麦笛のひと

土井 正美
   
       
   

新年の 友にいいわけ かくハガキ

風りんの しずかな音も わかれかな

すこしづつ 謎もとけたり ナスの花

タケノコや ふだんとかわる 夜のぜん

秋の昼 村の系類 かわりなし

わが友の かるきことばや 春またん

コスモスや ここにひとりを まちにけり

ハンカチを いだしてきみは 女めく

ハコベ草 かく字かく字に 歌があり

欲もなき 都わすれが きょうさけり

くらやみを ゆきつはなれつ 風の盆

さなぶりや 誰をむかえに いく娘

そらまめの 花せいせいと 風わたる

水すんで しずかなりけり ポンプ小屋

たんたんと ならびてふしぎ ねぎ坊主

目に見ゆる つゆの晴間や 真昼時

はなうたを 入れてタコもむ 女かな

秋の雨 テレビニュースと 昼のめし

校庭に ひめたる恋や エリカさく

プロポーズ す肌にシャツの アプローチ

名代なる サヌキしみずか トコロテン

まずしさは 天国のカギ クリスマス

立ちばなし 高さもちがう 冬帽子

海浜に ビーチパラソル きょうもあり

何もかも あたりまえなり さくらさく

サングラス かけて悪女に 罪はなし

葉ざくらや きのうもきょうも 同じ風

ゆるゆると 日がさゆくなり 村の道

公園の しずかな杏林 見ておりぬ

そうめんや ゆうげおわりて しょさいなし

夏みかん ひとつもらいて 旅にでる

瀬戸の島 みかんの花も さきこぼれ

くつはきて やよいも春の さかりかな

ゆびさして これが私と さく野菊

冬の川 星の流れに 手をはさみ

柳ちる 村のはずれの タバコ店

海見ゆる テーブルにおく サングラス

夫婦して 背中あわせの 秋がゆく

変節の われにやさしき ナタネづゆ

ちしゃもみに はしのうごきも せわしがり

春一番 岬のはなを 行く列車

ぬりげたや ゆかたの中に 玉の肌

いつまでも 同じ子がふく しゃぼん玉

秋うらら よそばかりみる 女の子

山道に 人やくるらし 松おちば

つくしんぼ 家をはなれて もうみつき

わりばしや 梅干入れて 母の恩

ヒョロリンと やもめの家の ヘチマかな

麦笛や サヌキ平野に ならしゆく

サヌキ野に ならす麦笛 かなしけり


(2000年2月拝受 : 原稿も横書き)

           

     
          

 5月3日に、この作品をプリントして、土井さんに郵送しました。「間違いをチェックしてください」という手紙をつけて。5月8日、土井さんから葉書が届きました。(横書きで) 

 コピーありがとう   裏窓に 見えたるムギの 青さかな

 これでいい、ということなのでしょう。