咲き誇る花のHappiness



『クルツ。ある女性に謝らなければならない。俺はどうすればよいのだ?』
(う〜ん、またカナメちゃんを怒らせたな、こいつ)
「よし。そういうときはだな・・・・・・」
 今思えばその電話が始まりだった。


「恵那〜、やっと元気になったね」
「そーね。あの馬鹿のこと吹っ切れたみたい」
 あたしを心配してくれてたのは分かる。でも、
「相良くんのこと、悪く言わないで!」
 あたしは彼の過去を知ってしまった。
 だから彼を憎めない。
 だから彼を嫌いになれない。
 だから彼を好きなまま。
「あらま。本気なのね〜」
「ま、不利だけどね」
 そう。
 彼の周りにはいつも彼女がいる。
 でも、あたしは負けない。
 この「好き」は特別な「好き」だから。
 だからあたしは彼に積極的に声をかけた。
 最初は戸惑っていたけど、次第にうち解けてくれた。
 でも、彼の目にはまだ罪悪感が残っている。
 あの日の手紙のこと。
 気にしてない、って言えば嘘になるけど。
 もう、気にしなくていいのに。


 彼女に謝らなければならない。
 あの日のことを。
 俺は相当酷いしたことをしたらしい。
 しかし彼女は俺に話しかけてくる。
 それが嬉しかった。
 だから俺は彼女に謝らなければならない。
 しかし俺には解らない。
 俺はどうすればいいのか。
 どうすれば罪は贖えるのか。
 千鳥には訊けなかった。
 訊いてはいけない気がした。
 だからクルツに頼った。
 クルツの教えてくれたとおり、俺はあるものを用意した。
 今回ばかりはクルツの提言が正しいことであることを−祈る。


「佐伯恵那はいるか」
 ぶっきらぼうな声。
「相良くん−あたしに、何か?」
 そこに、彼がいた。
 困ったような顔で。
「あの時は・・・・・・すまなかった」
 本当にすまなそうな顔。
「いえ・・・・・・もう、いいんです」
「いや、それでは俺が良くない。これが君に対する俺の気持ちだ」
 手渡されたのは、真っ赤なバラの花束。
「え?これ・・・・・・」
 これを、あたしに?からかってるだけでしょ?
「君に受け取って欲しい」
 そんな・・・・・・本当に?
「あ・・・・・ありがとう。嬉しいです・・・・・・」
 涙が、こぼれそう。
「うむ。君が喜んでくれて何よりだ。では、俺は教室に戻る」
 しばらく、あたしの時間は止まっていた。
 嬉しくて。
「ぐっときちゃうよね、こんなことされたら」
「まったく、幸せ者だよねー、この子は」
 からかわれながら、あたしは花束を抱きしめた。
(どんな顔して買ったんだろ?)
 花屋の前で悩んでいる相良くんを思い浮かべて、あたしは少し笑った。
 だんだん好きになっていく。
 だんだん解っていく。
 あなたが。
 もう、止められないね。
 この恋は、止まらない。



「そういうときはだな、真っ赤なバラの花束を彼女に渡しゃあいいんだよ。『これが君に対する俺の気持ちだ』ってな」



 クルツ。珍しいことだが・・・・・・お前の言葉に間違いはなかった。
「相良くん早く!七夕祭り、始まっちゃいますよ?」
「わかった。すぐ行く」
 そう、間違いはなかった。





 佐伯恵那編2。
 ていうか、ぽえむの続きだったりします。
 そしていきなりクルツです。しかも美味しいとこ独り占め。
 最初に思い浮かんだというか妄想神が授けたのはバラの花束を抱える恵那。
 あとはすい〜と降りてきてしまいました。
 しかし・・・・・誰かバラの花束抱いてる恵那さん描いてくんないかなって思ったり。
 自分で描くしかないかなーとか思ってみたり。
 ま、気が向いたら+時間があれば描くかも知れませんが。