眠り姫

     それは高校生時代の夏休みのこと。
     学生の特権である朝寝坊。 にゃおは心ゆくまで惰眠をむさぼっていた。

     階下からにゃお母がにゃおを呼ぶ。 「もう○○時よ〜」
     う〜んと生返事をしてそのまま夢の中へ後戻り。
     しばらくすると、今度は「○○さんから電話〜〜〜」と叫ぶ声がする。
     「はぁ〜い」と返事をして時計を見ると9時だった。  ふふん・・・あんまりにも起きないものだから
     その手できたわね。 なかなかいい手だと思うけど、甘いね・・・
     にゃおは三度、夢の世界へと漂う。

     「ちょっとぉ〜 ○○!!←にゃおの名前」
     誰かがにゃおを呼んでいる。 誰? にゃお母の声じゃない。
     「まだ寝とるん?」
     おや? この声は・・・? ようやく意識がハッキリしてきた。 時計は10時。 階段を下りていくと、
     その下で友達のMがあきれた顔をしてにゃおを見上げていた。
     「なにしよったん?」
     ? なにしよったんって、寝てたんですけど。 パジャマ着てるでしょ?
     この時点でまだ、にゃおにはことの次第が飲み込めていない。
     「電話したのに全然出てこんでさぁ」
     ( ̄□ ̄;)!!  もしや、あの時のにゃお母の「電話」というのは、にゃおを起こすための
     作戦じゃなくて、本当にMからの電話を取り次いだものだったのかぁ? 
     Mはにゃお母が電話を取り次いだものの、ちっとも電話口に、にゃおが現れないものだから、
     痺れをきらして電話を切り、わざわざ家にやってきたのだと言う。 にゃお母は電話よと、にゃおを
     呼んだあと、庭の草取りに出てしまい、電話ににゃおが出たかどうかの確認は出来ていなかった。

     見ると、外して置かれたままの受話器から、ツーツーツーとかすかな音が漏れていた。 
     バツの悪いにゃお。 Mには平謝りするしかなかったのだが、Mはあきれ果てて
     「普通、考えてみたってんなわけないでしょ〜(←起こすために電話だとウソをつくこと)」と、軽蔑と
     長い間電話口で待たされたことへの怒りのこもった口調で言った。

     ところが・・・だ。
     Mの用事は一体なんだったんだろう? 電話が通じないからってわざわざ、自転車で片道20分近く
     かかる道のりを夏の暑い陽射しの中、来なければならないような用事だったんだろうか? 
     その部分の記憶はすっぽりと抜け落ちている。 今さら聞いても本人も覚えていないだろうしなぁ。
     真夏のミステリーなのだった・・・(・m・ )クス  ←笑ってる場合じゃないって?

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