スサノオノミコトは、ずいぶん長く地上にいたんだ。古事記や日本書紀の時代なんかよりずーと長くね。でね、スサノオが天上に帰ることになった顛末が面白いんだ。
* *
ある時、スサノオは自画像を描きだした。それが膨大な数で、しかも全てが超芸術作品。絵を描くスピードと一枚一枚の質の高さ。これはもう神業としか言いようがないね。
アマテラスオオミカミ(つまり彼のお姉さんだね)がいぶかってひさびさに弟をたずねてきた。こんなにたくさんの絵を一体どうするつもりか聞くと、
「日本中の神社と家の神棚に飾ってもらうんだ」
と無邪気に説明するもんだから、アマテラスは怒るやらあきれるやらで、その絵を一枚残らず焼却処分する、と宣言した。
スサノオは、いくらなんでもそれはひどいんじゃないかって、ずいぶん抵抗したんだ。
するとやっぱりお姉さんだね、じゃあ、この絵は天上で飾ってあげるから、バカなことはもうやめなさい、とね。
* *
それからまた、ものすごーい年月がたって、地球上の生物が全滅した時のこと。人や動物、植物はもちろん、バクテリアまでもね。
スサノオは荒れはてた大地にひとり立ってシャボン玉を飛ばしたんだ。
ヒゲヅラの大男が、ぽつんとひとりでシャボン玉を飛ばしている図は変わっているけど、このシャボン玉というのが、とてつもなく変わったシャボン玉なんだ。
実はね、絶対に壊れないシャボン玉なんだ。そんなの作れるのかって? うーん、一応は神様だからね、作れるんだと思うよ。
それより、またもや例のお姉さんが怒り心頭してやって来た。
「飛ばしたシャボン玉を一つ残らず回収しなさい。それから、適当な時期に壊れるシャボン玉を作って海に流しなさい。それが終わったら……その絶対壊れないシャボン玉を持って、帰っていらっしゃい」
スサノオも、この時ばかりはずいぶんと反省したらしい。それに天上に帰りたい一心で、すぐに言われた通りにした。
* *
天上に帰ってみると、昔描いた自画像は、ほんの二〜三枚飾られていただけで、ほとんどは行き場のない資源ゴミ扱いだった。
スサノオはがっかりしたけど、以前みたいなイタズラはしなくなった。海に流した“適当な時期に壊れるシャボン玉”が進化して地上に生命が満ちあふれていく様子を見るのが楽しくってね。
本当のところは、“絶対壊れないシャボン玉”を作ってしまったという負い目かな。
えっ、その“絶対壊れないシャボン玉”はどうなったかって? そりゃあ、もちろん、ずーっと置いてあるよ、棚の上にね。