催眠術

     まだ小学生低学年の頃のこと。
     子供は9時には寝なければならないという暗黙の掟があった。
     ところが子供だって時には眠くないこともあるし、見たい番組があることもある。
     ぐずぐずとしていると、おもむろに父親が登場する。

     「さあ〜 だんだん眠くなる、眠くなる・・・」
     そう言って、にゃおの座っている椅子を回転させるのだ。(当時は学習机についているのは
     たいてい回転椅子だった)  ヽ (´ー`)┌ ふ・・・ また始まったのね・・・
     「ほ〜ら、眠くなってきただろう?」
     ゆっくりと椅子を回転させながら父親が声色を使って話しかける。
     しょうがないなぁ・・・
     「さぁ、椅子の回転が止まると、布団に入りたくなるぅ〜〜〜〜〜」
     父親が椅子の回転を止めると、にゃおはふらふらと立ち上がり、ぼんやりとした足取りで
     布団へと向かう。 そして布団に入って目をつぶる。
     「ほおら、ちゃんと寝た」
     父親の声がする。 もしかしたら、本気で自分が催眠術をかけたとか思ってんじゃないだろうなぁ。
     そんなの父親の面子を立ててやった、にゃおの演技に決まってんじゃん。
     父親の気配が部屋から消えたのを確かめてから目を開け、入り口に向かってペロリと舌を出す。

     子供なりに結構、親に気を使っているのだった・・・( ̄ー ̄)ニヤリ

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