A:「あ、ヤバイ! 今日、卒園写真撮るんよね?」
     B:「うん、そう」
     A:「うわぁ、どうしよう。 今朝、うちの子、寝癖がひどくて。 帽子かぶってるからいいかぁって
       そのまま来ちゃったんよね」
     B:「あ、大丈夫。 撮る前にちゃんと綺麗にしとく」
     A:「ほんと〜? お願いねぇ(>人<)」
     B:「うん♪」

     このAとB、誰と誰の会話だと思いますか?
     Aは、とある年長さんのお母さん。 Bはその子のクラスの担任の先生だ。
     こんな光景を見かけると、とても複雑な気持ちになる。 
     なぜって・・・ 自分には決して真似の出来ない事だからだ。

     相手が年上であれ年下であれ、「先生」という対象に向かって、タメ口をきくことなんて考えられない。
     先生に対して敬意を持って・・・ということもあるけれど、どちらが上の立場でとか下の立場でと
     いうことでなく、イーブンな状態でない相手にタメ口というのは気が引ける。

     上の会話の場合だったら、タメ口をきかれた先生はどんな風に感じているんだろう。
     保護者との距離が短くなったようで嬉しいのかな?  それとも、なんだ、馴れ馴れしいな・・・
     なんて思うのかな? でも、そう思ってるなら、先生側もタメ口で返すって事はしないはず。
     ちゃんと敬語を使って一線を画してることを相手に示すだろう。 そうしないってことは
     やっぱり前者?

     一昔前、「先生」と呼ばれる職業の人は「聖職者」として敬われた。 今はそういう時代ではないようだ。
     それは、「先生」たる人のモラルが、「聖職者」と呼ぶにはあまりにも低下していることもあるだろう。
     「先生」が万引きをする。 セクハラをする。 のぞきや盗撮をする。 援助交際をする。
     昔の「先生」は、そういうことを一切していなかったとは言わない。 いつの時代も恥ずべき行為を
     する人はいるものだ。 ただ、その数が今よりは圧倒的に少なかったというのは言明できる。
     今は子供(生徒)に取って友達のような先生が人気があり、そうでない先生は敬遠される。
     自分に置き換えてみたって、厳しい先生よりは友達感覚の先生の方がいいとは思うけど
     だからって、「せんせー 今日のホームルームは何するん?(何をするのか)」なんて
     口をきくのはおかしいと思う。 なんだか、いろんな面でボーダーラインが曖昧になってる
     気がしてならない。 これを読んだ若い世代の人は逆に、「考えが堅いよ」って笑うだろうけどね。

     少し本題を離れてしまったけど・・・
     保育所にはたくさんの子供たちが通っているから、その数と同じだけの保護者が存在するわけで
     時間帯によっては、顔なじみの人も出来てくる。 自分は子供同様、保育所に入る前は
     まったくママさん同士の付き合いというものがなく、ひとりぼっち状態だったから、できたら
     ママさん友達ができるといいなと思っていた。 ところがどっこい。 ちっとも出来やしない(苦笑)
     もちろん、出会って言葉を交わす人はいる。 ある程度、立ち話をするような人もいる。
     だけど、どの人も「友達」とは呼べない。

     周りを観察してみると、「友達関係」と思われる人たちはたくさんいる。 家が近所だったり、
     子供同士が友達になったことから、親同士も仲良くなるというケースなのかもしれない。
     だけど、明らかに住んでる場所も全然違って、子供同士も特別、仲が良いというわけではない
     親同士が友達のように楽しそうに会話している場合も多い。 そして、そんな人たちは
     みんな「タメ口」で会話をしているのだ。 なんでかな? どうしてタメ口で会話できるのかな?
     自分はなんで、あんな風に話せる人が出来ないんだろう?

     原因はわかっているつもり。 それは自分で壁を作っているからなのだ。
     自分なりに努力はしているつもりだ。 友達になろうと思ってするわけじゃないけど、できるだけ
     自分から挨拶をするし、チャンスがあれば挨拶以外の話を持ちかけたりすることもある。
     だけど、そんな時でも使うのは敬語。 当然、相手だって敬語で会話してくる。 これじゃ、
     「友達」になんてなれないだろう。 
     近所の人に対しても同じだ。 あきらかに自分よりは年上である人たちは別として
     年齢が近いであろう人にも、くだけた言い方で話すことがどうしてもできない。
     どうして相手との間に一線を引いた接し方をしてしまうんだろう。 学生時代にできた友達とは
     それこそタメ口で会話してるというのに・・・
     ひとつには学生時代のように、みんなが自分と同年齢というわけではないこともあるだろう。
     学生のように同じクラスにいる人はみんな同じ年(イーブン)だと思うと、くだけたものの言い方が
     出来るのだけど、保育所のお母さんたちは年齢がバラバラだ。 自分はわりと遅くに
     子供を出産しているから、たいていは自分よりも年齢が下のお母さんたちばかり。 中には
     年上かな?って思う人もいるけど確かめてみる術はない(だって聞けないもの(~_~;))
     そんな事を考えると、タメ口で会話をするってことがどうしても出来ない。

     同じ学年の人で27歳という若いお母さんがいる。 とても人懐こい感じの人で、あたりも柔らかく、
     挨拶すれば素敵な笑顔で明るく挨拶を返してくれるような人だ。
     この人が、どの先生に対してもタメ口で話す。 いや、タメ口というよりも、自分の母親にでも
     話し掛けるような感じなのだ。

     「せんせぇ〜 これ、こんな風に書いてみたんだけどいいかねぇ」
     「ねぇねぇ、○○せんせぇ〜 見て、これぇ〜 どう思いますぅ〜?」
     「あのねぇ、今日の分の保護者会費、計算し終わったんだけど、誰に預けたらい〜い?」
     (役員さんなので、いろいろな仕事があるようだ)

     自分なら、先生にあんな口のきき方は絶対できないと思う反面、そんな風に先生と接することが
     できるのが羨ましいとも思う。 自分が壁さえ作らなければいいのだろうに・・・

     保育所も2年目となる子供が、自分と同じような状況で悩んでいる。
     友達がなかなかできないのだ。 友達を作りたいなという思いはあるけど、自分から仲間に
     入っていくことができないタイプ。 できたら向こうから来てほしいと思う、待ち伏せ型(笑)
     子供の悩みにあれこれとアドバイスはしてみるものの、自分とソックリな性格の子供に
     偉そうなことが言えないのが現実。

     目に見えない壁。 どうやって崩していくのか、親子のテーマになりそうだ。

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