上級生のお勤め

     小学生の頃、いわゆる地区ごとに、上級生は下級生を引き連れて登校するという
     暗黙のお約束があった(集団登校ってことね)
     にゃおが属する地区には、にゃおと同級生の男子2名、1学年下の男子1名、さらに2学年下の
     女子1名という状態。 そのうち、下級生2人はそれぞれ、同級生の男子の弟と妹という状況だった
     ものだから集団登校をする必要がなかった(兄が連れてきゃいいんだもん)

     ある年、新1年生として男女各1名づつが小学校に通うことになった。 そのうちの女子は
     これまた、同級生の男子の妹。  自然と、新1年生2人は、もう一人の妹である女子と
     一緒に、兄である同級生がリーダーとして引率することになった。 この兄である同級生、
     もう一人の男子同級生と一緒に登校していた。 つまり・・・ にゃおの地区の小学生、総勢7名の
     うち、にゃおひとりを除いて、あとはみんな一緒に登校していたわけだ。

     しばらくして、トラブルが発生する。
     なんと、同級生の男子2名と1学年下の男子1名が、あとの3人の下級生をおいてきぼりにして
     逃走したというのだ。 理由は簡単。 「足がのろい」
     にゃおの地区から小学校までおよそ2キロちょっと。 当然、小学1年生の足だと、そんなに
     早くは歩けない。 だけど、男子3人はそれが我慢できなかったらしい。 早く登校して遊びたい。
     追いかけっこしながら行きたい。 それをことごとく制限される下級生はお荷物以外のなにものでも
     なかったのだ。

     ある晩、母から打診が入る。
     「○○ちゃんたち(おいてきぼりを食らった下級生3人組のことを指す)を連れてってあげてくれない?」
     当然、にゃおはトラブルのことを知っていたし、そうなった限りは自分にお鉢が回ってくることは
     予想できていたので、二つ返事で了解した。 だって、それが上級生のお勤めだからね。
     そもそも、下級生を誰が連れて行くかということを決める時に、偉そうに自分たちが連れて行くと
     言ったのは、そいつら(同級生2人)の方だった。 片方の同級生の親までもが、うちの子が連れて
     行くから、お宅の子(にゃおのことだね)は連れて行かなくていいと、高飛車に言い放っていたのに。
     ふん、始めから、あいつらにそんな殊勝なことができるなんて思っちゃいなかったわよ。

     次の日から、にゃお家の前に3人の下級生たちが集まり、にゃおを先頭に登校する日々が
     始まったのだ。 歩いて約30分あまり。 黙って歩くのは気詰まりだ。 何か話すと言っても
     6年生と3年生と1年生じゃ、話も合わない。 そこでにゃおは考えた。
     「九九を言いながら歩いてみよう!!」
     かくして、毎朝、ににんがし、にさんがろく・・・などと言いながら、4人が歩いていく。
     二の段、三の段とだんだんと覚えた量が増えていく。 そのうち、だんだんと打ち解けてきて
     クイズをしながら、しりとりをしながらと、登校する日が続いた。

     1年後・・・にゃおは卒業し、引率はお役御免となった。 その後、本来なら1学年下の
     男子が引率を引き継ぐところだったのだが、先の逃走事件があったことから、下級生の方から
     これを拒否。 4年生となっていた女子が引率する形になった。
     にゃおが引率した下級生の親からは、登校中に勉強や(九九とかのことらしい)、マナー
     (挨拶だとかの一般常識ね)を教えてもらって子供がとても喜んでいたと最大級の感謝をされた。
     「苦労はいつか報われる」を身を持って実感した出来事のひとつだ。

     あれから20年以上の月日が流れている・・・
     にゃおが引率した2人の女子は、それぞれ結婚して子供をもうけ、お母さんになった。
     もうひとりの男子は、勉強もよく出来たことから大学院まで進み、学校の先生になった。
     そして最近、8つ年上の子持ちのバツイチ女性と結婚して周囲を驚かせたらしい。
     (その子は初婚だったんだよね)

     人生っちゃ、わからんもんだねぇ・・・

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