Dちゃんは絵が好きだった


さや まりほ

Dちゃんは絵が好きだった

Dちゃんは目が見えない
絵は広い世界のエッセンスだと教えられ
何とか絵のことを知りたいと思った

Dちゃんは目が見えないから
手で触れ ほおずりしてみた
新しい世界の予感がした

音が聞こえると じゃまになるので
Dちゃんは何も聞かないことにした
Dちゃんの世界は広がった

ある時 Dちゃんは 絵をなめてみた

舌での感触は 言葉を超えていたので
Dちゃんは何もしゃべらなくなった
Dちゃんの世界は広がった

ついに絵に味を感じたので
Dちゃんは何も食べなくなった
Dちゃんの世界は無限に広がった

Dちゃんは絵が好きだった


(『しけんきゅう』107号 1986年2月発行