パーキンソン病とは       平成30年9月1日
 「パーキンソン病」という病名は、その症状を細かく記載した小論を発表した英国の医師ジェームズ・パーキンソン氏に由来します。脳の異常により身体の動きに障害が現れる病気です。60歳以上になると、およそ100人に1人が発症するといわれています。高齢者に多くみられる病気ですが、若い人でも発症することがあります。パーキンソン病は何年もかけてゆっくりと進行する病気で、いったん発症すると、自然によくなったり治ったりすることはありません。しかし現在は効果的な治療薬があるため、早めに治療を始めれば、発症から長い年月にわたり良い状態を保つことができます。
 発症のきっかけは、遺伝的要因に神経毒などの環境因子が加わって起きると考えられていますがまだはっきりわかっていません。
 パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質「ドーパミン」が作られなくなることが原因で起こります。私達が身体を動かそうとするときに、脳の大脳皮質から全身の筋肉に運動の指令が伝わります。このとき、私達の意図どおりに身体が動くように運動の調節をしているのがドーパミンです。ドーパミンは、脳の奥の「黒質」にあるドーパミン神経で作られます。パーキンソン病では黒質のドーパミン神経の減少に加え、他の中枢神経や自律神経もダメージを受けてしまいます。
 パーキンソン病の最初の症状は、手が震えたり、よく転ぶようになったりすることです。老化のせいと思い軽く考えがちですが、パーキンソン病の場合、手の震えは、じっとしているときに起きて、なにかの動作をすると出ない、片方の手だけに出るなどの特徴があるので注意が必要です。「手足の震え」「動作が遅い・少ない」「バランスがとれない」「筋固縮(腕や足を動かすとカクカクする症状)」などの症状があります。それにより、顔の表情の乏しさ、小声、小書字、屈曲姿勢、小股、突進歩行などの運動症状が生じてしまいます。
 またパーキンソン病では、運動症状以外にも、便秘や頻尿などの自律神経の症状、不眠などの睡眠障害、うつ症状などの精神症状、認知機能障害などがみられることがわかっています。これらを非運動症状と呼びます。うつ症状は患者さんの約半数にその傾向があるといわれていますが、患者さん自身や家族の方も気づかないことの多い症状です。
 パーキンソン病の症状が現れたら、すみやかに医療機関で検査を受けることが大切です。検査の結果以下のポイントに当てはまれば、パーキンソン病と診断されます。
①代表的な4つの運動症状がある
②CTやMRIの検査で脳に明確な異常が確認されていない
③パーキンソン病に似た症状を起こす薬を服用していない
④脳血管障害や脳変性疾患ではないと証明されている
 
 パーキンソン病と診断されたら、すぐにリハビリテーションを始めましょう。有酸素運動やストレッチなどを積極的に行うことで、生活に支障のない状態を長く保つことができ、薬の使用量も最低限ですみます。パーキンソン病だからと運動を制限すると、身体の機能は低下します。薬の服用では、患者さんの容態に応じた薬の種類や服用量、薬の組み合わせなどが考えられ処方されます。パーキンソン病の運動症状を改善するために脳の手術が行われることもあります。医師の指示を守り正しい治療を受ければ、日常生活も快適に過ごせます。日々の暮らしでは明るく前向きな生活を心がけ、身体を積極的に動かせば病気の進行を遅らせることができるのです。
パーキンソン病は現段階では完治は困難ですが、今後新たな治療方法が確立されることも期待されています。パーキンソン病の原因と考えられる遺伝子がみつかり、遺伝子治療についての研究が行われているだけではなく、いろいろな細胞に分化する機能を持つ「iPS」細胞や「ES」細胞の移植による治療も注目されています。


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