そのじゅうに。
「はて。腹が減ったな」
呟いたのは山門に佇む群青の影。
影――小次郎(仮)に語りかける様に、にゃー、と彼の寄依である三毛猫が鳴く。
その鳴き声はまるで、
あ、こんな所におったんかー。
と言っているかの様。
「ふむ」
にゃー。
また、猫が鳴く。
そろそろ行こうやー、うち腹減ったわー。
とでも言いたげに。
「そうだな」
頷き、猫に跨る。
「では行こうか。衛宮殿の屋敷へ」
うにゃん。
承知、とばかりに猫は疾走を開始した。
「はて、今日の夕餉は何だろうか。鰤大根か寄せ鍋か。ああ、豚肉生姜焼きも良いなぁ」
猫が行く。
「おでんも宜しいな。先日初めて食したがびーふしちゅーなるものはなかなか美味であった。いやいやここは是非とも煮込みはんばぁぐで!」
食欲魔神と化した佐々木を乗せて、猫が行く。
衛宮家の居間は、サーヴァントの意地がぶつかり合う戦場となるだろう。
勝者が得るのは、少し多めのおかずのお代わり。
あるいは勝者敗者とも当分お代わり禁止。