田植え機トラブル

     『しろかき』から約1週間後の6月1日(土)。 予定通りに田植えをすることになった。

     実は苗が配達された5月22日から、雨が降っていなかった。
     雨が降れば苗箱への水やりをしなくていいのに、今年はキッチリ2週間近く、朝晩の水やりを
     するはめになっちゃったよ。 田んぼにもしろかき後は水を満々と張っておかなくちゃ
     いけないんだけど、雨が降らない上にこの暑さ。 すぐに水が減ってしまう。 今年は
     用水路の水量が十分にあることが唯一の救い。 雨は降らない、水量が少ないじゃ
     にゃお家は田植えなんかできやしないもん。

     この日、夕方から主人の職場では親睦会と銘打ったボーリング大会と、そのあとに
     宴会(飲み会ですな)を催すことになっていて、一応、職場では上司の立場にある主人は
     どうしても出席しなくちゃいけなかった。 ボーリング大会は午後3時から。 にゃお家から
     ボーリング会場までは車で約1時間。 ちゅうことは午後2時には家を出ないと間に合わない。
     ということは、それまでに田植えを済まさないといけないってか?(汗)
     普通、機械で植えて、手植えで捕植すると一日かかる。 手植えはやらずに機械だけって
     言ったって、結構な時間がかかるんだよ。 こりゃ、時間との戦いですな。

     そこで、この日は朝、5時前に起きると、すぐに支度をして外に出た
     少しでも早く田植えを始めようって作戦。 子供はまだ寝てるから大丈夫。
     去年までは田植えの時は実家の母に来てもらって子供の面倒を見てもらってたけど
     年中さんになった今年は子守り役が居なくても大丈夫だろうという判断で母を呼んでいない。
     母としてもわざわざ仕事を休んでこなくてもいいし、にゃおたちも田植えが終わって
     クタクタになってても子守りをしてくれた母を家まで送り届けなければならない・・・という
     事がないからあとが楽だ。 

     さて、植えるってったって、すぐに植え始めるわけにいかないのよね。
     1年に1度だけ動かされる田植え機。 あとの364日を納屋の中で寝て過ごしてた田植え機。
     1年ぶりに起こしておいて、さぁ、働けって言ったって、まだ眠りから覚めてない機械は
     そんなにスムーズに動くもんじゃない。 だから、まず、エンジンをかけて外に出し
     それから一通りあれこれ動かしてみて異常がないかをチェックする。 それから給油をしたり
     あちこち動きの悪いところに油を差したり。 一番、大切なのは主人の機械操作の確認。
     本人だって1年ぶりに機械を扱うから、使い方を忘れちゃってるんだよね。 だから
     マニュアルを見ながら動かし方の確認と点検。 これだけのことに最低でも30分かかっちゃう。

     時刻は5時45分。 いよいよ田んぼの中へ入って植えるのだ!!
     用水路の水は十分流れてる。 OK!! それじゃ、どうぞ、やっておくんなまし!!

     こうして主人が田植え機を押しながら田んぼの一番、長いラインから植えて行く。
     にゃおんちの田んぼは長細い台形のような形をしているから、この一番長い辺から植えていくと、
     だんだん往復の感覚が短くなってくる。 最初の数往復がとても長くて大変なんだけど、
     そこを超えると、あっという間に田植えが終わっていくから面白い。

     にゃおは苗箱を用意しながら主人が折り返して帰ってくるのを待つ。
     ようやく向こう側に到達した主人が機械をクルリと回転させる。 
     うん? どうしたのかな? 
     機械を反転させた主人、なにやらかがみこんで苗を直してる。 
     反転させた時にそれまで植えてきた苗を踏んでしまったり、反転させた反動で苗が
     ねじれてしまうってのは良くあることだ。 それを直しながら植えるから多少は時間がかかる。
     今度もそうだろうとは思ったけど、どうも時間がかかりすぎてるみたい。

     ようやく主人が動き始め、こちらに向かってきた。 にゃおのいる側の手前で機械を反転させる。
     すっと、植えるのを止めて、手元を持ち上げるようにして回るのだけど、なぜか機械は
     植えるのを止めず、チャッカ、チャッカ、チャッカと音を立てて空中に苗を放り出してるのだ。 
     主人が回った円に沿って、苗がパタパタと泥の上に落ちて行く。 反転し終えた主人が、
     エンジンの回転を落として、苦虫を噛み潰したような顔で(元々、そんな顔なんだけどさ)
     にゃおの方へ歩いてくる。

     主人:「だめじゃ、見てよ、あれ。 植えるのが止まらん」

     どうやら、植えるのを一時停止するストッパーが効かないらしい。 だから、回転する時も
     植えようと動くから、空中に苗を放り出すような形になるようだ。 泥の上にただパタリと
     落ちた苗は役に立たないから、いちいち拾って植え直さなくちゃいけない。 それって
     ものすご〜い余分な仕事だ。 行って帰ってくるのに10分ちょっとかかるのに、その余分な
     作業が加わるから倍以上の時間がかかる。
     文句を言いながらも主人が落ちた苗を植え直し、もう一度、向こう側へ歩き始めた。
     そして同じように反転したあとは、落ちた苗を拾って植えている様子が見えた。

     主人:「腹立つ、もう、やめた。 飯にしようや」

     今にも血管がブチ切れそうなくらいイライラとした主人が田植え機のエンジンを切って
     田んぼから出てきた。 たった2往復しかしてないよ。 それなのに時間はもう6時半。
     45分もかかって2往復だなんて、なんて非能率的な!!
     どうする? また、担当の人に頼んで診てもらおうか?
     この前、バッテリーのことで呼びつけたばっかりだってのにねぇ・・・(-_-メ)

     結局、担当の人に電話することなく、8時半近くから再び田植えは再開された。
     相変わらず不調で、ストッパーを引いても植えることを止めず、チャッカ、チャッカ、チャッカと
     苗を放り出す田植え機。 それをいちいち拾っては植え直しながら進む主人。
     (ちなみに、下手に田んぼに入って足跡をつけると植えにくくなるという理由から、にゃおは
     田んぼに入って手伝わなくてもいいということになっております)
     余分な労力が主人の体力を奪う。 だんだんと高くなってきた日の暑さも手伝って、ペースは
     恐ろしく遅い。 1往復しただけで、すぐに小休止しになってしまうほど。
     それでも、どういうわけか、だんだんと田植え機も機嫌を直してきたのか、ストッパーが
     効き始め、反転しても苗を放り出すことがなくなってきた。 長い辺がだんだんと短くなると
     行って帰るのも早くなる。 気分的に楽になってくることもあって、度々、休憩を挟みながらも
     11時には『まくら(畦(あぜ)のそばに植える部分のこと)』を残して田植えが済んでいた。 

     早めのお昼ご飯を食べて休憩して・・・
     午後12時半から再び、残り部分を植えて、1時15分には機械植え部分がなんとか終了した。
     主人はボーリング大会に向かわなくちゃいけないから、急いでシャワーを浴びて支度をする。
     その間ににゃおは田植え機を洗ったり、田植え機を出すための『あゆみ(はしごみたいなもの)』を
     洗ってしまったりと大忙し。 

     こうして、なんとか、機械での田植えは終わり、主人も無事にボーリング大会に出かけて
     行ったのだった。

     ひゃあ〜 疲れたぁ。 一時はどうなるかと思ったよ。
     明日は手植えでの補植が残ってるけど、それでもなんとか田植えは終わったよ。
     苗の箱で占領されてた駐車場が広くなり、所狭しと並んでた苗箱がきれいに洗って乾かされて
     積み上げられてる。 田んぼは、チロチロっとした苗が頼りなさそうに植わってる。 
     このかわいらしい緑の苗の列を眺めると、田植えが無事に終わったんだなぁと、しみじみ感じる
     ことができる。 何より、毎日の水やり作業から解放されたのが一番嬉しいわね♪
     子供も一日、放りっぱなしの状態だったけど、庭で泥だんごを作ったり、にゃおの手伝いをしたりと
     おりこうさんにしててくれて助かったよ。 やっぱり大きくなってきてるんだなぁと実感(^ ^;

     それにしても、今年はトラクター、田植え機と連続して機械トラブルに見舞われたもんだ。
     『農業厄年』なのか?!(´Д`) =3 ハァ〜 ←んなものあるか!

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