どれくらいそうしていただろう? 5分にも満たなかったとは思うが、突然、
亜麻音ちゃんの叫び声が部屋に響いた。

「い、いやぁぁぁぁっ!! な、何をしてるんですっ!!」

 どうやら、一気に酔いが覚めたようだ。じたばたと暴れて抵抗して
くる。

「あ、亜麻音ちゃん……お、俺はっ」
「あ、あなたがこんな事をする人だったなんて……さ、最低ですっ!!」
「……っ!!」
「出て行ってくださいっ!! すぐにっ!!」

 そう言われた瞬間、俺の中で何かが切れた。立ち上がろうとした彼女
に襲い掛かり、抑え付ける。

「いや、は、離してっ!! 離してくださいっ!!」
「煩いっ!!」

 彼女の頬を勢い良く叩くと、恐怖からか彼女は押し黙った。

「あ、亜麻音ちゃんが悪いんだ……酔い潰れるから」

 実に自分勝手な意見ではあるが、この際そんなのは関係ない。こうな
れば強引にでも彼女を自分の物にしてやる。

「そ、それは……あ、貴方がっ、い、いやっ!! だ、誰かっ!!」
「ここは防音ばっちりなんだろう? 外には聞こえないよ」
「いや、いゃぁぁぁっ!!」

 なおも、暴れる彼女を力づくで抑え込む。時間はまだある。なら……

「諦めるんだ、亜麻音ちゃん」
「いや、嫌ですっ!!」
「本当は触るだけでよかったんだけどこうなったら……もう……俺」
「い、いや……わ、わたし……まだ」
「亜麻音ちゃんは初めてなのか?」
「そ、そうです……」

 顔を赤くしながらそう答える。それを見た俺は余計に興奮して……
完全に自分を抑え切れなくなる。

「じゃあ、俺が初めての男になってやるよっ!!」
「そんな、止めて、止めてくださいっ!! いゃぁぁぁっ!!」

 いざ事に及ぼうとした瞬間、突然部屋の扉が開かれ……俺は意識を
失った。

「ここは……」

 次に目が覚めた時には警察に居た。刑事の話によると空き地で全裸
で倒れていたらしい。
 そんな馬鹿なと警察にドリームクラブの事を言ってみたが、そんな
店はないし、その土地は元々空き地だったと説明された。
 会員証も財布も手元にはなく、店が合ったという証明もできない。
全裸だったのは酔っていたからだろうとの事で処分保留で釈放された。

「あれは夢だったんだろうか?」

 一人そう呟きながら家まで歩いて帰ろうとした時……見慣れた顔が
遠くに見えた。

「あれは……亜麻音ちゃんっ!!」

 間違いないあれは亜麻音ちゃんだ。早くしないと追いつけなくなる。
そう思い走り出す……が……

 ドンッ!!

「あれ?」

 勢い良く自分の身体が吹き飛ばされる。視界には車が見える。
 どうやら自分は跳ねられたらしい。地面に身体が叩きつけられる。
痛みは感じない……けど、立とうとしても立てない。

「亜麻音ちゃん……」

 どんなに頑張っても立とうとしても身体は動かず、彼女の元へは
向かえない。意識が遠くなっていく、視界には赤、血が見え始める。

「俺は死ぬのかな……そんなのは嫌だ……」

 だが、どんなにそう思っていも現実は非情で……やがて意識は闇
に閉ざされた。

「やはり失敗でしたか……彼は実に純粋だったのに。そう欲望に」

 一人そう呟くは受付嬢。彼がドリームクラブに行く切欠になった
人物。彼女は彼を監視していた。純粋なまでの欲望を持つ者が来店
し続けていたらどうなるかを。そして、今ここに一つの結末を見た。

「欲望には極めて純粋だけど手を出す勇気はなかなかない。ならば
 二人だけにした時はどうなるか。答えは一応出たか」

 そう言い、彼女は闇の中へと消える。

「……。もう一つの結末はどんな感じなのかな?」




後書き

 15禁で済ます予定だったもの。何をどう間違ったらこうなる。
 受付嬢が地味に黒い? のは予定通り。冒頭の注意書きは彼女の
為だけにありました。
 2chのスレでのどこがピュアなんだとかの意見を見て返答が確か
欲望にはピュアとか書いてあったのでああ、なるほどと思った。
最初はそれだけだったのに。ふと、欲望にはピュアなんだよなぁ
と思ったのが運の尽き。こんなのが出来ましたと。

 主人公の末路ですが……最初は全裸で空き地でうろついてるか
婦女暴行未遂(店は幻? なので亜麻音ではない女性)でたいーほ。
 店の存在を言うが空き地で店はない(ここは変わらず) そのまま
訴え続けるので精神鑑定の為に護送。結果そのまま入院を考えてた
のですが、そこら辺り詳しくないし、リアリティに欠けそうなので
のでご覧の結末に。(SSでリアリティって何なのだがなんとなく)

 入院ではなく護送中に隙を見て逃亡、亜麻音を見つけて駆け寄ろ
うとして、お見合い相手(ゲーム参照)が隣に居るのを見て茫然自失。
その状態で車に跳ねられる結末も考えてましたが……ある意味では
酷すぎるなというのでこうなりましたと。
 もう一つの結末の方では一応の救い? はありますが……