三人の「山藤」さん

     にゃおが、病気療養中の先生の代わりに約3ヶ月ほど、中学校に臨時教員として英語を
     教えに行っていた時のこと。

     にゃおが受け持ったのは1年生のクラス。 1年生は全部で4クラスあったけど、そのうちの
     3クラスをにゃおが受け持っていた。 この時に、「山藤」という苗字の生徒が3人いたのだ。
     みんな女の子だった。 そして困った事に、この3人の「山藤」さん、みんな読み方が違うのだ。

     A子ちゃんは「やまふじ」と読む。 妥当な読みですな。
     B子ちゃんは「さんとう」と読む。 ま、これも、ありがちな読み。
     C子ちゃんは「やまとう」と読む。 読んでも聞いても違和感のある読み方。 だけど人様の
     名前なんてどう読むのか、わけわかんないやつも多いし、これは仕方のないことだね。
     問題なのは、にゃおが名前と顔を一致させられないってことなのだ。 自慢じゃないが、にゃおは
     人様の顔を覚えるのが、すごく苦手だ。 記憶力はそんなに悪い方じゃないと思うのに
     どうしても顔ってのは覚えられない。 昔からの癖で、あんまり人様の顔を見ないってことも
     原因のひとつになってるかもしれないけどね。 

     人間、自分がその立場になったらわかるけど、名前を間違えられることってすごく不愉快に感じる
     もんだ。 当然、それは13歳の女の子だって同じ。 これはしっかり覚えなくちゃ。
     そうは思っても、なかなか覚えられないのだ。 出席簿のようなものなら、こっそりと読みがなを
     書いておけば問題ないけど、授業中に指名したり、用事で呼びかける時なんか、顔と名前が
     一致してないから、困ってしまう。
     「『やまふじ』さん」   
     「『やまとう』です(怒)」
     「あ”・・・(-_-メ)  ごめんなさい・・・」
     こんなことが頻繁に起こる。 ヤバイ、ヤバイのだ。 
     だけど、ナゼだか、3人とも見た目の印象も似てるんだな。 髪型とかも同じくらいの長さで
     似たようなヘアスタイルだし。 もしかしたらにゃおを困らせるためにわざとやってんの?って
     疑いたくなるくらい。 それでも「先生」の意地にかけて、必死に覚えたのさ♪

     だけどね、そのころには、もう契約した3ヶ月が終わろうとしてたのだ。 ああ、一生懸命覚えて、
     やっと顔と名前が一致するようになってたのになぁ・・・

     その後、にゃおは二度と「山藤」という漢字を持つ3人の生徒たちの名前を呼ぶことはなかった。
     そして、それ以後、私生活の中でも、この漢字を持つ人に、まだ出会っていない。

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