花火大会

♪ どん、と鳴った花火だきれいだな
  空いっぱいに広がった
  しだれ柳が広がった  ♪
(唄の題名等、み〜んな忘れました(爆))

     小学生の低学年の頃だったと思う。 父に連れられて、とある港から船に乗った。
     それはちょっとしたフェリーのような船。 暗い海面を豪快なスクリュー音を上げて出航した。
     デッキのような場所にはちょうちんが吊り下げられて、しつらえたテーブルにはご馳走が並んでた。
     豪華なご馳走が並んでいたはずなのに、にゃおの記憶には『からあげ』だけが鮮明に残っている(爆)
     紙のお皿に取って、割り箸で苦労しながら喰らいついていると、ドドド・・・と身を震わせるような
     轟音が響いてきた。 「ほら・・・」と指をさす父の視線を追うと、暗い夜空に華が咲いていた。

     にゃお県には、日本三景のひとつ、宮島がある。 その宮島を舞台に、毎年お盆の時期に
     盛大な花火大会が行われるのだ。 どうやら、父は船からその花火を観覧するイベントに
     にゃおを連れて行ったようだった。
     船は打ち上げポイントにかなり接近していたのか、打ち上げられた花火がほぼ真上で華開く。
     はかなく美しい大輪の華。 首が痛くなるほど、上を向いて、口をポカンと開けて・・・
     子供のにゃおはその迫力にビビリまくっていた。

     宴もたけなわになって、ひっきりなしに花火が打ちあがる。 次々に咲き乱れる華に観客から
     拍手喝采が起こる。 すごいぞ〜 すごいぞ〜 にゃおもいつしか拍手をしていた。
     どどどぉ〜〜〜ん
     ひときわ大きな音が響き渡ると、でっかい火の玉が、しゅるるる・・・という音をひきつれて
     高く高く上がっていった。 あんぐりと口を開けたまま見上げたその先で、火の玉が消える。
     おや?と思った一瞬の静寂を引き裂いて、どっかぁ〜〜〜んという音とともに、空が破裂した。
     大きな大きな、しだれ柳。 あたりは昼間のような明るさになり、長い長い尾を引いて、
     しだれ柳がにゃおたちの頭上へと降り注ぐ。 熱い!!と思わず、手を頭の上にかざした。
     本当は、船まで火の粉が降ってくるわけはないのだけど、その時のにゃおにはそれくらい、
     迫力満点な、しだれ柳だった。

     やがて、それっきり花火の音は止んだ。 どうやら、あの超特大のしだれ柳が最後の花火
     だったようだ。 三々五々、海上に集まった船がスクリューを回して、散ってゆく。
     船にともった明かりが線香花火の残り火のようだった。

     後にも先にも、それほどの近距離で花火を見たことはない。 花火大会そのものへも、その後
     たった一度、打ち上げ会場からはるか離れた公園から、手のひら大の花火を見たきりだ。
     もう一度、あんな大きな花火を見たいな。 子供にも見せたいな。 いつかそれは叶うのかな・・・

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