猫の気分で

水野 ひかる
   

夜になると
猫になって眠る
妬んだり
恨んだり
負けたくなかったり
人間のままでは
いろんな感情が
津波のように押し寄せてきて
不眠の劇場に案内されてしまうから

闇のなかで
髭をもぞもぞさせたり
毛をふくらませたり
体温をたしかめたりしながら
心臓の鼓動を聞いていると
わたしのなかの
猫の部分が
大きくひろがって
眠りを支配する

どこかで飼猫の影が立ちあがる
徘徊する修羅の夜
ガラス戸越しの月の光のなか
浮かびあがるわたしの姿

夜 布団のなかで丸くなる
眠るときは いつも
猫の気分で


(『しけんきゅう』121号 1993月5月発行)

   

  
Photo by Makoto Sasaki