「鳴海さ〜ん、待ってください」
「…なんだ、あんたか」
「今日は一度で応対してくれましたね」
「あんたに呼ばれる時の声はかなり大きいからな。注目を浴びる
 それが嫌で仕方ない…」
「そんな事を言うのはこの口ですか」



むにゅーーーう
口を横にいきなり引っ張られる
痛い痛い…


「は、はにをしゅる(な、何をする)」
「鳴海さんが失礼な事を言うからです」
「俺は事実を言ってまで… ああ、引っ張るな」
「まぁ、今日はこの辺で勘弁しておいてあげましょう」
「助かった…」



まだ多少痛いが、喋るのには問題無い…
文句を言おうとも思ったが、また引っ張られるのも嫌なので
黙っておく事にするか


「ところで、鳴海さん、クリスマスは何か予定はありますか?」
「別に…」



そう、特に予定は無い…
姉さんは仕事の関係で何やらあるようだし



「じゃあ、この可愛いひよのちゃんと一緒に…」
「断る…」
「即答ですね。どうしてですか?」
「あんたの事だから、クリスマスプレゼントをねだるに決まっている」
「失礼ですね…そういう風に見えますか?」
「見える」
「これも、即答…はぁ、鳴海さんは一人で寂しくクリスマスを過ごすんですね」
「そういうあんたはどうなんだ?」
「一応、家族とも過ごしますけど。できれば鳴海さんと居たいです」



少しだけ顔を赤くして、そう言う…
はぁ、これで性格がああでなければ良い女なんだが…



「それで…一緒にクリスマスを過ごしませんか?」
「分かった分かった。クリスマスは一緒に過ごしてやるよ」
「投げやりな言い方ですけど。嬉しいです♪」



何で一緒に過ごすって言ったんだろうな…
不意に何となく言ってしまったが。たまには良いか



少し時は流れてクリスマス当日…



「まぁ、こんな物だろう。後は、冷蔵庫に入れてと」




ひよのが家にくるまでの時間を利用して、ケーキを作る…
シンプルな生クリームケーキだが、素人から見るとかなり凝っているようにしか見えない



「……結局買ってるな」



昨日、暇を見つけて街に出掛けクリスマスプレゼントを一応買った
なんてことはない。ただのイヤリング。
しかし、買う時はひよのが気に入ってくれるかどうか不安になりながら
少々緊張しながら買った。なんでこんな気分になっているんだ
自分自身にそう問いながら…


そんな自分を思い返しながら多少苦笑する
一応、客が来る以上と部屋中を整理している時チャイムが鳴る



「こんにちわ、鳴海さん」
「ああ…」
「寒いので早く中に入れてください」
「ああ、入れ」



外をふと見る…曇ってるな。おまけに寒い…
今にも雪が降りそうな雰囲気だな



「それじゃ、おじゃまします」
「ああ…」



家に入るなり、物珍しそうに辺りを見まわしている
ごく普通の家だと思うんだけどな…



「うーん。普通の家ですね」
「当たり前だ。一応マンションだぞここは…」
「そうですけど。鳴海さんのお兄さんの話とか聞いていると…
 何があってもおかしくないと思いまして」
「確かにそうだろうけど。いくら兄貴でもそんな事はしないさ」
「そうですか」



さも残念そうにそう呟く…
一体何を考えてるんだと少し呆れるが



「まぁ、それは良いとして…鳴海さん遊びましょう」
「は?」
「今日は色々と持ってきたんですよ。ちょっと重いですけど」
「まぁ、構わないが…」
「それじゃ早速…」



この後、カードゲームやら、テレビゲームやら色々と付き合わされ
時刻は夕方になる…



「さてと、一応客もいるしご飯ぐらいは作ってやる」
「あ、ありがとうございます…」
「良いって事だ…久々に楽しんでるしな」



聞こえないようにそっと呟く…


「えっ、今なんて言いました?」
「何でも無い。おとなしく待ってろよ」
「分かりました」



クリスマスらしく、あらかじめ仕込んでおいたローストチキンとか
他にも色々と食卓に並べる…たまには贅沢も良いだろう…



「わぁ、美味しそうですね」
「遠慮無く食ってくれ。一応、それなりに手間暇かけてる」
「はい、そうします」



その言葉どおり、遠慮無くと言ってもまぁ、実に女の子らしい食べ方で
食われていく… お互いに静かにそれでいて良い居心地さを感じながら
食後のクリスマスケーキも結局一気に食べてしまうのであった



「とっても美味しかったですよ」
「そうか。なら、良かった」
「ええ、また作ってくださいね」
「あのなぁ…」
「冗談ですよ。今はですけど」
「……」



とりあえず、黙る事にした。どうも、今日は相手のペースに嵌ってばかりだ
いや、いつもの事か。いつもは、弱みを握られてだが今回は…
少し違うな。自分が自分で無いような。何故だろうな



「鳴海さん…これを」



包みを手渡される…一体なんだろうか



「私からのクリスマスプレゼントです。開けてみてください」
「あ、ああ…」



包みを開ける…セーターだ…黒色のセーターである



「一応、言っておきますけど手編みですよ」
「良く作ったな…」
「結構時間はかかりましたけど。一応裁縫は得意なので。着てみてください」



素直に、それを着てみる…
サイズもぴったりで、とても温かい



「ぴったりですね。はぁ、苦労した甲斐がありました」
「なぁ、どうやってサイズを調べたんだ」
「聞きたいですか?」



いつもの不敵な笑みを浮かべる…これがなければ素直に可愛いと思えるが…
背筋に、寒気が走る。どうも、この笑顔は苦手だ…



「え、遠慮しておく…」
「そうですか。残念ですね」
「まぁ、俺からもプレゼントだ」
「あ、ありがとうございます…」
「貰えないと思ってたか?」
「うーん。半分はそう思ってましたよ」
「返せ…返品してくる」
「ああ、酷いですよ、鳴海さん」
「分かった、分かったから」



素直に、プレゼントを渡す…



「イヤリング…」
「何にしようかと思ったがそれしか思い浮かばなかった…」
「いえ、嬉しいですよ…つけても良いですか?」
「ああ…プレゼントしたんだ好きにしても良いと思うが」
「貰った以上はそうでしょうけど。一応ですよ」



そう言いながら早速、イヤリングをつけているようだ



「どうですか? 似合いますか?」
「ああ、似合ってる」



素直にそう言う。意地悪で似合わないというのも考えたが
とても恐ろしい事になりそうなので止めておく・・・



「ずっと、大切にしますね、このイヤリング」
「俺もこのセーターは大事に着る事にする」
「あっ、鳴海さん雪ですよ雪」



窓を開けて外を見る…冷たい風が入り込むが今は気にならない…
外は、ようやく雪が降り始めたようだ…



「ホワイトクリスマスですね…」
「そうだな…」
「そういえば、まだこの一言を言ってませんでしたね。メリークリスマス」
「メリークリスマス」




この後の二人の事はあえてここでは語らない事にしよう…
ただ、この日を境に二人の中で何かが変わり始めた…
聖なる夜。二人の心は少しずつ動き出したと言えるだろう

皆さんにも幸せが訪れる事を願いながら…
メリークリスマス



後書き…

何かちがーう(死) やはり、クリスマスSSは疲れる…
書いてて何度消そうかと思ったか(死)
今回は原作の二人の関係を重視で…
自分が書くのだと大抵二人は付き合ってる事にしてますが
たまには原作重視の方で行こうと。しかし、それが失敗のような(苦笑)
久々に書いたのとキャラを完全につかみ切れてないので…
半分失敗かなと… ラスト辺りは構想していたものに近い内容ですが
前半辺りは特に、失敗だな…
はぁ、まだまだ未熟…

では、また次のSSで会いましょう…
螺旋SSは書く予定はありますので
それでは。