そのにじゅうに。
「おい」
偉そうに誇らしげにギルガメッシュ。
「食費がわりだ。有難く受け取るがよい」
言いつつ<王の財宝>から宝くじを引っ張り出す。
「黄金律も少し不調でな。当たったのは10万ほどだが、これで充分であろう」
背中越しにほれ、と放り投げたのは、乱暴なのではなく照れ臭いのだろう。
わりと解りやすい奴だな、こいつも。
「ああ、ありがとうなギルガメッシュ。助かるよ」
笑って礼を言えば、
「う、うむ。大したことではない。それでも有難いと思っているのならな」
ギルガメッシュはもじもじしながら言った。
「我は今日の夕ご飯に和風おろしハンバーグを所望する」
その様を見て、ランサーはにやりと意地の悪い笑みを浮かべて、
「でも今日の夕ご飯はゴーヤチャンプルーですからー!残念!」
すっごい嬉しそうに言った。
「……貴様」
ギルガメッシュは悔しそうにランサーを睨んだ後、
「やだいやだいやだい、ハンバーグハンバーグハンバーグー!」
テーブルの上でだだっ子のように暴れ始めた。しかもわんわん泣きながら。
そもそもこいつって前の聖杯戦争の時にはまともだったんだよな?
それが今代のサーヴァントと同じ瓶詰サイズになってるのは――
言峰が聖杯を壊したからなんだろうなぁ。何やったんだろう、あいつ?
「……ギルガメッシュ、泣き出したわよ?」
キャスターが鬱陶しそうにテーブルを見、ライダーもやれやれといった風に溜息。
「ランサーが要らないことを言うからですね」
「えー?俺が悪者かよー」
不満そうなランサーを、
「■■■■」
バーサーカーが慰める。
そしてここぞとばかりにセイバーが咳払い。
「皆さん、そこで提案があります」
とーっても不穏な事を提案した。
「今日はゴーヤチャンプルーと和風おろしハンバーグの二本立てというのは如何でしょうか?」
それに賛同するイリヤとアサシン。
「あ、賛成ー!」
「それは素晴らしい!」
そして俺を心配そうに見上げる真アサシンとアーチャー。
「衛宮殿………」
「……その心中、察するぞ」
その声に、応える。
「大丈夫だよ。
んじゃ、今日は奮発してゴーヤチャンプルーと和風おろしハンバーグだ」
わき上がる歓声。
「■■■■」
「良かったな、ギルガメッシュ!」
「ひっくひっく………うむ……!」
バーサーカーとランサーが未だ泣きやまないギルガメッシュの肩をぽむ、と叩き、
「シ、シロウ、本当にいいのですか?」
「……セイバー、冗談のつもりだったのか?」
「本気だと思っておりました…」
慌てるセイバーをアーチャーと真アサシンがジト目で見る。
「わーい、二本立てですー!」
「二本立てー!」
「はんばぁぐばんざいー!」
そして無邪気に喜ぶライダー、キャスター、そしてアサシン。
ついでにアンリ・マユも喜びのダンスを踊っている。
みんなが食費を入れてくれるようになったから大丈夫なんだよなー。
――一人を除いては、だけど。
そいつの分を補って余りあるほど食費を貰っているのは事実だ。
でも、払ってくれてるみんなに悪いし、何より俺の正義が赦さない。
やはり――やるしか、ないのか……?