そのさん。





「うー、頭痛いなぁ…」
 1人ごち、立ち上がる。
 そもそもなんで俺は学校でぶっ倒れていたのだろう?不思議だ。
 なんか制服は血まみれになってたし、記憶はないし。
 まぁ、大したこと無かったから家に帰ったんだけど。
 溜息。同時に、感じたのは誰か――いや、何かの気配。
 いる。
 屋根の上から様子を伺っているのが分かる。
 手にした厚紙を折り畳み、
           「強化、開始」
                 出来上がったハリセンを強化。
 降ってきた気配に叩き付ける。
「どりゃぁっ!」
 ソレは心地よい音と共に、ころんと畳に転がった。
 ……なんでしょうかこれは。
 なんだか青っぽい人型ですよ?
 つま先で突けば、すっごい痙攣しますよ?
「……あー。こいつあの時の」
 記憶は凄まじい速さで再生される。
 奪われたはずの記憶と、それを奪ったのが誰か。
「ふむ、どうしてくれよう」
 すると足の下でもがいていたソレは凄い早さで逃げ出した。
「逃げるってことは…悪だな!」
 逃げ出した先は――
「土蔵かっ!」
 廊下に飛び出し、サンダルをつっかけ履きにして追いかける。
「あははははははははははははははは、待てぇぃ!」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「覚悟しろやこの悪がァァァァァァァァ!」
「お助けぇぇぇぇぇぇ!?」
 土蔵の扉をすり抜けた悪を追いかけたが、土蔵の中に入ったところで足払いを喰らった。
 そして、閃光。
 尻餅を付いたまま、小さくごちる。
「くそ、なかなかやるじゃないか」
 どこに行った、と周囲を探査しかけて気付く。
 銀色の鎧に月明かりを映し、蒼い騎士が――
「問おう。
 貴方が私のマスターさんか?」
 膝の上から訊いてきた。
「……はい?」
 状況を理解できず、問い返す。
 すると彼女は、ちょっとばかりむっとした表情で、頭のアホ毛をぴこぴこ動かした。
 そして溜息1つ。同じ問いを投げかけた。
「再度問おう。
 貴方が私のマスターさんか?」
 ゴッド。いったい何なんですかこれは?