今…… 鳥のように

かわむら みどり


  星くずと夜景が まじりあって
  ひっそりと夜が うかんでいる
  空中に とりのこされたような
  山の上に住んで ようやく一年になる


  雲が 大海原の霧のように
  足もとを 流れていくと
  子供のように さまよって

  ほら そこに だれにも見えない 友達がいる


  たえまなく 樹木のざわめきが聴こえる
  ハープのように 風が鳴る
  とらえきれないものを落して
  ゆっくりと生きている


  手をのばして 何かをつかもうとするのだが
  大気の息が
  じっとりと てのひらにしみこんでいく


  にぎりしめれば
  砂つぶのように こぼれて
  なんとたよりない わたしの世界


  夕暮の空を  心が飛ぶ


  翼で姿をかくして
  あかね雲より さらに高く

  鳥のように
  ただ 風のように


(『しけんきゅう』132号 1999年5月発行)