そのよん。





 どうやら厄介なことに巻き込まれたらしい。
 気付けば青いのは逃げ去り――くそ、始末し損なった――セイバーって名前の騎士っぽいのはせんべいを食べながら
「む、これは」
 と呻いている。
 そして部屋の片隅では、遠坂が膝を抱え、乾いた声でドナドナを歌っている。
よもや俺が記憶を取り戻すとは思っていなかったらしい。悪め。
 ところで、だ。 
「何で俺を見てるんだよ。そんな怖い顔でさ」
遠坂のサーヴァント、アーチャーに問えば、奴は俺を睨みながら訊いてきた。
「問いたいことがあるだけだ。お前、何故魔術を身につけようとした?」
 その問いに対する答は決まっている。
「正義の味方になるためだ」
 アーチャーの怒気が膨れ上がる。
 しかし、負けない。例え借り物の夢であっても、絶対に譲れない道だから。
 怒気を孕みつつ、更にアーチャーは問い掛けてくる。
「…正義とは何だ?正義の味方が討つべき悪とは?」
 ……真面目に答えてもいいんだけど、俺はやはり親父の息子だ。
 こう、答えてしまおう。
「俺が正義だ。そして俺が討つと決めたのならそれが悪だ!」
 暫しの沈黙の後、赤いのは呻くように言った。
「……貴様正気か?」
 正気かとまで言われましたよ?いや、真面目に受け取られても困るんだけど。
「正気だとも。俺が正義だ!」
 あえてこう答える。
 すると赤いのは複雑な笑みを浮かべ、次に溜息ひとつ。
 最後になんだか憐憫と憧憬が入り交じった表情で、
「……まぁ、がんばれ」
 しみじみ言った。
「こらこらこらこら、何だアーチャー!その笑顔は何だ!
 冗談に決まってるだろうが!」
「嘘つきめ。衛宮士郎、貴様本当は自分が正義だと思っているんだろう?
 ちきしょういいなぁ、羨ましいなぁ!私も自分が正義だと言ってみたい!」
 駄目だ。こいつ人の話を聞いちゃいない。
アーチャーはしばらく悶々としていたが、やがて何か吹っ切れた表情で顔を上げた。
 そして息を吸い込み、
「私が正義だ!」
 アーチャーは自分の言葉を噛み締め、悦に入っている。
「私が正義だ!私が討つと決めた者が即ち悪なのだ!」
 また叫んだ。下唇を噛み締めて泣いてるし。
「大丈夫だよ、俺は答を見つけたから。
 そうだよ、正義だよ正義!」
 ……なんか自己完結してるし。
 ゴッド。英霊ってのはこんなのばかりなのですか?答えてください、ゴッド。