そのじゅうよん。





「いいですよいいですよ、どうせ私は食べるしか能のない騎士王ですよ」
 あほ毛を萎れさせ、剣でおにぎりをつつくセイバー。
「無様ですよね。宝石と称された石化の魔眼も、この身では自分より大きければ効果がないなんて」
 体育座りで膝に顔を埋めつつ、ライダーは魔眼を解放して黒猫を見る。でも猫はあくびをするばかり。
「ふんだ、魔力さえあればあんなこと言わせないのに、ふんだふんだ」
 ルールブレイカーでせんべいに魔術文字を刻むキャスター。程なく魔術が発動するが、その効果は軽い音と共にせんべいが割れるだけ。
 三者三様に拗ねているサーヴァントに、俺は腰が引けてしまった。
「何があったんだ?」
 訊けば、イリヤは溜息まじりにその名を告げた。
「……うん。凛がね。『今回の聖杯戦争はつくづく頭悪いわよねー。サーヴァントなんかこんなだし』って鼻で笑って……」
「またかよ……」
 そう、それが奴のいつもの手段。
 あかいあくまの真骨頂。そしてそれはまだ続いている。
「でもセイバーにはアレが在るじゃない!」
「アレですか?でも」
「ほらほら、遠慮しないの!」
 せかす遠坂。
「そ、そうですか。仕方ないですね」
 まんざらでもなさそうなセイバー。
 落とし、引き上げ、自らの目的を果たす。
 それは確かに魔術師としては正しい姿なのかも知れない。でもな。
 その目的がアレってのは……少し情けなくないか遠坂?
振りかざされ、
「約束された―――――」
        振り抜かれた剣から、
「―――――勝利の剣!」
                     白光が駆け抜ける。
 その後に残されたのは焼きおにぎり。
その出来映えは、まさしく絶品。
 即ち、究極の焼きおにぎりを手に入れる、そのためだけに自らの持つ全てのスキルを注ぎ込んだのだこのバカは。
「流石ね、セイバー」
「最大出力でないとこの味は出ないんですよ」
 まぐまぐと焼きおにぎりを食する遠坂に向かって、えっへん、とセイバーが胸を張る。
 ああ、無駄遣い。
 それは宝具の、そしてスキルの果てしない無駄遣い。
 心の贅肉がどーとか言っていたくせに何のつもりだろう。
 目眩を堪え、遠坂に言う。
「……遠坂」
「衛宮くん、何か用?あたし忙しいんだけど」
「帰れ」
 ケチー、とか文句を言いながらも、あかいあくまは去っていった。
 セイバーこそ復活したけど、ライダーもキャスターもしょげたまんま。
 三日はあのままだろうなぁ……ふぅ。