※ 二種類の読み方をしてください。
  @ 1段づつ縦に A 1ブロックづつ左、右、左、右と

         

        

        

帰  郷

さや まりほ

      


   チベット人は手をあわせる
   立ち止まるとき
   振り返るとき
   歩きながらも

  

通り過ぎるものは   
通り過ぎるまま   
こぼれ落ちるものは   
こぼれ落ちるまま   

    

   彼等の姿が思い浮かぶと
   私の中の自由がほほえむ

時の流れは   
あいさつの区切りもない
   

   死者を見送るときさえ
   さようならも言わず
   涙も流さず
   チベット人はただ手をあわせる

立ち止まっても   
振り返っても   
変わったものは何かと   
みわたせば
   

   しゃべりつくしたら
   あそこへ帰っていく
   なんて
   独立した心みたいに

四角い額縁の窓に   
切り取られた風景   
光と風のやわらかさに   
木の葉がゆれる
   

   チベットのことなんか
   知らないのにと
   私がたずねると
   そいつはやっぱり
   ほほえんでいる

そこに私の心を   
乗せてみたい   
あの木の葉の上に   
帰っていきたい   
光と風になって
   

    

     (『しけんきゅう』134号 2000年6月1日発行)

          


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