|
首なし男の悲歌
|
佃 学
|
幼虫の巣食う夜明け
男は跳ねるアレゴリカルに
肺胞がちぢれる意識下
サボテンの日課は自然増殖し
悔悟の太陽は爆裂する あの
ディテールの海がだきこんだ希望に
逆子さながらに誘惑されて
男は跳ねるアレゴリカルに
泡沫の立志伝にはフカがむれ
未完の楽譜はテッテ的に没却され
遠い日本列島の悪感と化す
男の過去はシルエットのように
悲しい経験を包囲しながら
単純な睡眠不足の闇が広がる あの
思弁の養殖に死者がひるがえる
遺骸の夢の悪食さながら
不吉な陣痛の出帆 どこへ?
落日のような首なし男よ
はかない心象風景を括約筋がうずめ
新鮮な罪業のように男は
神経質な貌を洗う
海鳴りに揺れる他郷へ
血の記憶をちぎり
初潮のように断ちきられて
未知の胎盤をさみしく越境し
男は消息を失うだろう
湿疹に犯された流離の空また空が
どこまでもふしぎな祈念のように
もえながらつづいているだろう
異稿のフォルム
葬られた魚のフォルム
不明の病歴・錯乱図
を海ヘビが遠く狂いつづける
落日のような首なし男よ
お前の悲鳴はいつも
古風な因習の地を原初までめぐるだろう
ああ 死別する植物
悲しい終末論よ
《時》の自転率を探索し
イルカとたわむれる風雲の夢幻
衰亡の古代王国まで
はなやかに逃亡するだろう男の悪血は
水平線を密漁の瞳で埋め
草の波を腐蝕しつくす
聖域には漁り火を
固有の神秘には流れ星を
|
|
|