雀の御宿

     にゃおが小学生くらいの頃までは、冬になると雪が50センチ以上積もることはざらだった。

     とある雪の日の朝、起きてみると、父が「面白い事をするからおいで」と言うのだ。
     ついて出ると、古い木製の雨戸を父が持ち出して、道路に向かっている。

     にゃお:「何をするの?」
     父:「スズメを捕るんよ

     は?( ゜口゜)???   スズメ? スズメを捕る?

     スズメって言えば、あの庭先でちゅんちゅんと可愛らしく鳴いてるスズメに他ならない。
     そのスズメを捕る。 捕ってどうする?

     父:「食べるんよ

     げげげぇ〜 た・・・食べるんですとぉ〜〜〜Σ(@@;)
     にゃおは頭の中で考える。 スズメってちっちゃいぞ。 食べるって一体どこを食べるのじゃ。
     っていうか、スズメって食べられるんかいな? それにどうやってスズメを捕るってか?

     疑問だらけのにゃおの前、父は雪が降り積もった道路の脇に、雨戸を置いて、つっかえ棒をした。
     もしかして、ものすご〜く原始的な方法でスズメを捕るつもりなんでしょうか?

     やがて、その棒の根元の方にロープを結ぶ父。
     やっぱり・・・やるんですね、その方法で(苦笑)

     父は家に一度戻ると、なにやら入れ物を持って来た。 中にはお米が入っていた。

     父:「これはのう、お酒に浸しておいた米なんで(米なんだよ)。 これをスズメが食べたら
        酔っ払うじゃろう? そこをバタンとこの板で捕るんよ」

     漫画で見たことあるぞ。 カゴにつっかえ棒をしておいてその端をロープで結ぶ。 スズメが
     カゴの中に入るのを待って、えいやっ!とロープを引っ張ると棒が外れてカゴがパカっと
     スズメに覆い被さって・・・ 
     だけど、あれって漫画の世界じゃないの? 漫画の世界じゃ一度も成功したことないよ。
     本当にそんなことできるのかな? それよりも、お酒に浸したお米、スズメが食べるのかな?
     日本酒を使ったらしく、お米はプンプンと匂う。 スズメ、食べるのか?? 
     そして、それを食べたスズメって酔っ払うのかな? 本当かな?
     にゃおの頭の中では酔っ払って顔を赤くしたスズメが千鳥足でヨタヨタしている図が浮かぶ。
     さすがに手に(つばさに?)寿司折りはぶら下げてなかったけど(爆)

     セットし終わった父は、にゃおに下がるように言って、かなり離れた場所で待機した。
     しばらくすると、本当にスズメがやって来た。 最初はおかしな板を警戒してなかなか
     撒いたお米を食べようとはしなかったけど、そのうち勇気のある1羽が食べ始めたことから
     次々にスズメが群がってついばみ始めた。 
     父は「まだまだ・・・」と言って、なかなかロープを引かない。
     ちゅんちゅんちゅんとにぎやかにスズメたちが、お米をついばむ。 酔っ払うのかな?
     千鳥足でフラフラするのかな? 期待に胸を躍らせながら食い入るように見つめるにゃお。

     と、その時!!
     父がガッ!!とロープを引いた。
     どたっと倒れる板。 ばっと飛び立つスズメたち。
     父は素早く飛び出すと、板の上にあがってそこら中を踏んだ。 バンバンと力をこめて!!

     にゃお:「何? 何してるの?!」
     父:「こうしてスズメを気絶させるんよ」

     踏んだら死ぬんちゃうんかいな( ̄~ ̄;)

     しばらくして父が板の上からおりた。 そして板をめくる。 スズメ、ずい分と飛び立ってたけど
     いるのかな? 逃げ遅れた不運なスズメ。 そんでもって、どうなったのかな?
     踏まれてペシャンコになってるのかな? 妙にドキドキするにゃお。

     どけられた板の下、哀れなスズメが数羽、雪に埋まっていた。 気絶しているのか死んでいるのか
     わからないけど、持ち上げても首がクタリと垂れている。 ああ・・・お米なんかに釣られるから・・・

     その後のことはあまり覚えてない。 スズメの姿がショックだったんかなぁ。
     ただ、父が外の水道でスズメの羽をむしって処理をしている姿を見た記憶はある。
     スズメのちっちゃなフトモモの肉がレバーのような、どす黒いような赤だった。
     そのあと、どうやって食べたのかも覚えてない。 ただ不味かったっていう印象はないから
     それなりに美味しかったらしい。 当時、住まわせてもらっていた伯父たちや、にゃおの母も
     食べてるはずなんだけど、誰ともそのスズメを食べた話をしたことがない(~_~;)


     『舌切り雀』の話・・・
     せっかく作った洗濯のりを食べてしまった雀に腹を立てたお婆さんは雀の舌を切ってしまう。
     その話を聞いたお爺さんは、お婆さんの仕打ちを謝ろうと、雀の宿を訪ねる。
     雀たちにもてなされ、お土産に大きなつづらと小さなつづらのどちらかを選ぶように
     言われたお爺さんは、小さなつづらを持って帰る。 それには大判小判や宝物がぎっしり。
     お婆さんは大きなつづらだったら、もっとたくさんのお宝が入っていたはずなのにと
     欲を出し、自分も雀の宿を訪ね、お土産に大きなつづらを背負って帰る。 途中で中身が
     気になって仕方なくなったお婆さんがつづらを開けてみると、その中からは、お化けや
     壊れたせとものなどのガラクタが出てきて、お婆さんは腰を抜かしてしまった・・・

     という内容。(多少、地域によって内容が異なるらしい)

     にゃおが、あの時の父のしたことを謝るためにスズメの宿を訪れたら、気持ちよく迎えて
     くれるかなぁ。 子供だったとはいえ、スズメを食べちゃった共犯だもんなぁ。
     おもてなししてくれるフリをして、ごちそうに毒を盛られそうだな。 そうでなかったとしても
     最後に持たせてくれるお土産のつづらは、大きい方を選んでも、小さい方を選んでも
     お化けやガラクタが出るようになってる気がするぞ。 

     もっとも、それって、もう30年近く前の話。 とっくに時効だよね(≧∇≦)にゃっはっは♪

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