そのじゅう。





 今日も朝からセイバーとの口げんか。
 士郎さんは苦笑しながらそれを見ており、キャスターは彼の右肩に座って我関せずとお茶を飲んでいます。
「セイバー。ライダーが可哀想だし、このままじゃいけないのか?」
との士郎さんの言葉にセイバーが反論します。
「シロウ!貴方は甘い!」
「でも、士郎さんは間違いなく私のマスターさんです」
 確かに仮契約みたいな感じですけど、もはや私の中では本契約を越えています。
 ……だって、本当のマスターさんの桜は怖いんです。
 だからここに居たいんですけど……あ、それだけじゃなくてえーと、士郎さんの側にいたいなぁ、って想いが大きいのは確かなんですけどあのその。
 ともかく!私は士郎さん以外のマスターさんは考えられません。
 でも、セイバーは認めてくれないんです。
「ダメですダメダメ!
 そもそもマスターさんとサーヴァントは令呪の結びつきがあるものです!
 そんな偽物の契約、認められません!」
 そしてセイバーはへっへーんどーだ羨ましいでしょう、と令呪を見せびらかしました。
 むー、意地悪です。でも、羨ましいです。もうこうなったらこの手しかありませんね。
「キャスター、ちょっとお願いがあるのですが。貴女の宝具――<破戒すべき全ての符>ですが、あれは使えますよね?」
「問題はないけど、どうするの?悪さに使うのなら貸したげないわよ」
 目を半眼にしながらキャスター。
 それでもちゃんと出してくれるあたりはやはり、マスターさんの――士郎さんの影響なのでしょうか。さすが士郎さんです。ぽっ。
「悪さになんか使いませんし、他のサーヴァントを配下にするためにも使いませんよ。だから貸して下さい」
 ……嘘は吐いてませんよ、ええ。
 仕方ないわね、と呟き、キャスターはそれを私に手渡しました。
「ありがとう御座います。うふふ、これで…」
 微笑って、
「えい。<破戒すべき全ての符>」
 私はそれを、腕に突き刺します。
「え?」
「まさかっ!」
 ――霧散。
「令呪の繋がりが切れちゃいました。
 このままだと私は消えてしまいますが……士郎さん。
 貴方なら私を助けてくださいますよね?」
切なそうに見上げてこう言えば、
「わーわーわー!消えちゃダメだ消えちゃダメだ!」
 慌てて士郎さんが契約してくれました。
 浮かび上がる令呪に、私はほっと安心。ふふ、狙い通りです。
「やられたわ」
キャスターは溜息。
「く、仕方ないですね」
 セイバーは諦観。
 そして士郎さんは困惑の表情。
「ふー。間一髪、だったのかな。
 でも何でこんな事したんだ、ライダー?」
 問いには答えず、私は三つ指を突き、にっこり微笑って言いました。
「不束者ですがなにとぞ宜しくお願いします」
「……なんでさ」