雲泥の差

     にゃおが小学1年生だった時の7月、母は妹を産んだ。
     母が臨月近くの頃に、にゃおと一緒に写った写真が残っている。
     ところがにゃお、7歳にもなっていながら、母のお腹が大きかった記憶が少しもない
     写った写真を見てもかなりお腹が大きかったから、気がつかないはずはないんだけど・・・
     ただ、母が通っていた産院へ検診の時に一緒について行った記憶がある。 それも
     たった一度だけの記憶。 どうなっちゃってるのかな???

     さらに、母が妹出産で入院していた前後の記憶も薄いのだ。
     当時、家族は3人だけで、父はほとんど家にいなかったので、母が入院中、にゃおの世話を
     するために、わざわざ広島から埼玉の家に、父の姉の子供、つまり父にとっては姪の女性が
     来てくれた。 「としこ(漢字忘れた(^^ゞ)」という名前のその人を、にゃおは「としこ姉ちゃん」と
     呼んで、ずいぶんと懐いていたらしい。 「としこ姉ちゃん」は背が高くて美人で優しい人だった。
     まだその頃、結婚していなかったので、遠いところから手伝いに来ることが出来たのだろう。
     にゃおのことも、とても可愛がってくれたんだよね。 のちに聞いた話では「としこ姉ちゃん」も、
     にゃおのことを自分の子供のような思いで接してくれてたんだって。 ありがたい話だねぇ。

     今、一生懸命思い出してみても、一体、いつから母が入院してたのやら、さっぱりわからない。
     何時の間にか母と「としこ姉ちゃん」が入れ替わって家にいて、にゃおは母恋しさで泣くことも
     なければ、「としこ姉ちゃん」を困られたこともなかったらしい。 にゃおってば、どうやら
     その頃から、薄情なヤツだったみたいだA^-^;)

     ここからは、にゃおに全く記憶がないので、その「としこ姉ちゃん」から話を聞いた母の
     証言に基づく話。

     妹が生まれて、「としこ姉ちゃん」は、にゃおを連れて産院へ出かけたのだそうだ。
     にゃおの記憶の中に、かすかにベッドに寝た、赤ちゃんの妹の姿がある。 
     そして、その帰り道、にゃおはひどく無口になっていたらしい。 普段はおしゃべりな子供だったから、
     「としこ姉ちゃん」は心配になって、聞いた。 すると、にゃおはこう言ったのだそうだ。

     「お母さんは、サルを産んだの?」

     「としこ姉ちゃん」絶句。 
     そう、その頃の写真を見てもわかるのだけど、妹は、生まれた時、「赤ちゃん」の名を体現する
     かのように、真っ赤な顔でしわが多くて、おまけに、すでに皮膚が生まれ変わるためにポロポロと
     剥げ落ちてる状態で、見た目は、お世辞にも可愛いと言えなかったんだね。 
     自慢するわけじゃないけど、にゃおは生まれた時、色が白くて、とっても可愛い赤ちゃんだった
     んだって。 生まれた病院でも、「白雪姫のような赤ちゃん」と、ちょっとした噂になったくらい。
     それだけに、母自身も姉妹でこれだけの差があったことに、結構ショックだったようだし、
     のちの笑い話として「としこ姉ちゃん」が語ったところによると、自分も初めて見た時は、
     とっさにお世辞の言葉を探したくらいだったんだって(苦笑)
     それだけに、にゃおの一言は、あまりにも的を得すぎていたから、二の句が継げなかったんだね。

     「う〜ん・・・ そうじゃないと思うけど・・・ 赤ちゃんって生まれた時はみんな、おサルさん
     みたいなんだよぉ」
     そう言うのがやっとの「としこ姉ちゃん」。 この後、家に帰るまで二人は黙ったままだったらしい(爆)

     妹の名誉のために書くけれど、その後、「サル」を脱皮した妹は、とっても可愛い子に成長した。
     2〜3歳頃からの写真なんて、姉が言うのもなんだけど、とっても「ぷりてぃー」(^ ^;
     今も、その面影を残して、美人というよりは、可愛い系で、結構、モテるらしい。
     反対に、「白雪姫のような赤ちゃん」だったにゃおは、その後、そこそこの成長を遂げ、
     幼稚園時代にたった一度、モテる経験をしただけで今日に至る。
     う〜ん・・・ 赤ちゃんの時にサルでもいいや。 大きくなってから可愛くなる方がいいな。
     他所の子でもさ、赤ちゃんの時はすっごい可愛かったのに、大きくなるにつれて
     「あれ?(汗)」ってな子っているでしょ? それって、ちょっと悲しいもんね(笑)

     妹を羨ましく思いつつ、色気のない農作業服に身を包み、今日も汗にまみれるにゃお。
     今じゃ、にゃおと妹が逆転の「雲泥の差」だぜ(ノд-。)

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