そのにじゅうなな。
ある晴れた昼下がり。
つるりんとした頭に真アサシンを乗っけて、臓硯じーさんが現れた。
毎度ながら真アサシンは正座している。バランス感覚良いなー。
「お邪魔致します」
「邪魔するぞぃ。ほれ、土産の豆大福ぢゃ」
じーさんから豆大福を受け取りつつ、縁側に案内する。
「いらっしゃい。いつもすみませんねー」
「いやいや、これで美味いお茶が飲めるのなら安いものぢゃ」
「御館様は衛宮殿の入れられるお茶が好物ですからなぁ」
「くけけけけ、お前も好きであろうが」
あ、嬉しいこと言ってくれるなー。
でもその笑い方だけは何とかしてください。恐いから。
取りあえず豆大福を受け取り、
「桜ー。これ、盛ってくれー」
桜に渡す。
で、一人足りないことに気付いて、訊いてみる。
「あれ?慎二は?」
「留置場ぢゃ」
「な、何で?」
「深夜、半狂乱で笑いながら庭に穴を掘っているところを、近隣住民の通報によって駆けつけた警察官により逮捕されたので御座います」
ああ、何故だろう。
その様子をありありと頭に思い浮かべることが出来るのは。
そりゃーもう楽しそうだったに違いない。
「じーさん、一応訊くけどその時の奴の格好は?」
「無論、全裸ぢゃ」
目眩がした。あまりにも予想通りだ。ってか無論かよ。
「何やってんだあのバカは……」
溜め息をつく。
だが、あの慎二が何にもないのに穴を掘るだろうか?いや掘らない。
多分、それを命じた奴がいるわけで。
「………じーさん、これは質問じゃなくて確認なんだけど。慎二が自分から穴掘りしたんじゃないよな?」
その問いと同時。
桜が豆大福を盛った皿を置き、じーさんの横に歩み寄る。
「あらお爺様」
そしてにっこりと笑い、臓硯じーさんの頭頂部から――
「頭にゴミが」
産毛を引き抜いた。
「わ、儂の可愛い可愛い頭髪が!?」
じーさんは半泣きで桜を睨み付けるも、
「お爺様、どうかなさいましたか?」
優しげな笑みに一瞬痙攣。大きな溜め息を一つついたあと、指先で涙を拭った。
そして、告げる。
「慎二は自分の意志で穴を掘ったのぢゃ」
「え?でも」
「後生ぢゃ……訊かないでくれぃ……」
その悲痛な声に、俺は息を呑んだ。
ってーか、桜があんなだってのは俺もう知ってるんだけどなー。
でも、慎二もじーさんもいぢめられて幸せそうだから放っておこうと思う。