「私はカモメ」。へー、そう言う予定なんだ。あたいにはあんた「カゴの鳥」にしか見えないけど。
えっ、「カモメ」ってあんたのコードネームなの? ということは、あんたすっごい不器用なんじじゃないの。だってそれ、アメリカにイヤミ言うためでしょ。「こっちは女でも、らくーに宇宙にいけるんだよー」って。
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いばるんじゃないわよ。ちょっと地球の回りをぐるっと回るだけじゃないの。あたいなんか百年もそのへん飛び回ってるんだから。
あんた、本当はこわいくせに。だから、あたいがやって来たの。あしたのあんたを守るためにね。百年前に、とってもみじめに死んだ女の子がね。
あんた、選ばれたスーパーウーマンよね。そのあんたの歴史的ドラマを、このあたいが守るの。文句ある?
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ん、なにそれ。お護り? かくさなくっていいじゃない。写真でしょ。あ〜、ハンサムゥ! あれ、どっかで見た顔……ねえねえ、もしかして、ものすごい有名人じゃない。あ、やっぱりぃ。んーと……ゲッ、ガガーリンじゃない!
こいつ、「宇宙に神様はいなかった」とか、「天国なんかどこにも見えなかった」とか、ハデにデマ飛ばし回ったやつなのよぉ。よくもそんなやつの写真、あたいに見せるわね。
勝手に見たってぇ? い〜い、こんな時はね、「いやん!」とかなんか言って、うまくごまかすものよ。いったい毎日毎日、どういう訓練受けてんの。宇宙飛行士もたいしたことないわね。たいしたことないから、たいしたことないって言ったのよ。
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あたいが物語のイメージと違うって? 悪かったわね。あたいには病気の弟がいたからね、あんなにナヨナヨしていられなかったわ。稼いでも稼いでも親父が飲んじまって、薬どころか、パンさえ買えない日もあったわ。
現実のあたいは死んで百年もたつけど、こんなものね。そうだ、「ミツゴ ノ タマシイ ヒャク マデ」って知ってる? 中国かベトナムのことわざ。知らないって、じゃあやっぱりあたいの方が頭いいんじゃない。
あのへんはよく行くのよ。国民性っていうのかなあ。やりやすいから、あたいみたいな未熟な守護霊はよく……。ん? エヘヘ……だいじょうぶよ、あしたのことは。あたいが適任なんだから。
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地球からほんのちょっと飛び出して、地球を見下ろして、自分が神様よりえらくなったぁ、なんてカンチガイされたら困るのよ。
だからよっぽどエライ霊か、まあ、それほどでもないけど個性的というか、何か特徴のある霊がいいかなーということになって……このあたいが選ばれたってわけ。
あんたも選ばれた人かもしれないけど、あたいも選ばれた霊なのよ。あたいみたいにレベルが低いと、姿見せたり、しゃべったりするから、分かりやすいっていうのが大きかったみたい。
エライお方はこんなこと、なさいませんことよぉ、ホッホッホ……。
でも、まんざらバカにしたもんでもないわよ。あんたたちの世界じゃ、光より速いものなんてないでしょ。あたいたちの世界にはあるの。と言うか、あたいなんか、生きてる時からあったわね。
遠い星を見たら、パッと死んだおばあちゃんの姿と重なるの。あたいの心は光より速く動いたのよ。
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今じゃ、そのへん瞬間移動できるようになったから、本当に光より速く動けるようになったわけ。あたいみたいに、ぶっ殺してやりたいやつの五人や六人いた人間が、瞬間移動できる霊になれるって、ものすごいことなのよ。
これはアンデルセンのおかげね。彼に成仏させてもらったって感じかな。
でね、もっと速く動ける霊もいるの。過去に行ってもどって来れるんだから。あたいもそうなりたい気もするけど、そうなったら、もう、こんなふうに姿見せたりしゃべったりできなくなるの。
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とにかく、あしたはあたいがあんたを守ってあげる。でも、あしただけね。すぐにほかの霊にバトンタッチするわ。だって、その後のほうがずーと大変だもの。今のあたいじゃむり。
宇宙から見る地球は、とってもきれいよぉ。これって霊の特権だったんだけどなあ。あ〜あ、こんなこと言ってるから、上に行けないんだわ。
ま、短い間だけど、なかよくしましょ。あたいも女のはしくれ。あんたにひきつった顔で、「私はカモメ」なんて言ってほしくないの。
tenka(添 花)
少 女 A
知ってたの
いろんなことを 知ってたの
生きてる時から 知ってたの
生きてた昔を 思い出したら
人の心が 分かるから
知ってたの
知らないことも 知ってたの
人間になる前から 知ってたの
太古の昔を 思い出したら
命のことが 分かるから