目覚ましの音が部屋に鳴り響き、目を覚ますと
隣に居た紗綾も同時に目を覚ました。
「おはようございます、浩樹さん」
「おはよう、紗綾」
 エリスと暮らしていたマンションに紗綾が来て
から二ヶ月が経とうとしていた。
 年が明けて学校が始まって早々、色々とあって
俺と紗綾の関係は学校中に知れ渡る事になった。
 その件に関しては、説明は省くが学園長に色々
と言われそうになった所を、理事長の一言に救わ
れたのは言うまでもあるまい。
 その時にこんな一言を言われたが……。
「紗綾姉様の事宜しくお願いしますね。お父様達
 も、上倉さんとはお逢いしたいとおっしゃってい
 ましたので、今度いらして下さいね」
 実際、挨拶に行って、俺達の仲は鷺ノ宮家公認
になった。
 正直拍子抜けというか、俺の中に合った金持ち
のイメージを根本からひっくり返してくれたのは
間違いない。親父さんは怖かったけどな……真剣
を突きつけられかけたし。理事長や紗綾が止めて
くれなかったらどうなってた事か。思い出すだけ
で背筋が寒くなってきた。

「ところで、今日だったな」
「ええ、そうですわね」
 今日は桜花展の日。エリスの作品がどのような
結果を出したか、確認をする日である。
「それじゃ、飯を食ったら会場に行くとするか」
「はい」
 起きてきたエリスと一緒に飯を食べて桜花展の
会場へと向かう。今日からしばらくは関係者のみ
の開放で、一般開放はまだ少し先のはずなのだが、
それでもかなりの人が居た。それだけ、桜花展は
注目が高い事の表れだと思う。
「さて、エリスさんの絵は何処でしょうね」
「受賞はしてるだろうからな。とりあえず一通り
 見て回るか」
「御兄ちゃんと紗綾さんはゆっくりしてて。私は
 一足先に確認してくるから」
「あ、ああ……」
「それじゃ、二人ともごゆっくり〜」
 そう言ってエリスは足早に俺達から離れて絵を
見に行った。
「エリスさん、気を使ってくれたんですね……」
「とりあえずゆっくりと見て回るか」
「ええ、そうですね」
 色々と見て回り、受賞作品の所に入って直ぐの
所に、特別賞と書かれた札の所に飾られていた絵
が目に止まった。
「なっ……」
 一瞬言葉を失う。何故ならそれは……
「浩樹さん」
「紗綾、これは……」
「えっと……何処から説明いたしましょうか」
「知ってたんだな」
「ええ、桔梗先生とエリスさんに頼まれましたし、
 強引にしないと、浩樹さんの事ですから出展を
 しなかったのではないでしょうか」
「うっ……」
 パーティーの日、屋上で描いた紗綾の舞の絵。
それが出展されていた。詳しく話を聞くと、自分
の部屋に置いていたそれをエリスと霧が見付け、
紗綾を丸め込んで出展したらしい。
「しかし、特別賞か」
「お兄ちゃん嬉しくないの?」
「違う、逆だ。自分の絵がこういった形でも認め
 られたんだ。嬉しくないわけないだろ」
「うん、そうだよね。良かったね紗綾さん」
「ええ、本当わたくしも嬉しいですわ」
「ところで、エリスお前はどうだったんだ?」
「くすっ、それは見てのお楽しみ」

 夜、桜花展から帰った俺は、エリスのパリ留学
の事を知らされた。突然の事態に戸惑いながらも
話を聞くと、留学の条件として桜花展での金賞を
取る事だったらしい。出発は一週間後との事。
「そうか……一週間後には出るのか」
「うん、けどごめんね。ずっと言えなくて」
「いや、仕方がない。もう決めたんだよな……」
「うん」
「でも、そうなると準備の方は出来ているの?」
 紗綾がエリスに尋ねると。
「ある程度は学園の方で準備してくれてるようだ
 から後はわたしが少し準備する程度かな」
「そう。寂しくなるけど、後一週間一緒に楽しく
 過ごしましょうね」
「ええ、勿論ですよ」

 就寝前。紗綾との情事を終えて、眠りにつこう
と思っていたが、眠れないのでずっと天井を見上
げている。
「浩樹さん……起きてます?」
「ああ」
「眠れないんですね」
「ああ。エリスの事は突然の話だったしな。少し
 考え事もしていたから、寝ようにも眠れない」
「考え事ですか?」
「ああ」
「聞かせてくださいますか」
「ああ、勿論だ」
 別に特別賞を受賞したからじゃないと言った上
で、俺は紗綾に教師を辞めプロの画家を再び目指
す事を考えている事を告げた。
「浩樹さん……」
「思い出したからな。純粋に絵を描いていた頃の
 楽しさを。だけど、少しの間苦労する事になる
 かもしれない。給料が全く出なくなるから貯金
 を崩して生活する事になる」
「そんな事を気にしていてはいけませんわ。何が
 あってもわたくしは貴方の傍に居ますから」
「ああ。ずっと一緒だ」
 顔を寄せ合って軽いキスをする。何度も何度も
紗綾の唇にキスをする、それだけで心が安らいで
俺はいつしか眠っていた。
 それから一週間は色々と大変だった。何が大変
かと言えば、エリスと俺の祝いの席を開いたり、
鷺ノ宮家にはまだ正式な報告はしてないが、紗綾
と婚約をしたり、色々忙しい一週間だった。
 そして、エリスが旅立ち俺が撫子に辞表を提出
してから少し経った日の事。
「紗綾」
「はい、何でしょう?」
「次の全日本絵画展に出展する事に決めた。そこ
 で大賞を取る。結納の土産には丁度良いだろ」
「浩樹さん」
 紗綾の目を真っ直ぐ見て俺はこの一言を告げる。
鷺ノ宮家には正式な報告はしてないが、婚約して
おいて結婚式の時期に関しては考えていなかった。
だけど、良い機会だ。紗綾にはきちんと告げよう。
「必ず大賞を取るから、その時は結婚しよう」
「は、はい!!」
 そして、また少し月日は流れ、教会の鐘の音が
辺りに響き渡る。多くの人達に祝福され、俺達は
新たな門出を歩み始める。
 きっかけはほんの少しの出会い。それはいつの
間にか運命となって、俺達は結ばれた。
 これから先、どんな事が合ったとしても俺達は
離れる事はないだろう。二人の想いはずっと同じ
だから。





あとがき

 まぁ、最後はやっぱ結婚式だろうと(ぉ
 ゲーム内では、正式なプロポーズの言葉とかなかった
からな。一応合ったけど、あれは別の物と考えてます(ぉ
 そんな訳で、語られてない部分を色々と想像して書いて
見ましたが、難産だ……これ。
 正直、色々と端折っているので物足りないかもしれませ
んが、個人的には少々満足。大満足ではないです(滝汗)
 紗綾シナリオは読んでて、結構良かったと言うか、気に
入ったというべきか。エリスも悪くはないんだがなぁ。

 でも、紗綾が一番良いと言ったところでしょうか。特に
あの舞のシーンとか。すげぇと思いましたし(ぉ
 浩樹が、前作主人公の絵を見る所の話ではじーんと来る
ものがあったりと。兎にも角にも彼女のシナリオは色々な
意味でお気に入りです。
 だから真っ先にSSで書いて見たのですが、不足だなぁと
思ったり。紗綾の魅力の半分も出せてない。

 荒を探すと色々とありそうだが、とりあえず数ヶ月後に
は手直しいれるかも。今すぐだと自分では分からない部分
が結構あるので。修正とかはこっそりとやる予定……
やるとしたらですがね。
 とりあえず、こんなところでしょうか。では、またです。