ラヂヲの時間
小学生の３年生の頃、母からお古のラジオをもらった。
ＡＩＷＡ製品で、Ｂ５ほどの大きさのラジオだった。 アンテナを伸ばし、横の丸いダイヤルを
回してチューニングする。 ＡＭとＦＭの両方が受信できるようになっていたけど地域の関係で
ほとんどＦＭは聞くことができなかった。
ラジオ番組欄を見るでもなく、ただダイヤルを回して飛び込んでくる音に耳を傾けていると
あるにぎやかな声が聞こえてきた。
当時、とある大型家電店の上階にしつらえられた特設会場で生公開放送されていた
『柏村武昭のサテライト ナンバーワン』という番組だった。 司会の柏村武昭の広島弁丸出しの
軽快で面白いしゃべりに子供ながら耳を奪われた。 日曜日の夕方５時からの１時間放送で
毎週、その時間になるとラジオのダイヤルを合わせて彼の声を探した。
その番組の中でいろんな音楽がかかり、『さだまさし』や『アリス』、『チューリップ』といった
人たちの音楽を知ることになった。
中学生くらいになると、深夜番組に興味を持つようになった。
今でも放送されている『オールナイト ニッポン』。 今、にゃお地域では深夜１時から３時までの
放送だけど当時は朝の５時まであって、１時〜３時が一部、３時〜５時が二部という編成だった。
特に一部では超有名アーティストがパーソナリティーを務め、音楽だけではわからない本人の
素顔を楽しませてくれた。 にゃおは特に『ユーミン』や『中島みゆき』を好んで聞いた。
土曜日だったか、『笑福亭鶴光』の担当する時間があり、下ネタ満載の彼のしゃべりに布団の
中で声をあげて笑ったものだった。
その頃、『オールナイト ニッポン』と対極を張っていたのが文化放送の『セイヤング』という
番組だったらしく、雑誌やマンガの中でもよく比較して扱われていた。 とても興味があって
一度聞いてみたいとおもったのだけど、どんなにチューニングしても、捉えることができなくて
残念だった思い出がある。
短大になる頃に、母からもらったラジオは寿命を迎えた。
自分のお小遣いをためて、初めてコンポというものを買った。 ラジオと違って持ち運びが
出来ないから（今と違ってでかかったのよ）、深夜番組を布団の中で聞くということが難しくなった。
リモコンなんてなかったし、冬場なんか、いちいち布団から出てスイッチをオンオフするのがとても
面倒だったせいだろう。 必然的に深夜番組から遠ざかり、勉強やボンヤリと時間を過ごす
２２時〜０時の時間帯にラジオを聞くことが多くなってきた。 この頃、お気に入りだったのは、
『イジュウインヒカル』というご大層な名前を持つ男性の番組。 タイトルなんて覚えてないけど、
平日夜の帯番組を持っていて、なぜかハマっていた。
その後、自分の部屋にテレビを持つようになると、興味はテレビ番組やテレビゲームに移り
ラジオからは遠ざかって行った。
今、『柏村武昭』は、地元局の夕方に放送される地域密着型、奥様向けテレビ番組の
司会を長いこと務めたあと、政界に出た。 『サテライト ナンバーワン』時代にアシスタントを
していた女性と結婚して現在に至っているらしい（彼は当時、結婚してたんだけどね）。
すっかり・・・というか全然と言っていいほど姿をみないけど、どうしているのだろう。
ラジオの中で『イジュウインヒカル』という名前でしか知らなかった男性は、ここ数年の間に
テレビでよく見るようになり、『伊集院光』という名前を持つ、知性派バラエティータレントとして
活躍している。
『ユーミン』も『中島みゆき』も今だ、アーティストとして健在だ。
にゃおは今、ほとんどラジオを聞くことはない。 聞いてもお昼の１時〜４時の時間帯。
体力的なこともあって、深夜番組を聞くことはもうないかもしれない。 今は小さい子供が
大きくなり、自分の部屋でラジオにかじりつく日も、そう遠くはないだろう。