泳げ、にゃお!

     にゃおは『かなづち』だった。
     田舎で育ったから、川は身近にあったし、小学校にプールもあったけど、泳げるようになろうと
     いう意欲がまったくなかった。 川やプールに行っても水につかるだけ・・・という感じ。
     だって、水に顔をつけるのが怖いんだもん。 ましてや、水の中で目を開けるのなんて怖すぎて
     出来ないよぉ(T_T)  それでも4年生の頃、プールの授業で、先生から水に頭まで沈む練習から
     始めて、目を開けるところまでやったけど、目は痛いし、耳は気持ち悪いしで大変だったのよ。
     その時は授業だから仕方なくやったけど、あんなこと、自分から率先してやるなんて無理!!

     ところが、小学6年生の夏、にゃおは突然、目覚めた。

     泳げるようにならなくちゃ!!

     理由は2つ。
     毎年、夏休みが終わったあとに、水泳大会っていうのがあって、学年ごとに何メートル泳ぐってのが
     決まってたのだ。 高学年は50メートルが目標。 別に泳ぎ切れなくても歩いてもいいんだけどね。
     5年生の頃は、泳げないから、ちびっと平泳ぎの真似をしながら50メートル(プール往復)歩いたっけ。
     でも、大抵の子が泳げたり、少しは泳げるっていう状態。 まるっきり始めから歩いてるとゴールに
     大差がつくわけ。 みんながゴールしても、まだ1人だけ歩いてるのってかっこ悪いよねぇ。 それに、
     地元の中学校も高校もプールがない。 今を逃すと、にゃおは『かなづち』のままで一生を終える
     ことになりそう。 う〜ん、それはちょっとなぁ。

     と、いうわけで、6年の夏休みは、ほぼ毎日プールに通った。 同じ『かなづち』の友達と一緒に。 
     去年までは、ちゃぷちゃぷ浸かって水遊びをしてたけど、今年は違うもんね。
     4年生の時のように顔を水につけることから始めて、頭まで潜ったり、目を開ける練習。
     それがなんとかできるようになったら、石のようなものをプールに沈めて、それを取る練習や
     水中前回りや後ろ回り、お互いの足の間を潜り抜けたりと、徐々にレベルを上げていく。
     そして、ようやく『泳ぐ』練習に入るわけだ。 たしか友達はビート版を使って練習してたけど
     にゃおは、なんだか上手く扱えなかったからビート版をやめて『死体ごっこ』からやったっけ。
     これ、体の力を抜いて水に浮かぶ練習。 人間って浮くんだってね。 体重がある方が
     より浮くって話をきいたもの。 だったらブタのにゃおは浮きやすいはず。
     ところが、これが案外、難しかった。
     力を抜くっていうのがよくわからない。
     力を抜いてるつもりなんだけど、浮かぶぞって意識があると、なぜか沈んでしまう。
     心の中をからっぽにしてボ〜っとすると、だんだん浮いてくるんだよね。
     これができるようになったら、ちょっとづつ平泳ぎの格好で水中を移動してみる。
     なにしろ、先生について練習してるわけじゃなく、まるっきりの独学だから、形が正しいかとか
     息継ぎなんてわからない。 とにかく息を止めて出来るところまで水中を移動(←とても泳ぐと
     言える段階じゃない)
     こうして、一夏をかけて、とうとう、にゃおと友達は、50メートルを足をつかずに泳ぐ事が
     できるようになったのだ( ^-^)丿丿∠O※。:*・☆:゜.*。
     もちろん、その夏の水泳大会は、堂々としたものよ。 タイムは遅くったって、泳げるんだもの。
     担任の先生もビックリしてたもん。 努力した甲斐があったってもんよ。

     小学校を卒業してから、再び、にゃおの人生から『泳ぐ』という言葉が消えた。
     短大を卒業して、アメリカにホームステイするまでの8年間、水とは縁がなかった。
     ホームステイ先にはプールがあったから、一度だけ、家族が留守の時に、もう要らないと
     ミセスが言っていた水着をコッソリ拝借してプールに入ったことがある。 何年も泳いでなくても
     泳げるものなのか確かめたかったのよね(笑)
     結果は、なんとか泳げたって感じ。 いや、第三者から見たら溺れてるようにしか見えなかったかも(爆)

     その後、また長い年月が過ぎたけど、にゃおが水着を着たことは一度もない(~_~;)

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