呼称

     日本語ほど、自分や相手を呼ぶ言葉の種類が多い言語はない。
     自分のことを言うのに、「わたし」「ぼく」「うち」「わし」などなど方言を含めたら、一体、何種類
     あるんだろうって思うほど。 これに女性語、男性語などの区別がつくから、さらに数は増える。

     ★幼稚園くらいの子供がいる。 仮に「みかちゃん」だとしよう。
         「みかちゃんねぇ、昨日、パパやママと動物園に行ったの」
       なんとも可愛らしく微笑ましいじゃないの。

     ★彼女は、やがて中学生くらいに成長しする。
         「みかねぇ、なんか、お腹空いちゃったぁ」
       あらあら・・・中学生にもなって、自分のことを名前で言うんですか?

     ★そして彼女は大人になり、仕事もしている。
         「みかさぁ、買いたい服があるんだけど、買い物に付き合ってくれない?」
       後ろから蹴り倒してやろうかと思ってしまう。 何が「みかさぁ」なんでしょう。 いい大人
       が恥ずかしい。 それも彼氏など男性向けに、わざと使うなら、まだしも、普段からそうだと
       したら鳥肌ものだ。

     え? なんですって?  今、これを読んでる貴方、
     「そんなことを言うオマエ(にゃお)が、自分のことを名前で言ってるじゃん」
     って、思いましたね。 そうなんです。 今回のテーマはそこでした(どこじゃ?)

     自分がネットを始めた当初、NHは「にゃお」ではなく、本名に近いものを使っていた。
     チャットやメールを書く時も、自分のことは「わたし」と言っていた。 だけど・・・
     なんだか自分で自分が固苦しかった。 あえて、誰にも年齢を公表したりはしなかったけど
     ついつい年相応の「もの言い」をしてしまい、なんとなくノリが悪かった。 それだけに相手とも
     微妙な距離を置いてしまって、今ひとつ、仲良くなれない・・・という空気があったのだ。
     どうしても、世間に対して何枚も、「仮面」をかぶった自分になってしまう。 せっかく顔も
     名前も素性も誰も知らないネットの世界なんだから、もう少し、素顔に近い自分でいたかった。

     HPを作る前に、掲示板だけをしばらく持っていた時期がある。 その時にHNを「にゃお」に
     替えて、自分のことも、あえて「にゃお」と名前で言うようにした。 
     不思議なことに、自分のことをわざと名前で言うと、別人になれたような気がした。
     別人というのは、まるっきり自分を偽るという意味ではなくて、年齢も生きてきた背景も
     なにもかもとっぱらった、ただの自分という意味だ。 普段は誰にも見せることがない
     甘ったれな部分も出せたし、実年齢の自分では実際に使うと「恥ずかしいだろ?!」と
     思われる言葉使いも平気で出せた。 てらいもなく、「きゃ♪」なんて文字も使えた。 
     本当のにゃおを知っている人が見たら、「キャラを作ってる」って誤解するかもしれない・・・
     そう思うくらい、現実の人物像からは掛け離れているかもしれない。 だけど、これは
     まぎれもなく本当の自分の一部分なのだ。 友達にすら見せたことのない自分。
     ある程度の自分をネットの上で解放することで、人と話をするのが、うんと楽しくなった。

     回りの人を見ても、自分のことを名前呼びする人はほとんどいない。 誰もがキチンと
     「わたし」という呼称を使っている。 その人たちから見たら、「にゃおはねぇ・・・」と言う自分を、
     「気持ち悪い。 自分のこと、『にゃお』だってさ(笑)」  
     「子供がいるようなオバサンがブリっ子しちゃってぇ(苦笑)」 
     なんて思ってるんだろうな。 特に本当の「にゃお」のことを知っている人は、なおさら、
     「どのツラで『にゃお』なんだか・・・」
     と、苦笑しているかもしれない。 皆様の思ってること、ごもっともです。

     だけど、どうしても「わたし」じゃダメなのだ。 「わたし」を使うと、とたんに足かせをはめられた
     ように自分が固苦しくなる。 軽い調子で楽しくなれない。 もちろん、時と場合に応じて
     一応、「わたし」も使ったりして、立場をわきまえてるつもりではあるんだけど・・・

     ネットは俗世間から離れて、自分を解放できる唯一の場と言っても過言じゃない。
     だから、誰がどう非難しても、今のスタイルを変えるつもりはない。
     これからも「にゃお」って自分のことを呼びます。 苦笑いで許してくださいませ<m(__)m>

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