその機能がありません。骨格筋が動くことで静脈の血管が押され心臓に血液を戻します。この時逆流を防止するために逆流防止弁がありますが、その働きが壊れたり、悪くなるなどの異常から下肢静脈瘤が起こってしまいます。その原因としては加齢や妊娠などによる運動不足や肥満、立ち仕事などがあります。一度壊れた逆流防止弁は再生しないので次第に悪化してしまいます。

 初期には静脈の怒張(どちょう・ふくれあがること)だけですが、症状が進むと立位での下肢のだるさやうっ血感、重量感、疼痛、浮腫、筋肉のけいれんなどが現れます。足の筋肉がつる「こむら返り」も起きやすくなります。
 慢性期には浮腫、出血、皮膚の色素沈着、難治性潰瘍、血栓性静脈炎の急性症状、うっ血性皮膚炎などが起こり、静脈瘤性下肢潰瘍になることもあります。
 予防法としては、下肢に血液を溜めないことが一番大切です。運動不足にならないようによく歩いたり、自転車をこぐなど工夫しましょう。立ち仕事の多い人は下肢を高くして休憩したり、夜寝る時に膝から下に座布団などを置いて足を高くして寝ることも効果的です。椅子に座ったままつま先を上げ下げしてふくらはぎを張ったりゆるめたりする運動もよいでしょう。
 現在行われている治療法は、圧迫療法(弾性ストッキング)、ストリッピング手術、注入(硬化)療法、レーザー治療です。
①圧迫療法(弾性ストッキング)…医療用弾性ストッキングとは、伸縮性に富みその圧により血流を助ける靴下です。静脈を圧迫することにより静脈が伸びたり傷つくのを防ぎます。弾性ストッキングは普通のパンティストッキングやソックスに比べ圧迫力が強く、上にいくほど圧が弱くなるように作られています。静脈瘤そのものが治るわけではないのですが、軽傷の場合は効果があります。
②ストリッピング手術…鼠径部と足首の二ヶ所を切開して伏在静脈の両端を開いてワイヤーを通し、ワイヤーを引き抜くことで静脈瘤を取り去ります。静脈麻酔や局所麻酔で日帰り手術が可能ですが、全身麻酔や下半身麻酔を使用した入院治療をする場合もあります。
③注入(硬化)療法…手術のかわりに行います。直接静脈瘤に硬化剤を注入して静脈瘤を潰してしまう方法です。注射での施術なので
傷が残らず身体への負担は少ないのですが、大きい静脈瘤にはあまり有効ではなく再発率は大きくなります。
④レーザー治療…レーザー治療は静脈にレーザーファイバーを挿入して治療を行う血管内レーザー焼灼術と、身体の外からレーザーを照射する治療法があります。血管内レーザー焼灼術は、主に伏在静脈瘤などのような足の表面が浮き出た血管で瘤になったタイプに適用されます。対外照射レーザー治療はクモの巣や網目静脈瘤に適用されます。 
下肢静脈瘤は残念ながら完治することはありませんが、気になる症状がある場合は、早めに受診されることをおすすめします。
 
   逆流性食道炎とは  
   前日のお酒の飲みすぎで気持ち悪い、コーラなどの炭酸飲料を飲みすぎて胃が痛い、今までに一度 は「胃が気持ち悪い」と思われたことがあるでしょう。
 最近では、胃や胸が気持ち悪い状態が毎日のように続く「逆流性食道炎」という病気を持つ人が増えています。
 逆流性食道炎は、食生活の欧米化やタバコ、飲酒、肥満などの生活習慣病の悪化、ストレスなどにより日本人に増えている病気です。また高齢者に多いことが知られています。
 逆流性食道炎の原因は、加齢や食生活などの要因で、食道下部括約筋のしまりが悪くなり、胃酸の食道への逆流が原因で起こります。
 逆流性食道炎の主な症状には、胸やけ、のどの違和感(イガイガ感)、ゲップ、胃が重苦しい、お腹が張るなどがあります。これらの症状が頻繁に続く場合、逆流性食道炎という病気の可能性があります。また、これらの症状は一つだけではなく重複している場合もあります。
 最近では、こういう症状を改善するいい薬が発売されています。また胃癌などの似たような症状がある疾患と判別するためには、胃カメラなどの検査をする必要があります。
 この薬は医師にしか処方できません。自分で近くの薬局に行き、適当な薬を買うのではなく、かかりつけ医師に相談するようにしてください。
 ではどういった方がなりやすいのでしょうか?
 逆流性食道炎は、油っぽいものをよく食べる方、過食の方、ストレスの多い方、太っている方、高齢で腰の曲がった方に多い病気です。これらに当てはまる方は要注意です。
 治療としては、薬を飲むことでほとんどはよくなります。この薬は胃酸の分泌を抑える薬剤で効果が高いのです。
 逆流性食道炎は、数日間薬を飲めば、通常自覚症状はなくなりますが、食道粘膜の炎症が治ったわけではありません。症状がなくなったからといって、自己判断で服用を中止しないようにしてください。
 食生活や生活習慣では、脂肪を多く含んだ食べ物や、ケーキや饅頭などの甘い食べ物、香辛料などは胃酸の分泌を促進させるため、できるだけ控えるようにしてください。また食後、すぐに横にならないこと、早食い、食べ過ぎはしないようにしましょう。食事の量はいつも腹八分目を心がけることで、症状が緩和されます。
 逆流性食道炎は再発の多い疾患です。医師の指導のもと、しっかり治療することが重要です。
 
    食中毒について  
   近年、食生活の多様化、食品流通の広域化、国民の健康志向の高まりなどにより、食品をめぐる様々な問題が生じています。
 今年4月、焼き肉店のユッケが原因となり、腸管出血性大腸菌O-111による食中毒が発生しました。残念なことに、死者四名、感染者90名以上の健康被害が出たことは、記憶に新しいことです。 O-111やO-157など「腸管出血性大腸菌」と呼ばれる大腸菌の仲間が恐いのは、「ベロ毒素」という毒素を作るからです。これは血管の内側に付いて、血管や細胞を破壊します。腸管の血管に付くと出血をともなう血便が出ますし、毒素が腎臓に回ると、「溶血性尿毒症症候群」で腎臓が働かなくなってしまいます。さらに脳内に入れば、脳神経細胞に障害が出て脳症が起きます。
 O-111で重症化しやすいのは、抵抗力の弱い子供や高齢者なので、ユッケなどの生肉は食べないほうがよいでしょう。 
 食中毒というと、今回のようにレストランや旅館などの飲食店での食事が主な原因と思われがちですが、実は発生件数の多さは家庭で起こるものが一番多いといわれています。ただ家庭での発生では発症する人の数が少なかったり、わざわざ役所に届けに行かなかったり、風邪などの体調不良と間違えられたりして、表に出てこないものが多いのです。
 ですから家庭では起こりにくいというような考えをお持ちの方は、要注意です。これからの季節は高温多湿で、特に食中毒が起こりやすい時期になりますので次のようなポイントに注意しながら、食中毒を予防していきましょう!
 食中毒予防の三原則は、食中毒菌を①付けない②増やさない③やっつけるです。
☆食品購入の際は、消費期限、賞味期限をよく確認して新鮮なものを買う。
☆肉や魚などは汁が漏れないようにビニール袋に包むなどし、購入後はなるべく早く家に持ち帰る。
☆なま物は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫・冷凍庫に入れる。
☆冷蔵庫・冷凍庫の中身の詰め過ぎに注意する。冷蔵庫は摂氏10度以下、冷凍庫はマイナス摂氏15度以下が目安です。魚や肉はチルド室(0から摂氏4度)で保存するのがよいでしょう。
☆調理前は必ず手を洗い、清潔な器具を使うようにする。まな板や包丁、ふきんは熱湯消毒をする。
☆生で食べる物に、肉や魚の汁が付かないようにする。
☆井戸水を使う場合は水質に十分注意する。
☆加熱するものはしっかり加熱する。肉などは中心部が摂氏75度で一分間以上の加熱が必要。ひき肉、成形肉は特に中まで火を通す。生で食べる物は直前まで冷蔵庫に入れておく。
☆出来上がった食事は長い間放置せず、時間を置く時は冷蔵庫・冷凍庫に入れる。
☆再度加熱する際にも、中までしっかり火を通す。
☆野菜、果物は流水でよく洗い皮をむく。
☆匂いなど、少しでもおかしいと思ったら、口に入れずに捨てる。
 食中毒を引き起こす菌は、私たちの生活の中に密着して存在しています。しかし、きちんとした扱いをすれば、食中毒になることなく過ごすことが出来るのです。それでも、もし悪いものを食べてお腹が痛くなったり、下痢をしたり、気分が悪くなった時は、早めにかかりつけ医にご相談下さい。 
 
    痛風について  
   
痛風は、かつて裕福な人がかかるぜいたく病と呼ばれ、戦前にはほとんど存在しませんでした。ところが戦後、特に1960年代になつてから、食生活の欧米化、アルコール摂取量の増加、運動不足、ストレスなどにより患者数が急増しています。痛風の患者さんは90万人、痛風の予備軍とされる高尿酸血症にいたっては600万人以上いるともいわれています。
痛風は男性が圧倒的に多く、女性は女性ホルモンの関係から少ないとされ、百人の痛風患者の中に、女性の患者は一人か二人程度しかいないとされています。
 痛風は、「風が当たっただけで激しく痛む」といわれるほどの痛みや腫れ、発赤が特徴の病気で、足の親指の付け根に起こることが多く、歩くことができないほどの激痛が突然起こり、この発作的な症状のことを「痛風発作」と呼び、たいていの場合、~10日たつとしだいにおさまります。
この痛風発作は、尿酸という物質が引き起こします。尿酸は身体の中に一定量含まれていますが、何らかの原因で蓄積されてしまうことがあり、体内の尿酸量が多い状態が「高尿酸血症」といわれ(血清)尿酸値が7・0mg/ dl以上とされています。
 高尿酸血症が続くと、尿酸の結晶が関節にたまり痛風発作を引き起こします。さらにこの尿酸の結晶は関節だけでなく、尿路や腎障害を引き起こします。また、高尿酸血症の人は、過食や運動不足など、生活習慣が影響していることから、心筋梗塞や脳血管障害などになる人が多いともいわれ、痛風発作があった人や高尿酸血症の人は、他の病気のサインと考え、生活習慣を見直してみましょう。運動や食事、飲酒、ストレスの有無などに注意してください。
 運動することで肥満が解消されれば、尿酸値を低下させる効果が期待され、生活習慣病の予防にもつながります。ただし、ハードな運動は尿酸を増やしてしまいますので逆効果です。ストレス解消のためにも、息切れしない程度のウオーキングやジョギングなど無理をせず楽しく続けられる運動をしましょう。この時、水分をしっかり補給しながら行うことが大切です。
 
 食生活の改善では、一日 のカロリーを控えることが最も大切です。食べ物には、尿酸の元になるプリン体が含まれています。プリン体は肉や魚、特に肉ではレバー、魚では内臓を丸ごと食べる鰯や魚卵、その他白子などに多いとされています。
それらを控え、野菜を中心とした食事を心がけましょう。肉や魚を調理する時は、煮る、焼くなどしてプリン体を溶け出させるようにします。プリン体は水溶性なので煮汁を出すことで溶け出します。この際の煮汁は、使用しません。
 体内の尿酸を排泄するのに必要なものは水分です。水やお茶などエネルギーのない水分を摂取することが大事です。また飲酒は、ビール、ワイン、日本酒などに多く含まれるプリン体(ビールが最も多いとされています)に加え、アルコールを肝臓で解毒する際に多くの尿酸が作られるため、尿酸値は上がるとされています。さらにアルコールには、利尿作用があるため、体内の水分量が減って尿酸の濃度が上がってしまうので、お酒の飲みすぎに注意が必要です。
 痛風は血中の尿酸値が高くなることで起きますが、尿酸値の上昇には食生活のほかに、イライラしやすい感情や性格もかかわっているということがわかってきました。
☆どちらかというと競争心が強い
☆いったん始めた事は最後までやり抜く
☆せっかちなほうだ
☆いつも全力投球で物事にあたる
☆短気だといわれたことがある
☆早口である
☆ゼスチャーを交えて話す
☆マメで気が付くと動いている
☆約束の時間には絶対に遅れない
☆早食いである
 自己評価で思い当たることがある場合は、生活リズムをなるべくゆったりするように心がけてみましょう。 痛風や高尿酸血症には生活習慣の見直しが大切ですが、尿酸値が高くなり続ける場合や、すでに高くなっている場合は薬での治療が大切です。尿酸を身体の中で作られるのを防ぐ薬、尿酸を身体の外に出す薬、尿酸が結晶にならないようにする薬があり、最近では新薬も登場しています。
 医師が薬を選ぶ際は、その患者さんに良く効いて、他の薬との飲み合わせに問題がないものを、一人一人の患者さんのタイプによって選びます。薬を飲み始めると、尿酸の量は少なくなり症状が安定してきます。すると「痛風は治った!」と薬をやめてしまう人がいますが、薬をやめるとまた尿酸の量が増えることがありますので、指示された期間はきちんと薬を飲み続けましょう。また運動、食事、飲酒などの生活改善も中断することなく、気長にじっくり継続していく気持ちが大切です。

 
 不眠症と薬について 
今回は「不眠症」についてご紹介しましょう。不眠で悩む人は多く、日本人女性は、世界で最も睡眠時間が少ないといわれています。
 夜十分な睡眠をとれないことで、重大な事故につながることも少なくありません。たとえばアメリカのスリーマイル島で起きた原子炉爆発事故(1979年)、チェルノブイリ原子力発電所の放射線漏れ事故 (1986年)、アラスカ沖巨大タンカー座礁事故(1989年)、スペースシャトルのチャレンジャー号爆発事故(19856年)などは、作業にあたった現場のスタッフが睡眠時無呼吸症候群による睡眠不足が原因だったと考えられているそうです。
 「そんな大袈裟な…」と思われるかもしれませんが、実際に車を運転している最中に、〝コックリ〟してしまった経験はありませんか?
 いまでは新しい種類の薬剤が発売されたり、不眠に対する治療法も進んできました。自分で「よく眠れていない」とお困りの方は、是非一度医師にご相談されることをおすすめします。
 睡眠の役割は多くありますが、代表的なものをあげてみましょう。
☆休息…身体と脳を休息させるために必要不可欠です。よく眠ることによって大脳は休息すると同時にその機能を調整して、翌日朝から再び正常な指令を全身に送ることができます。
 睡眠が不足すると、大脳が疲労を回復できず、感情のコントロールがきかなくなるなどの障害が出てきます。頭痛、全身のだるさ、集中力の欠如といった症状も出てきます。
 睡眠中は体温が下がり、血液の温度も下がります。この少し「冷たい」血液が脳の中を流れることにより「頭が冷やされる」ことになり、それが脳の疲労回復に役立ちます。脳は寝ている最中にも一日のうちに吸収した膨大な情報を整理し、必要なものと不要なものに分類し、必要なものについてはその情報を記憶として脳に記録しています。
☆成長ホルモン…『寝る子は育つ』、とよく言います。よく眠る子供は大きく成長することを昔の人は経験的に知っていたようです。これにはしっかりとした科学的裏づけがあります。
 人間は寝ている間に成長ホルモンを分泌し、成長ホルモンには細胞を再生、修復する新陳代謝の作用があり、特に眠りに落ちてからの最初の三時間程度の間に集中的に分泌されます、
 成長ホルモンは子供の成長にも必要ですが、実は子供だけではなく大人にも必要なものです。成長ホルモンが不足すると、体内に老廃物がたまり、血管が詰まり肌や頭皮が新しく生まれ変わらないなど様々な弊害が出てきます。
 睡眠不足になると、肌が荒れて化粧のりが悪くなるということは、多くの女性に経験があるのではないでしょうか?
 質の高い睡眠をとることによって、たっぷりと成長ホルモンを分泌させて肌の新陳代謝を高めれば、朝起きたときの肌の調子がまったく違います。目の周りにクマができるのも、成長ホルモンの不足が原因です。
☆免疫…風邪を引いたら寝るのが一番だ、とよく言いますが、これは睡眠の目的のひとつを的確にあらわしています。
 人間は睡眠中に免疫力が高まり、病気を直そうという自然の力が働きます。風邪っぽいなと感じた時は少し長めの睡眠をたっぷりとれば、免疫力と自然治癒力が高まって、朝にはずいぶんよくなっているでしょう。逆に言うと、睡眠不足の時は身体の免疫力が下がっていますから、風邪の菌に対する抵抗力が弱っていて、風邪を引きやすくなります。
【代表的な睡眠薬の種類】
 ベンゾジアゼビン系
 本来は抗不安薬として使われていましたが、睡眠作用も強いため不眠症治療でも使われるようになりました。昔使われていた薬剤と違い、依存性も少なくドラマにあるように大量に飲んでも死んだりしにくい薬剤です。しかしお酒と一緒に服用することで依存性やふらつきが出る可能性もあります。
 メラトニン薬
 最近発売された薬剤で、大変安全性も高く副作用が少ない薬剤です。メラトニンはもともと人間の体内で作られるホルモンの一種です。効果はさほど強くありませんが、眠れる状態にする効果があり生活習慣の改善を助ける薬です。
 ベンゾジアゼビン系がすぐ眠れる対症療法としたら、メラトニンは不眠の原因を治す薬といえます。医師と相談し、一ヵ月ほど飲んでみて、乱れてしまった生活習慣を改善しましょう。
 塩分の摂りすぎにご用心!
塩は食事を美味しくする調味料の一つですが、日本人は海外の人々にくらべ多く摂取していることが問題です。食塩の摂りすぎは、高血圧や動脈硬化、脳卒中、腎臓病、心臓病、糖尿病などを引き起こすもとになります。また胃酸から胃を保護する役目を持つ粘液を溶かし、胃がんの原因になることもわかっています。
 ただ塩分は体液の浸透圧を調節し、神経を通じて情報を伝達する重要な役割をはたします。塩分が極端に欠乏すると、体がだるくなったり、食欲不振に陥ったりするため、生きていくうえで必要不可欠なものです。要は適正な量を摂取することが重要なのです。
 今年四月に改定された「日本人の食事摂取基準(平成11年までは栄養所要量)」で、ナトリウムの一日摂取目標量が決まり、男性9㌘未満、女性7・5㌘未満と引き下げられました。
 WHO(世界保健機関)や日本高血圧学会では高血圧の予防と治療のために6㌘未満にするよう勧めています。基準策定にかかわった新潟大学医歯学総合研究所の中村和利准教授は、「6㌘は、今の日本の食事からはかけ離れている。食塩の目標量を大きく減らすことで逆に脂肪の摂取が増えることも予想される」として今回は男性1㌘、女性0・5㌘の引き下げに算定されました。
 食事の塩分量はカロリーほど気にしていない人が多く、レストランなどでも、料理の表示に使われることが少ないのが現状ですが、外食やテイクアウト食品、インスタント食品には、塩分を多く含んだものがあります。
 減塩のために次のことに注意しましょう。
◎汁物の汁を残す。ラーメンなどの麺類の汁はできるだけ残しましょう。
◎味噌汁(一杯には塩分約2㌘)は具の多いものにしましょう。
◎漬物は食べ過ぎないようにしましょう。
◎料理の味をみてから醤油などの調味
料を使いましょう。
◎醤油(小さじ一杯は塩分1㌘)やソースなどをかける時は、できるだけ料理にかけず、小皿にとって表面だけ味をつけるようにしましょう。
 減塩をするときに自分の味覚だけで計る分量はあいまいで、その時の気分や体調にまどわされてしまいます。市販されている塩分濃度計を使って、料理の塩分を正確に知ることもよいでしょう。
 また減塩食の工夫として、椎茸、かつお節、昆布などの出汁をきかせたり、レモンや酢、薬味、ごまなどを活用して、薄味でも美味しく食べられるようにすることも大切です。
 カリウムやナトリウムは、ミネラルといって生命の維持にかかせない栄養素です。人体では、カリウムは細胞の中に、ナトリウムは細胞の外に存在し、一定のバランスをとっています。食事からのナトリウム摂取が増えても、カリウムを十分に摂っていれば、カリウムが細胞内にとりこまれ、ナトリウムを追い出し血圧の上昇を防ぐことができます。カリウムを多く含む食品(バナナ、アボガト、ひじき、芋類、ほうれん草、南瓜など)をバランスよく摂ることも減塩の助けになります。
 ただし過剰に摂取することは、心臓、腎臓疾患を招きますので、医師、栄養士の指導をお受け下さい。
 帯状疱疹とは
身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状(おびじょう)にあらわれる病気が帯状疱疹(ヘルペス)です。帯状疱疹は、子供の時になった水痘(みずぼうそう)と同じウイルスが神経の付け根に残っていて、加齢やストレス、過労などが引き金となり免疫力が落ちて活性化され、神経を伝わって皮膚にあらわれます。
 帯状疱疹になると痛みが突然でてきます。痛みのある部分のまわりを触ると、ザワザワした感じがしたり、ズキーンとした感覚が身体の中を突き抜けたり、肩こりや風邪のような症状もあります
 帯状疱疹は、神経のあるところならどこにでも発症する可能性があります。なかでも最も多いのは胸部、背部です。
 やっかいなのが顔面、頭部にでたヘルペスです。ひたいにでるとまぶたが大きく腫れあがり、ものが二重に見えるという神経障害がでたりします。ひたいの帯状疱疹は脳に近いため、髄膜炎をおこすことがあり、まれに喉や声帯を麻痺させ片側の喉に強い痛みを感じ、扁桃腺炎と間違われたりすることもあります。
 帯状疱疹は、はじめに皮膚の違和感やピリピリ感のある神経痛がでて、その後3~5日くらいでやや盛り上がった赤い斑点が出ます。つづいて赤い皮疹上に水ぶくれができ、水ぶくれが破れてかさぶたへと変わります。
 帯状疱疹は高齢者ほど後遺症を残す率が高く、治療が遅れたり十分でない
と、皮膚の症状がきれいに治っても、痛みが残ることがあります。これが帯状疱疹後神経痛です。
 ウイルス感染による炎症性疼痛である帯状疱疹に対して、帯状疱疹後神経痛は、神経変性による疼痛であろうといわれています。この帯状疱疹後神経痛は、数か月から数年以上にわたって痛みが続くことがあります。帯状疱疹後神経痛への移行は、約10%程度ですが、七十歳代では、程度の差はあっても、50%以上の人が神経痛に悩むことになるといわれています。
 治療は、抗ヘルペスウイルス薬を中心に行なわれます。抗ヘルペスウイルス薬は、ウイルスの増殖をおさえることにより、急性期の皮膚症状や痛みなどをやわらげ、治るまでの期間を短縮します。さらに合併症や後遺症をおさえることも期待されています。また必要に応じて、消炎鎮痛剤薬が使われたり、痛みに対して神経ブロックという治療が行なわれることもあります。
 一方、帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹により傷ついた神経から過剰に放出された痛みを伝える物質により、過剰な痛みの信号が発信されている状態です。
 国際疼痛学会などで第一選択薬として推奨されている薬が、やっと今年の六月から日本でも使うことができるようになりました。この薬は、痛みを伝える物質の過剰放出をおさえることで痛みをやわらげますので朗報です。
 帯状疱疹は、早期に適切な治療を行なうことで症状を軽くし、合併症や後遺症である帯状疱疹後神経痛のリスクを減らすことができます。「帯状疱疹かな?」、という症状があった場合は、すぐに診察を受けられることをおすすめします。
 当院はペインクリニックも行なっています。帯状疱疹についてご不明なことがありましたら、ご遠慮なくご相談ください。
 認知症は病気です
日本では約160万人、高齢者世帯の7世帯に1人の割合で認知症の方がいるといわれています。現在認知症と呼ばれていますが、以前は痴呆という用語が使われていました。
 老化による物忘れは、多くの人が経験することではありますが、それが単なる物忘れなのか、それとも病気による物忘れなのかを見極めることが重要です。
 簡単な違いとしては、「かかってきた電話の相手の名前を忘れた」というのは単なる物忘れですが、「電話がかかってきたこと自体を忘れたとき」は要注意です。同じことを何回も言ったり聞いたりする回数が増えたり、いままで出来ていたことが出来なくなったときは認知症が疑われるので、かかりつけの医師に相談してください。
 認知症の原因は、①アルツハイマー病 ②脳血管障害による認知症 ③その他の認知症に分けられ、種類によって対処法も異なります。脳血管障害による認知症は、その原因となる脳梗塞の予防を心がければある程度防ぐことができ、認知症の約半分を占めるアルツハイマー病の場合も、症状を遅らせることができるケースもあります。
 大切なのは、認知症を正しく理解し、早い段階に対応することです。日常の小さな変化を見過ごさないようにしましょう。「年のせいだから」とか「しばらく様子をみてみよう」と放置しておくと、認知症が進んでしまいます。
 アルツハイマー病の治療法は、現在のところありません。症状の進行を遅らせる薬はありますが、原因となる脳の萎縮を抑える根本的な治療法は、現在まだ開発中なのです。
 そこで重要になってくるのが、よりよい介護環境と適切なケアです。認知症の方々は、自分の衰えなどに対する不安で心理的に不安定になり、感情をコントロールする機能が低下するため、ちょっとしたことで怒ったり泣いたりします。また周囲との意志の疎通が出来ないもどかしさから、相手の好悪に敏感になり、相手が自分を良く思っていないことを嫌い、相手が興奮していることに興奮します。そして興奮している自分に興奮するのです。
 認知症にかった方は「ボケたくない」という気持ちが強いため、「ボケたから○○しなさい」ではなく、「ボケないように薬を飲みましょう」「ボケの予防のためにお医者さんに行きましょう」といって説得するのが効果的です。 
 『認知症は病気である』という認識を持ち、出来るだけ優しく接してあげたいものです。とはいえ、介護疲れが原因の不幸な事件は後をたちません。決して一人で悩みを抱え込まず、周囲の人や医師、保健所などに相談してください。
 現在、認知症に関する情報や窓口はたくさんあります。平成17年、厚生労働省が『認知症を知り地域をつくる10ヵ年』キャンペーンを始めました。最終目標は、認知症の人を理解し支援する人(サポーター)が地域に数多く存在し、すべての町が、認知症にかかっても安心して暮らせる地域になっているというものです。
 当院受付けに、『認知症の高齢者への具体的な接し方』というガイドブックを用意しています。ご希望の方はお申し付けください。  
 くも膜下出血について 
ある日突然発症し、生命の危機さえ招いてしまう恐ろしい「くも膜下出血」とはどんな病気なのでしょうか。
 脳は外側から硬膜(こうまく)、くも膜、軟膜(なんまく)の3つの膜でおおわれています。くも膜と軟膜の空間がくも膜下腔で、そこには脳脊髄液が流れ、脳の大きな血管が走っています。その血管が脆弱化して切れた状態がくも膜下出血で、発症した場合、約3分の1は重篤な後遺症を残すか、死亡するという注意を要する病気です。
 くも膜下出血を起こす原因は、血管奇形や外傷がありますが、最も多いのが、脳の動脈がこぶのようにふくれて破裂する脳動脈瘤破裂(のうどうみゃくりゅうはれつ)で、男性より女性に多く、35才から60才の層の発症が高くなっています。また家系内に動脈瘤やくも膜下出血の方がいるときの発生頻度は高くなり、高血圧、喫煙、過度の
飲酒も動脈瘤破裂の可能性を数倍高くするといわれています。
 くも膜下出血は突然の頭痛で発症します。この頭痛は、後頭部をハンマーで殴られたような、ガーンという衝撃的な大変強い痛みです。後頭部から頭頂部にかけて燃えるように熱くなるという表現をする人もあります。意識がもうろうとしたり、意識を失ったりします。また嘔吐、血圧上昇、手足の麻痺、物が二重に見えるという症状がおこることもあります。
 頭痛の様子は、次第に痛くなったとか、何となく痛かったというような頭痛ではありません。突然の、それまで経験したことのないような痛みのときは、すぐに救急車を呼び、病院で診察を受けなければなりません。
 突然というのは、何時何分にとか、部屋を出た時突然というようなもので、瞬間的に痛んでやみ、またしばらくして痛む頭痛は持続していないので、突然でもくも膜下出血ではありません。 また、出血量が少ない場合に、首のつけ根からうなじにかけて痛みを感じたり首すじが硬直したりすることがあります。動脈瘤からの微小出血による前ぶれ頭痛を風邪と思い込み、のちに強いくも膜下出血の頭痛になるということもあるので注意が必要です。
 脳動脈瘤は、瘤が大きくなり、脳や神経の働きを障害して症状を出すこともありますが、多くは出血するまで無症状です。しかし、破裂する前にわかることもあります。動眼神経麻痺といい、片方のまぶたが開かなくなり、両目で物を見るとだぶって見えることです。これは後交通動脈瘤という動脈瘤が大きくなり、動眼神経を圧迫した時におこります。また動眼瘤が視神経を圧迫すると視野が欠けたり、視力が落ちたりすることもあります。
 従来、脳動脈瘤は出血して初めて発見され治療されてきましたが、最近では脳の精密検査(脳ドック)で出血する前に脳動脈瘤を発見し治療することが注目されています。未破裂の脳動脈瘤が、一年間に破裂する確立は1~2%といわれています。脳動脈瘤の大きさ、部位、形態、年齢、全身の合併症などを考慮して手術などの治療方針がきまります。 
 誤嚥性肺炎について
食べ物や飲み物を飲み込むことを嚥下(えんげ)といいます。誤嚥(ごえん)とは、正常な嚥下の過程で、食物が気管に入り込むことです。
 喉の奥は肺にいく気管と、胃にいく食道に分かれています。気管の入り口には喉頭蓋というふたがあり、食べ物などを飲み込むときには反射的にそのふたが閉じる仕組みになっています。しかし加齢とともに反射がにぶり、食べ物や唾液が気管から肺に入りやすくなります。その際、口のなかの雑菌や胃液が食べ物や唾液とともに肺に入って引き起こされるのが誤嚥性肺炎です。
 健常者でも誤嚥はしますが、吐き出そうとする動作(咳やむせ)により気管から出します。誤嚥で口のなかの細菌が気管や肺に入り込んでも、体力や抵抗力、免疫力により細菌を駆除できるのでさほど影響はありません。
 しかし高齢者は、体力がないために気管に異物が入っても咳き込む力が弱く、外に出すことができません。そのため発症しやすく、何度も再発を繰り返してしまいます。再発を繰り返すと、耐性菌が発生して抗生物質治療に抵抗性を持つため多くの高齢者が死亡する原因になっています。
 脳血管障害やパーキンソン症候群、認知症の場合、嚥下障害から誤嚥が起きます。また食べたものが胃から食道に逆流して誤嚥したり、便秘や大腸がんなどで腸の通過が悪くなり嘔吐した吐瀉物が気管に入り起きることもあります。
経鼻経管栄養(鼻から胃に管を入れて栄養剤を入れる)や、胃ろう(お腹から胃に管を入れて栄養剤を入れる)の場合も発症することがあります。また虫歯や歯周病があると口内細菌が増加しているので、誤嚥性肺炎を起こやすくなります。
 誤嚥性肺炎再発の予防には、脳梗塞後遺症として使われるアマンタジンや抗血小板作用を持つ脳梗塞予防薬が使われます。これらは咳反射や嚥下反射を改善し、脳梗塞を予防して誤嚥性肺
炎を予防します。また口のなかを清潔にすることも大切です。毎食後と就寝前には、必ず歯磨きをすることを習慣づけましょう。その際歯だけではなく、細菌が存在する舌の表面もブラシをするのも効果的です。さらに食間に何度か薬剤によるうがいをすると口腔内の雑菌を減らすことができますので、誤嚥しても肺炎になる危険性は減ります。
食事は固形物より汁物のほうがむせやすいので、スープなどにとろみをつける工夫がよいでしょう。食事介護をしている場合は、きちんと飲み込むことを確認してから次のひと口を口に運ぶ慎重さも求められます。また胃からの逆流を防ぐため、食後しばらくは座った姿勢を保つことも大切です。
 PET検査について 
新聞、テレビ等で「ペット検診」という言葉を聞かれる機会があると思います。
現在、病院で行なわれているペット検査とは、「陽電子放射断層撮影装置」を用いた画像診断のことをいいます。
これを英語では「Positron Emission Tomography」というため、頭文字のP・E・Tをとって、「PET」と呼びます。
 病院での画像診断といえば、X線検査、CT検査、超音波検査、MRI検査がありますが、PET検査は比較的新しい画像診断です。
癌の有無や大きさを調べるときに、CTやMRIは臓器の形に変わったところがないかを診ることで判断します。しかしPETは、細胞の状態(活動具合)を調べることで判断します。そのためCTやMRIでは困難な腫瘍の良性・悪性の判別や、リンパ節転移の癌
の確認ができます。
 PETが最も注目を集めた理由は、癌の早期発見に役立つといわれている  からです。多くの癌では、糖分が正常な細胞や良性腫瘍より多く使われます。癌のこの性質を利用して、ブドウ糖に良く似たFDG(フルオロデオキシグルコース)
という薬を体内に注入し、癌などの病変に取り込まれたところで、PET装置の特殊なカメラで撮影し、癌がどこにあるか、つまりどこに集まっているかを確認することができるのです。
 しかし、PETの画像は目が粗いため、身体のどこの場所かをより正確に知るために、最近では、CTとPETを組み合せた「PET―CT」という機械が主流になっています。中国地方でも、PET―CTはすでに10病院以上に導入され、広島県では、中電病院と広島平和クリニックでPET検査を受けることができます。ただしPET―CT検査は、癌発見に万能な検査というわけではありません。癌の種類によって得意、不得意があります。脳、腎臓、胃などは不向きです。また健康保険の適用は、可能な場合と不可能な場合がありますのでご注意ください。
 健康な身体を維持するには、良い生活習慣を保つための努力が必要ですが、癌の早期発見のために、健康診断にPET―CT検査を組み込むことを検討してみることもよいでしょう。
 女性の天敵!便秘について
日本女性の約半数の人が悩んでいるという便秘、お腹が張ったり、腹痛を感じたり、肌荒れや食欲減退などの不快な経験はありませんか?
 便秘は、3日以上排便がない、毎日排便があっても残便感が続くという状態のものです。毎日排便がなくても残便感がなく、定期的に排便があれば便秘ではありません。反対に毎日あっても、量が少なかったり、排便後もスッキリ感がない場合は便秘といえます。
 女性に多い原因は、「黄体ホルモン」という女性ホルモンが、身体の水分を吸収し、便の水分までうばい、硬くしたり、腸の動きを鈍くする働きがあるため、ホルモンが活性化する生理前には便秘になりやすいといわれています。もう一つの理由に筋力の差があります。腹筋が弱いと、便を出す力が足りず便秘になりやすくなります。 
 排便によって体外に排出されるべき老廃物や有害物質が体内にとどまり循環すると、新陳代謝を弱め、頭痛、肩凝り、腰痛を引き起こす要因になります。
 便秘には次のようなタイプがあります。自分の状態を知って便秘を解消しましょう。
※ 直腸性便秘
便がたまっても便意を感じないタイプ。便意があるのに排便を我慢し、大きく硬い便になり出なくなる。
◇解消法
☆排便を我慢せず、トイレに行く習慣
 をつける
☆朝起きたらコップ一杯の水を飲む
☆食物繊維や水分をたくさん摂る
※ 弛緩性便秘
お腹が張るのが特徴で、腸を動かす筋肉の弱さや食事の量の少なさで、便を思うように押し出せないタイプ。痩せている女性や運動不足の人に多く、便はあまり硬くない。
 ◇解消法
☆運動で腹筋をつける
☆適度な香辛料などの刺激物や炭酸飲 料を飲む
☆食物繊維を摂る
 ※ 痙攣性便秘
ストレスや疲れが原因で腸が過敏になり、強い腹痛と便意はあるのに排便できない状態で、便秘と下痢を繰り返し、量が少なく、うさぎのフンのようなコロコロした便が出る。
 ◇解消法
☆冷たいものをなるべく摂らない
☆香辛料やアルコール、カフェインな どの刺激物を摂らない
☆脂っこい食物は避ける
☆食物繊維を摂る
 ※ 症候性便秘
大腸や子宮の疾患などで腸が圧迫されて便秘になる。病気が原因で起こるタイプ。病気の治療が必要なので早めに診察をうける必要があります。
 ピロリ菌とは
 かわいい名前のピロリ菌、正式名はヘリコバクター・ピロリといいます。
 1982年、ウォーレンとマーシャルが人の胃からの培養に成功し、翌年発表された細菌です。「ヘリコ」はらせん、「バクター」はバクテリア(細菌)の意味で、「ピロリ」とは胃の出口である幽門部をさします。ピロリ菌の大きさは3~4ミクロンで、片側に数本のべん毛をもっていて、素早く回転させ胃の粘膜を動きまわります。
 ピロリ菌の特徴として、酸素の存在する大気中では発育しないことがあります。乾燥に弱く、酸素にさらされると除々に死滅します。強酸性下の胃の中でピロリ菌が生育できるのは、胃の中にある尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアで酸を中和することにより、周りの酸を和らげているからです。
 胃の中のピロリ菌は、胃の壁を傷つけます。また胃を守っている粘液を減らし、酸の攻撃を受けやすくし、胃炎や消化性潰瘍、胃がんを発症させる要因になります。
 ピロリ菌の感染率は、50代以上の日本人の70~80%にもなり、経口感染が主な経路といわれています。先進国のなかでは、日本はきわだって高い感染率ですが、衛生状態の改善された若い世代の感染率は低下しています。
 ピロリ菌を見つける検査には、内視鏡を使う方法と、内視鏡を使わない法があります。内視鏡検査では、胃炎や潰瘍などの有無を直接観察して調べ、同時に胃粘膜を採取して検査します。内視鏡を使わない検査方法には、次のものがあります。
①尿素呼気検査法…診断薬を服用し、 服用前後の呼気を集めて診断します
②抗体法…血液や尿などを用いて、そ
 の抗体を測定する方法です 
③抗原法…糞便中のピロリ菌の抗原の 有無を調べる方法です
 ピロリ菌の除菌治療は、三種類の薬を一週間内服するものです。平成14年より、3種類の薬が一日分ごとにパックされ、薬の飲みにくさや飲み忘れの問題が改善されました。
 この薬の副作用として、軽い下痢、軟便、腹部不快などがみられます。他に発疹、肝機能障害、味覚異常が出ることもあります。また3種類の薬のうちの一つはペニシリン系抗生剤のため、アレルギーのある方はご注意ください。除菌治療中に体調が普段と違うときには、自分の判断で薬を止めたりしないで、かならず医師にご相談ください。
 現在ピロリ菌感染検査と除菌療法は、胃潰瘍または十二指腸潰瘍と病名が診断された場合に限って保険適用となっています。しかし、ピロリ菌から受ける病気のリスク軽減を考えて、保険適用外でも、人間ドックや検診などで検査を受けられることをおすすめいたします。
 漢方薬について
 数千年の年月をかけて、症状に合った生薬の組合せを生み出し、日本の現状に合わせて発展したものが、漢方薬として病院などで処方されています。
 昔ながらの、生薬をきざんで煎じて飲む伝統的な煎剤もありますが、広く使われているのは、煎じ薬を乾燥させて、アルミパックに入れたもので、飲みやすく、持ち運びにも適しています。
 漢方薬は、漢方医学という東洋医学の一部です。他に鍼灸、養生、按摩、気孔なども漢方医学の治療法です。
 漢方医学は、病気と闘い、自然治癒力を高め、身体を健康な状態に整えることを目的としています。
 漢方薬は病名で判断するのではなく、各々の患者さんの体質や病気の様子を見極めて、より良い薬を使い分けていきます。そのため同じ病気でも、患者さんの状態によって、飲む薬が違ったり、ひとつの薬が色々な病気に応用されたりすることもあります。
 漢方薬は、いくつもの成分が助け合って働くことで、多彩な症状にゆるやかな作用を示します。人は免疫力が落ちた時は、病原菌に感染しやすくなり
ますが、大事なことは、菌を殺すことだけではなく、感染に負けない体質に変えて、病気に対する抵抗力を高めることです。これらは、漢方薬の得意とするところで、合併症やいくつもの慢性疾患をかかえている患者さんが増えている、これからの高齢化社会に適しているといえます。何となく頭が重い、熱っぽい症状がある風邪の初期に、葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)を飲めば、汗が出てきて楽になります。またむくみがあり、のどが渇き、尿が出にくいときに、五苓散(ごれいさん)や柴苓湯(しれいとう)を飲むと、症状が改善されます。
 また本人にとっても、介護する人にとっても大きな負担となる認知症の周辺症状である幻覚、妄想、徘徊、過食、睡眠障害、抑うつなどの症状を改善する漢方薬として、抑肝散(よくかんさん)が、イライラ、興奮、睡眠障害などに効果があると報告されています。
 その他、釣藤散(ちょうとうさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの漢方薬も、認知症の症状に合わせて使われています。
 体質や症状にあった漢方薬の場合は、飲んだあと、少なくても1~2時間で症状を改善する速効性のあるものが多くあります。しかし漢方薬の成分のなかには、腸内細菌によって、吸収しやすく効く形に変えられるものがあります。そのため、効果の現れ方が、お腹の菌が多い人は直ぐに、少ない人では遅くなることがあります。  
 菌の少ない人も、医師や薬剤師の指示どおりにきちんと飲んでいくと、時間とともに身体がなじんできて、その薬を利用できる菌が  増え、よく効くようになります。すなわち漢方薬は、効くまでの時間がかかっても、効くようになれば、速やかに効果があるということなのです。
   漢方薬は健康保険が使えますので、安心して治療ができます。ご遠慮なく医師にご相談下さい。
 身体の歪みにご注意ください
 自分では気づかないでいる身体の歪み、日常生活で無意識に行なっている動作で、いつのまにか一ヶ所の歪みが他の部分まで影響して様々な症状のもとになっています。
 人間の身体は、頭から足のさきまで筋肉が連動しています。約4千の骨格筋で構成されていて、それぞれが協調して伸展、収縮して身体は動きます。身体の歪みの原因は、普段の癖、習慣、片寄った動作や姿勢にあります。たとえば、足を組む・横座り・高枕・
体育座り・トンビ座り(正座の足を横にしたような座り方)・横寝・腕組み・デスクワーク(机や作業台の位置が低く、前かがみになる)などです。
 頭の重さは男性で5~6㎏、女性で4~5㎏で、それに腕の重さが加わり10㎏近くの重さが身体にかかります。この頭の位置や動きが、首から背中、腰まで、背骨や筋肉に影響を及ぼし、肩凝りを起こします。
 頭の位置が中心にあれば身体に均等に重さがかかりますが、パソコンなどで猫背になると頭が自然に移動してあごが出た姿勢になります。長時間過ごせば、筋肉は疲労して硬くなり、その硬くなった筋肉により、神経や血管が圧迫され、痛みや痺れなどの不快な症状のもとになります。身体は骨盤を中心に、手、足、頭がつながっていて、その骨盤を支えているのが腹筋や背筋などの筋肉です。その筋肉を鍛えたり、ストレッチをすることで老化による筋肉の衰えや、身体の歪みも改善することができます。
 まずはウオーキングを始めてみてはいかがでしょうか。ウオーキングは誰にでもでき、場所や時間は問いません。足腰を鍛え、体力を向上させることができます。
  より効果的なウオーキングのため に、歩く前に自分の立ち姿をチェッ クしましょう。猫背になったり、お腹が突き出たようになっていたら要注意です。歩く時は背筋を伸ばし、顎をひいて視線は進行方向に向け、爪先でけり出しかかとで着地します。歩幅は 広くとり腕を後にバランスよく振り ましょう。歩く速度はあまりゆっく りではなく、急ぎ足程度で汗ばむくらいにしましょう。
 身体の歪みを直してバランス感覚を整えると、百歳まで歩く力がつくといわれます。もう歳だからとあきらめないで、自分にあった筋肉強化をはじめましょう。
 結核について
以前結核は集団検診が義務づけられていましたが、現在では胸部検診の機会が減少しています。あまり知られていないことですが、最近、学校や職場などで結核の集団感染が目立ちはじめています。結核はすでに過去の病気であるという認識の甘さから、感染や病気の発見を遅らせているのです。
 エジプトのミイラから典型的な結核の痕跡が見つかるなど、結核は人類の
歴史とともにある古い病気です。
 日本では明治以降の産業革命による人口集中にともない、結核は国内に蔓延し『結核は国民病』と呼ばれましたが、昭和26年に結核予防法が制定されて以来60年近く経過し、結核の死亡率順位はつねに20位以下であり、なかば忘れ去られようとしています。しかし、大都市の一部の結核罹患率は群を抜いており、集団感染事例もあとを絶ちません。
 WHOの推計によると、世界人口の1/3にあたる20億人が結核に感染し、そのうち毎年800万人の新たな結核患者が発生しており、300万人(そのうち一割は15歳未満)が結核で死亡しています。日本では、平成18年の調査で2万6千人が新たに結核と診断され、2千2百人余の人が亡くなっています。(広島県は60人が死亡)。また欧米諸国と比べると日本の死亡率はフランスの2倍、オランダの10倍にもなっています。
結核とは結核菌が原因となって起きる病気で、空気を媒介にして人から人に感染する伝染病です。結核菌が病気を起こす臓器は肺が約全体の90%と一番多いのですが、骨や腎臓などいろいろなところにも起きます。結核菌が病巣をつくった場所では、炎症・化膿が起こり、その臓器の働きに障害、たとえば肺結核の場合では、呼吸困難を起こします。病状は、発熱・咳・痰(血痰)・胸痛・易疲労感(疲れやすい)・食欲不振などの感冒(かぜ)と同様の症状が現れますが長期間続きます。
 日本の結核の特徴は、☆高齢者に多い☆集団感染が増えている☆若い人にも増えている☆重症の人が多いなどがあります。高齢者の場合は免疫力が低下してくるので発症する確率が高く、(肺にあった結核菌が加齢で発症する)若い人でも過労や睡眠不足、栄養不足など不健康な生活を繰り返していると感染しやすくなります。
 しかし結核菌を吸い込んで感染を受けても、すべての人が発症するわけではありません。感染しても、結核になる人は10人に1人くらいの割合です。規則正しい生活をこころがけ、栄養、休養に気をつけて身体の免疫力を高めましょう。
 咳や微熱が2週間以上続き、痰(血痰)がでるなどの症状があれば、風邪と勝手に判断しないで、是非受診して下さい。集団検診受検の機会が少ない現在では、発見は医療機関での受診が重要になっています。
 早期発見は、本人の重症化を防ぐだけではなく、大切な家族や職場などへの感染の拡大を防ぐためにも大切なことです。
 ニコチン依存症について
マスコミの報道にあるように、タバコ税・価格の大幅引き上げが検討されています 日本学術会議も、「脱タバコ社会の実現に向けて」という要望を政府に提出しました。このなかで「タバコ税を大幅に引き上げて、税収を確保したまま、タバコ消費量の減少をはかる」という提言をしています。日本のタバコの価格は先進国のなかでも低く(イギリスは日本の3倍)、喫煙率は逆に先進国中高い数字になっています。
 タバコの害は、含まれるニコチン、タール、一酸化炭素により、ガンや循環器、消化器などの発病リスクが増大することにあります。
いつでも止められると思って吸い始めたのに、いつの間にかタバコと離れられなくなってしまったり、禁煙に挑戦してもつい吸ってしまうのは何故でしょうか。これはタバコの煙に含まれ
るニコチンが、麻薬にも劣らない強い依存性をもつからです。そのため、現在では喫煙する習慣の本質は「ニコチン依存症」という、治療が必要な病気であるとされています。
 医薬品メーカーの調査によると、広島県の喫煙者の74・5%がニコチン依存症で、全国の都道府県で7番目に高く、禁煙に失敗した喫煙者も73・5%と全国5番目に高いことがわかりました。
 タバコを吸うと、ニコチンが数秒で脳に達し、快感を生じさせる物質(ドーパミン)を放出させます。ドーパミンが放出されると、喫煙者は快感を味わい、同時に、またもう一度タバコを吸いたいという欲求が生じます。その結果、次の一本を吸って再び快感を得ても、さらに次の一本が欲しくなるという悪循環に陥ります。この状態がニコチン依存症、つまり喫煙の習慣です。
 風邪を意志の力で治せないのと同じように、病気であるニコチン依存症を意志の力だけで治すことは難しいのです。最近では、禁煙治療が健康保険で受けられるようになるなど、ニコチン依存症を治すための環境が整いつつあります。
 薬物治療にも選択肢が増え、現在禁煙のための薬には「飲む」、「貼る」、「噛む」の3種類がありますが、今年5月に発売された「飲む」タイプの禁煙補助薬は、脳のニコチン受容体に作用し、タバコで得られる満足感を抑制するのと同時に、禁煙にともなう離脱症状や、タバコに対する切望感を軽減します。従来のニコチンを補充する方法(「貼る」、「噛む」タイプ)よりも持続禁煙率が優れており、日常診療で禁煙できると期待されています。
 
 こむらがえりについて

 「こむらがえり」とは、突然足のふくらはぎの筋肉がけいれんして硬くなり、強い痛みをともなう状態のことをいいます。俗に、「足がつる」と呼ばれているこむらがえりは、ゴルフのプレー中や水泳時によく起こるほか、夜中に寝ている時にも起こります。
 原因としては、筋肉の疲労、静脈のうっ血、水分の不足、ミネラル・ビタミンの不足などがあります。運動する前には十分なストレッチと多めの水分補給をこころがけましょう。また夜間にこむらがえりが起きる方の場合は、就寝前にゆっくり入浴して血液の循環をよくしましょう。あらかじめ座布団や枕で足の位置を少し高くしたり、ふくらはぎのストレッチも効果的です。ただしストレッチをする時は、反動をつけずにじんわりと筋肉を伸ばすことが大切です。眠る前に暖かい牛乳を1杯飲むこともよいでしょう。
 こむらがえりを防止する栄養素として役立つのはミネラルで、最も不足しがちなのはマグネシウムです。マグネシウムは体内で不足しがちなうえ、薬などでも消耗します。マグネシウムは、細胞の活動に必要なカルシウムやカリウムが出入りできる状態にする働きがあります。マグネシウムを多く含む食品には、ほうれん草やバナナ、胡麻、アーモンドがあります。カルシウムを多く含む牛乳、小魚、チーズなどとあわせて摂取するとよいでしょう。
 こむらがえりが起こったら、痛みをがまんして、足の親指をつかんで手前にひっぱり、ふくらはぎを伸ばしてやるようにするのが、早く改善するコツです。また、足をお湯につけて温めたり、マッサージで血液のめぐりを良くするのも効果的です。
 しかしこむらがえりがひんぱんに起きる場合は、糖尿病、血液循環障害、慢性肝炎などが疑われます。特に慢性肝炎では起こりやすいようです。また、人工透析後に起きることがあります。
 一般的な治療として、薬物療法と理学療法が行なわれています。薬物療法は、筋弛緩剤や鎮痛剤、ビタミン剤がよく使われ、理学療法は、温熱療法や牽引療法などがあります。
 こむらがえりに効果が高い薬に、芍薬甘草湯という漢方薬があります。芍薬甘草湯は、芍薬と甘草という二つの生薬でできており、筋肉のけいれんをしずめ痛みを取り去る効果があります。漢方薬は、長期間続けて飲まないと効かないと思われているかもしれませんが、芍薬甘草湯は、各種のこむらがえりに対して効果が高く、速効性も十分にあります。こむらがえりが起こった時に飲んでも、痛みはすぐに治まります。特に、よく夜中にこむらがえりで目が覚める方は、寝る前に芍薬甘草湯を飲むことで、ぐっすりと眠ることができます。最近は足のこむらがえりだけでなく、身体中の急激なけいれんを鎮める目的でも使用されています。
 しかし多量を飲み続けると、身体の中のカリウムが低下する場合がありますので注意が必要です。カリウムが低下すると、力が入りにくくなり、むくんだりすることがあります。また心臓の機能に影響を及ぼすこともあります。その時は、芍薬甘草湯を飲むのを止めるか、量を減らすことで回復します。循環器系疾患のある方は、医師によく相談してから服用しましょう。
 認知症と介護について
 認知症とは脳や身体の疾患を原因として、記憶、判断力などの障害がおこり、普通の社会生活がおくれなくなった状態と定義されています。その多くは「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」です。
 高齢化社会が進むなかで身近な問題であり、出生率が低下している現在、認知症を正しく理解し、その介護について考えることが必要になっています。
 一般的に老化とともに多くなる「もの忘れ」は誰にでもおきることですが、認知症の場合は病気が原因ですので、それ以外に、意欲や自発性の低下(やる気がおこらない・今までやっていた事をしなくなった・ものぐさになった)やうつ症状、言葉の障害、注意力の低下などの症状があったときは認知症の初期が考えられます。家族や周囲の人の注意が必要です。どんな病気でもそうですが、認知症も早期に発見し、治療をしていくことが重要です。
 認知症の方の行動の一例として、妄想、幻覚、夜寝ない(昼と夜を間違えて騒ぐ)、食事をしたのにまだ食べていないと言う、徘徊、失禁、火の不始末(たばこの消し忘れ、鍋の空焚き)など行動はさまざまです。その人の性格、症状、環境などでかなり個人差があり、介護の方法も異なります。
 認知症になって周囲に迷惑をかけることが多くなっても、本人には人間としてのプライドがあり、たとえ症状が進み知能が低下しても、幼い子供とは違って自信と誇りを持っています。また感受性が強く、嬉しいことがあった時にはそれを感情豊かに表現します。排泄のそそうなど失敗があっても、一方的に責めるのではなく、その人の身になってあたたかく対応することが大事です。
 しかし、介護する側からすると、一生懸命介護していても暴言をはかれたり、感謝の気持ちの表現がないなど、
精神的、身体的に大きな負担があります。家庭で介護をする場合は、一人で問題を抱え込まずに、できるだけ楽に介護をすることが長く続ける秘訣です。 認知症の介護のポイントを理解し、周囲の方の協力を得ることです。また、定期的な健康チェックや往診を頼めるかかりつけ医を持つことも大切です。保健婦、訪問看護師、ホームヘルパー、ケアマネージャーなどにも相談してみましょう。施設や介護サービスを上手に利用することも一つの手段です。
現在介護保険で受けられるサービスは
①在宅サービス 
②施設サービス
③地域密着型サービス(認知症の対象が多い施設)があります。
地域密着型サービスには
☆認知症対応型通所介護…認知症の方を対象に、入浴や食事の提供など日常生活の世話や機能訓練を行なう。
☆認知症対応型共同生活介護(グループホーム)…認知症の方がスタッフの介護を受けながら共同生活する施設。
☆小規模多機能型居宅介護…通所を中心に、利用者の選択に応じて訪問や泊りサービスを組合せて提供する。
などがあります。
 しかし、グループホームや介護施設に入所するには数が十分でなく、施設に入所させることに多くの人が罪悪感を抱いているのが現状です。他人に迷惑をかけられない、恥ずかしい、老人は家庭でみるべきだ、などという考えがまだ強く残っているため、家庭で無理をして介護をすることを余儀なくされる場合が多いのではないでしょうか。
 周囲は介護を行なうことの大変さに理解を示し、常に感謝やねぎらいの言葉をかけるようにすることです。
 介護保険の質の向上とともに
 過活動膀胱について
「トイレが近い、夜のトイレが多い、もれそうになる、もれてしまう」こんな症状が気になる方はいませんか?これらの原因の一つに過活動膀胱が考えられます。
 最近の調査によると、40歳以上の男女の8人に1人、人口に換算すると810万人が過活動膀胱の症状をもっているといわれており、その割合は年齢が上がるにつれて増加しています。
普通私たちは膀胱に200~400mlの尿がたまると尿意を感じます。そして、自分の意志でトイレに行くまでしばらく我慢すること(蓄尿)と、準備が整いしだい排泄すること(排尿)ができます。「我慢する」か「排尿する」かは、脳からの命令により、膀胱の伸縮と尿道の筋肉の開閉で調節されています
 過活動膀胱とは、膀胱が尿でいっぱいになる前に自分の意志とは関係なく勝手に収縮する病気です。突然強い尿意におそわれる(尿意切迫感)、排尿の回数が多くなる(頻尿)、我慢ができずに漏れてしまう(尿失禁)などの症状があり、そのためトイレが気になり出かけられなくなる、家事や仕事に集中できない、夜間の頻尿で睡眠不足になるなど、毎日の生活に影響を与えます。
 膀胱が勝手に収縮する原因として、脳梗塞や脳出血、パーキンソン病などの脳と膀胱を結ぶ神経のトラブルで起きるものと、それ以外に、前立腺肥大症などの尿路閉塞のために膀胱が過敏になっている場合や、骨盤内の臓器を支える筋肉が弱くなって起きる場合などがあります。
 過活動膀胱の治療には「行動療法」と「薬物療法」の2種類があります。「行動療法」とは、毎日の生活行動においてトイレに行った時刻、尿量、摂取水分量などを記録する「排尿日記」をもとに、排尿間隔を広げていく「膀胱訓練」などが行なわれます。また、「薬物療法」では主に神経を通じて膀胱の筋肉へ伝達される収縮の指令をブロックし、膀胱の過度の収縮を抑える抗コリン剤を服用する治療をします。
 過活動膀胱は、多くの方が悩んでいる病気にもかかわらず、その認知度が低いため、治療をしている方はまだまだ少数です。快適な生活を取り戻すためにも、まずはこの病気のことを理解しましょう。過活動膀胱は自然に治るものではなく、病院で診断を受けて治療することによって症状が改善していく病気です。①尿をする回数が多い②就寝中に何度もトイレに行く③急に尿がしたくなって我慢がむずかしいことがある④我慢できずに尿をもらすことがあるなど、一つでもお心あたりのある方はどうぞご相談ください。
 腱鞘炎について
腱鞘炎の腱とは、筋肉と骨をつなぐ組織です。手足の筋肉は途中から腱にかわり、ひものように細いすじで骨についています。特に手の指を動かす腱は長く、手首の手前から指先まで15~20㎝もあります。腱はなめらかに動くように、腱鞘という鞘(さや)でつつまれていて、腱の向かう方向を誘導し、周囲との摩擦を少なくしなめらかな動きを生み出します。また腱鞘のなかには滑液があって腱をすべりやすくしています。腱と腱鞘に過剰な摩擦や圧迫がかかったときに炎症が生じます。炎症の症状には、痛み、腫れ、発熱、発赤があります。
 腱鞘の内部が炎症をおこして狭くなり、すじのすべりが悪く摩擦が生じる状態を腱鞘炎といい、腱のあるすべての部位でおきる可能性があります。
 伸筋腱(指を伸ばす腱)の代表的狭窄性腱鞘炎にドゥケルバン腱鞘炎があります。
 ドゥケルバン腱鞘炎は、指を酷使す
る職業についている人や、家事や育児で手や指を使いすぎた場合に多くおこります。また軽い打撲や捻挫、妊娠、出産をきっかけにして発症したり、ガングリオンなどの腫瘍によって伸筋腱が圧迫されておきる場合もあります。
手首に痛みと腫れがあり、物をつかんだり握ったりするとひどくなります。
また指の屈筋腱(指を曲げる腱)におこる腱鞘炎にバネ指があります。靭帯性腱鞘が屈筋腱を圧迫しておこり、母指に多くみられます。中高年者に多く、慢性的使い過ぎが原因とされています。指の付け根の痛みと運動障害で、曲げ伸ばしが困難になります。無理に伸ばそうとすると、「カクッ」と弾かれたように伸びることからバネ指と呼ばれます。
 腱鞘炎の予防には、関節に大きな負担やストレスを与えつづけないということです。痛みや腫れ、熱感があったら早めに休み、安静にして患部を冷や
します。また痛みの引き金となっている筋肉や、負担のかかる動作を見つめなおしてみましょう。腱鞘炎などの筋骨格系疾患の症状は、痛むところ以外にも原因がある場合があります。その一つに患部の周りの筋肉が異常緊張しているという問題があります。
 腱鞘炎の痛みの緊張が、手や腕、肘、肩などの筋肉に連動します。無意識のうちにその痛みをかばいつづけることで、手や腕の使い方のバランスが崩れ、さらに痛みを増幅させたり治りにくくなるという悪循環におちいることがあります。肩背部や肩部、肘部のストレッチやもみほぐしをすることで効果があります。お風呂でマッサージをして血行をよくすることもいいでしょう。ただし、痛みが強くある時は冷湿布などで患部を冷やさなくてはなりません。
 痛みがつづき家事や仕事に支障がでる場合は、局所麻酔薬を混ぜたステロイド系の注射を行なうこともあります。
 腰部脊柱管狭窄症
日本人の総人口のうち、高齢者の人口は2020年頃までには増加し続けるという、まさに高齢者社会がますます加速されようとしています。高齢者に多くみられる症状に腰痛があります。
腰痛は患者さんの訴えのなかで最も多く、特に高齢者(65歳以上)では、5人に1人の割合で認められます。
「腰痛症」と人くくりに呼ばれることもありますが、その原因はさまざまで、治療や日常の対処法もそれによってちがってきます。
腰痛を引き起こす原因の一つである「腰部脊柱管狭窄症」があります。腰部脊柱管狭窄症とは、加齢による背骨の変形によって背骨のなかを通っている神経が圧迫され、足や腰がしびれたり痛んだりする病気です。
歩き始めはよいのですが、歩き出してしぱ゛らくすると、太ももや膝から下にしびれ感があらわれ、だんだん強くなり歩きにくくなります。前かがみで少し休めばしびれやつっぱり感がなくなり、また歩けるようになります。
この病気は、患者さんの姿勢によって症状が良くなったり悪くなったりします。座ったり前かがみになると、背骨の中を通っている神経に対する圧迫感が少なくなり、血流も良くなって症状が楽になります。反対に背骨を伸ばして立つと、神経が圧迫されるため血流が悪くなり痛みやしびれを感じます。
歩いたときに足や腰に痛みやしびれを感じると、動くのがおっくうで安静にしがちですが、安静は身体に良いばかりではありません。動ける範囲で、なるべく身体を動かすようにしましょう。
外出するときに杖を使うとか、手押し車タイプの買い物籠などを使うと、自然な前かがみの姿勢になり、長い距離を歩けます。また、前かがみの姿勢で自転車に乗るのも良い方法です。ただし、痛みやしびれが強い場合は安静にして、症状がおさまってから身体を動かすようにしてください。身体を後ろにそらす姿勢や立ったままの姿勢を長時間続けることはさけたい動作です。
痛みという症状には敏感で、すぐに受診する人が多いのですが、一方でしびれやツッパリ感などの症状は、軽んじたり歳のせいにしたりしてしまう傾向があります。しかしこういう神経症状は、痛みより軽視できないサインです。
治療が遅れると、回復が難しくなる場合もありますので、そういう症状に気がつかれたら、なるべく早く受診されることをおすすめいたします。
 肩こりについて
日本人に多い「肩こり」は、欧米人にくらべて筋力が弱いことや姿勢の悪さ、畳の生活やおじきなどの生活習慣、また勤勉、几帳面さがストレスとなり自律神経に影響をおよぼしているのではないかといわれています。
 しかし、人類が二本足歩行をはじめた時から直立を余儀なくされ、大きな負担がかかるようになった背骨の構造をみると、肩こりは人間の宿命なのかもしれません。
 肩こりは病気が原因でおこることがありますが、ほとんどは首や肩の周囲にある筋肉が緊張して疲労物質がたまり、血行不良になることでおこります。
 病気が原因のものは、こりとは別の病気がありその症状の一つとしてあらわれます。安静にしていても肩がこる、肩こりをほぐす一般的な措置をしても改善されない、また肩から背部にかけての急性の痛みは、心臓疾患や呼吸器疾患が疑われますので早めに受診し治療することが必要です。
 肩こり改善の第一歩は正しい姿勢を保つことです。立った時に身体を横からみて、耳、肩、股関節の中央、膝関節の中央、くるぶしを結んだ線が一直線になるようにします。この姿勢をつくるには、あごを引いて頭を真直ぐに起こし、首筋、背筋を伸ばし両肩の高さを揃えること、またお腹に力を入れて腹筋を引き締めることです。
 また普段使っている椅子や机の高さ、車の運転時のシートボジション、寝具や枕にも注意が必要です。枕の高さは五~七㎝で、肩幅より少し広めの横幅、
やや硬めの材質がよいでしよう。合わない眼鏡、コンタクトレンズ、靴にも注意が必要です。靴のヒールは一~二㎝の低めのもので指先に適度なゆとりがあるもの、甲やかかとをしっかり包み込む形も大切です。また手荷物をいつも同じ側で持つこともよくないので、交互に持ちかえたり振り分けたりしましょう。またテレビを見るときにいつも横向きだったり、腹ばいになり、腕で上体を支え起こす姿勢で見たりするのもよくありませんので正面からみるようにしましょう。 
 食生活では、血行を良くするビタミンEを多く含むうなぎ、かぼちゃ、大豆製品、筋肉中にたまった乳酸を分解するクエン酸を含む梅干し、柑橘類をとり、筋肉をつくるために必要な良質の蛋白質や筋肉の働きを促進するミネラルの多い食事にも注意することです。 適度な運動を続けることや入浴、マッサージ、上手なストレスの解消などを心がけ、うっとうしい肩こりから解放されましょう。 
家庭での血圧測定
 知らず知らずのうちにあなたの身体をむしばんでいる「高血圧症」。あまり自覚症状がないために放置されやすく、いつのまにか細動脈壁が厚くなり、動脈硬化が進行します。硬くなって弾力性を失った血管に血液を送ることで心臓や脳などに負担をかけ、うっ血性心不全や心筋梗塞などの心臓病や脳卒中、腎不全、大動脈瘤という大病を引き起こしてしまいます。高血圧症の人は全国で三千万人と推定され、日本人の四人に一人、五十歳以上では二人に一人はかかっているといわれています。
 血圧とは、動脈が血液で内側から押される圧力のことです。最高血圧は、心臓が収縮し、送り出された血液によって動脈壁がもっともふくらんだ時の
圧力で、最低血圧は心臓が拡張して動脈壁が元にもどった時の圧力をいいます。WHO(世界保健機構)とISH(国際高血圧学会)の決めた現在の血圧分類は表のようになっています。
 高血圧症は自覚症状をともなわないため、別名「サイレントキラー」(沈黙の殺し屋)とも呼ばれ、寝たきりや認知症の原因にもなり、おだやかな生活を奪いかねません。高血圧を防ぐた
めには、肥満やアルコール、塩分のとり過ぎ、喫煙、ストレスや過労などの
生活習慣を見なおしていくことが大切ですが、まずは自分の血圧がどのくらいなのかを知らなければなりません。 血圧は季節、精神状態、食物、体調などの生活状態によってすぐに変化するので、診察時に一度測定しただけでは血圧の平均値をとらえられません。
また普段リラックスしている時は正常値なのに、医師や看護師に測ってもらうと緊張して数値が高くなってしまうという人もいます。このことを「白衣性高血圧」といいます。
 診察時の血圧が正常でも油断できない仮面高血圧や早朝高血圧、また降圧剤による血圧の下がりすぎなどの血圧日内変動の診断に、最近では医療機関での血圧測定だけではなく、家庭で毎日同じ時間に血圧を測定するほうが有効な結果を得ることができると考えられています。医師に高血圧といわれた方や、家族に高血圧症がいる場合、過去一度も血圧の測定をしたことのない方は、比較的安価で性能のよい血圧計が市販されていますので、家庭での血圧測定をおすすめします。
 一日二回、朝は起床後一時間以内、排尿をすませて朝食や薬を飲む前に安静にして座って測ること、夜も就寝時
に同じように測ります。血圧の測り方のポイントは、背もたれのある椅子に腰掛け、心臓と同じ高さの上腕部で測ることです。この位置が、血圧測定には最適です。測った数値は、市販の血圧表などに記録しておき、最高血圧が一四○、最低血圧が九○を超えるようなら、記録をもって医師の診断を受けましょう。
 トリガーポイント注射
 「ペインクリニック」という言葉をお聞きになったことがありますか。
ペインクリニックとは、麻酔科から派生した診療科で「痛みをとる診療所」という意味です。
神経ブロック療法をするところとして、まだまだ一般的ではないのですが、最近知られてきた科です。神経ブロック療法は、「朝ズバッ」、「思いっきりテレビ」で有名なみのもんた氏が、腰部脊柱管狭窄症による腰痛をこの治療法で痛みをとり、NHKの紅白歌合戦の司会を乗り切ったといわれている治療法です。
痛みは、昔は病気が治っていく指標として意味がありましたが、検査等の進んだ現代では、治療を邪魔するものとして考えられています。痛みがあると睡眠がよくとれず、食欲もなくなり、体力が落ち、病気に打ち勝つ力がわいてきません。
免疫学の権威である先生によると、慢性痛のある人は免疫力が衰え、癌にもなりやすいそうです。そのため、痛みはできるかぎり早くなくすることが必要です。
その治療がペインクリニックでありブロック療法なのです。ブロック療法の種類はいくつかあります。気軽にできるものから、入院を要するものまで多岐にわたります。
今回は、簡単に外来治療ができるものをご紹介します。人間にツボというものがあるのはご存知だと思いますが、ほとんど位置を同じくして、トリガーポイントと呼ばれるところがあります。痛みを引き起こす引き金になる場所といえます。
その位置を指が軽く押えると、筋肉がしこりのようになって硬くなっていて痛みを感じます。その部分に鍼を打つかわりに、局所麻酔の注射をします。すると痛みが取れ、ポーッと暖かく感じることがあります。痛みがとれることによって血行がよくなるからです。これをトリガーポイント・ブロックといいます。
首のコリ、肩の痛み、背中の痛み、腰痛などによく行います。痛みでお困りの方は、このブロック療法を一度試されてみてはいかがでしょうか。保険のきく治療です。
 MRIとCT検査について

 荒瀬外科様とは友好病院としてMRI検査、CT検査をさせていただいていますビハーラ花の里病院放射線科です。
放射線科は現在3名で、MRI、CT、超音波、一般レントゲン撮影、透視撮影検査、嚥下機能検査などを行っています。
MRI検査は「マグネティク・レゾナ・イメージング」の略で、磁気共鳴装置の意味です。こけは巨大なコイルに電流を流すことによって磁力を発生させ、超伝道という特別な状態にして、その磁場を利用してコンピーターを通して様々な画像を作り出す装置です。
X線やCTのような被爆が無いので安全に検査が行えます。また、一刻を争うような脳疾患にもすばやい対応(発見)が可能で、様々な角度からの撮影が行えます。
脳血管なども造影剤を使わずに抽出することが可能ですし、頚椎、腰椎、肘、膝などもくわしく検査できます。
CT検査は「コンピューティド・トモグラフィー」の略で、コンピューターの断層装置の意味です。これは一つの円周上にX線を出す管球と反対側に検出器があり、これを高速回転して、その輪のなかを被験者(患者様)の寝台が動くことによって輪切り(断層)画像を作り、コンピューターを通して画像にする装置です。
CTは体部(胸部、腹部)を抽出するのに優れており、MRI検査にくらべると短時間に検査がすみますが、若干の被爆はともないます。
また当院では、県北では最初にオンライン(広島、三次間)での、放射線専門医師による画像遠隔診断の設備を取り入れて、より短時間で症状の分析と診断ができるようにしております。これによりMRI・CT検査の即日診断を行っております。荒瀬外科様の付設施設のような気持ちで、気軽に検査にお越しいただければ幸いです。
                 ビハーラ花の里病院 放射線科 技師長 長谷川 正伸

睡眠時無呼吸症候群
 現在日本には、睡眠時無呼吸症候群の患者さんが約2百万人もいるといわれています。ところが、適切な治療を受けている人はまだ少数で、2万人程度にすぎません。
夜間眠れないとか、よく寝たつもりなのに、昼間眠くて仕事にもさしつかえるなど、睡眠に関する不満は多くあります。そのなかで、中高年層の男性に多いのが、睡眠時無呼吸症候群です。
この病気は、激しいいびき音を発したり、睡眠中に10秒以上呼吸停止が頻繁におこるものです。この状態が長く続くと、高血圧などの循環器系の病気になることもあり、死亡率が高くなるといわれています。また夜間の突然死の関連も指摘されています。
この病気の主な原因は、上気道(軟口蓋や舌、扁桃腺など)の閉塞です。胸部と腹部に呼吸努力はあるものの、空気の通り道である上気道がふさがって呼吸ができなくなってしまうものです。
人によっては、無呼吸が30秒から1~2分におよぶことがあります。こうなると、動脈の酸素飽和度の値が著しく低下し、炭酸ガスが過剰状態になり、血液が酸性化して心臓への負担が増えることになります。
睡眠時無呼吸症候群の治療は、下顎を前に出すマウスピースや、鼻にマスクを装着し、圧力をかけた空気を鼻から持続的に上気道に送り込み、上気道を押し広げるというシーパック治療法、軟口蓋などの一部を切除する手術法があります。どの治療も保険適用です。
本人に自覚がなくても、配偶者などに症状を指摘された方は、自宅で簡単に検査できる小型軽量の機器があります。何秒間呼吸が止まっているか、一晩に何回無呼吸があきているか、動脈の酸素飽和度がどのくらい下がっているかなどがわかります。
翌日これを病院に持参すれば、その場で診断ができ、その結果、治療が必要であれば、入院してすぐ治療がはじめられます。
 片頭痛
 頭痛で悩んでいる日本人は人口の約1割もいるといわれていますが、「頭が痛い」と感じても、市販薬を飲んでぐっと我慢してしまう人が多いのではないでしょうか。
女性に多い片頭痛、その特徴は次のようなものです。
① 脈を打つような痛み
② 発作的におこり、生活に支障がでるほど激しく痛む
③ 一般に20~50歳代の女性多く、60歳代以上では軽くなる
④ 左右どちらかが痛む
⑤ 血縁者に頭痛持がいる
 片頭痛がおきるメカニズムは、ストレスや風邪゜などの原因でセロトニンとよばれる物質が放出され、血管が収縮や拡張を繰り返すことで生じるものと、脳からの命令で神経が血管を刺激しておきるというものがあります。
この片頭痛には、痛みがおきる前触れがあります。首筋や肩のこり、生あくび、めまい、眠気、閃輝暗転(目の前がまぶしいとか、星のようなものが飛ぶ)などです。このような症状があらわれたら、早めに対策しましょう。しかし、すぐに薬に頼るのではなく、急な痛みには次のようなことも有効です。
☆ 充分に睡眠をとる
☆ 痛むところを冷やす(血管の拡張を抑え、痛みがやわらぐ
☆ コーヒーや緑茶などを飲む
☆ 痛いほうのこめかみの動脈を指で押える
 また片頭痛もちの人は
※ 規則ただしい生活をする
※ ストレスをためない
※ 興奮することをできるだけ避ける
※ 炎天下にいたり、熱いお風呂に長くつからない
※ 運動をやりすぎない
※ お酒を飲みすぎない
※ ハム、ソーセージなどの練り製品、チーズ、チョコレートの食べすぎはしない
などの注意が必要です。
1ヶ月に10回以上頭痛薬を飲む人は、医師の指導のもとに頭痛抑制治療薬や頭痛予防治療をうけましょう。市販の鎮痛薬を服用するときは、前駆症状がではじめたら早めに飲むことです。ひどくなってからだと、効果がかんばしくなく吐き気で飲めないこともあります。だだし頭痛予防のために毎日服用すると悪影響を与えてしまうので、「鎮痛剤は早めに服用、でも乱用は駄目」ということです。
 C型肝炎ウイルス」の検査をしましょう
いまや国民病といわれるほど多くなっている肝臓病ですが、そのうちの約80%はウイルスが原因でおこります。
 肝炎を引き起こすウイルスは、現在世界中で6種類が発見されています。
 A型肝炎ウイルスは食べ物や飲み物を通じて経口感染し、B型肝炎ウイルスは、血液や体液を介して感染します。
 C型肝炎ウイルスの主な感染経路は、「輸血、血液製剤、注射の使い回し」ですが、1994年以降の輸血用血液や血液製剤は、きちんと検査が行なわれているため、現在新たなC型肝炎に感染することはほとんどありません。 ただし、1994年以前に輸血の経験がある人などは、本人が気づかないまま感染していることもあります。
 最近、日本では感染死亡例が確認されていなかったE型肝炎ウイルス感染による死亡例が、3人確認されたというニュースが伝えられました。
 E型肝炎の感染経路は、水や食べ物の経口感染で、アフリカやインド、東南アジアに多く、日本での発生はほとんどないとされてきました。しかし今回の死亡例で、国内での感染ルートの存在が疑われています。
 肝臓に肝炎ウイルスが住み着いた状態を、C型肝炎ウイルスの持続感染者(HCVキャリア)とよびます。
 この時肝炎ウイルスの免疫によってつくられた「抗体」が肝細胞を攻撃すると、炎症(ウイルス性肝炎)が起こり肝細胞を壊していきます。
 肝炎が起こり肝細胞が破壊されても、すぐには症状はでません。症状が現われるのは肝細胞の破壊がかなり進んでからなので、慢性肝炎にかかっていても知らずにいることがあり、そのままほおっておくと、「肝硬変」や「肝臓がん」といった重大な病気につながることがあるので早めの検査と治療が大事です。
 またC型肝炎ウイルスのキャリアになった場合は、血液が付着する可能性のあるカミソリや歯ブラシなどの共用はさけ、外傷、鼻血は手当てする人に血液や分泌物がつかないようにします。口の中に傷がある場合は、乳幼児に口移しで食べ物を与えない、献血はしないなどの注意が必要です。
 C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液検査により知ることができますので、いままで一度も検査をしたことのない方は必ず検診をされますようにお勧め致します。
 眠れないあなたと睡眠薬
現在、だいたい5人に1人が睡眠の問題を抱えていて、睡眠についての不満を感じています。
不眠には、何か原因があって起こる不眠と、原因がなくて起こる不眠があります。いわゆる不眠症とは後者のことです。
 睡眠薬はその不眠を治す第一治療薬で、安全性も一昔前よりかなり高まっています。たとえば、よくきかれる
★一度飲むと「くせ」になってやめられない★だんだん効かなくなって量が増える★飲みすぎると死ぬ
 これらは今の睡眠薬ではまったく問題になりません。安全性はケタ違いに高くなっています。
睡眠薬をおおまかに分類すると☆超短時間型(ハルシオン、アモバン、マイスリー)☆短時間型(レンドルミン、エバミール)
☆中間型(ユーロジン)☆長時間型(インスリン)に分けられ、不眠のタイプに合った薬を処方されます。
 今は寝つきが悪い入眠障害に、さっと効いてすぐクスリの効果がなくなる超短時間型や、短時間型が主流です。
 睡眠薬の眠りは、あまり眠いという感じをもたないまま、すっと眠り入ります。ですから、眠気がくるのを今か今かと待っているといつまでたっても眠くなりません。飲んだら「電気もテレビも消して布団に入る」ことをおすすめします。
 クスリの効果はせい2から4時間程度で、あとは体内の眠りのリズムにより、自然な眠りに導かれます。
 眠りノリズムハ、朝のうちに日光を浴びることで整い、夜自然に眠たくなる仕組みになっています。たとえ曇りの日でも、朝の散歩など、なねべく外に出て太陽の光を浴びるように心がけましょう。
 昔からよく「8時間睡眠」が理想といわれましたが、医学的な根拠はありません。年をとると、睡眠時間は自然と短くなります。70才以上では、平均6時間弱となっています。少しでも長く寝ようと、早く床についたりしないでも、朝の目覚めが さわやかで疲労感がなければ、睡眠時間は十分足りています。
サーズとインフルエンザ 
2002年11月に中国広東省で最初の患者が発病したのをきっかけにし、その後アジア各地、カナダなどにも及んだSARS(重傷急性呼吸器症候群)は、2003年7月5日にWHO(世界保険機構)が終息宣言をだしました。 
この期間に8098例のSARS症例が報告され、死亡者は774人にもおよびました。
 WHOの終息宣言があったとはいえ、インフルエンザの症状と初期症状がよく似ているため、この冬も引き続き警戒する必要があります。
 SARSは、動物から人に感染する新型のコロナウイルスを病原体とする新しい感染症です。患者のせきを浴びたり、痰や体液などに直接触れる濃厚な接触をした場合に感染し、2日~7日、最大10日程度の潜伏期間を経て発症します。潜伏期また無症状期に他への感染力はほとんどないと考えられています。
 感染した場合の自覚症状は、38度以上の発熱、悪寒、下痢、息切れ、頭痛、筋肉のこわばり、全身の倦怠感などです。
 予防策はマスクの着用、うがいと手洗い、汚れた手で目、口、鼻に触れない、人混みを避けるという物理的手段
があります。また規則正しい生活、十分な休息、栄養のバランスに富んだ食事、たばこを控えることなど身体の抵抗力を高めることが大切ですが、インフルエンザの予防についても同じことですから是非実行してほしいものです。
 またSARSコロナウスルスは、エタノール(アルコール)や漂白剤の消毒、台所用合成洗剤で死滅します。
インフルエンザワ
        クチンの予防注射に
        ついては、65歳
        以上の高齢者で、発
        病を45%、死亡率を
        80%も阻止する効果が報告されています。以前は二回の接種でしたが、現在は一回でも効果があるとされています。ただ接種回数などは医師の判断なので受診時にご相談ください。
 予防注射の効果があらわれるのは二週間ほどかかりますので、流行しはじめてからではなく、早めに接種するのがよいでしょう。
 また、風邪とは医学的には「風邪症候群」といわれ、原因の種類に関係なく、呼吸器の急性炎症の総称として使われる単語です。もちろんインフルエンザも含まれます。症状により次のように分類されます。

 鼻風邪や喉の痛みだけの場合はイソジンなどを使って頻繁にうがいをし、安静にして水分や栄養補給をしましょう。その後発熱を伴う時は、早めに受診されることをおすすめいたします
 コレステロールはほどほどに 
今回の話題はコレステロールです。
「高コレステロール血症「という言葉をよく耳にしますが、逆にコレステロールの下げすぎについてお話しましょう。
血中のコレステロールは細胞膜やホルモン等の材料になり、身体にとっては重要な栄養素です。
しかしこのコレステロールが多すぎると、動脈硬化症の原因になります。
ですから、治療によってコレステロールを下げます。しかし、ここで一つ疑問がわかないでしょうか。
身体にとって重要な栄養素でもあるコレステロールを、やたらと減らしてもいいのだろうか?という疑問です。
実際、一時新聞でも「コレステロールの下げすぎにより癌による死亡が増加」などという話題が掲載されていました。確かに以前から、コレステロールを下げると心血管疾患は減少しますが、逆に癌、脳出血、自殺などが増加するといわれていました。
それでは、コレステロールを下げる意味はなくなってしまいます。ほうとうにそうなのでしょうか。実は、それらについてはこれまで多くの研究が行われてきました。
最も気になる癌ですが、これはコレステロールの下げすぎが原因ではなく、癌になることでコレステロール値が下がるようなのです。また、栄養状態の悪い時にコレステロール値は低くなりますが、そういうときには、確かに脳出血は多く発症しているようです。
つまり、コレステロールを下げすぎることにより発症が増えるということはないともいえるようです。そして、自殺についてですが、コレステロールと脳内のある物質とが関連しており、コレステロールが減ると、この脳内物質に影響してうつ傾向が出現するのではないかといわれています。ただこの問題については、これからまだまだ研究の必要があるようです。
では、結局コレステロール値はどうしたらよいのでしょうか。やはり、高すぎるのはよくないので下げるべきです。
どこまで下げればいいのかというと、最近の研究では、総コレステロール値で160から200㎎くらいが死亡率が低下するということです。
要するにコレステロールは、高すぎず、低すぎず、ほどほどがよいということでしょう。
 検査について
病気の検査は、正しい診断と治療のために欠かせないものです。将来起きるかもしれない病気を予測して、事前に予防するという意義も兼ね備えています。検査のデータが多いほど、より正確な診断ができることになり、予後の指針にもなります。
 しかし必ずしも多ければ多いほど良いというものではなく、できるだけ少なく効率よく、病気に対する負担の少ない方法で、しかも正確に病気の診断と現状を把握して、適切な治療を行なうことが大切です。

  検査の種類
①スクリーニング検査
 スクリーニングとはふるい分けると いう意味で、疑われた病気の有無を 確かめる検査で、容易にしかも短時 間で結果を得て信頼度も高いもので す。たとえば検尿、検便、血液検査 といった方法で、精密検査、あるい は複雑で時間がかかる検査を行なう 前に、どのような異常がどこの部位 にあるのか、あらかじめ見当をつけ る検査です。病気そのものが単純で、 この検査で明確な場合はただちに治 療に入ります。
②臓器別検査
 胃、肝臓、心臓、腎臓など、特定の 臓器を対象にして、その機能が正常 に働いているかどうかを検査する方 法です。直接検査などで多角的、総 合的に検査し、異常の発見とその程 度、治療方針などに役立てます。
③直接検査
 患者さん自身が検査の対象になる場 合です。レントゲン検査、超音波検 査、内視鏡検査、心電図検査などの ように、直接患者さんに触れ測定を 行なう検査です。生体検査と呼ぶこ ともあります。
④間接検査
 検体検査とも呼ばれるように、患者 さんから得た尿や血液、喀痰などを 検査する方法です。
 
 
血液の異常と主な症状
☆顔色が悪い…貧血があると、各臓器 や細胞への酸素供給が少なくなるた め顔色が悪くなったり、頭痛、めま い、耳鳴りなどの症状が現われます。
 体がほてる…貧血とは逆の多血症  (赤血球が正常より増える)の場合 は、血色素が増加し粘張度も増すた めに、赤ら顔になったりのぼせ感が 生じます。
 感染症にかかりやすい…白血球が減 少すると、発熱、咳などが出やすく 気管支や肺がおかされやすくなりま す。
☆ひ臓が腫れる…白血球が増加する白 血病などでは、左腹部の圧迫感や疼 痛などの症状があります。
☆出血しやすい…血小板が減少すると 出血症状がみられますが、凝固障害 の種類によって皮下出血や間接出血 など出血の仕方が多少異なります。 よくみられる出血部位には、鼻出血、 口腔出血、消化器出血、泌尿器出血、 脳出血などがあります。

 血液検査を受ける時の注意点
 血液検査を受ける時は、空腹にしておくことが原則です。また検査前に運動しないことです。特に白血球の検査などでは結果に影響します。
 当院でも上記のような超音波(エコー)検査、内視鏡(胃カメラ)検査、血液検査などさまざまな検査を行なっておりますので、お気軽にお申し付け下さい。また必要に応じて他院にも検査依頼し臨機応変に対応しております。
 なにごとも早期発見、早期治療が大切です。