遠野秋葉さんの平凡な一日 −朝変−





「たまには二人で朝寝坊というのもいいものですね、兄さん。」
「いつもといってることが違うんじゃないか?」
「で、ですから、”たまには”です!」
こんなちょっとしたじゃれ合いもいいものだと思える。
私もやはり”女の子”であったという訳だ。
家長の役割を演じる必要のないこんな時間がとても大事に思える。

コン、コン

その音で私と兄さんは凍りついた。
あぁ、破滅の音ってこんなにも軽かったんだ……。
忘れてた。ここは兄さんの部屋なんだ。
ということは翡翠が起こしに来る。
何てこと、そんな当たり前のことを忘れるなんて

「おはようございます、志貴様。お目覚めでしょうか?」
ガチャリと音を立ててドアが開く。
あぁ、誰でもいいから時間を止めてぇ〜



開いたドアの向こうには翡翠がいた。
律儀に頭を下げているので、こちらの状況には気づいていないようだ。
あぁ、なんだか、時間の流れが遅く感じる。

翡翠の頭が上がった。
「「お、おはよう、翡翠。」」
あ、ハモッた。
なんか今日は朝から良い事ありそう♪
いかん、感心してる場合じゃなかったんだ。
もう、最悪の状態になりつつあるのに良いことなんて…あったか。
え、あれで終わり?むしろ、その後でしょう!
なんか、ちょっと良い感じになったんだからこうなんというか
ロマンティックな言葉の一つや二つかけてくれて
そのあとにデ、デートの約束なんて持ちかけてきてくれて……。
「…」
「…葉。」
「お、おい、秋葉?なんか、顔赤いけど大丈夫か?」
はっ、何を考えてるんだ、私は。
最近、瀬尾の貸してくれた少女漫画に影響されてるのかなぁ?
「何でもありません。大丈夫です。」
ちょっと心配させてしまったようだ。

じゃなくて、今は翡翠だ。
やっぱり、固まってる。
う〜ん、どうすればいいんだろう?
琥珀を呼ぶわけにもいかないよなぁ、やっぱり。
潔癖な翡翠のことだ。こういう光景はショックが強いだろう。

一応、立場は使用人だがやはり翡翠は大事な家族だ。
なんか、このまま気まずいのだけは避けたいが
ごめんとかではないだろうし…
えぇいここは普通に対応してしまえ。
「おはよう、翡翠。朝の用意が出来たのね。琥珀にすぐ行くからと伝えてもらえる?」
「お、おい秋葉?」
兄さんがなんか言ってるけどとりあえず無視しておこう。
ごめんね、兄さん。ここで反応すると私も普通じゃなくなると思うから。
「はい。分かりました。秋葉様。志貴様、着替えはこちらにおいておきますので。」
良かった。一応、何とかなったようだ。
さて、残りの問題を解決するとしよう。

「兄さん。」
「な、なにかな?」
「普通にしててください。お願いですから。」
「しかしだなぁ。翡翠固まってたし、なんか出て行くときもぎこちなかったぞ?」
むぅ、着眼点が細かい。ちょっと嫉妬するなぁ。
兄さんってそんなところまで見てるんだ。
今度から注意しなくては。
じゃなくて、さっさと解決しなくてはいけないんだ。
「だって、言い繕うのも変じゃないですか。私達、こ、こ恋人同士なんだし……。」
う〜ん、まだ恥ずかしいものがあるなぁ。仕方ないけど。
「そ、それもそうだね。」
あ、兄さんも赤くなってる。
でも、こういうときには必ず一言ついてくるんだ。

「今度からは秋葉の部屋で甘えてもらうことにしよう」
「じ、じじ、じゃ、にに兄さん。朝食の席で。」

えぇい、私のほうが普通じゃないではないか。
しかしこの人はどうしてこうさらっと……。
はぁ、諦めよう。
この人には何を言っても無駄だ。

それに、そんなことは私自身望んでいない。
私が望んだのはこの人がこの人のまま暮らしてくれる事なのだから。
このまま、ずっと兄さんと琥珀と翡翠とそして私。
家族で幸せにあるがままの自分で暮らしていくこと。
それこそが私の望んだ世界のカタチなのだから。




この後、朝食の席で翡翠から報告を受けた琥珀に思いっきりからかわれたのは




また




別の




お話


あとがき?
どうも、へっぽこ新人のtakaです。
なにやら身内に受けが良かったので調子に乗って三作目です。
まぁ、なんといいますか、あれですね。
一応は続きなんで、「遠野秋葉さんの平凡な一日」を読んでいないと全然分からない作りに
その辺は”まだ初心者だから”とか”へっぽこ新人だから”と受け流していただければ幸いです。
うけがよければ続きOR別作品があるかもしれません。
次があればそのときにお会いしましょう
2002年9月11日
taka




takaさんからのSS第3弾。
遠野秋葉さんの平凡な一日の続きですね。