そのいち。





 上手くいくはずだった。
 最強のサーヴァントであるセイバーを呼べるはずだった。
 そして聖杯戦争の勝者になるはずだった。
 しかし、なんと言うことだろう。私は間違った時計を信じ、屋敷内の全ての時間を合わせていた。
 間違った時間に行われた召喚の結果は、無音。
 しかし――これはせめてもの救いなのだろう、私は感じていた。
 私から召喚された誰かに流れていく魔力を。
 その流れゆく先は――居間。
 思いきり居間の扉を開いたなら、その声は届いた。
「随分乱暴だな、君は」
 皮肉な声。
 しかしその声の持ち主が、見え・・・ない。
「え?どういう事?」
 きょろきょろ周囲を見回す私に――
 更に、声が、届いた。
「どこを見ている。ここだここ」
 その声の発生源は、白髪に浅黒い肌の若い男。
 しかし彼の居所は、と言えば――
「目の、錯覚かな?」
 シュガーポットに座っているし。
「現実を見据えることも出来ないのか?とんでも無い魔術師に召喚されたものだ」
「何よこれぇぇぇぇぇ!?」
 思いきり一歩踏み出した結果、私はバランスを崩してひっくり返った。
「・・・・・・やれやれだ」
「うっさいわよコンチキショウ」
 ・・・・・・私は泣いても良いと思う。