小さな光のRiverside
「蛍祭り?なんだそれは」
・・・・・・やっぱり知らないか。
「あのね、蛍祭りってのはね・・・・・・」
延々と説明。ソースケの顔がだんだん険しくなる。
「やはり俺も行こう。君一人だと危険だ」
心配してくれてる。女の子として見てくれてる。
なんだか嬉しくなる。嬉しくて、
「ソースケ、そんなに・・・・・・心配?」
ちょっと上目遣いで、聞いてみる。でも。
「当たり前ではないか。暗闇の中だと襲撃者も活動しやすいだろう」
・・・・・・甘い台詞を期待したあたしがバカだったかも知れない。
「どうしたのだ?疲れた顔をして。具合でも悪いのか?」
ソースケは悪くない。解ってる。解ってるけど!
「そーよそーよ、あんたってこーゆー奴よぉぉぉぉぉ!」
やっぱり赦せない。きりきりと首を締め上げる。
「お・・・・・・俺が何をしたというのだ・・・・・・?」
あ。落ちた。多少の罪悪感を感じながら、あたしはある決心をした。
今日は特別な日だったから。
部屋に戻った後、あたしはクローゼットから浴衣を出した。。
朝顔の柄。あたしのお気に入りの浴衣。
そして、もう一つ。
ソースケと蛍祭りに行きたくて、縫っておいた浴衣。
「うん、我ながらいい出来♪」
でも楽しくなるのも頭が痛くなるのもソースケ次第。
「しっかり釘刺しておかないとね」
のんびりと見たいから。二人で、楽しく。
「いい?今日はこれを着ること!」
渡された浴衣を広げ、ソースケは唸っている。
(・・・・・・これでは充分な武装を行うことが出来ないではないか!)
解りやすい。なんて解りやすい。でも、今日は特別だから。
あたしは容赦なく告げた。
「それと武器は禁止」
「・・・・・・ぬぅ」
「解った?」
にっこりと微笑ってみる。
「いや、しかし護衛をする以上・・・・・・」
食い下がろうとするソースケ。でも何が怖いのか、語尾は消えていく。
あたし、微笑ってるだけなのにな?
「解った?」
だめ押しの一言。そんなあたしにソースケは
「・・・・・・了解した」
おとなしく従った。
数分後。
「これで、いいのか?」
やっとソースケが出てきた。
すかさずボディーチェック。
・・・・・・なんだかソースケに毒されているような気がするけど。
でも、ソースケはどうやら言い付けを守ったらしい。
「おし!じゃぁ、行こっか?」
歩き出したところで、ソースケの声。
「千鳥」
「ん?何、ソースケ?」
「その浴衣だが、その」
?なんだかソースケらしくない。どーしたんだろ?
「似合っているぞ」
思わずソースケの額に手を当てる。
「どうしたのだ?」
熱は、無かった。・・・・・・珍しいこともあるものね。
でも、嬉しいな。やっぱり。
「ううん。なんでもない。ありがと。ソースケも似合ってるよ、浴衣」
「そうか?」
どことなく嬉しそうな声。
たまにはいいね−こんなの。
河原のそこここに人の影。
そして踊る小さな光。
何となく、ほっとする光景。
「蛍ってね・・・・・・」
何となく、話したくなった。蛍のこと。
「蛍ってね、水が綺麗じゃないと生きていけないんだって」
視線を河に戻す。
「だからね、ここまで戻すの、みんな頑張ったんだって」
「そうか。みんなの努力があったからこその光景か」
嘆息しながら、ソースケ。
「うん。凄いよね。みんなの願いが、この光景を叶えたんだよ」
蛍を取り戻したい。
ただそれだけで人はこんなに頑張れる。
小さな願いが、世界を大きく変えた印だから。
『信じて。そして、動いて。夢は、叶うよ。夢は叶えるためにあるんだから』
小さな、だけど確かな光が、あたしを励ましてくれるような気がして。
「だから、好きなんだ。蛍祭り」
差し延べた手に舞い降りる緑。
「綺麗、だよね・・・・・・」
「うむ・・・・・・」
いつもならこの後に余計な一言が加わるんだけど。
「・・・・・・」
ソースケはただ光の乱舞を嬉しそうな目で見ている。
(来年もまた・・・・・・)
言葉にしようとして、やめる。
来年もまたソースケがいるか、解らないから。
でも、ソースケはあたしの方を見て呟いた。
あたしだけに聞こえる声で。
「来年もまた見たいものだな−君と」
「うん・・・・・・そう、だね。じゃあ、約束しよ?」
あたしとソースケの小指が絡み合う。
舞い上がり、舞い降りる光の中の約束。
小さな光。だけど、確かな光が祝福してくれている。
小さな、だけど大切な約束。
−絶対、また来ようね−
−HP設立記念SSである!
「あ、予告通りそーかなだ。ところで何故に蛍?」
−何を言っているのだね君はそもそも蛍というものは日本人のノスタルジイを喚起しなおかつセンチメンタリズムの象徴とも言える夏の世の夢の如く移ろう存在でありその儚さ故に愛されている存在でもあるのだよしかし哀しいかな近年では(中略)しかるに我々は何を成すべきかと問われれば迷い無く(中略)であり文学的象徴と成り代わるのだしかしそれだけが本質ではなく(後略)
「うわっ水星モード!」
−で、何故に蛍かというとおもさんの「蛍見ました」ってのがトリガー。
「(ふぅ、正気に戻ったみたい)ふぅん。おもさんの一言がトリガーだったからこそそーかな、ってわけね」
−うん。さて、実家に帰って蛍みよっと。
「・・・・・・ついてく」
−はい?
「蛍見たい」
−仕方ないなぁ。じゃ、行きますよっと。
「おっけー!」