あらたなる暗雲

     時は少しさかのぼって、稲刈りが済んだあたりになる。
     この頃、にゃお家のポストに一枚の紙切れが入っていた。

     『下水工事のお知らせ』

     げげっ Σ( ̄□ ̄;)
     内容は、にゃお家の前の里道(りどう)から県道にかけての、約50メートルの区間の下水道
     工事が始まるというもの。 
     にゃお区の下水整備100%を目指して、数年前から、あちらこちらで下水道の工事があるの
     だけど、ついに、にゃお家周辺の番になったってわけだ。
     下水が完備されていないので、にゃお家の前にある用水路側にある家からは生活廃水が
     そのまま用水路に流されている。 にゃお家もそうだ。 里道の下には、雨水管が埋設してある
     ようなのだけど、今回の工事では、雨水管と下水管を敷設するらしい。

     掘り返して管を埋設・・・

     すぐに頭に浮かんだのは、『車の出入りが出来ない』という事だった。 
     にゃおんちは県道から入ると、突き当たりの袋小路のような場所にある。 車はにゃお家までしか
     入れなくて、その先は里道という、人が歩くだけの舗装もされていない道があるだけだ。
     だから、県道から、その袋小路状になっている場所までの工事をするとなると、完全に、にゃお家は
     車の使用ができなくなるのだ。

     どうするんだ? 
     工事期間は12月頭に工事のための試験堀。 そして本工事となり、終了予定が3月下旬に
     なっている。 すんごい、長い期間だ。
     この時期、にゃお家は暖房のために灯油ストーブを使用するから頻繁に灯油を買いに出る。
     車が使えないとなると、どうしたらいいんだ? 一番近いガソリンスタンドまででも1キロ近くある。
     臨時の駐車場を設けてもらって、そこに置いたとしても、不便さは、かなりのものだ。

     「やれんのぅ」

     と主人は渋い顔をする。 今回の工事が行われれば、生活廃水が減って用水路の水が
     少しはキレイになるだろう。 工事で新たに管を敷き直せば、梅雨や夏の豪雨の時に
     用水路が氾濫する状態も、緩和できるかもしれない。
     でも、3月下旬までの工事となると、著しく田んぼの準備にも影響が出る。
     なにせ、臨時駐車場に使っていた、にゃお家の下の休耕田の現状復帰工事の時に、ショベル
     カーが石垣に当たって、あちこちが傷んでしまった。 直すには重機を使わないといけないのに
     工事があれば、それも思うように出来なくなる。
     それよりも、なによりも、過去に何回か下水道だの、なんだのと区役所関係の工事があった時、
     区役所にいい加減な工事(当初の計画や主人の要望に沿っていない状態)をされたという事で
     主人は区役所に対して恨みに近い感情を抱いているのだ。 今回の事だって、お知らせの紙を
     一枚見ただけで、過去の恨みつらみを延々と、にゃおに語って聞かせた。 今度、工事をするなら
     絶対に、これこれの条件を飲んでもらわないと工事承諾の判は押さないと息まいた(工事区間には
     にゃお家の土地がひっかかっている)。


     それから、しばらく経って、区役所の下水道課を名乗る人物から電話があった。
     工事について、簡単な説明と、担当工事請負会社の人間を連れて挨拶に来るというものだった。




           絶対、嵐が吹き荒れるぞ。

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