「相沢。栞ちゃん。おめでとう!」
今日は相沢達の結婚式。
当然高校時代からの親友である俺も呼ばれたわけだ。
7年前の秋…。
治ったと思われてた栞ちゃんの病気が再発。
その後、完治したわけだが…。
結局のところ原因は医者にもわからなくて、原因不明の病気と言うことで幕を降ろさざるをえなかった。
そのことが7年間、俺の心の奥底で引っかかっていた。
一回は治った病気だもんな…。
しかも原因不明の再発だし…。
そしてすぐに完治した…。
全ての流れが早くて…。
すごく現実離れしているような気がして。
そう…。
誰かが、やり残した仕事を片付けたような…。
そんな感覚がしないでもなかった…。
新郎である相沢と、新婦である栞ちゃんが、赤い絨毯の階段を降りてくる。
栞ちゃんの腕と相沢の腕はしっかりと組まれていた。
その栞ちゃんの片手には綺麗なブーケが握られていた。
そして栞ちゃんがそのブーケを空に向かって投げた瞬間…。
ザザー…。
いきなり強い風が吹いて、ブーケは飛ばされてしまった。
そして、数十秒後そのブーケが落下してきた。
女の子達がそれを取り合う。
そのブーケにまぎれて白い羽が舞い降りてきていたことを…。
その場にいた人達は気付いていたのだろうか…。
式が終わって数日後。
式後に撮った俺と相沢と栞ちゃん、そして美坂と水瀬の写真が送られてきた。
それには知らない顔の女の子が写っていた。
手にはブーケの花が一本握られていて…。
背中には白い羽が付いていて…。
少し恥ずかしそうな顔をしていて…。
そして相沢と栞ちゃんを見守るかのように…。
もしかして7年前のあの出来事は…。
俺はそっと写真を机の引き出しにしまった。
そしてあざの残る頬の辺りをさすってみる。
いてぇ…。
そして俺はまた笑顔に戻る。
夢じゃないよな。
現実だ。
目に見えるモノだけが現実じゃないと俺は信じている。
俺は自分の愛がいつか届いてくれることを信じている。
「さて…相沢と栞ちゃんに先越されちまったけど…」
そして俺は電話をかける。
「あっ、もしもし美坂か?」
今日こそは…と、自分の力を信じて。
『Believe is Strong』