選挙権

     全国各地で、毎年、いや、もしかしたら毎月のように、どこかで何かの選挙があるらしい。
     ごく小さいものなら、学校のクラスの委員選挙。 大きいものだと国会議員選挙になるだろう。

     日本では20歳になると『選挙権』が与えられる。 つまり、日本政治の末端を担うわけだ。

     自分も選挙権を得てから、さまざまな選挙に参加して投票してきた。
     『村(町)議会選挙』 『県議会選挙』 『県知事選挙』 『衆・参議員選挙』 など、投票用紙が
     郵送されてきて、国民の義務として参加すべき選挙はみんな経験してきた。
     結婚するまで住んでいた町は小さな田舎だったから、町議会選挙で立候補する人は
     ほとんどが知った人だったり、親戚だったりする。 選挙期間中も選挙カーが度々、往来し
     白熱した気分を味わったものだ。 即日開票されて、結果が有線(←この辺が田舎だな)で
     流れるのを、一喜一憂しながら聞き入った。

     結婚して、今の土地へ移って来た。
     そこはそれまでの田舎町とは比べ物にならない、県で1番人口の多い市。
     結婚した、その年に、『市議会選挙』があったのだけど、誰も知らない人ばかり。 政治政策も
     よくわからない。 広い選挙地域を回るから、自分の地区に選挙カーが来るのは、選挙期間中
     1度か2度程度。 立候補者の数も多くて、名前と顔が一致しない。
     投票日の日がちょうど主人の休日出勤の日だったこと。 まだその地区の地理がわからなくて
     1人で投票所まで行くのが不安だったこと。 そんな理由で投票に行かなかった。

     そして、それから今までの7年間、一度も投票に行っていない(苦笑)

     「投票は国民の義務である」

     政治番組などで、みんなが言っている。

     「選挙権を放棄することは国民の義務を放棄することだ。 選挙に参加せずして政治を語るな。
      自分の一票がどれほど貴重なことか。 おのれの一票が政治を左右するかもしれないのだ。
      その投票を放棄するとは何事か」

     本当に、自分の一票が政治を左右するのだろうか?
     これまでの選挙、自分なりに、この人になら投票してもいいだろう。 この人なら期待しても
     大丈夫かなぁ・・・そういう人に投票してきた。 だけど、政治は相変わらず何も変らないし
     それどころか、どんどん転落の一途を辿っている。 それって、せっかくの自分の一票が
     生かされてないって事なんじゃないの?

     「なにを言っている。 自分の選んだ地区(県)の議員が、やがては総理大臣を決定する
      重要な決議で一票を投じるのだ。 自分たちの代表を選ぶのに投票を放棄してどうする」

     だけど、自分が投票した人が当選したことって少ないし、投票した人が当選したとしても
     その人が、自分が望んでいない人を総理大臣に推したりしてるじゃない?
     それって民意が伝わってないってことなんじゃないの? なんだか納得できない。

     いつも思っていることがある。
     投票することが国民の義務なのだとしたら、投票を放棄するのは国民の権利なのではないかと。
     投票したい人がいるならいい。 だけど、どの人の政策にも賛成できなくて、納得できないのに
     仕方なしに誰かに投票して、その人が当選しても、ちっとも嬉しくない。 投票したい人が
     当選したって、その人が必ずしも選挙で掲げた政策を実現させるとは限らないっていうのに。

     「そんなバカなことをいうものじゃない。 もしも、あの人(もしくは、あの政党)が天下を取って
      しまったら、日本の政治はどうなると思うんだ。 めちゃくちゃになってしまうぞ」

     いいじゃないの。 誰が天下を取ったって、たいして良くならない世の中なら、めちゃくちゃに
     してみれば? 案外と、その方がいい結果を生み出すかもしれないじゃない。 選挙権を放棄する
     からには、その辺のリスク(誰が天下を取っても文句を言わない)は承知してるつもり。


     2002年9月。
     とある県で画期的な知事選挙が行われた。
     一度、知事に当選した人が、その政策があまりにもとっぴで、めちゃくちゃで県政を乱したと
     いう理由で不信任とされてしまい、出直し選挙をしたのに、前回よりも、もっと高い支持率で
     再選されてしまったのだ。 投票率70%以上。 県民の関心の高さ、今の政治を変えてほしいと
     いう熱い思いが伝わってくる。

     誰もが、「今」を変えてくれる人を待ち望んでいる(自分が変えようと努力しろと言われるかもしれ
     ないけど)。
     その時まで、息を潜めててもいいのではないだろうか?
     この人!!って思った時の、国民のパワーはすごい。

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