待 つ ( awaiting )

さや まりほ


ぼくにぴったり 新しい運動靴
今夜は少し あたたかい
クリスマスが終わった もうすぐ正月
でもやっぱり 足首が冷たい
素足に 新しい運動靴

あれ、おとうとだ
帰ってきたな ははっ 駆けてくる

     ── おにいちゃん 何しよん
     ── ん、ちょっと 星の観測
     ── 星?

屋根と屋根に区切られた 空 のまた雲と雲の間には

     ── ええーッ うそばっかり 星や三つしか見えん
     ── ええけん はよ中はいれ
     ── おにいちゃん 広場まで行かんと…………ただいま!

ガラッ
と 開いた 明るいぬくもり
の 中 に おとうと が 吸い込まれていく

大きくなった おとうと
ぼくの後ろで 泣いてたくせに

そう 広場
覚えているよ
ちりばめられた 星たち に
ぼくとおとうと 吸い込まれそうだった

     ── おにいちゃん ごはん

ガラッ
と 開いた 明るいぬくもり

     ── ああーッ おにいちゃん それ、ぼくの…………
     ── ええでないか ケチ
     ── いかん ずるーッ

ぼくが先に 駆け込んでいく
明るいぬくもり の 中
ぼくにぴったり おとうと
の 新しい運動靴 を 脱いで

クリスマスが終わった もうすぐ正月
今夜は少し あたたかい


(『しけんきゅう』112号 1988年6月発行)