そのに。





 私は頭痛に頭を抱える。
 目の前の――いや、眼下で繰り広げられる光景に。
 青い槍兵と、赤い弓兵。
 それが戦っている。
 青い槍兵は槍を閃光の速さで突き、赤い弓兵は手にした中国風の双剣でそれらを捌く。
 ああ、それは美しいとさえ言える光景なのだろう。
 ……サイズさえまともなら。
 ――と。
 誰かの気配と、その誰かが立ち去る足音。
「――拙いわ。人払いの結界を張り忘れてた」
「何だって君はそう迂闊なんぐはぁ!」
 文句を言うアーチャーを蹴飛ばす。
 ランサーは――いない。多分、立ち去ったあの影を追いかけているのだろう。
 何考えてるのだろうか、あの槍兵は!
 関係のない人間に見られたら拙い、ってのは分かるけど……そんなの記憶を消せば問題ないのに。
 そもそもあんなちんまりとしてるくせに、どうにか出来ると思っているのだろうか?
 宝具は使えず超絶的な身体能力を持つわけでなく、いわば小動物状態。
 そんなの相手が普通の人間でも返り討ちにあうに決まってる。
 拙い。何が拙いって私が魔術師と言うことや私の使い魔が戦ってたことを知られる事なんかじゃなく、こんなちんまりとした使い魔を――正確には少し違うのだが――を従えて悦に入っていると思われること。そんなの、プライドが赦さない。
 慌てて、アーチャーを叩き起こしランサーの気配を追わせて――
 辿り着く。
 その光景に、目の前が、真っ暗になった。
 この男は。
 目の前で、血だらけになって倒れているこの男は。
 私の同級生で――少し、気になっているクラスメートの――
「なんで鼻血振りまいて倒れてるの、衛宮くん?」
 頭痛を堪えて訊いてみる。
 なんとなく嫌ーな予感を感じながら。
「いや、足下に何かいて・・・
 踏んづけて思いきりこけた」
 いてて、と呟いた衛宮君の足下に転がっているのは――
「……」
 目を回している青い槍兵だった。なにかはみ出してそうで嫌だなぁ、うう。
 でも取り敢えずやらなきゃいけないことは――
「ていっ!」
 衛宮くんを殴りつけ、意識を刈り取る。
 ついでにランサーを回収。
 ・・・危なかった。遅かったかも知れないけど。