くるくる

     他県のことはわからないのだけど、デパートと呼ばれる場所の地下食品売り場の一角には
     必ずと言っていいほど、「くるくる」がある。 正式名称は知らない。 通称で「くるくる」って
     言ってるだけ。 それはお菓子の計り売りなんだけど、キャンディー・クッキー・チョコレートと
     いったお菓子が円形の大きな円盤のようなものに盛られていて、その円盤自体がゆっくりと
     回転しているのだ。 店に備え付けのカゴやザルに、自分の好きなお菓子を好きなだけ取って
     レジで重さを測ってもらう。 グラム160円という風に決まっていて、重さによって値段が
     違ってくるわけだ。 

     子供の頃、デパートへ連れて行ってもらうことがあると、必ず「くるくる」を買ってもらった。
     重さで値段が決まるって知ってるから、選ぶお菓子は小粒のキャンディーばかりにする。
     チョコレートはどういうわけか、グラム250円というように、それ以外のお菓子よりも
     割高な値段設定になっていたし、おせんべいやクッキーみたいなものは、それ自体が重量の
     あるものだから、ひとつで値段が跳ね上がるからだ。 にゃおは質よりも量の人なのだ(笑)

     どれにしようかなって選ぶのは、とてもドキドキとして楽しいものだった。 あれにしようか
     これにしようかと迷っているうちに、どんどんお菓子は回転していってしまう。 じっとその回転を
     眺めているとだんだん車酔いのようになって気持ちが悪くなっちゃうのだ。 気持ちが悪くなる
     前に決めるのがコツ(笑)  なかなか決められない優柔不断なにゃおには一苦労なことでも
     あった。 買ってもらったお菓子は大事に大事に、何日もかけて食べたものだった。

     やがて、母親に買ってもらわなくても、自分のおこづかいで買えるくらいに大きくなってからは
     遠慮なく、それこそ、好きなものを好きなだけ買うことが出来た。 それでも、どれにしようかと
     選ぶ時は心躍る時だったことに変わりはなかった。

     今、住んでいる場所や、環境の関係で、デパートへ行くことがほとんどない。 当然、「くるくる」を
     買う機会もほとんどなくなった。 それでも、時にデパートへ足を伸ばすことがあると必ず
     地下へ降りて「くるくる」を探す。 ライトに照らされて、回転するお菓子の包み紙がきらきらと
     光っているのが見えてくると、子供の頃と変わらないトキメキを覚える。 どこかの子供が
     一生懸命カゴを片手にお菓子を選んでいる姿を見ると、昔の自分を重ねて、ほほえましくなる。

     やっぱり、デパートはにゃおにとっては、夢の空間なのかもしれない・・・

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