思いっきりまた予定外のSS…
何となく浮かび…ある所でのスパイラルSSに
影響を受けているのが自分でも分かる。
物語は原作から8年後…
ブレードチルドレンは全員生存で清隆もいます。
では、始まり始まり…




季節は夏真っ盛り。そんな日常の出来事。




”天才ピアニスト鳴海歩婚約!!”




そんな文字がテレビに大きく写し出されているのを清隆とまどかは見ていた…



「歩、凄い騒ぎになってるな…」
「そりゃ、そうでしょ。今じゃ押しも押されぬ天才ピアニストが
 若くしていきなり婚約発表したんですから」
「俺達にまでコメントを求めて報道陣来ないだろうな…」
「大丈夫だとは思うけど……」
「念の為に規制を強いてもらうか」
「その方が良いかもしれないわね」



現在、鳴海清隆は警察を辞職し、探偵をしている。

しかし、警察には相当顔は効くのでその気になれば
幾らでも力を貸してもらう事が出来るのである。
ちなみに、まどかは今も警察にて刑事をしている。

更に説明を補足すれば二人は現在は歩がいるマンションとは
別の所に部屋を借りて生活している。



「一応、歩の方にも来ないようにしておいた方が良いんじゃないのかしら」
「問題ない。あいつはあいつで何とかするだろう」
「あはは、意地悪ね」
「そうか?」
「まぁ、それも良いけどね。歩がどんな風に対応するか見てみたい気もするし」
「まどかも意地悪だな…」



お互いにそう言って笑い合う。
こちらは平和である。



婚約発表から数日後、鳴海歩の方は……



ばたんっ!!



「はぁっはぁっ、つ、疲れた…」
「大変だな」
「うわっと、何だアイズか」
「何だとは心外だな…」
「ああ、悪い」



報道陣に取り囲まれた歩はとりあえず、一言二言コメントはしたが
あまりにもの質問攻めにとりあえず逃げ出したのである。
今日は発表会と言う事もあり、多くの報道陣も詰め掛けている始末。
とりあえず、控え室に入ったらライバルであるアイズが居たのである。

「しかし、ようやく婚約か」
「まぁな。ただ、いきなりこんな騒ぎになるとは思わなかったけど」
「もっと自分が有名人である事を自覚しろ。お前は俺の永遠のライバルだからな」
「そう言われてもな。俺は結局俺だし。アイズとライバルと言うのは悪くは無いけどな」
「ふっ……お前らしいな」
「ところで、アイズ何をしに来たんだ?」
「チケットをくれただろう。だから聴きに来た。とりあえず、全員来ている」


ここで言う全員とはカノン・理緒・浅月に亮子の事である。あしからず


「そうか」
「それと、お前の婚約者であるヒヨノから伝言だ」
「伝言?」
「ああ、先程電話があった。今日か明日には帰国するとの事だ」
「そうか」
「それと、発表会頑張ってくれとの事だ」
「そのつもりだ」



現在、ひよのはジャーナリストとして活躍している。
が、今回は海外に取材に行っている為、現在は日本にはいない。
会えなかった日々を考えるとやはり、帰国は嬉しい限りなのだろう。
歩の頬が少し嬉しそうに緩んでいる。



「しかし……お前達が婚約とはな」
「悪いか?」
「いや、八年前のあの時から考えれば至極当然だろうなと思っただけだ」
「……」
「あの時からお前達は良きパートナーだったからな。全てが終わり付き合い始めてからも
 それは変わらずに続いていた。そしてこれからも続いていく。良い事だ」
「あれが無かったらこうしてひよのと知り合う事も。アイズに会う事も無かったのかもな」
「そうかもしれないな」


二人で昔を思い出し、一瞬過去へと思いが飛ぶ。しかし、それは演奏時間が迫っていると
伝えに来たマネージャーの一言で打ち破られる事になる…


「そうか、もう時間か」
「ああ」
「では、じっくりと客席で聴かせてもらう事にしよう」



そう言ってアイズは控え室から出ていく。また歩も演奏の為に舞台へと向かう。



「では、鳴海歩の演奏をじっくりとご堪能ください」



司会者の言葉の後、歩が壇上に立ち客席に向かい礼をする。
アイズは一版前の席にいる。アイズが言ってたとおり残る三人の姿も会った。
清隆とまどかの姿もどこかにあるはずだ。


(あの出来事があったからこそ、今の自分が居る。今はそれに感謝したい)



そして、歩は静かに鍵盤に手を置き弾き始めた…





「やれやれ……やっと帰れた」



演奏が終わり、会場を出たところで再び報道陣に取り囲まれ
色々と取材を半強制的に受けた後ようやく家に戻れた…
ここ数日間、曲のチェックや練習の為に家には居なかったので久々に帰宅と言える。



「ただいまっと」
「おかえりなさい」



誰も居ないはずの我が家。だが、今の声は…愛しい人の声


「ひよの?」
「おかえりなさい。歩さん」
「ひよの!!」



間違い無くそこには愛するひよのが居た。靴を脱ぐのも忘れてかけよって
思いきり抱きしめる。どれくらいそうしただろうか。
とりあえず、離れて靴を脱ぐ。



「わたしもついさっき戻ったんですよ」
「そうか。おかえり、ひよの」
「はい。ただいま、歩さん」



二人が同棲を始めて二年ぐらいの月日が流れている。
いつもは交代で食事を作っているが今日はあまり食材が無いので
二人で簡単な物を作ろうという事にしたのである。



「今日は演奏会だったんですよね」
「ああ」
「歩さんの演奏を聴けなくて残念です」
「仕方が無いさ。仕事で海外に行ってたんだから」
「そうなんですけどね」
「それと、そっちは報道陣には取り囲まれなかっただろうな」
「ああ、婚約の事ですか。帰国してからすぐに取材攻めに合いましたよ」
「そうか……悪かったな」
「いえ、嬉しいですよ。付き合い始めてから八年。やっと婚約なので」
「仕方ないだろ…お互いに若いし、最初の頃は金も無かったしな」
「ああ、そういう意味ではないですよ。一つの節目だと思いまして」
「節目か」
「ええ。良くあるじゃないですか。付き合っていくうちにお互いの事を
 知るようになって結局別れるってパターン」
「嫌な事をさらりと言うな」
「そうですかね」
「まぁ、それはともかく。俺とひよのの場合は付き合い始めて改めてお互いを
 良く理解できたと言った感じだったけどな」
「わたしもです。歩さんの事がもっと知る事が出来ましたし」
「だからと言ってメモ帳も更に増やす事もないだろう」
「あら。良いじゃないですか。これはわたしには重要なものですから」
「そうだな。そのとおりだな」



ひよのにとって手帳は今も愛用する重要な品である。その手帳の中身は
見せてもらった事はないが、様々な情報がびっしりと書いてあるらしいし。
中には他人の弱みなども書いてあるらしいが、それを悪用しない所だけは
良いとは思う。ただ、何かある事に弱みをちらつかせるのはどうかと思うが。



「ところで、歩さん」
「何だ?」
「浮気はしてませんよね?」
「するか!!」
「その慌て振りから察するにはしてないようですね。関心関心」
「あのな……俺ってそんなに信用無いか」
「ちゃんと信頼してますよ。ただ、歩さんはもてるからその点だけは心配ですね」
「そういう、ひよのももてるだろうに」
「そんな事はありませんよ」



口ではそう言うが実際にひよのはかなりもてる。当然交際を求めてくる輩も多いので
歩が心配するのも当然である。が、ひよのは手帳に書いてある弱みをちらつかせて
そういうのは撃退している。特に何度も断りを入れているのにしつこく迫ってくる
人間に対しては。その辺は歩も知らない事実ではある。



「それに、こんなに可愛い婚約者が居るのに浮気をしようとは思わないさ」
「えっ、今なんて……」
「同じ事を二度は言わない」
「もう、ちゃんと言ってくださいよ」
「絶対に断る」
「もう、照れちゃって可愛いんですから」
「そういう事を言う口はこうだ」



そう言ってひよのを引き寄せてキスをして唇を塞ぐ。
お互いに目を閉じて触れ合うだけのキス。
どちらからともなく離れそして、またキスをする。
それを何度か続けてようやく離れる。



「もう…いきなりですね」
「嫌じゃないだろ」
「もちろんですよ。歩さんの気持ちが充分に伝わりますしね」



そういうひよのの顔は多少赤くなる。歩もまたそれを聞いて赤くなる。
この辺だけは相変わらずお互いにうぶである…



「さて、今日は早いがもう寝るか」
「あら、今日は朝まで寝かせませんよ」
「ぉぃ……」
「くすっ。向こうに行ってる間ずっと抱いて貰えなかったんですから。
 その分きっちりとしてもらいますから。覚悟してくださいね」



宣言通り(?)歩は朝まで寝させてもらえなかったという…
何ラウンド挑まされたかは、ご想像にお任せする。



翌日の夕方



歩は清隆に呼び出され住んでいるマンションへと来ていた。
中に入り、ソファに腰掛けつつ二人は会話をし始める。
探偵の仕事はというと、気紛れなので今日は休みにしたらしい。
後で清隆がまどかに殴られたのは言うまでも無い。



「で、兄貴。何の用だ?」
「ああ、お前とひよのちゃんが正式に婚約したからな。パーティーでもしようと思ってな」
「必要無いと思うけど」
「お前はそうかもしれんが、ひよのちゃんはどうかな?」
「その手で来るか」
「つまり、お前に拒否権は無いと言う事だ」
「まぁ、良いさ。それで、どこでする気だ?」
「どこかの会場を借り切っても良いんだが。それだと多くの人間を
 呼ぶ羽目になるからな…そう言うのは結婚式だけで充分だし」
「まぁ、そうだな」
「ごく僅かな知り合いでやろうと言う計画だから。ここで良いだろ」
「姉さんは了承したのか?」
「ああ、そう言う事には積極的だからな」
「そうだったな」
「では、決まりだな。日時とかは決まったら話す」
「分かった」
「ところで、歩」
「何だよ」
「昨日はあまり眠れてないようだな」
「ぐっ……」
「その様子だと図星のようだな」
「ノーコメントだ」
「ばればれだぞ。それだと」
「うるさい」
「まぁ、仕方ないさ」
「そうだけどな」
「何なら、ここで三十分でも寝るか」
「止めとく。幾ら何でも今から寝るのは辛い」
「まぁ、そうだな」
「じゃあ、家に帰るよ」



そう言ってソファから立ちあがるが、思い出したように
歩は清隆に質問をする。



「ところで、兄貴達はいい加減に子供作る気はないのか?」
「良い質問だな。今のところ予定にはない。が、どうなるかは分からない」
「なるほどな。姉さんは欲しがりそうだけどな」
「確かに。まどかは欲しがってる」
「まぁ、それは夫婦間の問題だろうから俺は口出しする権利は無いな」
「気にするな。そろそろ作っても良いかと思ってはいる」
「何か理由があったのか」
「せめて、お前が一人前になるまではと決めてはいた。俺の中ではな」
「兄貴……」
「だが、もう問題はないだろう。婚約もした事だし」
「悪い」
「気にするな。まどかもその辺は感づいていただろうし」
「そうか。まぁ、ともかく。早めに作れよ」
「こればっかりはな。どうなるかはその時次第だしな…」
「そうだな。じゃあ、とりあえず帰る。ひよのにパーティーの事を言わないといけないし」
「今日は二人ともオフか」
「俺もひよのもしばらくはな。それに、仕事どころじゃない」
「まだ報道陣来てるのか」
「ああ。色々と厄介だし。ほとぼりが冷めるまでは仕事どころじゃないさ。お互いに」
「だが、ひよのちゃんはそう多く休み取れたか?」
「少し早い夏休みさ」
「そうか。では、近いうちにまた連絡する」
「ああ。もし家に居なかったら携帯にな」
「そのつもりだ」



家に帰宅し夕食後、ひよのにパーティーの事を伝える。
ひよのはとても喜んでいて、歩も嬉しくなる。



「婚約祝いのパーティー楽しみですね」
「そうだな」
「でも、歩さん。少し嬉しくなさそうですけど」
「そうでもないと思うが」
「本当ですか?」
「あっ、ああ…」



ひよのが疑って顔を近づけてきたので目を逸らしつつ答える。
それを不審に思ったのか更に質問攻めに合う事になる。



「歩さん、何か隠してません?」
「別に何も……」
「本当ですか?」
「ああ」
「本当に本当ですか?」
「……。ああ」
「今、一瞬間がありましたよ。本当に本当に本当ですか?」
「ああ、もう分かった。話す」
「始めから話してくれれば良いのに」
「いや、兄貴達が子供を作らなかったのは俺のせいだと思うと少しな」
「えっ?」
「正確には兄貴の意思らしいが。俺が一人前になるまでは作らないと
 決めていたそうだ。傍から見ると滑稽だけど。そう思うとちょっとな」
「歩さんの気持ちは分かります。でも、それだけお兄さんやまどかさんに
 愛されているという事ですよ」
「その通りだ……けどな」
「ああ、もう。こういう所だけは昔と変わらないですね。いつかちゃんと
 その点に関してはお礼をしたら良いんですよ。見守っててくれてありがとうって」
「そうだな。あの馬鹿兄貴には言わないが。姉さんには言った方が良いな」
「もう、ちゃんとお兄さんにもしないと駄目ですよ」
「分かってる。ありがとうな、ひよの」
「どういたしまして」



そう言って二人はどちらからともなく寄り添う。
平和で一番安らぎの時である。



「こうしている二人で過ごせる時が一番幸せですね」
「俺もそう思う」
「今日はこのまま寝ちゃいましょうか」
「それも良いけどな。風邪をひいても困るからベッドに入るぞ」
「はい♪」



二人で寝室へと向かう。当然ダブルベッドである。
昨日の行為を思い出し、歩は少し顔が赤くなる…
当然、後始末をしたのは歩であり、ベッドメイキングをしたのも歩である。
思い出すなというのが無理だろう。



「昨日の事を思い出したんですか?」
「少しな……」
「くすっ。今日も抱いてくれるんですか」
「あのなぁ」
「大丈夫ですよ。今日はちゃんと寝かせてあげますから」
「そういう問題じゃ……」



最後まで言葉は言えない。ひよののキスにより口を塞がれ押し倒されてしまう。
結局、この日はちゃんと寝かせて貰えたが。何度か抱いたのは言うまでもあるまい。
若さゆえの特権でもある…
そんな二人をただカーテンの隙間から差し込む光だけが照らしていた。



翌日、早速清隆からの連絡があり、パーティーを行う事になった。
しかも、昨日の今日である。恐らくは歩に伝える前から準備だけは
していたのだろう。鳴海清隆とはそういう面も持ち合わせる男である。



「主役のお出ましだな」
「で…アイズなんでここに居る」
「キヨタカに呼ばれた」
「僕もだけどね」
「あたしもです」
「カノンに竹内もか…となると、浅月と高町もか?」
「あの二人は連絡はしたが。来れないそうだ」
「兄貴」
「大会に向けての強化合宿。浅月に関しては一応念の為の見張り役だそうだ」
「見張り役?」
「リョウコは無茶をする時がある。それを抑えるためだ」
「なるほどな。浅月も大変だな」
「そうでもないようだよ。何だかんだ言っても良いパートナーであり恋人みたいだし」
「そういうカノンは付き合っている人はいないのかな?」
「愚問だよ清隆。僕はアイズひとす…」



シュン!!



その時、カノンに向けてナイフが飛んでくる。しかし、カノンは難無く受け止めてしまう。
どうやら、玩具のナイフらしい。しかし、傍から見ると心臓に悪い…


「アイズ、玩具でも危険だよこれ……」
「なら、その発言を止めたらどうだ」
「僕は事実を言ってるだけだけどなぁ」
(カノンって、同性愛好者じゃないよな)
(私の情報網を探る限りその気はないですよ)
「二人とも…ぼそぼそ言ってても聞こえるよ」
「な、何の事だ?」
「まぁ、良いけどね。生憎と付き合おうという女性はいないだけだよ」
「カノンは意外と選り好みをするからいないのさ。いい加減彼女の一人や二人作れば良いのに」
「清隆、一言多いよ」
「それはともかく。俺はリオ一筋だからな。誤解ないように」
「アイズ君、恥ずかしいよ」
「僕の目が黒いうちは認めないから」
「カノン……」
「やだなぁ。そんなに怖い目をしないで、いつものようにお兄ちゃんと呼んで…」



ぎろっ!!



「分かった分かった。おふざけはここまでにしておくよ。今日のところは」



アイズの睨みが怖いのかカノンは大人しく引き下がるようだ。
やれやれ、何でこんなのと知り合いなんだろうな俺はと一人ぼやく歩であった。



「それでは、あゆむとひよのちゃんの婚約を祝して乾杯!!」
「かんぱ〜い」



知り合いだけのパーティーとはいえ、豪勢な料理が所狭しと並んでいる。
ちなみに、これを作ったのは清隆や理緒である。
流石に主役に料理を作らせるつもりはなかったのだろう。
時間はかかったらしいがかなりの量がある。



パーティーが始まって数十分が経った頃、歩はベランダに居た。
先程まで清隆やカノンに酒を半強制的に飲まされていたので酔い冷ましの為でもある。



「酔い冷ましか?」
「アイズか。あそこで主役を差し置いて馬鹿騒ぎしているからな」



部屋の中ではカノンと清隆が馬鹿騒ぎをしている…
ひよのとまどかは別の部屋に逃げたらしい。



「ところで、竹内は?」
「ああ、背中だ」



良く見ると、アイズが理緒を背負っている。どうやら酔いつぶれたらしい。



「竹内は酒に弱かったのか?」
「そうでもないが。飲まされすぎたようだ」
「なるほどな」



夜風が身体に心地よい…二人とも少しの間黙っていたが
アイズが唐突に口を開く。



「質問がある」
「何だ?」
「ヒヨノにはどんな言葉を言ってプロポーズしたんだ」
「いきなりだな」
「ああ」
「するのか?」
「出来ればだ。何かとカノンが邪魔をする」
「だろうな。あいつは過保護過ぎだ」
「仕方がないといえば仕方ない」
「まだカノンは気にしているのか。お前を刺した事を」
「いや。その辺はどうにかなった」
「へぇ。じゃあ、今度は何なんだか」
「兄として、弟の心配をしていると思うんだが」
「好意的に解釈すればそうなるな」
「何にせよ。リオと付き合って長い。お前達が婚約したのも何かの機会だ」
「そこで、プロポーズをしようとしているわけか」
「その通りだ」
「そう言うのは他人に聞くものでもないと思うけどな」
「分かってはいる。が、いざとなるとな……」
「誰だってそんなものだって」
「……。そうだが」
「まぁ、自分で考えてみる事だな。俺はひよののところに行って来る」
「まっ……。はぁ」


歩はさっさと去っていきベランダにはアイズと眠っている理緒が残される。
アイズは一瞬何かを考え模範し決意したように顔を上げた。



「リオ、結婚しようか」
「良いよ」
「なっ!?」



誰にでもなく呟いた一言に対する返事……
いつの間にか起きていた理緒からの返事だった。



「起きていたのか?」
「うん。ついさっきね。弟さんが気づいて気を効かせてくれたんだよ」
「ちっ……あいつめ」
「くすっ。落ちついて」
「分かってる」
「それより、降りた方が良いかな」
「大丈夫か?」
「うん。もう大丈夫だよ」



背中から理緒を下ろすアイズ。理緒の足取りが多少ふらふらしていたが、問題ないようだ。



「ねぇ、アイズ君。さっきの台詞もう一度言って」
「……」
「ねぇってば」
「あ、ああ……。分かった」


ベランダの二人をただ月だけが照らす。
真剣な表情で見つめ合う二人。
その二人には今は互いの心臓の音しか聞こえない。


「リオ、俺と結婚してくれ」
「うん。良いよ……」



最後の方は涙声になる理緒。嬉し涙である。
そんな二人に背後から歩とひよのの声がかかる。



「よっ、うまくいったようだな」
「うまくいったみたいですね」
「お蔭様でな」
「弟さんにひよのさん。今の聞いてたんですか」
「少しだけだ」
「うまくいくかどうかは心配でしたよ」
「一応感謝はする」
「ああ。って目が怖いぞアイズ」
「ふっ。何にせよしばらくはマスコミに追いかけられそうだ」
「そうだな」



こうして、夜は更けていくのであった
ちなみに、翌日、アイズは婚約発表をし歩と同じくマスコミに
追いかけられる羽目になる。しばらくテレビはこの二人の話題で
多いに盛り上がったという…





終わり




後書き…という名の座談会

とまぁ、手っ取り早く一人で喋っても良いのですが。
スパイラルSSも15本超えたので座談会。
出番は合っても台詞が無かった二人に登場してもらいましょう…
浅月と亮子さん宜しく。

「てめぇ、何で俺の出番が無いんだよ。カノンと清隆は合って」
「落ちつきなよ香介。どうせ、この作者は深い事考えてないんだから」

うわ、ひど…。いや、事実だけど。大人数出すと誰が喋ってるか
さっぱり分からなくなるからと言うのはここだけの秘密だよ。

「おい作者。もうこの時点で秘密じゃないぞ…」

黙れ、へたれ。

「へたれ言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「香介落ちついて、落ちついて」

まぁ、このままだと話が進まんので…次行こう次。

「それは、ともかくだ。何でアイズはまだカタカナ何だ?」
「そうだね。ラザフォードは流石に日本語流暢になっててもおかしくはないと思うけど」

あまり聞いて欲しくない質問だな。いや、書いててどうも清隆と口調が
被って紛らわしいのであえて、カタカナ。

「お、鬼だ」
「同感ね」

鬼じゃない。ただ、どうするかは迷ったのは事実。影響を受けた
サイトでは漢字で呼んでるし。それに、清隆の口調はちょっと苦手。

「小説と漫画じゃ全然違ってるしな…」
「小説じゃ、おちゃらけてて漫画では真面目にしか聞こえない」

そんなところ。清隆は手直しするかもしれん。

「まぁ、頑張ってくれ」
「頑張りな」

話を変えて…二人のSS書いてないな。そう言えば。

「全くだな…俺はアイズとの話はあるが…」
「わたしは全くと言って良いほど無い」

だって、しょうがないじゃん。二人に関しては書きにくいんだよ。

「それを何とかして書くのがお前の役目だろうが」
「全くだね。香介と同意見だ」

原作にまだ過去書かれてないんだぞ…
それにお前等のストーリーってどうも思いつかない…

「きっぱりと言うな」
「まぁ、確かにわたしと香介のらぶらぶものなんて書けないだろうね」

少なくとも歩とひよのの王道コンビぐらいなものだ…
まともに書けて。あと、アイズと理緒。
他のところだと浅月とひよのとかもしくは、理緒とかあるけど。

「なんであたしがないんだぁぁぁぁぁぁぁぁ」

しょうがないじゃん。後付けの設定だし。多分だけど。

「うわぁぁぁぁぁぁぁん」

あーあ、泣いてどっか行っちゃった。

「お前酷いな…」

だって、お前に幼馴染がいるなんて、まず最初は無かったしな。

「路線変更という言葉があるだろうが…」

知るか…

「やっぱ鬼だよお前は」

まぁ、それはどうで良い。次の話題…

「何かとお前が書く話にはキスシーンが多いが…」

ああ、あの方を目標にしてますから…

「誰だよ。あの方って」

昔に『キング・オブ・ぶちゅ〜っ☆』の称号を貰ったあの方を。

「……。本人見たら何を言うやら」

昔、良く恋愛漫画とか見てて、どうもキスシーンに関しては
幻想的イメージを未だに持ち続けているので…
色々と書いてはいるんだが。やはり、あの方のが最強だな。未だに。

「……。わからん事はないけどな。どうにか出来ないのか」

例え、全く同じようにそっくりそのまま書いたとしてもだ…
何か違うと思う。書き手の想いというか魂がこもってると言うのだろうか。

「うわ、お前には似合わない台詞だな…」

煩い…とまぁ、未だにキスシーン関してはどれも納得はいってない。
こればかりは場数(幾ら書いても)をこなしても無理だし…

「自分に合った書き方をせいぜい探す事だな」

そうさせてもらう…。さて、この辺でお開きにするか。

「亮子戻ってないんだが」

探しに行って来い。後は知らんが…

「おい……」

それじゃ、17本目の作品でまたお会いしましょう。

「ちぃ。じゃあな」