哀しい幕切れ

     引っ越す時に、友達3人と住所交換をした。 小学校1年生のことだから、あまり字も上手くなく、
     住所の漢字も書けないから親に教えてもらうような状態だったので頻繁には文通もできずにいた。
     それでも、なんどか手紙が行き交い、にゃおに懐かしい風を送ってくれた。

     そんな、ある日のこと、1人の子から手紙が届いた。 内容は忘れてしまったけど写真を同封
     したから見てね、そして、それは大事な写真だから送り返してね・・・ということが書いてあった。
     ところが、封筒には写真は入っていなかったのだ。

     にゃおはすぐに返事を書いた。 写真は入ってなかったと。
     しばらくして、返事が来た。 
     「そんなことはない。 ちゃんと入れたのだ。 なぜ返してくれないのか?」
     にゃおは困惑した。 ちゃんと入れたと言われても入ってなかったのだからどうしようもない。
     それは、にゃおが手紙を開ける時にそばにいた母も知っている。 一体、どういうことなのだろう。
     その子は入れたつもりなのだろうけど、入れ忘れたのは間違いない。 それなのに、その写真が
     出てこないかなにかで、彼女には自分が入れ忘れただけなのだということがわからないのだ。
     どう返事を書いていいのかわからなかった。 小学1年生。 それほどの文章能力はない。

     続けざまに手紙が来た。
     「早く返してよ!!」
     非難めいた口調で写真の返還を要求するものだった。
     にゃおは、もう一度、手紙を書いた。 意地悪をしているわけではない。 ウソを言っているのでもない。
     本当に写真は同封されていなかったのだ・・・と。

     それっきり、彼女からは手紙は来なかった。
     にゃおも、それ以上、手紙を書くだけの気力はなかった。 お互いの心に傷だけが残った。


     残りの2人のうち、1人の子は、住所は交換したものの、一度も手紙をくれなかったし、にゃおが
     書いた手紙の返事すら来なかった。 その子は元からそんなタイプの子だったので、あまり気に
     ならなかった。
     もう1人の子とは、小学6年卒業間際まで細々と交流が続いた。 時には電話で話すこともあった。
     その子が、とある有名中学に入学することが決まり、お祝いの電話をかけた。 当時、小学校から
     私立の中学校に入学することは上流階級に属する人にしかできないことだった。 確か、その子の
     父親は有名な画家で、ヨーロッパにもなじみが深く、その子と妹にはヨーロッパの都市の名前が
     ついていて、初めて名前を聞いた時は、ずいぶん変な名前だなと思ったものだった。
     その後、その子の一家はどこかへ引っ越したらしく、手紙も届かず、電話も通じなくなった。
     離婚した父から、その子がのちに有名美大に入ったという話を聞いたのが最後だ。

     あの時の友達と今も縁があったら、何かもっと変わっていただろうか?
     自然消滅のような形の小さな子供時代の友人。
     今でも胸がチクリと痛むのは、誤解をしたまま切れてしまった、あの子のこと。
     もしかしたら、彼女は彼女で、今だに、送った写真をとうとう返してくれなかった子として
     にゃおを記憶しているのかもしれない。 それを思うと、なんだか哀しい・・・

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