ひな祭り

     3月3日のひな祭り。
     女の子が生まれたら、母親の実家が雛人形を買うという風習があるらしい。
     今はそんなこと、別に守らなくてもいいんだろうけど。

     にゃおにも、お雛様があった。 当時、一番ポピュラーな7段飾り。 お内裏様とお雛様の2人だけの
     ガラスケース入りのものだとか、3段飾りだとかっていうのは、ごく最近、登場したものじゃ
     ないかな? 大体、お雛様ってとても高い。 7段飾りなんてどんなに安くても30万近くはするし
     高名な人形師が作ったとか、細工が凝ってるとか、材質の良し悪しで、恐ろしいほどに
     値段が跳ね上がる。 こんなのホイホイと買えないよねぇ。 それに今は核家族化が進んでるし、
     アパートやマンション暮らしの人も多くて収納場所の問題もある。
     にゃおんちは子供が生まれた時、ガラスケース入りのものを買ってもらった。 農家でそれなりに
     広い家なんだけど、妙に収納場所が少ないのだ。 蔵や納屋もあるけど、中が整理されてなくて
     なんだか汚い。 整理してみたいと思っても主人が小うるさくて、あれは棄てたらいけないだとか
     自分がするからと言いながら、一向に動こうとしなくて埒が開かない。 ケースものだったら
     厳重に包んでおけば、多少汚い蔵の中でもなんとか我慢できるのよ(苦笑)

     にゃおの子供は母がわざわざ飾ってくれる7段飾りの雛人形を夢を見るかのような
     うっとりとしたまなざしで眺める。 素敵だねぇとため息をつきながら。
     にゃおも、このお雛様は大好き。 何がって、顔がとてもいいのだ。 「顔は人形の命」って
     言うけれど、お雛様を見ていると本当にそう思う。 お雛様セールまっさかりの中、店頭に
     飾られているお雛様を眺めても、なかなかいいなって思う顔には巡り合えないものだ。

     このお雛様はにゃおの母の母、つまり祖母が買ってくれたものではない。 父が買ったものだ。
     祖母は悪い人ではないけど、妙にドライなところがあって、母の妹(にゃおの叔母)のところには
     女の子が生まれた時、豪華な雛人形を贈った。 それは叔母が嫁いだのが、農家の長男の
     ところであり、相手のお姑さんへの見栄と叔母がそのことで肩身の狭い思いをしては
     いけないと思ったからだそうだ。 にゃおの父は農家の末っ子で、実家を出ていたから
     そんなことをする必要はないと思ったのだろう。 にゃおの方が叔母の娘(にゃおのイトコ)
     より先に生まれてるのに(しかも初孫でだぞ)・・・

     そんなこともあって、子煩悩だった父が買ってくれたものなのだと、にゃおは満足していた。
     「あの話」を聞くまでは・・・

     いつ、どんなきっかけでその話になったのかは覚えていない。
     にゃおが、この父が買ってくれたお雛様は高かったんだろうねというようなことを言った時、
     母はこう言ったのだ。

     「さぁねぇ。 いくらしたんだか。 質流れ品だから、半値以下だって言ってたけど」

     え? 今、なんとおっしゃいましたか? もう一度お願いします(汗)

     「デパートなんかで質流れ品バーゲンをよくやるじゃない? ああいうので買ったんだって」

     し・・・質流れ品????( ̄□ ̄;)!!

     父ちゃんよ。 あんたは初めて生まれた我が子に、質流れのお雛様を買ったんかい?
     いくらお金がなかったって言ってもさ、なんか、それって、ちょっと、あんまりじゃない?

     「質流れって言っても、誰かのお古とかじゃなくて、会社が倒産して残った品物みたいよ」

     そんなの、慰めにもならないやい。
     きゃわゆい娘のために、質流れだなんて・・・ かなりショックのにゃお。
     すると母が付け加えた。

     「このお雛様の顔、お母さんに似てるから買ったんだって(*^-^*)」

     あらま・・・
     そう言えば、お雛様の顔はとても上品で母によく似ている。 誰が見てもそう言う。
     ふうん・・・そうなんだ・・・ 父ちゃんったら(/o\*)
     それじゃ、許してやるしかないじゃん。

     大事にしていたつもりなのに、長い間に部品がひとつ欠け、ふたつ欠けしてしまった。
     なんでもそういう小物類は単品でも買い求められるそうだ。 
     いつかチャンスがあったら、きちんと小物をそろえてあげようかな(*^-^*)

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