「寒いな…」



起きた瞬間、寒さを感じ二度寝をしようとするが
学校なのでそれすら出来ない…
時間を見ると朝飯を作る時間になりつある
仕方ないので起きるとしよう



「おはよう、歩」
「ああ、姉さん。今日は早いな」
「わたしはいつだって早いわよ」



嘘だ…あえて言葉に出すと後が怖いので
心の中だけで呟く


「歩。今失礼な事を考えなかった?」
「気のせいだよ」
「なら良いけど。新聞取ってきて」
「はいはい…」


新聞を取ってきて、手渡す…
早速見ているのはテレビ欄なのはいつもの事だな



「そうそう。はい、これあげる」
「ああ、ありがとう…」
「今日はバレンタインだからあげておくわ」
「そうか。今日はバレンタインか」
「お返しは10倍返しね」
「姉さん…」
「冗談よ。まぁ、デザート作ってくれれば良いわよ。いつもの3倍で」



太るぞと言いたいが、やはり怖いので止めておこう…
一応、チョコを見てみると市販のだな
昔もバレンタインの日に姉さんの手作りでもらった事があったが…
食ったら3日間ぐらい苦しんだ記憶が…
あの時は兄貴もいて、同じように苦しんでたな


「さてと、早いところご飯作ってね」
「ああ、すぐ作るよ」


二人でご飯を食べて、俺は学校に、姉さんは仕事に
いつも通りの朝だな…



「弟さん、おはようございます」
「あ、ああ…」



後ろから理緒が近づいてくる…
その手には包みが握られている



「はい、弟さんにあげます」
「チョコか?」
「今日はバレンタインデーですからね。弟さんにもあげますよ」



一応、受け取って包みを開けてみる
中から出てきたのは…ち、チロルチョコ?


「ホワイトデーは100倍返しで良いですから」
「……」
「ひょっとして感動してます? 弟さん、チョコ貰えそうだけど
 以外と貰ってなさそうですから」
「頭痛い…」
「大変ですね。頭痛薬でも飲みますか?」
「わざとだな?」
「もちろんです。って、弟さん目が怖いです…」
「どうやったら、チロルチョコで100倍返しをしないといけない」
「くすっ。冗談ですよ。義理ですけど、はい」


今度はどうやら本当にくれるらしい…
堂々と義理と言われると少し悲しいがまあ良いか



「お返しは、普通で良いな?」
「はい。100倍返しはアイズ君にしてもらいますので」



あいつも大変だな…と心の中で同情はする
二人で学校への道を登校する
最初に会った時にはまず考えられない事だなとふと思う



「それじゃ、また」
「ああ、またな」



下駄箱で別れて、教室へと向かう…
教室内はバレンタインのチョコを期待している男と
渡そうとしている女子が結構いるようだ



「まぁ、俺には関係のない話だな」



一人呟く…
バレンタインにチョコを貰った事はある事にはあるが
義理がほとんどである。人付き合いの悪さからかまず本命を
貰う事はない。それにそういうのにはあまり興味もない



「さて、今日も退屈な授業を受けるか」



時間は過ぎ、放課後…



「そう言えば、今日新聞部の部室に来いとか言ってたな」



昨日の放課後、あいつ(ひよの)は絶対に部室に来てくれと
言っていたのを思い出す。無視しても良かったが後が怖いので
仕方無しに向かう事にする…



「おい、来たぞ」



扉を開けると中には一人ひよのの姿がある。しかし…



「寝ているのか。呼び出しておいてそれはないと思うけどな…」



とは言うものの。寝ていたから帰ったなど言ったらやはり後が怖いので
起きるまで読書でもしておく事にする。が…



2時間経過…



お、起きない…もはや外は夕日が沈もうとしている
まずいぞ。そろそろ帰って夕飯の支度をしないと姉さんが怖い
だが…こいつも後が怖い。仕方ない起こすか



「おい、起きろ…」
「んー。誰ですか?」
「寝ぼけているのか。人を呼びつけておいて寝ているとは」
「えっ、鳴海さん?」
「ああ、そうだ」



俺を確認した次の瞬間。一気に起きた…
始めからこうしていた方が良かったのかとも思ったが
まぁ、良い。さっさと用件を済ませてもらおう



「それで、今日呼び出した用件は。わざわざここじゃなくても
 良かったと思うが」
「えーと、やはり人に見られていると恥ずかしいからここに呼んだんですよ」
「あんたでも恥ずかしいと思う事はあったのか」
「どういう意味ですか? それ」
「言ったままだ」
「酷いですよ、鳴海さん」
「さっさと用件を済ませてくれ。もう夕日が沈もうとしている」
「ああ、本当ですね。それじゃあ、これを受け取ってください」


そう言ってラッピングされた包みを渡してくる
受け取り、了承を得て中身を開けるとチョコが入っていた



「今日はバレンタインですから」
「そうか…」
「それだけですか?」
「ありがたく受け取る」
「ええ。手作りですからよく味わって食べてくださいね」
「作れたのか?」
「酷いですねぇ。これでもちゃんと料理は出来ますよ。今回は徹夜したから
 寝てしまいましたけど。鳴海さんが来たらすぐに…」



チョコを作るのに徹夜したから寝てたのか…
何となく、嬉しくなる


「そうか。ありがとうな」
「それと、ちゃんと味見はしてますから。安心してくださいね」
「安心しろ。まずくてもちゃんと全部食ってやる」
「鳴海さん、今の一言かなり酷いですよ…」
「物の例えだ。ちゃんと全部食べてやるよ」
「お返しの時は10倍返しでお願いしますね」
「10倍とまではいかないけど、ちゃんとしたお返しはするよ」
「はい。ありがとうございます」
「さて、それじゃ帰ろうか」
「すっかり遅くなっちゃいましたけど。帰りましょう」



二人で帰る夜道。いつもとは少しだけ距離が縮まったような気がした
そんなバレンタインの日だった…




後書き…


がああ、遅れてようやく完成。バレンタインの日
しかし、書き始めたのは実に3日も過ぎてから(死)
完成は更に4日かかるとは。こういうのはやはり苦手だな
多少、甘めに書く予定が。何か違うような…
アイズと理緒とか書こうと思ったが。またの機会に(ぉぃ)