「ん………」

太陽の光がまぶしくて、私は目を覚ましました。
そして、眠い目をこすりながら窓を大きく開けます。

「うっ…うーん。気持ち良い」

空気は少し冷たかったけど、空は綺麗に澄みきっていました。

「さて…と」

私はベッドから体を起こすと、よたよたとタンスの前まで歩いていきました。

「なに着て行こうかな」

そう言いながら着ていたものをベッドの上に脱ぎ捨てて洋服選びをします。

「うん。これに決めた」

私はたくさんある洋服の中から一着を取り出しました。
それに袖を通してから洗面所に向かいます。

髪の毛もセットしなくちゃいけません。
私は置いてあったブラシを髪の毛に通していると後ろの方で声がしました。

「あれ?そんなよそ行きの服着てどこか出かけるの?」
「あっ…お姉ちゃん」

後ろから声をかけてきたのはお姉ちゃんでした。

「なによその『あっ』って。さては…相沢君とデートね」
「……そうです」
「やっぱりね。まぁ、楽しんでくるといいわ。でも体の方は気を付けるのよ。もしかしたら再発するかもしれないんだからね」
そう言ったお姉ちゃんの顔は少し真剣でした。
「大丈夫ですよー。祐一さんも一緒ですし」
「そう…ね。相沢君がいれば大丈夫よね」
「はい。だから心配しないで下さい」

私はそう言って玄関に向かいました。

「いってきまーす」
玄関から大声で叫びました。
「いってらっしゃい」
そのお姉ちゃんの声を聞いてから私はドアを開けて外へ出ました。














道には赤から黄色になった落ち葉が所々に見られます。

待ち合わせしていた公園の前に行くと、もう祐一さんは来ていました。

「おはよう。栞」
「おはようございます。祐一さん」

祐一さん来るの早いです。

「祐一さん。今日はどこに連れていってくれるんですか?」
私が聞くと、祐一さんは少し困った顔をして言いました。
「どこって言われても…。ここじゃ駄目か?」

ここ…ってことは公園ってことですよね。

私は人があまりいない公園を見渡してから言いました。
「良いですよ。そのかわりに……」
「そのかわりに……?」
「祐一さんの似顔絵書かせてください」
私はバッグの中から前の誕生日に祐一さんから貰った、道具一式を取り出しました。
祐一さんは少し考えてから言いました。
「ああ。良いよ」
「わー。嬉しいです」

そうして私と祐一さんは絵を描く良い場所を探して歩きました。

「ここなんてどうですか?」
私は綺麗な芝生の上を指差して言いました。
「そうだな。気持ち良さそうだし、そこにするか」
「はい」

私と祐一さんはそこに腰をおろしました。

私は早速絵の下書きに取りかかります。



その時……。



私の中でなにかがはじけたような…。
そんな気分になりました。


ドクン…。
ドクン…。


心臓の音……。


ドクン…。
ドクン…。


苦しい……。





「ん?栞。どうかしたのか?」
「えっ?いえ、なんでもないです」



なんでもない…。

なんでもないはずない…。

この感じは………。



しばらく忘れていた苦しみ……。
しばらく忘れていた痛み……。



私の中で確かになにかがはじけました…。
それは…。
なんの前置きもなく…。

そして…。

すべてを無に返すように…。