にゃおとリョウの蜜月が続いていたある日のこと、衝撃的な事件が起こった。

母がにゃおが起きて来るなり、「大変よ!」と言うではないか。
どうしたのかと思うにゃおを引っ張ってリョウの籠のところへ行き、「見てみ」と言う。
リョウはいつものように元気にチクッ、チクッと鳴きながら籠の中をちょんちょんしている。
特別変わった様子はないのになぁと思いながら、巣の中を覗いてみた。

は?( ̄□ ̄;)!!
え〜と・・・それは、もしかして・・・

た・ま・ご?

そう、巣の中にはうずらの卵大の2つの卵がちょこんとあるのだった。
ちょっと待て、リョウはオスなんじゃないの? オスを買うんだって言ってなかった?
「そうよ、ちゃんと店員さんにオスをくださいって言って、オスをもらってきたのにねぇ」
母も当惑気味だ。 にゃおはずっとリョウをオスだと信じてた。 名前も男の子の
名前だし、にゃおに懐くリョウに恋人気分で接してきたのに、いまさら
メスでしたって、そりゃあ、ないだろうってもんだ。

そっか・・・にゃおのこと、やたらと毛づくろいみたいなことをしてくれたり、
口の中の掃除をしてくれたりしたのは母性愛だったのか? にゃお、子供気分で
世話されてたのかしら? なんだかおかしくなってしばらくは笑いが止まらなかった。
当然ながら、卵は無精卵だし、ひなが孵る事はない。 リョウの様子をみても
卵を抱くというそぶりも見せなかったので、卵は取り出すことになった。
2つの卵を目の前に、母と妹とみんなで「食べてみる?」なんて
話したけれど、文鳥の卵なんて当然ながら食べたことないし、かわいそうな気も
するからと、庭に埋めてやった。
その後も毎年、順調にリョウは卵を2つづつ生んでは放置した。


数年が経ち、寒さが例年以上に厳しかった冬の日のこと、
リョウは鳥籠の中で冷たくなっていた。
冬は寝る前に極太の毛糸で編んだカバーをかぶせ、さらにその上から
大きな風呂敷のようなものをかぶせてたり、古いトレーナーをかぶせたりして
ある程度の寒さ対策をしていたのだけど、寒さに耐えられなかったのだろう。
前日まで元気でいただけに、あっけない別れとなってしまった。
薄情なことに、可愛そうなことをした、もっともっと暖かくなるように
いろいろかぶせてやればよかったと思ったのに、母も妹もにゃおも
誰も涙が出なかった。 ロックやチビの時はあんなに泣いたのに・・・
相手が鳥で犬ほどの親愛がなかったから?

自分でも不思議な思いで庭の植木の隅にリョウを埋めてやった。
ティッシュにくるんだリョウの体に土をかけ、埋め戻したあとに線香を1本立ててやった。
 線香の香りが漂う中で手を合わせていた時に初めて涙がこぼれた。




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