2代目リョウが来て初めての春が巡ってきた。 笑いをこらえきれないような母が、起きてきたにゃおを手招きした。 むむ? もしや・・・ 黙ってリョウの鳥かごを指差す。 中を覗いてみると・・・ C= ( ̄ー ̄;;) ふぅ〜 またですか・・・ た・ま・ご・・・ですね、それはどう見ても・・・ そう、今度こそオスを・・・と買って来たハズなのに、リョウもやっぱりメスだったのだ。 巣の中にはやはり白くて小さな卵が2つ。 しかもひとつは自分で踏んだのか 壊れて中身が出かかっている。 リョウは知らん振りで餌をついばんでいた。 母が卵を取り出した。 今度は何の躊躇もなく、すぐに卵は土へと返された。 ★ ★ ★ リョウも順調に毎年卵を生みながら年月を重ねていった。 途中でにゃおが短大を卒業し、アメリカに1年ほどのホームステイに出かけ、 そこで運命の出会いをした黒猫のキリ(これはまた別の機会に)を伴って 帰って来た時も、リョウは元気に居た。 しかし、それはリョウにとっては受難の始まりでもあったのだった。 当然のことながら、猫は鳥に異常に興味を持つ。 それまでダイニングテーブルの 上に鳥かごを置いていたのだけど、猫が狙うということで、勝手口の 上にしつらえた棚の上に引っ越すことになった。 さすがにそこだと猫は 容易にはリョウにアプローチすることはできなかったけど、猫の執念は 恐ろしいもので、何度かは、かなり離れた場所に置いてあった 冷蔵庫の上からジャンプして狙われ、籠ごと落下するという不幸に見舞われた。 どんなにか恐怖でパニックになったろうかと哀れだったけど心臓麻痺を 起こすこともなく気丈に生きた。 天気のよい日には外に出して吊るして おくのだけど、今度は野良猫に狙われて、何度か鳥かごにぶら下がられ、 リョウが気も狂わんばかりに鳴く声で駆けつけることもあった。 先代のリョウの時にも外に吊るすことがあったけど狙われたことがなかったので にゃおたちが油断した部分もあった。 ★ ★ そんな苦難な日々を過ごしていたリョウだったが、 ついに安息の地を得ることになった。 猫に狙われるリョウを哀れに思って 母方の祖母がリョウを引き取って面倒を見てくれることになったのだ。 祖父との二人暮し。 インコや九官鳥を飼っていたこともあったけど 最近は何もいなかったので、老夫婦の寂しさを紛らわすためにもいいだろうと リョウの引取りを申し出てくれたのだった。 ★ ★ 祖父は自分では面倒をほとんどみないのに、なぜか生き物から好かれるという 天性の性質を持っていた。 それに比べは祖母は一生懸命 エサをやったり、鳥かごを掃除したりするのに鳥に敵視されたりと 相性が悪く、常々、「自分が面倒を見てるのに、ひとつも面倒をみない おじいさんにばかり懐くのが悔しい」と漏らしていた。 ところが、リョウはとても祖母に懐いたらしい。 にゃお家で飼っていた時は、毎年伸びる風羽根を切って、 遠くへ飛べないようにしていたのだけど、祖母の家では羽根を 切られることは一度もなかった(恐くて切れなかったんだって)。 それなのに、カゴの外に出ても、どこへも飛んでいかず、祖母の肩に止まっては 祖母の毛づくろいをしてやったり、甘えたりしていたらしい。 すっかり祖母もリョウが可愛くなってしまって、暇さえあれば カゴから出して可愛がった。 最後には、祖母はリョウを肩に止まらせたまま、 畑仕事に出るようにもなったのだ。 リョウは大人しく肩や背中に止まって 祖母の農作業に付き合った。 時折、近くへ飛んで行くこともあったけど、 祖母が呼ぶとすぐに戻ってきて肩に止まっていたそうだ。 こうして2年近く、リョウは平穏な日々を過ごしていった。 ★ ある日のこと、いつものように農作業にリョウを連れて出た祖母。 その時、カラスがすぐ近くを飛んだのに驚いて、リョウは思わず飛び立ってしまったのだ。 パタパタと、草陰に隠れたところまでは確認した。 名前を呼んだら、「チチチ・・・」と返事があったのだが、どこにいるのか見つからず リョウはそれっきり帰ってこなかった。 「ありゃあ(リョウは)、もう、よう生きてはおらんじゃろうて。 猫かカラスに食われたろうのう・・・」 母のところにかけてきた電話の向こうで祖母が残念そうに言ったそうだ。 結局、2代目のリョウも、晩年は平和な毎日を送れたとは言え、 はかない最後を遂げたことになる。 ★ ★ その後、にゃお家では、巣から落ちたり、迷い込んできたものを除いて 鳥を飼うことは暗黙の禁止事項になった。 今はもう誰も使うこともない鳥かごが、 納戸の中で、わずかな想い出をとどめている・・・ 完 |