私しか存在しない空間。

孤独な空間。

真っ白な空間。


私はいつまで苦しめば良いのですか?

私はいつまで辛い思いをすれば良いのですか?



私は…。

楽しんではいけない人間なのですか?






「そんなことないよ」

えっ?

聞き覚えのある声が私の真後ろでしました。

「あゆさん?」
私が後ろを振り返ってみると、あゆさんが立っていました。
「久しぶりだね。栞ちゃん」


「あゆさん。今までどこ行ってたんですか?いきなり消えちゃうから心配しましたよ」
「うん。ちょっとね…」
あゆさんはそれ以上言いませんでした。

「ところで、栞ちゃんはなんでこんな所にいるの?」
「私は…待っているんです…。たぶん…」
私は曖昧な言葉であゆさんに言いました。
「待ってる…って?」
「自分でもわからないですけど…」


そう…一体私はここでなにをしているのでしょうか…?
待ってるってなにを待ってるのでしょうか…?


「奇跡……?」
私はぼそっと…聞き取れないくらいの声でつぶやきました。


「栞ちゃん…」
あゆさんが口を開きました。

「もし奇跡を待ってるんだったらね、待ってるだけじゃ駄目だよ」
「えっ?」
「奇跡はね待ってるんじゃなくて、信じなきゃ駄目なんだよ」


奇跡を……。
信じる……。

完治していなかった病気…。

私は…心の奥底で……。

奇跡を…

「信じてなかったのかもしれません…」

私が言うとあゆさんが少し笑みを浮かべて言いました。
「信じなきゃ駄目だよ。少なくとも半年前の栞ちゃんは奇跡を心の底から信じてたよ」

心の底から…。

あゆさんは続けて言いました。
「今だってね。祐一君達が栞ちゃんが帰ってくるのを待ってるんだよ」
「えっ…。祐一さん達が…ですか」
「うん。栞ちゃんが帰ってくるって信じてるよ」

信じてる。
私が帰ってくるのを信じてる。



「あっ。そろそろ時間みたい」
「時間?」
「うん。ボク戻らなきゃいけないんだ」
「じゃあ私も連れていってください」
あゆさんは少し悲しそうな顔を無理に笑顔に変えて言いました。

「栞ちゃんはボクと帰るところが違うんだよ」

そう言うとあゆさんは一歩私の前からさがりました。


そして…。


「……あゆさん…?」


あゆさんは空に…。


なにも存在しない空間の空に向かって消えていきました。



その姿に白い羽が見えたのは、私の目の錯覚でしょうか…?











あゆさん…。

私…帰ります。

待っててくれる人が居るから…。

私が待っているのではなくて、私が待たしてたんですね。

信じてくれる人が居る。

信じることのできる自分が居る。

私は…まだ奇跡を信じたいです。

甘いことかもしれません…。

でも…。

今私が信じれることができるのは……。


奇跡と…。

信じてくれる人達だけだから…。





あゆさん…。



ありがとう。





(幸せになってね。栞ちゃん)